spin out

チラシの裏

悪魔の手毬唄とクイーン

2013年04月11日 | ミステリ
無性に横溝正史が読みたくなることがあって、
どれだけ読み返したのかわからない「悪魔の手毬唄」を開きます。
これを読むと中学生だったころの暑い真夏にタイムスリップしちゃいます。
個人的には横溝正史の最後のきらめきですね、「悪魔の手毬唄」は。


※H19年改版18刷 すごい売れてんですね


「悪魔の手毬唄」は「わらべ唄(童謡)をモチーフにした連続殺人モノ」
という部類に入る作品だというのは定説です。
著者もエッセイで「僧正殺人事件」に触発されて童謡殺人モノを書きたかった、と言ってます。
それはそうなんでしょうが、

1954年にハヤカワポケミスからクイーンの「九尾の猫」が出ています。
1957年には同じハヤカワポケミスでクイーンの「ダブル・ダブル」が出ています。
当然、横溝正史は読んでいたはず。
「悪魔の手毬唄」は1957年8月号から『宝石』で連載(1959年1月号まで)。

クイーンの「九尾の猫」は昨今すでに食傷ぎみのサイコパスものの嚆矢みたいなハナシで、
無差別連続殺人モノです。
クイーンですからホントに「無差別」ではないんですけれど、
真相はけっこう重い話です。
この犯人の造形が「悪魔の手毬唄」に投影されているような気がするのはわたしだけでしょうか。

「ダブル・ダブル」は童謡をテーマにした、これまた連続殺人モノで、
ミソは「レッドヘリングなしの連続殺人」というところでしょうか。
クリスティの「ABC殺人事件」やヴァン・ダインの「僧正殺人事件」では、
目くらましの殺人に真の殺人が隠されていたわけですが、
「ダブル・ダブル」ではそういった体脂肪をゼロにした連続殺人モノに挑戦したわけです。
江戸川乱歩が「たいしたことはない」と書いていたので、
乱歩はお気に召さなかったようですが、個人的には好きな作品です。

「悪魔の手毬唄」は
「わらべ唄(童謡)をモチーフにした連続殺人モノ」だけじゃないところが
「最後のきらめき」です。
↑ カバーも無くなってボロボロのS47年7版

※現行の「悪魔の手毬唄」は語彙が編集部によって変更されているようす。
いちいち確認したわけではないですが、差別的な言葉が差し替えてありました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ガールズ&パンツァーその他 | トップ | 八つ墓村とギャルゲー »

コメントを投稿

ミステリ」カテゴリの最新記事