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流れに任せて

映画『血煙高田馬場(戦後改題「決闘高田馬場」)』昭和12年(1937)

2022-07-04 08:32:43 | 時代劇

アマプラでは戦前の時代劇を観ることができます。

 

その戦前の時代劇の中でも特に名作の呼び声高いのがコチラ

 

 

『血煙高田馬場』

 

 

戦後「決闘高田馬場」と改題され、元々57分だったものが51分に短縮されての公開だったそうな。

 

私が観たのは短縮版の方ですね。

 

主演は戦前のス―パ―スター坂東妻三郎。ピンとこない方もおられるかも知れませんが、あの田村三兄弟、田村高廣、田村正和、田村亮(ロンブーではない)三兄弟の父親です。

 

監督はマキノ正弘。こちらは長門祐之、津川雅彦兄弟の父親になります。

 

主人公は中山安兵衛(後の堀部安兵衛)。酒と喧嘩の日々を送っている自堕落な浪人、中山安兵衛でしたが、唯一の肉親である叔父には頭が上がらない。

 

その叔父が剣術試合で負かした相手の恨みを買い、決闘を申し込まれてしまう。

 

死を覚悟した叔父は安兵衛にいとまを伝えようと、安兵衛の長屋を訪ねますが、安兵衛はどこぞで酔い潰れて帰ってこない。果たし合いの刻限が迫り、叔父は安兵衛に一筆手紙をしたため、寂しげに去っていく。

 

ようやく帰ってきた安兵衛に、長屋の住人たちが叔父のことを伝え、預かった手紙を渡そうとしますが、どうせいつもの説教だろうと、なかなか手紙を受け取ろうとしない安兵衛。

 

長屋の住人たちは、これをなんとか宥めすかして手紙を渡し、その場で読ませます。

 

そこに綴られた内容に衝撃を受ける安兵衛。果たし合いの刻限はとうにすぎている。

 

「しまった!」酔ってフラフラの身体に渇をを入れんと、安兵衛は柄杓で水を一杯飲み干すや、脱兎の如くに駆け出していく。

 

目指すは高田馬場!

 

ものすごいスピードで街道を駆けていく安兵衛を、横移動のカメラがピッタリと追い続ける。このスピード感!迫力!その勢いのまま一気に現場に駆けつけるや、叔父は既に斬られた後。

 

敵は総勢18人。安兵衛の怒りの剣が、この敵どもをバッタバッタと斬り倒す。

 

坂妻さんの殺陣はこれぞ様式美といった動き。実にかっこよく、

 

美しい。

 

そうです、これです。

 

これが時代劇なんです。

 

素晴らしい!

 

坂妻さんの殺陣の見せ場は、このクライマックスシ―ンの方にもう一ヶ所。映画の前半、酔ってフラフラの安兵衛が数人の無頼浪人に取り囲まれる。安兵衛は酔ってフラフラの足取りのまま、浪人どもを鮮やかに斬り倒す。

 

酔った風情から相手を斬るまでの一連の動作には一切の無駄がなく、実に美しい。酔拳ならぬ「酔剣」と名付けるのが相応しいと思える程。

 

これだよね。これが時代劇の殺陣だよね。

 

これが時代劇のス―パ―スターだよね。

 

坂妻スゲエ。

 

「赤穂義士銘々伝」の中でも特に有名な話。日本人なら当然知っているべきエピソード……と言いたいところですが、最近はそうとも言えない状況なのが何とも寂しい。中山安兵衛はこの「事件」で評判を上げ、江戸常駐の赤穂藩士・堀部弥兵衛に見込まれ、堀部家の婿養子となり、忠臣蔵の主要登場人物となるわけですが、この映画はその忠臣蔵の前日譚なわけですね。

 

 

1時間にも満たない中に、時代劇の良きエッセンスがぎっしり詰まった傑作篇。時代劇が好きなら絶対観るべきだし、時代劇をよく知らない方にも出来れば観て欲しい。

 

「温故知新」、新しいものを生み出すには、古きものを知らねばならない。

 

時代劇と怪獣映画は、日本のエンタテインメントの宝、大事にしなければなりません。

 

戦前の時代劇を

 

もっと大切にしよう。

 

コメント
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