猫五郎の写真日記

なんか、写真よりも文章がメインになってます。しかも、くどい。要改善。でもなかなかねぇ。

ニュートン式望遠鏡の光軸調整で、レーザーコリメーター単独はお勧めできない

2024-06-21 17:31:06 | 天体望遠鏡
Laser collimator alone is not recommended for optical axis correction of Newtonian telescope

「ニュートンの光軸調整って、レーザーコリメーターでやって合うのかねぇ」
友人に聞かれたことがあります。

接眼部から入った光が接眼部に戻ってくるんだから、光軸は合ってるんじゃないんですかね?
みたいなあやふやな返事をしたことを朧げに覚えています。

このたび、大枚を叩いてAdobe Illustratorを1ヶ月だけサブスクリプションして、製図してみることで、その謎解きをしました。

光軸が合ってなくても、接眼部から発射されたレーザーは主鏡の中心に当たって反射して、ちゃんと接眼部のレーザー発射点に戻ってくる。

そのことを製図することで確認しました。

ただし、Adobe Illustratorによる製図には限界があることをご承知おきください。
Adobe Illustratorでオブジェクトを回転させられるのは、0.01度(100分の1度)の精度までです。
別の言い方をすると、1000分の1度の精度を求められる製図では妥協が必要、ということです。

今回は、手元にある笠井トレーディングのGINJI-250FNを元に製図しました。
が、各部の寸法が正確ではありません。
特に、鏡筒の中の主鏡面の位置が正確に把握できてません。
鏡筒の底からだいたい7cmくらいのところに主鏡面があるようなのですが、正確に測定できてません。

GINJI-250FNはF値が4であるため、斜鏡のオフセットが必須です。
作図していて、オフセットすることで主鏡からの反射光を全て斜鏡で受け止めることができるようにするためには水平方向、垂直方向に5mmずつオフセットする必要がありました。
確かに、主鏡の光を無駄なく斜鏡で受け止めることができるようになりましたが、斜鏡面全てを使う羽目になりました。

しかし、現実には、ある程度余裕があります。
下の写真に示すように、接眼部から見た斜鏡の中の主鏡は、斜鏡の輪郭の中に余裕を持ってすっぽりと収まっています。
下図ではギリギリ。
つまり、実際の主鏡の位置は、下の作図より数mm低い位置にある可能性が高いです。

細かい点はさておき、僕が言いたいことを伝えるには耐える図であると思っていますので、話を続けます。

まずは光軸が合った状態の図から示します。

水色が光路です。
斜鏡はスパイダーの中心から垂れ下がっています。
GINJI-250FNの斜鏡を水平方向、垂直方向にそれぞれ5mmずつオフセットしてあります。

光が鏡筒の正面から主鏡に対して垂直に入射して来ます。
望遠鏡に入射した光は、鏡筒の軸と平行です。
斜鏡は、鏡筒の軸に対して、正確に45度傾いており、光を接眼部へと導きます。
斜鏡で反射して接眼部へと向かう光は鏡筒の軸に対して垂直の方向です。



これから色々と意地悪な設定を行います。

斜鏡を5mmスパイダー側に引き上げてみます。
斜鏡を引き上げただけでは、接眼部から発射されたレーザーが接眼部に戻って来ません。
斜鏡をスパイダーとの接続部を軸に0.21度反時計回りに回転させます。
さらに、主鏡を反射面の中心を軸に0.42度反時計回りに回転させます。



見えにくいかもしれないので、斜鏡部の光路を拡大したものを示します。



各部の角度は下図に従います。


さらに意地悪く、今度は斜鏡を出発地点から10mm引き上げてみます。
斜鏡をスパイダーとの接続部を軸に0.41度反時計回りに回転させます。
主鏡を、反射面の中心を軸に0.81度反時計回りに回転させます。
本来なら、主鏡は斜鏡の傾きの2倍傾けるはずなのですが、そうなりませんでした。
つまり、細かいことをいうなら、斜鏡の傾きは0.407度とかが望ましいのでしょう。
Adobe Illustratorの製図精度は100分の1度までなので、やむ得ない誤差です。


