白石和彌監督という方は、あの若松孝二監督の下にいた方だから、どういう方向性になるかということは大体見当がついていたので、そういう点では特に驚かなかったです、ハイ。
切通理作氏がいみじくも申しておりましたとおり、これは内ゲバの話です。怪人と人間、怪人と怪人、人間と人間のそれぞれのセクト(敢えてこの言葉を使います)の考え方の違いが殺し合いに発展していく。そんな話。
怪人発生の源が旧日本軍であり、そこから現在に繋がる日本政府、というか与党が悪役という図式は、まあいかにもという感じ。権力を持っている奴はとにかく悪い奴という設定には少々子供っぽさを感じてしまった。
総理大臣やその周りにいるお偉方の悪人ぶりは、まるで時代劇に登場するような、多分にカリカチュアされた悪役で、全然リアリティというものがない。時代劇ならまだしも、現代を舞台としたドラマでこれやられてもなあ、と、一歩も二歩も引いてしまう印象。
怪人たちの側の、それぞれのセクトの言い分にはそれなりのリアリティがあるのに、人間の側、政府の側がこれでは、極めてバランスが悪いように思われ、つまりはあくまでこれは、怪人、というか虐げられた者たちの側からの一方的な視点でしか描かれておらず、虐げる側、というか虐げようという強い思いも持たないような一般庶民の視点というものがまるで描かれていないんだな。
あくまでも内々での争い、殺し合いの話。
だから、内ゲバなんですよ。
物語の展開は、なんというか、遅い。ゆっくり過ぎてイライラしてしまう。ようやく5話くらいから加速しはじめて、9話ぐらいでやっといい感じの展開になっていく。こういう点も、なんだかなあ、という感じではありますね。
怪人発生の秘密とか、創世王の正体とか、ずっとわからないまま進んでいくイライラ感。で、結局キングストーンってなんなの?さっぱりわからないまま。
どうにもイライラ、モヤモヤ。
まあ、それはそれとして、エンドレスで続いていく争い。なぜ人は、同じ人同士で争い続けるのか?という哀しみ。これは「石ノ森イズム」の一形態だし、これをかなり残酷なかたちで表現したドラマであるということは、言えると思う。
戦いの先にあるものは、勝利のカタルシスなどではなく、新たな哀しみと怒り、苦しみの連鎖。
だから主人公は
泣きながら戦っている。
こういう点では、「石ノ森イズム」をちゃんと継承していると言え、その点だけは
その点だけは
評価できる、と
偉そうに(笑)言っておきましょう。
それにしても、あの総理大臣の描き方には相当な悪意が感じられる。あれに気分を害する方々は多いと思われ、これが批判される原因の一つとなっていることは、ある意味当然なんですよね。
これから御覧になる方は、その点、心の準備が必要です。
あれを喜ぶ人はかなりの……。
いや、やめておきましょう。
「今野!そこに愛はあるんか?」の方も出てましたね。
そう、怪人への「愛」がなかったから、あんなことになっちゃったんですねえ。
それは観てのお楽しみ?