AKB48『放課後は、いつもPARTY☆』

やかってしまうのは、愛情の裏返し。AKB48とその周辺を愛してやまない◎◎みすと。が、ぼやいたり、語ったり、やかったり。

【寄稿】ダルイカンジ

2007年04月18日 23時24分25秒 | Weblog
『・・・いたい』


一人の女が、血塗れで倒れていた


『もっと・・・楽なもんと思ってたわ・・・』


目は虚ろだった


口を、パクパクとさせた後、一言だけ言い放った




「・・・・ダ、ルイ・・・」









 ーーー   ダルイカンジ   ーーー




                   原案・秋元 康
                   作文・桜















いつからだろう


この世にキョウミがなくなったのは


今まで当たり前だと思ってたもんが


今になって面倒とか思う


私だけなのかな


息を吸うのとか、歩くのとか、目を開けるのとか、


なんていんだろう・・・


ダルイ。


そう、


スベテガ ダルイカンジ


そう。









【ウィーン】
自動ドアが、一人の女をゲームセンターから、表の世界へと吐き出す
女は学校の制服姿で、スカートは極端に短く、髪は長髪を後ろで一つに結んでいた

女はドアの前で立ち止まって、周りを見回した
そして、一度ため息を吐いてから歩き出した


【ウィーン】
そのすぐあとに、同じような格好の女が二人、息を弾ませながら表に出てきた

「み、みなみは・・・?」
「わかんない・・・・いきなりいなくなっちゃった・・・」
「どこ行ったんだろ。。。」




【カッカッカッカッ】
「・・・・」
"みなみ"と呼ばれた女が、一人で夜道を歩いていた

近くの公園の時計は、もうすぐ11時を指す所だった

みなみは、右手に紙袋を持っていた


みなみは自宅の門ほ開け、玄関の扉を開けた

表札には「峯岸」と記してあった

「ただいま」
独り言のような小さな声で言い、まっすぐに二階の自分の部屋へと向かった

一階の奥の部屋から母親が顔を出した
「みなみ?帰ってきたの?」
階段の下まで移動し、
「最近ちょっと帰って来るの遅いんじゃないの?」

もちろん、返事は返って来なかった

「・・・もう、みなみったら・・・」
母親は部屋へと戻って行った


【バタン】
みなみは部屋のドアを閉め、鍵を閉めた

バッグを投げ捨て、すぐにベッドに座り、紙袋を開けた
紙袋から、ピアサーを取り出した

鏡の前で自分の耳を掴んだ



そして、朝になった

「~♪~♪」

机の上の携帯から、流行りの曲が流れ出した
布団の中でモゾモゾと動き、手だけ出して携帯のアラームを止めた

五分程止まったあと小さな声で、

「学校ダルイ・・・」
『でも休めないしな・・・』

みなみはゆっくりと布団を自分の上から退かした


【ガチャ】
「あら。おはよう」
一階のリビングでは母親が起きていた
「・・・うん。パパは?」
みなみはパジャマ姿だった
「パパ?仕事に決まってるじゃないの」
『・・・・』
「ふーん。昨日も仕事だったの?」
「ん?パパ?うん、仕事だったわよ?」
「何時まで?」
「・・・どうしたのいきなりー。」
「良いから」
「えっとぉ・・・本当は9時までだったんだけど、残業で昨日は12時頃帰って来たわね」
「・・・・そっかぁ・・・」
「なんで?」
「いや、別になんもないけどさ・・・」
「・・・?そお?・・・・あっ!こんな時間!ママ今日も行ってくるから、先に出るね」
みなみはリビングのソファーに座った
「今日は・・・何?」
「今日から、なんと新しくダンスを始めまーす」
「ふっ。よくやるねぇ・・・」
「これも・・・・まぁ、家族のためよ!」
「まぁいいや。いってらっしゃい」
「じゃあ行ってくるね」
「うん」
母親は一度玄関に向かおうとして、もう一度みなみの方を向いて、

