横スカッとジャンパーズ

徒然なる侭に、主にマリノスと日常をくっちゃべります。毒にも薬にもなりません!

僕は三重人格です

2007年11月05日 12時43分27秒 | 雑記
あくっまさんのオトンはマイペースな人である。
そして、あくっまさんのオカンは勝気な完璧主義者である。

そんな二人が出会ったのは、お見合いの席。
オカンを前にしたオトンの自己紹介第一声が、タイトルのような事を言ったらしい。
そんなオトンをオカンは「まあ、面白い人!」


…と思った訳がなく。

変な人、と嫌ったそうだ。


デートへのお誘いの電話なんて掛けたくないと泣いて嫌がるオカンに代わり、祖母は「うちの娘は恥かしがり屋なんで…」と無理矢理デートの約束を取り付けたそうだ。

また、デート初日のとき、家の柱にしがみ付いて離れなかったオカンを祖母は無理矢理引き剥がし、「娘が作りましたの~」と『祖母作』のお弁当を持たせてデートへ行かせたり。

オトンの方もオカン宅のピンポンを押す時から顔をそむけ、それをオカン一家は家の中から見ながら「あの人も嫌なんだろうね」と言っていたそうだ。




そんな二人がどうして結婚したのか。
オカン曰く「きっとオトンはおばあちゃんのタイプだったのよ」



オトンそっくりの息子とオカンそっくりの娘が生まれ、娘ことあくっまさんは今年で二十七歳。
なんとなくインターネットの姓名判断でオトンとオカンの相性を調べてみた。
そうしたら、二人は夫婦の縁が無いらしい。
そんな二人も、今年は真珠婚こと結婚三十周年。
占いっていうのは、良くわからないものである。



そんなオトンは去年の五月、不運に見舞われた。
一昨年見つかった大腸の良性ポリープを、内視鏡による日帰り手術で取ってもらう時、若造の医者によって腸壁に穴をあけられたのだ。
突孔というそうだが、その確率はポリープ除去手術では数千分の一。

一・五センチのポリープを取ろうと自分の技術以上の事に挑戦し、見事患者の腸壁に穴を空けた若造は、穴をふさごうと医療用クリップで塞ごうとした。
そして更に失敗し、内視鏡手術では塞ぎきれない大きな穴を空け、開腹して手術する事になった。
内視鏡手術の突孔を、開腹手術による縫合の確率は、数万分の一。

大腸ということで、中には汚物が溜まっている。それが腸の外に漏れ出したのだ。体内を全身洗浄し、オトンの日帰り入院は一ヶ月の長期入院と変化した。


そんな中、良性ポリープと言っていた医者が「実は初期の癌でした」と言ってきた。
しかし今回の手術で全て取り除き、残っているのは良性ポリープだけだという報告だった。
そんな中でも、オトンはマイペースな人だった。
そしてオカンは慎重派だった。
退院後も全身PETや大腸専門医による検診、手術を三ヶ月に一度ほど繰り返した。
去年の全身PETでは、もう無いと言われ、それでも大腸専門医や国立がんセンターへ行き、初期癌をした人でもこんなに細かく検査する人はいないと言われるほどやった。


だが、十月。
オトンが全身PETを受けたとき、大腸にまた癌が見つかったという結果が出た。
しかも、今回は大腸の外にあるかもしれないという話だった。




大腸をいくら検査しても、外では分からない。
そして外の癌が中からも見つかったということは、初期の癌のように表面ではなく、外から内まで貫通して癌が出てきたのではないか。
リンパ節を貫通しているのではないか、という事だった。



オカンは色々ツテを使った。
しかし、あくっま家は医者家系ではない。ではお金で片付けようと個室でもいい、早く検査を受けさせてくれと方々あたり、なんとかお台場にある病院の個室へ入った。
その時も、「検査の予約が取れないとベッドの予約は取れない」「ベッドの予約を取らないと検査の予約は取れない」など事務員によってまちまちの対応により、結局一ヶ月も入院が遅れた。

十月末日、オトンは入院した。現段階では検査の状態だ。
そして医師から言われた。



最初の突孔から穴が空き、閉じられなくて開腹し、全身洗浄をした時。
癌細胞が大腸の外に出て外壁に癒着したのではないかと。
そんな事あるのかと、オカンは尋ねた。
すると、医師は答えた。



「僕の医師生活二十五年の中で、一例しか見た事ありません」



TOTOGOALのような確率で、オトンは癌になった。




オカンは熊谷から、あくっま兄妹の家へ来た。
毎日オトンのお見舞いに病院へ行っている。検査段階でそんなに毎日行く必要はあるのか?と尋ねると、オカンは「オトンは寂しがり屋だから」と答えた。


オカンは饅頭断ちとケーキ断ちを始めた。
願掛けらしい。
そういえばあくっま兄妹が受験の時も、オカンはセンター試験前から風呂場で水浴びし、
四本足の犬であるおペロさんに無理矢理お祈りポーズを毎日取らせていた。

オカン曰く、宗教はあまり信じないが、願掛けは凝るらしい。
あくっまさんも酒断ちとスナック菓子断ちを今日から始めた。
その他にも願掛けをしたが、願掛けはあまり漏らさない方がいいそうなので、ひみつ。


そしてオトンの病室には、おペロさんの格好をしたぬいぐるみにオカン特製の「身代わり御守り」が縛り付けられていた。
天国に行ったおペロさんが、散歩してもらおうとオトンを連れて行ってしまわないようにという事らしい。


あわただしくなってしまったが、手術も終わって落ち着いたら、親孝行したいなあとあくっまさんは思った。
オトンとオカンは子どもにとってはあまりに強大で、いつまでも一緒にいてくれる人だと思っていた。
それが、不意に限りある命の持ち主だと気づいた。
親孝行ってなんだろう。あくっまさんは兄と違ってどこに出しても恥かしくない学歴を持っていない。
かといって、女性として恥かしくない美貌の持ち主でもない。
あくっまさんにあるのは、二十七歳の平凡な女性という、最近の小説の主人公になりそうなプロフィールだけだ。



というわけで。
来月あたりに、とりあえずお見合いパーティに登録することにした。
あくっまさんの出た女子大には、なんとビックリ卒業生のためのお見合いパーティが運営されているのだ!
身元バッチリ、経歴ハッキリ!
今年の二月、オトンとオカンに『結婚相談所に登録しなさい!』と大喧嘩をして泣き叫んで抵抗したが、今は「お見合いしてもいいかな」という心境である。



今まで特定の恋人を作ろうとも思わず、好きな人に告白しても断られ、好きじゃない人に告白されても断ってきた。
それは、友人にも家族にも恵まれていたからだろう。
だが、友人たちも結婚ラッシュになり、なんとはなしに独身の侘しさを感じてきた時の、今回の騒動。
不謹慎な言い方だが、オトンが身を持ってあくっまさんの背中を押したように思う。


友人のように、オトンやオカンに花嫁姿を見せたいと思った。


一人で生きていく強さは持っていて、伴侶の必要性は感じられなくても。
家族を幸せにするのに喜びを感じ、結婚するのも悪くないかもしれない。


そう宣言しても、どうなるかはまだまだ分からないが。
ちょっとは需要がありそうなので、頑張っていこうと思う。
以上、宣言終わり。

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