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合間の博物館旅日記

博物館を回りながら日本各地を旅をする過程の壮絶な日記。(2005.4-9月)
旅終了後は適当に随時更新の予定。

充実の3館

2005-04-05 23:40:52 | Weblog
 仕事をやめて五日たつが、収入が0の上に支出ばかりなので不安になって仕方がない。無論そんなことは百も承知でやめているわけだが、今回の不安感は予想以上である。家にいても精神的によくないので出かけることにする。
 JR田町駅で徒歩2分の産業安全技術館(OHS-SQUARE)を見る。ここは凄い。労働災害に対する安全対策機器や技術を展示しているが、実際に使われているものを生で見れるのでよく分かる。ものの展示ばかりでなく、ころつえビデオCAN(「転ばぬ先の杖」から来ている)といった映像、VRシアターや3Dシアター、体験型のテストやクイズもある。例えば「騒音と警告音のテスト」では、同じ警告音でも騒音の種類によっては掻き消されてしまうといったことがよく分かる内容となっている。ヘルメットやマスク、墜落防止器具などの実物、爆発・感電・静電気などの危険の仕組み、ワイヤーロープ素線断線検出装置といったものもあって、事故を未然に防ぐための工夫のあれこれに感心するばかりだ。自分がそういう現場にいたことがあまりないので(多少の現場のアルバイト経験はあるが)、なるほどなあと思う。
 時間の関係でVRシアターと3Dシアターは端折ったが、こちらも随分と面白そうなプログラムのようだ。近いうちにまた見に来よう。

 先述のシアターを端折ったのは東京海洋大学の水産資料館を見たかったからだ。ここは以前、タモリ倶楽部で取り上げたことがあり、以来来たいと思っていた。JR品川駅から歩いて十分程度のキャンパス内の入り口近く。資料館横には、巨大なセミクジラの骨格があってビックリする。
 資料館を入ると、いきなりセイウチの頭骨やドイツの岩塩が並んでいる。コイワシクジラの骨格やタカアシガニの標本もある。2階に上がると、正面に歴代の所長や学長さんの肖像画が掲げてある。一番新しい絵に名前の記述がないのが気になった。画家が違うので個々の違いを見ていくのも面白い。
 展示は、海に関するありとあらゆるものを詰め込んだよう。魚の剥製(?)、巨大な海老の標本、鯨の胎児が並ぶかと思えば、定置網・まき網・刺し網・底引き網といった漁法の解説、鰹節の製法と削り節製品、缶詰の缶、昆布原藻各種、フィッシュミール・プラントの模型、サメ皮、寒天、中国料理に使う乾製品(スルメ、フカひれ、貝柱など)などなど……。さらには、サンショウウオやアオダイショウ、何故かカンガルーやナマケモノ、アルマジロやハリモグラなどの剥製や水牛の角まである。流石にここら辺は海と何の関係もないのではと首を捻ったが。
 海鳥の剥製、腔腸動物の標本の隣には、真珠や貝細工、海苔養殖関係の資料、そしてたくさんの貝殻標本がある。
 南氷洋を調査した海鷹丸のコーナーも。昭和32年頃の写真では「アデリーペンギンを15羽捕獲。ペンギンにも性格があるのか、中には始めから人なつこいのがいて、カメラを向けると気取るのもいる」と書かれているが、奥にはそのアデリーペンギンの剥製があり、可愛そうに人懐っこくても剥製にされてしまったのだろう。海鷹丸はガラパゴス群島も調査していてそのコーナーもある。
 明治35年に農林省水産講習所の標本室として誕生したが、関東大震災で資料が焼失。戦後は校舎が進駐軍に接収されたことで閉鎖。昭和33年には久里浜から品川に移転を完了した、というような歴史のある施設である。標本の配置が昔ながらの博物館っぽくて、それはそれで雰囲気があっていい。

 歩いて田町まで戻る。産業安全技術館の隣にある「女性と仕事の未来館」。何とここは夜の9時までやっているのだ。それで後回しにしたわけ。展示は3階だが、1階の受付で音声ガイドを借りる。見学は無料だ。
 明治から現在までの女性の仕事に重点を置いた展示内容だ。まず明治30年頃の紡績や製糸工場に勤める工女たちの生活。一日の総労働時間は15時間以上。食事時間は各々わずか15分。その食事も一汁一菜の粗末なもので、過酷な労働と劣悪な環境により体を悪くして帰される女たちも少なくなかった。

 大正中頃に誕生した職業婦人たちの意識調査が面白い。幾つか書き出してみよう。
・仕事への希望
「目的のない仕事に希望は御座いません」(エレガ)
「行く末はもう少し頭を要する仕事がしたいと思います」(給仕)
・一番楽しいこと
「夕方家に帰るときが一番楽しい」(電話交換手)
「店に居ては食事中。家に居ては三味線のおけいこ」(給仕)
・一番嫌なこと
「下品なことを言われること」(電話交換手)
「ブルヂョア階級の横暴な態度、特に貴婦人の」(車掌)
「婦人(多く女学生)に軽蔑した目で見られること」(エレガ)
「帰りしなに用を言いつけられること」(給仕)

 第二次大戦が佳境に入ると、男がみんな戦場に取られたために女性が多く男性の職場に進出するようになる。この頃の婦人雑誌の表紙の変遷も凄い。「家庭と隣組の防空必勝読本」とか「決戦下の結婚教育号」とか「生産突撃!」などと書いてある。表紙に描かれた女性の姿も、防空頭巾を被ってるのはましな方で、終いには飛行機を造ったりしている。昭和20年6月号に至っては表紙からワラ半紙状態だ。
 闇市の風景のジオラマも再現してあるが、これがかなり細かくよく出来ている。婦人少年局作製の紙芝居「おときさんと組合」とかもあって面白い。いわさきちひろの描いた紙芝居とかもある。いやあ、なかなか見応えがあった。