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合間の博物館旅日記

博物館を回りながら日本各地を旅をする過程の壮絶な日記。(2005.4-9月)
旅終了後は適当に随時更新の予定。

三日見ぬ間の……

2005-04-04 23:36:26 | Weblog
 「世の中は、三日見ぬ間の桜かな」という。桜というのは散るのが早いもので、三日も見ないうちに満開の桜がすっかり散ってしまった。ああ、世の中も桜の花びらと同じではかないものだ、という解釈だが、実はこれは違っている。
 正しくは、「世の中は、三日見ぬ間に桜かな」。三日も外に出ないうちにすっかり桜が咲き揃ってしまった、という句なのだが、日本人は無常観を感じるのが好きなので前者のように解釈したがるのだそうな。

 この日は池袋へ買い物に。ノートPCのバッテリーを買う。2万7千円。高いが、旅先では滅多に充電もできないと踏んで思い切って買った。ポイントカードが1万5千円分あるので実質1万2千円の出費。他にテントマットやEPIガス、マグカップなどを買う。8千円。当初はテントや寝袋も新調するつもりでいたが、出費がかさむのでやめた。お金もないのに出る一方で嫌になる。文芸座では「椿三十郎」と「用心棒」。見たい気もするがやめておく。

 目黒に出て杉野学園衣裳博物館に行く。(200円) 1階は19世紀の洋服の歴史ということで、ドレスの実物が並んでいる。詰め物や木・針金などで枠状に作った下着によりスカートに膨らみを持たせたスタイルから、ウエストの細さを強調したアール・ヌーヴォスタイルへの変化。膝丈のドレスが主流となったアメリカのギャルソンヌ・ルックなど。
 3階は中世ヨーロッパの衣裳だ。「時計仕掛けのオレンジ」の主人公らのような14世紀フランスの男子の庶民服。映画「アマデウス」などで見たことのあるロココスタイルの衣裳。また「スター・ウォーズ」の登場人物を連想させる15世紀フランス女子服のエスコフィオンという被り物もユニークだ。
 各国の民族衣装も並んでいる。ウィグル族の帽子や中国少数民族・苗(ミャオ)族の銀製飾りとか。韓国のチマ(裳・スカートの一種)とチョゴリ(襦・上衣)、中国清朝時代の男性の礼服・龍袍など。4階には日本の衣装として十二単や能装束、火消半纏や万祝、振袖に小袖、宮内官大礼服やアイヌの民族衣裳が並ぶ。
 服飾そのものに興味がなくとも、民族や文化の側面から見て十分面白い。
 すぐ近くには学園の創始者・杉野芳子の自宅であった記念館があって見学できる。こちらは無料。
 
 先ほどの博物館で、日本橋三越の横山大観展の招待券が手に入ったので行ってみる。島根県にある足立美術館の開館35周年記念とのこと。横山大観についてはあまり詳しくない。上野にある記念館に行った程度だが、大観といえば富士の絵があまりにも有名だ。本展でも富士(大観は不二と書くが)の絵が幾つも並んでいる。変わっているのは昭和19年、大観76才の時の作「海上日出」。かなり大き目の太陽が、何と水平線の手前に描かれているのだ。かなりシュールである。時局的な意味をこめた絵なのだろう。昭和25年の「壽」も変わっていて、絵の中央に鳥をモチーフにした「壽」の文字が描かれている。遊び心なのだろうか。昭和39年の「霊峰夏不二」は、それまでの富士と違っていて、雲海の上に突き出た頂上部分が描かれている。下から見上げた富士ではなく、明らかに上から見ている。飛行機から写した写真を参考にしたのだろうか。
 この足立美術館、2004年日本庭園ランキングで2年連続日本一に選ばれたらしい。収蔵品も大観ばかりでなく、例えば陶芸館では河合寛次郎や北大路魯山人の作がある。見てみたい気もするが、入館料が2200円と高い。水族館並みである。
 それにしても、本展は普通に見れば900円するのだが、招待券でタダで見れたというのは何か腑に落ちない。変な話、招待券をごっそり入手して、ネットで販売したらなんて考えてしまう。そのせいか、会場のチケット売り場前に「チケットの譲渡はおやめください」みたいなことが書かれていた。

 夜、お世話になった会社の人と飲む。餞別に「全国美術館ガイド」という本を貰った。いろいろと励まされる。期待に応えたいと思う。