「あっ、はい。お昼代ね」
そう行って千円をテーブルに置いた
「うん、ありがと」
「じゃぁーねー」

【バタンッ】

母親は出て行った

みなみは立ち上がってテーブルの前に立った
そして千円を持った

「・・・・・」

千円の下には、たくさんのビタミン剤や栄養剤の袋があった

「・・・・ふっ。よくやるねぇ・・・・」

千円をテーブルに置いて、自分の部屋へと戻って行った

母親の左手薬指に、指輪は付いていなかった


【バタンッ】
外へ出て、鍵を閉め、門を閉めた

手に持っていた千円を、財布に入れた
「・・・ふぅ」
そして学校の方向へと向かった


みなみの右耳には、青色の石が朝日に照らされ光っていた



教室のドアを開け、入ると、教室に生徒は5~6人しかいなかった
「おはよう」
一人の女生徒がみなみに声をかけた

「・・・おはよう」

そう言って、自分の席にバッグを置いた
『・・・早すぎたかな』

バッグからファイルに入った紙を出すと、教室を出て行った


【ガラガラ】
「失礼します」
みなみは、職員室に入り、一人の教師の机に、ファイルをを置いた

そして職員室を出ようとした、

「峯岸っ」
後方から声がした
「はい」
振り向くとそこには担任がいた
「いやぁ、峯岸はいつも早いなぁ。関心するよ」
「おはようございます」
「あぁおはよう。ん、なんだ?今吉田先生の机に置いたのは。課題か?」
「いえ、社会の授業を一ヶ月毎に自分なりにまとめてるので、それを毎月見てもらってるので今月も、と思い」
「かぁー・・・お前は何にでも熱心になれるんだな」
担任はにこっと笑った
「お前みたいな生徒がいてくれると俺たちも助かるぞ。授業のし甲斐があるしな」
「ありがとうございます。それでは、授業の準備などがあるのでこれで」
「・・・お、あぁ。またな」
「失礼しました」

【ガラガラ】

「・・・・」
「中村先生」
「あっ、はい!」
「峯岸さん・・・と言ったかな?」
「はい」
「あんな生徒がいるクラスなんて、さぞ立派でしょうなぁ」
「いえいえ、校長先生そんな・・・」
「はっはっは。私も若い時にあんな子の授業や担任を受け持ちたかったですねぇ」
「今からでもまだ遅くありませんよ」
「それは嬉しいね」


「・・・・」
みなみはトイレで、窓を開けて個室で携帯をいじっていた
「教師とか・・・」
『なんであんなにダルイんだろう・・・まぁ、単純だからこっちは助かってるんだけどね』
「・・・ん?」
携帯にメールが着た

[ごめん、私今日学校バッくれるわ☆]

『・・・・』
すぐに返信をした

[学校なんて教師の言う通りにしてものこなしてればすぐ終わるから来なよ 進級出来なくなるよ?]

『学校休むなんてバカみたい・・・人生でたった1/5程度我慢すれば良いだけなのに・・・』

そして、再びメールが着た
「・・・・なに」

[自分が良い子だからって上から見ないでよ みなみなんかあんた変わった、今のみなみ・・・他所から見たらただの教師達の人形。操られてるだけじゃん]

