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怪樹の腕

2013年05月12日 | ミステリ
紹介ページだけ読んで誤解するかもしれませんが、
ウィアード・テールズから直接翻訳されたわけでなく、
ウィアード・テールズ掲載作品をイギリス人が編集したアンソロジー、
「ノット・アット・ナイト」をネタ本にして、
そこから戦前に翻訳された作品を集めたもの。

だから、最後に収録された「成層圏の秘密」が、
ウィアード・テールズ本誌から直接翻訳されたこと
(つまりアンソロジー未収録作品)が確認される唯一の例、
という一文が納得できます。
さらに、同じ作品に複数の翻訳ヴァージョンが存在する理由も腑におちます。
ネタ本があるんですからね。

で「ノット・アット・ナイト」の日本語訳「一人で夜読むな」という題は
日本人の琴線に触れたらしく、このあといろいろなところで借用されていました。
横溝正史もこのタイトルで短編書いてましたね。

しかし、オリジナルのB級具合が翻訳の仕方によって
さらにB級具合がZ級にまで発酵して、
匂いがプンプンするようになるのは不思議です。
「蟹人」なんて、初期仮面ライダーに出てくる改造人間そのまんまですよ。
ま、「クトゥルフの呼び声」のアンサーソングかと思えば、
納得できるような、できないような。
好き嫌いのはっきり分かれる作品群なので、好きな人は大好きでしょうが、
小説として認められない人がいるんでしょうねえ。
ウィアード・テールズの懐というか、
ホラーだけでなく(怪奇)SF、(怪奇)ミステリなどを包含した
深さが分かるような気がするので、
そこあたりのアンソロジーも出て欲しいですね。

そういえばウィアード・テールズのアンソロジーといえば、
青心社の文庫版4冊、国書刊行会の叢書(5冊+別冊?)ともに、
古本屋でも見なくなりましたね。
うちには青心社のこれ「悪魔の夢 天使の溜息」しかありませんが、



「ウィアード・テールズ傑作集」というだけあって、
C・A・スミスやR・ブロック、ラヴクラフト御大にT・ウィリアムズなど
錚々たるメンバーの作品に、
編訳者の大瀧啓介によるウィアード・テールズ史も載ってます。
この本なら古本屋で手に入りやすいかも。
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2 コメント

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Unknown (cold_sleeper)
2013-07-07 15:40:36
あれ?記事書き加えましたか?
以前この記事を拝見したときには
青心社の件は無かった気がします。

図書館の予約で漸く順番が巡ってきて
今手元にありますが
文庫だとばかり思い込んでいました。
前書きがいいですね
”原作からの逸脱を評価”
”ゲテモノ度の高い方を優先”

ソノラマ文庫からも
ウィアード・テールズ傑作選
「眠られぬ夜のために」
"I Can't Sleep At Night"が
出ていました。
青心社の4巻ものは物好きにも
2冊づつ持ってます。
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Unknown (spin_out)
2013-07-07 23:11:01
すみません、そうなんです。
そういえば、と思って。

私も買っておけばよかったと後悔してます。
古本屋でよくみかけたので、
そのうちと思っていたら、けっこうレアになっちゃってますね。
「怪樹の腕」の感想もまたお聞かせください。
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