合間の博物館旅日記

博物館を回りながら日本各地を旅をする過程の壮絶な日記。(2005.4-9月)
旅終了後は適当に随時更新の予定。

「詰む将棋パラダイス」について

2012-11-23 22:12:44 | Weblog
「詰ルンルン」というブログで、自分が過去に出した「詰将棋パラダイス」のパロディ誌「詰む将棋パラダイス」が、ご丁寧にも画像入りで紹介されていた。あまりに懐かしいので自分も少々振り返ってみたい。

この頃(奥付を見ると「平成三年」とあるのだが)、私は詰将棋に狂っていた。まさに本の中に書かれた「踊るポンポコリン」の替え歌にあるように、「誰でも彼でもみんな 詰棋(つめき)に狂っているよ」…な状態だった。パラやその他の詰棋書を読みまくり、暇さえあれば盤駒を取り出して、詰将棋のことばかり考えていた。

とはいえ、ここに収録されている作品は、どいつもこいつも入選にはほど遠く、実際投稿もしていなかった。
表紙を飾る13手詰は、簡素な初形に加え、意表を突いた歩の成らずもあり、一見好作に見えるが、作意の他の二つの変同(変化同手数)は、むしろ醜い「尾わかれ」と呼ぶべきもので、どう贔屓目に見ても入選に値する作品ではない。
自分は、この後都合11回ほどパラで入選を果たすのだが、その中に「詰む将棋パラダイス」収録作がほとんどないのを見ても、作品のレベルの低さを裏書きしていると思う。だからこそ照れ隠しの意味を含めて「詰む将棋」という蔑称を加えた、読み物主体のパロディ誌にしたわけである。


さて。
東京詰将棋工房の会合(当時はまだ「ACT―2」の名前を引きずっていた)に初めて参加し、詰めキスト(詰将棋を趣味にする人達をこう呼ぶ)なる存在を初めて目撃した自分は、そこで知り合った摩利支天さんと詰パラ編集部に、できたばかりの「詰む将棋パラダイス」を送った。
私はそれまでパラに解答を送って短評が載ることはあっても、基本的にパラ読者にとっては、どこの馬の骨とも知れない謎の人物であった筈だ。

それが、変なパロディ誌を作った謎の人物として有名になり(大阪の詰将棋全国大会では、催し物をよそに、ひたすら「詰むパラ」を寒い廊下で売っていた)、さらにはそれが将棋ジャーナリストである湯川博士氏の目に止まって、「週刊将棋」の取材まで受けてしまう。さらにそれが元で会社の社内報にまで紹介されることになるのだが……。

しかし今「詰む将棋パラダイス」を見直しても、若い読者は何のことか分からないに違いない。
例えば、「詰むと絶連 湯川詰子」というエッセイは、この頃パラに載っていた「詰めば都」という湯川恵子さんのパロディだ。本家では、パラを読んでる湯川さんが難しい顔をしているのに、こちらでは「詰むパラ」を笑って読んでいる。こういう細かい所を作者としては注目してほしい。

猪木が人質を解放した直後で「総理大臣になりたい」と抱負を述べているところ。前田日明がWESTという缶コーヒーのCMに出ていたが、UWFが分裂して、藤原組はメガネスーパーがスポンサーに付いたSWSに参加したこと。ジャイアント馬場が入院し、兄貴と慕うラッシャー木村がマイクパフォーマンスで心配してるところまで、「結果稿」には書いてある。また、プロレスラーの名に混じって、何故かバトルロイヤル風間(漫画家)の名前があったり、作家陣では、当時「将棋ジャーナル」に団鬼六の肝煎りで何故か官能小説を書いていた丸茂ジュンの名があったりと、嫌でも時代を感じさせる内容だ。逆に言うと、今の若い人が見ても何のことだかよく分からないだろう。


あれから20年以上も経ってしまった。自分も詰将棋からスッカリ足を洗った状態だ。最後に駒を触ったのはいつだろう。ケーブルテレビの囲碁将棋チャンネルでプロ棋士の対局はよく見るけど……。

ちなみに、「詰むパラ」の「読者サロン」を見ると、この頃はまだ大山康晴がご存命なのである。
一方自分は、昨日でついに50の大台に乗ってしまった。
あの頃は若かった。まだ自転車で野宿旅をする前だった。

もはや何もかもが懐かしい………。

「逃走中」の亀治郎(猿之助)

2012-11-11 22:21:10 | Weblog
今回は役者さんのことを書こうかと思う。

最近、ドランクドラゴンの鈴木(塚地じゃないほう)が、フジの番組「逃走中」で、自首したばかりか、ミッションに参加する奴を罵倒したりとか、その言動があまりに酷いということでツイッターが炎上。本人がツイッターを閉鎖し、「芸能界を辞めたい」と言ったとか言わないとかが話題になっている。

気の毒なことだと思う。

鈴木はそういうへタレキャラ、憎まれ役を演じただけなのに……。
言ってみればプロレスのヒール、悪役を演じたレスラーのブログが炎上するようなもん。
まあ、ヒールなのだから憎まれてなんぼとはいえ。
演出ありのテレビ番組をさもリアル、ガチだと信じる馬鹿の何と多いことか…。

