おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。
会津出身の社会科学学者 小室直樹博士の書物をリスト化した小室直樹文献目録がネット上にあります。
今日は、そのなかから古本で買い求めた「わたしの知的生産技術」(「知的生産の技術」研究会編)を読んだ感想を書きます。
この本は、18人の論壇による共著で、小室直樹博士は「わたしの学問の方法論」を書いています。
小室博士のほかに、「プロになるための文章作成方法」(大隈秀夫著)の文章もとても素晴らしかったので、今日はそこにある手法を真似て書いてみます。
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【起】小室博士は、まず「科学」とはなにかという定義を述べ、次に、心理学、経済学を例として成熟の内容を述べ、未成熟の学問を成熟した学問で深堀する「学際」について書いておられます。これから、その導き方をみていきます。
【承】科学は、「自然科学」と「社会科学」に分けられます。
「自然科学」は、自然界の物理法則や数学など、広く自然界の現象を「理論」として追い求めたものです。「科学」として比較的わかりやすいものです。
「社会科学」は、なかなか分かりにくいものです。博士は、説明をするために、科学であることの必要十分条件を考察します。
科学とは、実験や観察、すなわち、実証が伴うことが、科学が科学であることの必要条件です。
続いて、迷信と人生経験は科学といえるかを考えます。実験が伴うものではないので、科学ではありません。
さらに、科学における理論の特徴を考えます。科学として、必要かつ十分な条件として3つを導きます。
1.科学は理論と実証の統合である
2.理論とは完全理論である(補足・・・完全理論とは普遍的に実証されたもの)
3.実証とは完全な実証計画法を伴った実証である(補足・・・偶然起きたことを観察するのではなく、普遍な理論を導くために必要な実証を行うことを伴わなければならない)
そのうえで、心理学と経済学の実証と理論形成について考えています。
心理学は、被験者であるヒトは、実験を行うヒトの意向をまったく無視することはできず、普遍的な傾向を分析するのは困難です。チンパンジーなどでの実験を行うにしても、それでも知能により心理がかわってしまうことを排除できません。最後は、ネズミを使った実験に至ります。先進科学に達するも、社会科学と言えるような理論形成がされないのが実際と結びます。
次に経済学は、原因があり結果が生み出される「因果関係」を元に、結果から原因を推定し、ある仮定のもとでどのような結果がでるかという実証を繰り返す学問です。つまり、理論を仮定し、結果を生み出します。しかし、さまざまなパターンを社会で実証することには、困難があります。例えて言えば、現在の場面で金利を上げた場合と下げた場合の両方を実証することはできないということです。すなわち、理論を形成しても実証が難しいのが経済学です。
利点と欠点が学問によって異なるものの、心理学、経済学はその方法論は成熟しています。方法論すら確立していないのは、政治学と社会学と博士は言います。
【転】では、政治学、社会学はどんな方法で理論の形成と実証を行えばよいのでしょうか。
ここで自然科学が登場します。自然科学は、さまざまな可能性を計画し、実証あるいは実験ができるものです。自然科学である物理学や数学は、先人たちの努力により、かなり多くの普遍理論がすでに発表されています。
物理学は物体の動作法則といった面を、数学は数の法則という面に特化した学問で、それを複合的には見ていません。社会的分野の科学も、単純化した各学問は進歩したものの、複雑に絡み合う分野の理解は難しいことです。
しかし、現実の社会は複雑に絡み合っているのが現状です。
【結】完全理論化した学問と、未成熟な学問のどちらをも深堀し研究するものが「学際」で、完全理論化した学問から未成熟分野へのアプローチをすることが、社会科学分析の方法論であると結論づけています。
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今日は、「プロになるための文章作成」の手法のうち、「起承転結」をはっきりさせることと、代名詞を極力省くことに気をつかい、文章を書いてみました。
小室博士の書かれた文章を編集者の方が編集したのでしょうが、各小見出しごとに起承転結がわかり、接続詞、代名詞が非常に少ない文章となっているところは、やはり出版社の技術なんだなと、変なところに関心を持ちながら小室博士の文章を読み、まとめてみました。
今日も素晴らしい一日を過ごしましょう。
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