「・・・・っ」
みなみはすごい形相で立ち上がった
「なにそれ・・・」
『側にいればベタベタしてくるくせに気に入らなければすぐ悪口?』
「ウザイ・・・」

【バタンッ!!】

みなみは勢いよくトイレのドアを開け、廊下を早歩きに教室に向かった


【ガラガラガラッ】
教室のドアを開けると共に、たくさんの生徒達がみなみを見た
『見るなバカ共が。。。』

みなみは一直線に自分の席に座り、バッグの上に顔を伏せた

一瞬静かになった教室がまた、先程までの賑やかな教室に戻った

「・・・・・」
みなみの耳に、周りの会話が聞こえてくる

「昨日彼氏がねぇ?ーーー」
『お前はただ自慢がしたいだけだろ・・・』

「俺この前兄貴のバイク直したんだぜ?ーーー」
『まずその幼稚な頭を治せガキが・・・』

「頭良いぶってる奴ってムカツくよなぁ~ーーー」
『・・・・は?』




「「「頭良いぶってる奴ってムカツくよなぁ~ーーー」」」



みなみは立ち上がった

「今言ったの誰だ!!」

「・・・・」

一瞬で教室中が静かになった

「ど・・・どうしたの?みなみ・・・」
みなみは声をかけた女の方を向いて、

「わ、私が、頭良い奴ぶってるって?」
「・・・え?何の事言ってるの?ねぇ・・・みなみどおしたの?」
「・・・・・・」
『・・・・』

みなみは教室を見渡した

生徒達全員が、みなみを白い目で見ていた

「・・・・くっ」
『何やってんだろ・・・私。。。。』

「ごめん・・・気にしないで。。。」
「んーん。大丈夫だよ?みなみ、疲れてるんだよ」
「・・・・うん、ありがとう」
みなみは、笑顔だった



『そんなに私が目障りか?股広げる事しか能がない糞女が』


みなみは、笑顔だった


「ごめん、帰るわ」
「えっ!」
みなみはバッグを掴んで教室を出て行った




「はぁ・・・・」
『ほんと何してんだろ・・・』
みなみは、昨晩もいたゲームセンターの、ベンチに座っていた

「ダメだ・・・気、まぎらわさないと。。。」


【チャリ】
UFOキャッチャーの機械に、100円玉を入れる

「・・・・」
みなみは無意識にクレーンを動かし、ぬいぐるみを取った

『お金いれるだけで欲しいものは手に入るのにな・・・』
「愛はお金じゃ買えない・・・・っか」
『バカみたいな事言っちゃった』

「・・・ふっ」

その時だった。


「峯岸!!」
『・・・・は?』
みなみはすぐに声のした方を向いた

「・・・・中村・・・先生。。。」
「峯岸・・・良かった・・・」
そこには担任がいた

「な、なんでここに・・・・」
「捜したんだぞ。。。」
「・・・っんでここに・・・」
「クラスのやつらに聞いたんだ、よくここで遊ぶって」
中村は笑顔になった

「なんでここにいるんだよ!!!」
「え・・・・」
「私なんか捜してる暇があんなら授業でもしてろ!!」
「・・・・」
「どうせ私がいなくなってはクラスが纏まらなくなるとか考えて」

【パシンッ】

「・・・・!?」
中村はみなみの頬を軽く叩いた
「・・・峯岸。お前らしくないぞ。。。俺はただお前の事を心配して、お前が大事だから」
「・・・・」
「俺はお前の行く末や、やりたい事に口を出すつもりはない。ただ・・・悪い人間にはなって欲しくないんだょ。。。わかってくれ・・・」
中村はみなみの手を引きベンチに座り、己も座った、そして続けた

「お前らは今、人生の分かれ道にいるんだよ。道は二つ。良い人生・悪い人生、その二つだ」
みなみは俯いている
「峯岸、お前はクラス、いや学年中でも一番頑張っている。そんなお前にこんな所でつまづいて欲しくないんだ・・・・俺も昔な・・・お前ぐらいの歳には」
「あーーー・・・」
みなみはスッと立ち上がった

「・・・どうせ体目当てなんでしょ?」
「は・・・・」
中村は驚いた顔をした後、すぐに怒りに満ちた顔になった
「峯岸!!!」
立ち上がってみなみの腕を強く掴んだ
「痛ッ・・・・何よ、知らないとでも思ってんの?」
中村の力が少し緩んだ
「加藤、飯田、橋本、山崎、戸田、三橋、木原、柴田、河本、緑川、白井。以上11名、なんの名前?言ってみろよ」
「・・・・」
中村は力なくベンチに座った
「わかんだろ?あんたに体育着及び水泳着、スカート・ブラウス・下着。盗まれた子達だよ」
「・・・・・・」
中村は虚ろになった
右手はまだみなみの左腕を掴んでいた
『・・・ふっ』
「放してください、汚れてしまうので」
そう言って中村の手を振りほどいた

【ウィーン】
自動ドアが開く

「未成年ナメんじゃねぇよ、糞変態教師が」

そして、ゲームセンターを後にした


その後みなみは何をするでもなく、ベンチに座っていた
『もうこの世はダメだ、手遅れだ』



学校でシンヨウ出来る人間がいない


じゃあ私は誰をシンヨウすれば良いの?


もうわからない・・・


パパとママだって。。。


何して良いのかもわかんないや・・・


ナンダカ・・・


ナンダカ ダルイカンジ



今まで当たり前だと思ってたもんが


今になって面倒とか思う


私だけなのかな


息を吸うのとか、歩くのとか、目を開けるのとか、


出来れば呼吸もせず、動かずに、目を瞑っていたい


帰るのがダルイ


歩きたくない


・・・帰らなくたって良いんじゃない?



