僕がナマコ博士こと本川達雄氏を初めて映像で見たのは、たまたま友達と鬼怒川温泉に泊りに行った旅館の部屋で、である。
東京12チャンネルのスペシャル番組で、全国の変わった先生を特集したもの。そこで本川先生は、「ナマコは溶ける~」と歌いながら、ナマコをしごいてドロドロに溶かしていたのである。
のちにNHKの教育テレビで講座を持った時は、まだβだったビデオで録画し、夢中で見た。
番組の最後に披露する歌も秀逸だったが、講座の内容も「目からウロコ」的に素晴らしく、たちまちファンなった。植物細胞には細胞壁があり、大きさは動物細胞の何十倍も大きいが、それは何故かまで明確に説明してくれる。
大ベストセラーとなった「ゾウの時間ネズミの時間」はもちろん、歌のCDや「歌う生物学」まで購入し、すっかり「本川教」の信者状態といえるほどだ。
そもそも本川氏はなんでナマコなんかに興味を持ったのか?
沖縄の瀬底島にいた時、海岸にナマコがたくさん横たわっているのを見て疑問に思ったそうだ。
何でナマコは動かないのだろうと―。
動物は動くから動物なのであって、餌をとったり捕食者から逃げたり、より良い環境を求めるために、素早く動けるよう進化して来た。
にも関わらずナマコは動かない。体を動かすための筋肉さえ持っていないほどである。
同じように動かない動物にサンゴがある。こいつは体内にカッチュウソウという藻がいて光合成をしている。だから動かずに、木みたいにひたすら枝を伸ばせばいいのだ。
ナマケモノもあまり動かない。調べてみるとこいつは、哺乳類の中ではダントツで代謝が低い。つまりエネルギーを使わないのだ。だから、葉っぱなど栄養の低いものだけで生きていけるそうだ。
ナマコも同じで代謝が低い。餌は砂の中に潜む微生物である。食糧の上で暮らしているわけで、本川流に言えば「ナマコは天国である」となる。
こんなナマコも魚に襲わたりする。そんな時ナマコは体の皮膚をかたくする。それでも魚がつつくと、逆に皮膚は柔らかくなり、中から腸を出す。魚が腸を食べているスキに本体は逃げちゃおうというのだ。
腸は時間が経つと再生する。本川氏が何度もテレビで溶かしたナマコたちは、海水の入った水槽に入れておくと、一ヵ月のうちに再生するそうだ。プラナリアもびっくりの再生能力だ。
本川達雄氏は「サイズの違い」から「動物の時間」へと論理を展開する。そして、寿命の大きく異なるゾウとネズミでも、一生に打つ心臓の鼓動の回数は同じであることに着目する。
我々人類は本来なら三十年程度の寿命だが、医療の発展や科学技術の進歩によって驚異的にその寿命を伸ばしてきた。人間が一人当たり使うエネルギーは、もはやゾウなみに肥大化した。しかしこれは、不自然極まりないことだ。地球環境を大きく変えるのも仕方のないところか。
エネルギーで生命の時間を買っている現代人。が、そのエネルギーももはや枯渇しつつある。
多くのエネルギーを消費するのをやめて、ナマコやナマケモノの生き方を参考にする必要が、今の人類には求められているのかもしれない。
東京12チャンネルのスペシャル番組で、全国の変わった先生を特集したもの。そこで本川先生は、「ナマコは溶ける~」と歌いながら、ナマコをしごいてドロドロに溶かしていたのである。
のちにNHKの教育テレビで講座を持った時は、まだβだったビデオで録画し、夢中で見た。
番組の最後に披露する歌も秀逸だったが、講座の内容も「目からウロコ」的に素晴らしく、たちまちファンなった。植物細胞には細胞壁があり、大きさは動物細胞の何十倍も大きいが、それは何故かまで明確に説明してくれる。
大ベストセラーとなった「ゾウの時間ネズミの時間」はもちろん、歌のCDや「歌う生物学」まで購入し、すっかり「本川教」の信者状態といえるほどだ。
そもそも本川氏はなんでナマコなんかに興味を持ったのか?
沖縄の瀬底島にいた時、海岸にナマコがたくさん横たわっているのを見て疑問に思ったそうだ。
何でナマコは動かないのだろうと―。
動物は動くから動物なのであって、餌をとったり捕食者から逃げたり、より良い環境を求めるために、素早く動けるよう進化して来た。
にも関わらずナマコは動かない。体を動かすための筋肉さえ持っていないほどである。
同じように動かない動物にサンゴがある。こいつは体内にカッチュウソウという藻がいて光合成をしている。だから動かずに、木みたいにひたすら枝を伸ばせばいいのだ。
ナマケモノもあまり動かない。調べてみるとこいつは、哺乳類の中ではダントツで代謝が低い。つまりエネルギーを使わないのだ。だから、葉っぱなど栄養の低いものだけで生きていけるそうだ。
ナマコも同じで代謝が低い。餌は砂の中に潜む微生物である。食糧の上で暮らしているわけで、本川流に言えば「ナマコは天国である」となる。
こんなナマコも魚に襲わたりする。そんな時ナマコは体の皮膚をかたくする。それでも魚がつつくと、逆に皮膚は柔らかくなり、中から腸を出す。魚が腸を食べているスキに本体は逃げちゃおうというのだ。
腸は時間が経つと再生する。本川氏が何度もテレビで溶かしたナマコたちは、海水の入った水槽に入れておくと、一ヵ月のうちに再生するそうだ。プラナリアもびっくりの再生能力だ。
本川達雄氏は「サイズの違い」から「動物の時間」へと論理を展開する。そして、寿命の大きく異なるゾウとネズミでも、一生に打つ心臓の鼓動の回数は同じであることに着目する。
我々人類は本来なら三十年程度の寿命だが、医療の発展や科学技術の進歩によって驚異的にその寿命を伸ばしてきた。人間が一人当たり使うエネルギーは、もはやゾウなみに肥大化した。しかしこれは、不自然極まりないことだ。地球環境を大きく変えるのも仕方のないところか。
エネルギーで生命の時間を買っている現代人。が、そのエネルギーももはや枯渇しつつある。
多くのエネルギーを消費するのをやめて、ナマコやナマケモノの生き方を参考にする必要が、今の人類には求められているのかもしれない。