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チラシの裏

2つのゲイル

2009年08月22日 | SF
gale(ゲイル)、とは風の意でbreezeより強くstormより弱いものを言うそうです。学問上では秒速13.9mから28.4mの風だそうですよ。秒速14mといったらけっこう強い風みたいですね。ですが古語になると、そよ風、という意味にもなったりするのでややこしい。そしてburg(バーグ)というのは市、町のことなので、galesburg(ゲイルズバーグ)というのは、そよ風の町、ということになります。
もちろんジャック・フィニイの「ゲイルズバーグの春を愛す」の舞台となったのが、この架空の町ゲイルズバーグ。
ある夜、ゲイルズバーグに住む語り手は小さいころに見た市電が走るの目撃しました。そしてその市電がとある人物を轢きそうになった場面も。不思議なことに市電自体はすでに無くなって久しいのに。また、古くからある建物が火事になったとき、旧式の放水車がやってきて火を消した。いったい何がおきているのか。語り手はあることを思い出す…、というお話です。
ジャック・フィニイはノスタルジー一辺倒の作家だと思われがちですが、SFや冒険小説も書いていました。「盗まれた街」は怖かったなあ。
「ゲイルズバーグの春を愛す」はSF性とノスタルジーが程よくブレンドされた都市小説(文字とおりに町が主人公)です。
もうひとつのゲイルはマンガ、竹沢タカ子が描いた「ラストゲイル」という作品です。後書きを読むと、分かりやすい話を書けと編集に言われたので少女漫画雑誌向けにラブストーリーを描いてみた、みたいなことが書いてあります。なんだ~、営業用作品なんだ、とちょっとがっかりしましたが、当時の女性作家らしくない骨太の絵(うまい)と、ハードSFをちょいと絡めたラブストーリーでした。なぜゲイルなのかは…、忘れてしまいました(笑)
そうだ、「ゲイルズバーグの春を愛す」はいまも同じ表紙で早川FT文庫で現役です。表紙のイラストは孤高の漫画家、内田善美です。
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2 コメント

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内田善美さん (あのに)
2009-08-22 17:53:39
昨日偶然内田善美さんを検索していて「ゲイルズバーグの春を愛す」も見かけました。今ではこの本のように表紙絵か挿絵以外は再版も望めない方ですね。残念です。
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Unknown (spin out)
2009-08-22 21:51:55
業界とは縁を絶ってしまったとのこと(wikiより)。
クリエーターとしては、
ある意味うらやましい生き方の一つかもしれませんね。
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