かつて歌舞伎の市川亀治郎(今の猿之助)もこの番組に出て、ろくにミッションにも参加せず、賞金50万を手にし早々に自首。ネット上で散々に叩かれたことがあった。
「最低」「金の亡者」「幻滅した」「二度と呼ぶな」「糞過ぎ」「死んだほうがいい」など……。

2010年の4月に放送されたこの回は長崎のハウステンボスが舞台だった。

2011年1月。同じフジテレビの「ウチくる?」で亀治郎がゲストで出たとき、この時の裏話が暴露された。
「逃走中」のプロデューサーが大学の同期の人間で、出演を頼まれた。当日の午後東京で仕事があると伝えると、「自首すればいいから出て欲しい」と言われたとも。(ちなみに亀ちゃんは慶応大学出身)

何のことはない。最初から自首が決まっていたのだ。(ちなみに捕まると、後で牢の中にいないのが不自然に映るからね)

亀治郎にすれば、舞台で悪役を演じるのと同じつもりで、友だちへの義理を果たそうと出たのかもしれない。
また、当日は博多公演の最中で、博多での芝居が終わった後長崎に移動し、わずかな仮眠の後、深夜から朝にかけて収録し、そのまま次の仕事に向かったという情報もある。

とてもではないがお気楽にテレビに出ていたわけではないのだ。



ところでこの番組、私は台本(シナリオ)があると思っている。

とゆうのは、当初深夜でやっていた「クロノス」の頃は、かなりミッションも単純だったりして、ガチでやっている気配が濃厚だった。

が、スペシャルの2時間番組になってから参加者も多く、ミッションも複雑になった。
中には、失敗するとハンター100体放出、というミッションもあった。
当然100体のハンターがいては最後まで逃げ切れるわけはない。
とゆうことはミッションは成功させねばならない。

100体とはいかないまでも、1分毎に1体放出という回もあった。
これだってミッションが成功しないと、逃走者は最後まで逃げ切れない。

ミッション成功のためには、最低でも3組がチャレンジ、任務を成功させねばならなかったりする。
そんな複雑なミッションが、完全に出場者の自主判断任せで成功できるだろうか?

また逆に、全ての参加者がミッションに参加しても面白くない。
正義感に燃える奴、ずるがしこい奴、卑怯な奴、参加したいけど怖くて出来ない奴……。
いろんな奴がいるから面白いのだ。
つまりそうしたシナリオがあらかじめ組まれていて、スタッフから指示があるとみるのが普通である。

プロレスと同じで、完全ガチ、真剣勝負がいかに面白くないかは、歴史が物語っている。

ハンターだって、ミッション中は、わざとその機械の周りから離れてないと、永遠にミッションは成功できない。
ハンターが誰を捕まえる、捕まえない、あるいは見てみぬふりをするとか、空間をあけておくなどの指示も当然スタッフからなされているだろう。

そして、実はここが重要なのだが、出演者に悪役や善人、成功者、逮捕者があらかじめ決まっているとしたら、当然賞金、すなわち自首や逃げ切ったことに対する成功報酬は、リアルには払われてない、と見るべきだ。だって、逃げ切る人以外の役を演じた人は損じゃないですか。汚名を浴びた上に、ただのギャラしかもらえないんですから。

では、その推測に基づいて、この手の賞金が嘘だとしたら……。(というか、ただでさえ制作費が馬鹿高いのに、この上賞金なんか本当に支払ってたら、番組つぶれますよ、普通は)
「賞金目当てに自主しました」っていう鈴木や亀ちゃんの動機は、そもそも成立しない、ということになりませんか?
(だから鈴木を叩くのは倫理上間違ってるんですよ。あーやっと冒頭につながった)


ちなみに、自分はエキストラをやっていた時に市川亀治郎さんとドラマで共演したことがあります。
エキストラを人間扱いしないスタッフや役者さんも多い中、亀治郎さんは実に丁寧な言葉をかけてくれました。
大河で主役を張る、歌舞伎界のプリンスですよ。エキストラから見たら天地ほど立場の違う人。当然天狗になってもいい立ち位置なのに、そうではないんです。

エキストラに丁寧に対応する役者。
実はそういう人、案外少ないんです。自分の記憶でも数えるほどしかいません。

おまけにものすごい痩せてるし。
もうそれだけで努力家だと分かりますね。
女形をやるだけあって妖艶だし。(ちなみに亀治郎さんはドラマ「JIN-仁-」では中岡慎太郎を。「龍馬伝」では龍馬を斬る刺客を。さらに舞台では龍馬の妻であるお龍を演じたことがあるそうです。やってないのは龍馬だけ)

そんな亀ちゃん、もとい、市川猿之助さんが50万のはした金(歌舞伎の舞台衣装って一着でン百万とかするんだよね。もう庶民とは桁違いの世界)に目がくらんで自首?
まああり得ませんね。考えられません。

