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クリスティ もうすぐデビュー100周年 その3

2018年03月01日 | ミステリ
アガサ・クリスティのミステリ作品は、
犯人あての作品とスリラー・サスペンスものに二分されますが、
中にはどちらか戸惑うものもあって、その一つがこれ「終わりなき夜に生れつく」。

脱線しますけど、短編には怪奇小説もあって、いまも覚えているのがたしか「最後の降霊会」。
交霊術師に死んだ子どもの霊を呼び出してほしいと依頼するが、本当に出現した子どもの霊を……。
霊魂云々より、生きている人間の業のほうが恐ろしいと思った話でした。
閑話休題

「終わりなき夜に生れつく」はミステリと言うより、ミステリ的な普通小説と言ったほうがいいのかも。
自作の有名なトリックを流用しているので、硬派のミステリ読みからは、評価が低いでしょう。
でも、これを書いたのはクリスティ77歳のとき。喜寿ですよ。
横溝正史が「病院坂の首縊りの家」を書いたのは73歳、しかもあの出来ですから。
77歳のクリスティがトリック的に自作の焼き直しだろうと、こんな情感あふれる作品を書ける、
その気概に称賛をおくりたい。大好きな作品です。

※これもポケミスがみつからなくて現行本を買いました。あれ翻訳者が違う…
あと、いくらマイナー作とはいえ、タイトルをそのまま拝借するのはどうなんですかね。
ググると日本人作家の本が出てきてしまう。

犯人あて作品なら、マープルもの「予告殺人」
殺人を予告する、というケレン味たっぷりな展開と意外な結末に本格マニアも大満足の傑作。
ポケミスでは絶版、HM文庫でも出ていなかったころに、名古屋の尾関書店で発見。
うれしかったなあ。自転車で名古屋まで行ったかいがありました。



その他大勢のサスペンスもの中からは「殺人は容易だ」。
バトル警視ものですが、こういうルーティン作品にチラホラと作家の資質が見えたりします。
クリスティは優生学を支持しているところがあるらしく、
社会に害をなすものは生存を抹消してもかまわない、というような発想をときどき見せます。
「殺人は容易だ」も、いま読むと受け入れがたい部分があります。
ですが、クリスティの無差別連続殺人ものは好きでした。
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