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ゆく猫くる猫

 NHKの「ゆく年くる年」に掛けてタイトルを「ゆく猫くる猫」としたけれど、ありがたいことに、去っていった猫は今年はいない。
 来た猫たちはいる。実家の外猫トラの家族だ。ちょうど一年前、通い猫の虎猫トラが小柄な雌猫を連れてくるようになり、やがてそのお腹がだんだん大きくなってきて、人に慣れていないために触ることも出来ず、どうしようかと言っているうち、春先にどこかで出産した。しばらくのあいだ、母猫は子猫の隠し場所と、餌場である実家のあいだを通っていたけれど、大型連休の頃、可愛らしい3匹の子猫を連れてきて、実家の庭で過ごすようになった。
 父親のトラは子育てに参加した。今まで、何組かの猫の親子と出会ったけれど、どの親子も母猫と数匹の子猫たちという組み合わせで、父猫の姿を見ることはなかった。トラは違う。マイホームパパなのだ。子猫たちがじゃれかかると、優しく舐めて可愛がっている。実家の庭には、遊び盛りの子供たちと、それを見守る父親母親というトラ家族の水入らずな光景がしょっちゅう見られるようになった。
 ご飯をあげると、まず子供たちが食べ終わるまで、トラは手をつけない。子供たち全員がおなかいっぱいになってお皿から離れると、トラはようやく食べるのである。父親の鑑だなあとみんなでトラをほめた。
 反対に母猫のコペロは(もうひとりの外猫ペロンに似た柄で体が小さいからコペロ、しかし現在ではこの名前ではあまり呼ばれず「おかあ」などと呼ばれている)若いために母親の自覚がないのか、真っ先にご飯に飛びついて、子猫たちの頭を押しのけ我先にと食べる。その妻の姿を見てトラの心中いかにと、冗談にトラの心のうちを想像したりした。
 子猫たちは、トラ似の虎猫、母親似の少し柄がぼやけたような赤茶色のキジ猫、それに黒味がかったキジ猫の3匹である。3匹はお互いに取っ組み合いをしたり、庭のシャガの細長い葉っぱにじゃれついたりとやんちゃ盛りであったが、母親似のキジの子猫は障害を持っていた。生まれながらなのか、それとも生まれてすぐに何か事故にあったのか、下半身がまったく動かないのである。いつも後足を引きずって、前足だけで歩いたり走ったりし、それでも元気に遊んでいたが、だんだん大きくなって体重が増えてくると、体の重みで、引きずっている後足の甲に擦り傷が出来るようになった。庭のコンクリートの部分には、シートを張って足が擦れないように対応したが、その足の不自由な子猫をどうしたものかと父と母は心配し、悩んだ。
 あるとき、庭から子猫たちがいなくなった。コペロが子猫たちを連れて遠出してしまったらしい。ご飯の時間になっても帰って来ない。足の悪い子まで一緒についていったようなので、父が近所を探し回ったところ、家から百メートルほど離れた民家の庭の林の中にいた。
 あたりには後足の傷から出た血が点々とついていたたまれなかったという。そのことと、またもし親子が遠出して、足の悪い子が戻ってこれなくなった場合、ひとりではとても生きていけないだろうという危惧から、父と母は、足の悪い子猫を家の中に入れることを決心し、子猫を捕獲した。
 幸い排泄は自力で出来るけれども、下半身はほとんど神経が麻痺しているらしく、決まったトイレですることは無理なので、大型犬用の広めのケージを買って、そこで世話をすることにした。名前はマリちゃん。最初のうちこそ、慣れない人や場所におびえて、ケージの中に入れてやった箱の中で縮こまっていたが、2、3日もするとすぐに慣れて、飼い猫らしい穏やかな表情になり、人懐っこくて可愛らしい、からだは不自由だけれども遊びが大好きな子猫になった。
 あとの兄弟は、新しく庭に設置した猫ハウスで、母猫と一緒に暮らしている。トラ似の子猫がコトラ、黒いキジがメイという名になった。
 そういうわけで、今年実家の猫の数は、室内に3匹(キキ、ハル、マリちゃん)、外に5匹(トラ、コペロ、コトラ、メイ、ペロン)と、合計8匹に増えた。
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