舞台では本当に、一歩間違ったら大怪我をしかねない、死ぬかもしれない。そんなアクロバティックな動きもあるのです。
まさに歌舞伎に命をかけている。

従兄弟にあたる香川照之さんも別の意味で凄い役者ですが……。

以上、まだまだ誤解されているようなので、余計ながら弁護する次第。




キチガイ沙汰 橋下市制

2012-11-10 03:22:05 | Weblog
呆れてモノも言えん。

何のことかって? なにわの海の時空館。その廃止についてである。

176億円をかけて2000年に作られた大阪の博物館施設。

これが大阪市の仕分けによって本年度末に廃止されることが決まった。

年間2億円強の市からの補助金が出せません、というのがその理由である。

あほか・・・。


私はこう言いたい。

建設費の「176億円」は幹である。
年間の「2億円」は枝である。

つまり今回の決定は、枝が邪魔だから木を切れ、というに等しい。

もしここで木を切ったなら、176億円という巨額の金が「死に金」になってしまう。

もしそうなら、市民は本当の意味で176億円をドブに捨てることになる。

この仕分け経過のレポートを見て唖然としてしまった。

これだけの大事な物事を決めるのに審議の時間はたかだか1時間あるかないか。少なくともレポート自体は30分で読めてしまったので、リアルタイムで考えれば30分だ。
仕分け人はA~Eの五名。
何故仮名なのか? 何故実名を出さないのか? これでは、どんな立場でどんな見識を持つやつが仕分けしたかが見えないではないか?

結果は5人のうち四名が廃止に賛成。結果は廃止。

あほか。学校の学級会だってもう少しまともだ。

ここに出てきた意見を読むと、こいつらは(橋下を含めて)博物館というものがいったいナンなのか、全く分かってない。
大学にいって「博物館学」の講義を一度受けてみるといい。いや、テキストを開いてみても結構だ。

橋下市長を含めて一度聞いてみたい。
あなたは「博物館が何か、分かっていますか?」
「博物館の持つ意義とは。使命とは」
「博物館、記念館、資料館の違いは?」

そんな博物館について無知のやつらが決めた廃止。

開いた口がふさがらない。

何が悪いのか?

結論を言おう。

責任の所在が不明確なのだ。

この場合で言えば、仕分け人がA~Eで実名が登場しない。まずそこが問題。
だから仕分け人には一切責任が生じない。ゆえに発言もまたテキトーが許される。

137億。ばかにならないお金だ。
仕分け人による廃止決定で、この金は死に金に化けた。
50年は持つ箱物施設がたった12年で廃棄。
その137億を死に金に決定した人間の名前も公表されないとはどういうことか?

逆にそれを死に金とするならば、むしろそんな決定をした(つまらない、意義のない施設を作ることを決定した)、当時の責任者たちをどんどん呼んで吊るし上げ、責任を取らせるべきだ。
だってそうでしょう?
責任を取らせない、うやむやで終わらせるからそんなことになる。

原発の問題だってそう。
今度の福島のメルトダウンで、いったい誰が責任を取りましたか?
私が悪かった、私が間違っていた、国の方針は問題があったと認めて、謝罪し、責任を取ったやつがいましたか?
誰も責任を取らないから、その場その場で場当たり的な対応で終わるのです。

今回だって、当時の決定をした責任者たちを呼んで責任を取らせる。そういう流れにすれば逆に彼らが、「いや、なにわ海の時空館建設は正しかったんだ」と弁明をするでしょう。何しろ自身の責任問題にはってんするんですからね。
それをせず、現在の運営会社の人間を呼んで、廃止を通達しても意味がありません。単なる欠席裁判です。

その意味のない過程が、今回の仕分けの実態です。

コーディネーターという人物(これもレポートには名前がない)が、「この施設を見学してない」と明言したのには呆れました。

まるでインタビューする相手に、全く事前の取材はしてません、と名言する馬鹿のようです。

そんな職務怠慢の人間をコーディネーターにするだけで…。いや、そんな発言を臆面もなくして恥と思わない、その馬鹿さ丸出しの人間、それをコーディネータに選んでいるだけで、大阪市制が間抜けと断言して言いと思います。

いわばこの仕分けとは、「ちゃんと廃止を検討しましたよ」という茶番劇に過ぎないのです。あらかじめ廃止ありきだったと。

明確に責任を取らせる社会システムを作らねばいけません。
過去に遡って責任を取らせる仕組みを作れば、今回のような博物館の廃止に対する暴挙を防ぐことだってできるのですから・・・。

橋下市制は、文楽の例でもそうですが、間違いなく文化を殺しています。

あの男に文化の意義など分かるわけもありません。文楽も芸術も何も理解できないんですから。

私はずぶの素人で博物館の専門家ではない。

が、日本全国の博物館1700件を実際に回ってみてきた。

だからこそ言えます。

彼らには「博物館がナンなのか、まるでわかってない」

今回のことで一番の不幸は、死に金を払った大阪府民と、「なにわの海の時空館」を見ることが出来なくなった将来の日本の子供ですね。


ちなみに、勿論自分は見学済みですが。