斜鏡部の光路の拡大図


斜鏡の位置が10mmズレていても、接眼部から発射されたレーザーが正確に接眼部に戻って来ます。
10mmといえば、接眼部からみて、斜鏡の位置が明らかにおかしいと誰でも気づくレベルです。

★ここで一つ、覚えておいてほしいことが。
斜鏡を引き上げたこの図で確かにレーザーは接眼部に戻ってきます。
ただ、斜鏡が正しい位置にあった場合とは、焦点を結ぶ位置が異なります
斜鏡を引き上げた場合、焦点はより短い位置に移動します

一度しっかりと斜鏡の位置を調整したら、その時の焦点の位置、つまり、接眼筒の目盛の値を控えておいてください

その後、レーザーコリメーターなどを用いて、簡易的な光軸調整を数回重ねたあとに、焦点の位置が短くなってきたら、それは斜鏡の位置が主鏡から少し離れたことを意味するのです。




では今度は、斜鏡の位置を主鏡側に下ろしてみたらどうなるでしょうか?

斜鏡を5mm、主鏡側に下げてみます。
斜鏡をスパイダーとの接続部を軸に0.19度時計回りに回転させます。
主鏡を反射面の中心を軸に0.39度反時計回りに回転させます。


斜鏡部の光路の拡大図

各部の角度の法則性は下図の通り

斜鏡を下げる方向に光軸をずらしても、やはりレーザーを接眼部に戻すことが可能です。

ここまでやったので、斜鏡を主鏡側に10mm下げた場合の図も載せておきます。


★ここで再び、一つ、覚えておいてほしいことが。
斜鏡を(主鏡に向けて)下げたこの図で確かにレーザーは接眼部に戻ってきます。
確かに像は結びますが、斜鏡が正しい位置にあった場合とは、焦点の位置が異なります。
斜鏡を引き下げた場合、焦点はより長い位置(離れた位置)に移動します。

一度しっかりと斜鏡の位置を調整したら、その時の焦点の位置、つまり、接眼筒の目盛の値を控えておいてください。

その後、レーザーコリメーターなどを用いて、簡易的な光軸調整を数回重ねたあとに、焦点の位置が長くなってきたら、それは斜鏡の位置が主鏡側に少し下がったことを意味するのです。


斜鏡の位置が大幅にズレていても、とりあえず天体を見ることは可能なのですね。
大きな発見であるとともに、今までの体験と合致するのでちょっと納得です。

天体望遠鏡で受け入れた光は確かに接眼部に導かれるのでしょうけど、多分、星像が歪むのでしょう。
中心部は比較的目立たないかもしれませんが、周辺部のコマが大きく伸びるのでしょう。
そこらへんの追究はまた別の機会にすることにします。

で、じゃぁレーザーコリメーターは全く使えないかというと、そういうことではもちろんありません。
斜鏡の位置が正しければ、レーザーコリメーターで斜鏡の傾きを正常化できます。
ただ、レーザーコリメーターだけでは、斜鏡の位置が正しい位置にあるかどうかわかりません。

では、斜鏡の位置を正しく調整するにはどうするか。
CHESIRE型光軸修正アイピースなどを用いるのが正道なのだと思います。
ただ、これもなかなかスッキリと気分良くできないんですよね。



Adobe Illustrator、久しぶりに使いました。
何年振りでしょうか。
前のパソコンには入っていたのですが、そのパソコンが故障して以降、途絶えていました。
Adobe Illustrator、プロユースなので、使い勝手がいいです。
が、お値段の敷居が高いですね。。。
もうちょっと安く済ませる方法はないものかと探しましたが、角度の調整を0.01度の単位で指定できるソフトウェアとなると、基本、有料ソフトしかなさそうでした。
1ヶ月¥4,980は高いなぁ。
年契約にしても月当たり¥3,280は、仕事上必要な人にとっては安いでしょうけど、たまぁに趣味で使う程度の人には高過ぎる。。。
ヤフーショッピングなどでその半額程度で売られていますが、1ヶ月使えれば、今回の用途には十分だったので、今回は1ヶ月のみのサブスクとしました。
もう少しお安くならないかなぁ。。。


2024/07/31追記
未だ、光軸調整を極められたと思ったことは一度もありません。
猫五郎の光軸調整のその後の軌跡をリンクにまとめました。

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