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島田清次郎

2013年10月04日 | others
■本の雑誌社「島田清次郎」
「カネと文学」で、有島武郎とともに最初のベストセラー作家としてあげられていました。
有島武郎はいまでも文豪として作品が残っていますが、島田清次郎は完全に忘れられています。
とは言え、テレビドラマになっていたこともあったそうなので、
認知度は作品自体より本人のほうが上かもしれません。ちなみにわたしはまったく知りませんでした。

作品は青空文庫で読めるようですが、ブンガク的にはなんの価値もないかもしれません。

しかし、当時は同時代の若者の代弁者として絶大な人気があったそうです。
それまでの文学は、文学者が書いて出版社から読者へ下げ渡すような雰囲気だったのでしょう。
そこへ文学的素養や技術は未熟ながらも、同世代の若者が書いた作品という点に共感した人間が多くいたのでは。
60年代から70年代にかけてのフォークソングブームと似たものを感じます。

著者は精神科医としての立場から「発狂した」という俗説を批判して、
いまならば普通の生活ができると書いています。
まあ、しかし根本的にDVな性格は直らないので、結局末路は似たようなものじゃないでしょうか。

病院に隔離された清次郎の退院の応援に意外な人物が登場。
山田風太郎みたいですね。
清次郎の退院応援に、大泉黒石と木村秀雄
(息子の木村生死は戦後日本初のSF雑誌「星雲」に寄稿している)が登場してくるのには驚きました。

読めばそれなりに面白い(絶頂期と末路のものすごい落差が悲しい)けれど、
島田清次郎そのものに意味が発見できないと読んだ甲斐がない、というオススメしずらい本です。
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