「・・・・・っ!」

みなみは我に帰った
「お。。。暗い。。。」

時計は午前1時を過ぎていた
「はぁ。。。悪い事なんてするもんじゃないわ・・・エネルギー使うわ。。。」
『早く帰らないと・・・お母さん心配するわ』




【メキャッ】【グチャッ】


みなみがさっきまで座っていたベンチのすぐ後ろの道路に向かって中村が上から降った、そしてけたたましく、生々しい音がした

「・・・ん?」
みなみは後方を見渡し、首を傾げてから家に向かって走って行った


「・・・・」
おぞましい中村の亡骸に、元の形はなかった



まるで、


踏みつけられた昆虫のようだった











【ガチャ】
「ただいまー」
その声は、前日よりも大きな声だった

そしてリビングのドアを開け、
「ごめんなさい、遅くなっ・・・・」

みなみは言葉をなくした


目の前には、倒れている母親と、立っている父親と、そこら中に飛び散っている血液だった

「や・・・何これ・・・何・・・・」
みなみは自分の顔を覆った

「あぁ、みなみか・・・」
口を開いた父親の右手には出刃包丁が握られていた

「なんで・・・・なんでママを!!」
「違うんだみなみ、ママがなー浮気したんだよ。パパに内緒で他所で「独身だ独身だ」言って若い男と付き合ってたんだょ。それに勝手にスポーツジム行ったりこーいうサプリメント買ったり」
そう言いながらテーブルに出刃包丁を突き立てた

「・・・・・」
「どうしたんだ?みな」
「気安く名前呼ばないでょ・・・」
「・・・え?」
「パパだって・・・あんただって昨日の夜残業だってママに言っておいて・・・ゲームセンターで私の知らない女と遊んでたじゃねぇかよ!!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・見てたのか・・・みなみ。。。」
「たまたま居合わせた・・・・」
「そうか・・・」
「それに・・・・ママは私の事を気にかけてくれた。例え浮気してたとしても・・・」
「そ、それは!!」
「じゃあ私がピアス開けたの気づいたの!?」
「・・・・!」
「・・・・・・気づいて・・・ないでしょ・・・?」
「・・・・ごめん」
「こんな時だけ父親面し、しないでよ・・・」
「・・・・・」

【ガッ】
父親はテーブルから出刃包丁を抜いた

そして、みなみに近づいて行った
「・・・え。。。。」
「みなみ・・・もう遅いんだ。ごめんな」
「やめっ・・・・やめて・・・」

みなみは出来る限りの身を守る体制をした

【ガチャ】

「なに・・・?」

みなみが目を開けると父親は玄関の扉を開けていた

「パパ・・・どこ行」
「みなみ、パパ明日から違う女の人と一緒に住むんだ。悪いな、妻を裏切り、お前を捨てるよ」
「・・・・・」
「じゃあな。一人で元気に暮らせよー」


【バタンッ】

「・・・・・・なに、それ・・・」


【ドサッ】
みなみはその場に崩れ落ちた

自然に涙も流れて来た

「あはは・・・何もかも・・・・台無し。。。全部、全部なくなっちゃった・・・・あはは、あははは」






【ギィィィィィーー・・・】

重い扉が開く、みなみが出てきた



そこは、

屋上だった





ナンダカ、


ダルイ


ダルイカンジ



ナンダカ ダルイカンジ


呼吸をするのも面倒


スベテガ ダルイカンジ


戻る必要はない


ナンダカ ダルイカンジ


私が生きている事も・・・


スベテガ ダルイカンジ


このまま消えても、良いんじゃない?




パパ 恋の残業朝帰り


ママ 最近独身中


二人ともやる事あった、出来た



【タタッ】
みなみは、屋上の淵に立ってみた

「私にやることなんて、ない」
みなみは笑った

『ナンダカ ダルイカンジ』


サヨナラ?

バイバイ




みなみの姿が、屋上から消えた















いつからだろう


この世にキョウミがなくなったのは


今まで当たり前だと思ってたもんが


今になって面倒とか思う


私だけなのかな


息を吸うのとか、歩くのとか、目を開けるのとか、


なんていんだろう・・・


ダルイ。


そう、


スベテガ ダルイカンジ


そう。


ダルイカンジ







『・・・いたい』


みなみが、血塗れで倒れていた


『もっと・・・楽なもんと思ってたわ・・・』


目は虚ろだった


口を、パクパクとさせた後、一言だけ言い放った




「・・・・ダ、ルイ・・・」


(登場する人物・場所・設定はフィクションです)

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