臓器移植法を問い直す市民ネットワーク

「脳死」は人の死ではありません。「脳死」からの臓器摘出に反対します。臓器移植以外の医療の研究・確立を求めます。

「脳死」は死ではない!死の法に立ち向かう 新たな活動への市民討論集会(2009年10月10日)の報告

2009-11-08 16:10:28 | 集会・学習会の報告

「脳死」は死ではない!死の法に立ち向かう 新たな活動への市民討論集会(2009年10月10日)の報告

 

はじめに
 私たちはさる2009年9月16日、臓器移植法を問い直す市民ネットワークを結成しました。
 これまで、「臓器移植法改悪に反対する市民ネットワーク」として特にA案に反対してきましたが、前国会で「脳死を人の死として0歳からの臓器摘出を可能」とした改定臓器移植法が成立したことから、「脳死は人の死ではないこと、脳死からの臓器摘出に反対すること、救命を尽くし移植以外の治療法の確立を求めていくこと」の3つの立場を確認し、新たな市民活動を行うために本会を結成しました。
 10月10日に文京区民センター(東京都文京区)で開催した「『脳死』は死ではない!死の法に立ち向かう 新たな活動への市民討論集会」はそのはじめての集まりでした。
 参加者は約60人。司会はバクバクの会の大塚さん。まず、事務局長の川見から「法成立の経過と厚労省を中心とした現在の動き、市民ネットワークの立ち上げと活動方針」について話しました。
 続いて世話人を構成する団体・個人からの5分間トークのリレー。議員挨拶、会場からの意見と討論、そして最後に今後の活動予定を確認しました。
 以下は10月10日開催の市民討論集会の要約報告です。



川見提案 
 「脳死は人の死」とする説得力のある根拠が何も示されずに「脳死は人の死」と規定する法律が成立した。人間の生と死に係る法律改定なのに暴挙としか言いようがない。A案提案者が根拠としたのは「世論」(6割が脳死は人の死でよいと賛成している)と「海外」(多くの国がそうしている)だった。つまり科学的根拠はないということ。解散総選挙という政治日程の中で、採決日が決められ、そこから逆算された審議日程で、議論は深まらなかった。「脳死は人の死の基準か」をはじめ未了の課題が多く残された。
 このような過程で法が制定され、脳死の患者の生存権が守られない事態―医療の現場での命の線引き、治療の打ち切りが行われること―が懸念される。そうしたことが起こらないように、法律の再改定も視野に入れて、新たな市民ネットワークを結成し、活動を開始していく。
 厚労省は3つの作業班と小児の脳死判定基準についての研究班を立ち上げ、来年7月17日の施行に向けて大車輪で準備を進めている。「脳死を人の死としない」立場から臓器移植法を検証検討される議員とも連携して、国会の内外で活動を積み重ねていきたい。



リレートーク
 続いてネットワークを構成する各団体・個人から5分間ずつのリレートークが行われた。

*バクバクの会の会員で脳死に近いと診断された子どもとともに暮らすNさん。障害を持った子どもを授かるまでは、障害や難病、脳死について考えたことはなかったと前置きし、「人の命に線引きすること、命の重さを比べることは許せない。脳死からの臓器取り出しは意思表示できない子どもの利益にならないし殺人に近い。家族が抱いて静かに息を引き取らせてあげる以外の選択などない」と。また日本移植学会総会では「“脳死は死”は臓器移植の現場で適用されるものだが、おしなべて「脳死=死」ということで明言していただきたい」という主催者の言葉に誰も反論する人がいなかったことがとても怖いと話された。

*交通事故遺族の会のSさん「交通犯罪により病院に運ばれ、駆けつけたときは家族の頭の中は真っ白の状態。そんな時に提供の話がされる、それは二次被害以外の何者でもない。」

*医師のMさん「脳死は人の死ではないことを国民が理解する運動を作っていこう。脳死・臓器移植は他人の死を期待する医療で、ドナーの人権と死の受容について考えられておらず、問題である」

*主婦Uさん「移植が進まないことはすぐれた文化と思っていたのに、残念だ。死は愛する人々が認める厳粛な現象、国が決定するものではない。命は平等で、犠牲があってはならない」

*医療を考える会のSさん「改定法には拒否権が担保される条文はなく、非常に怖い」

*関西市民の会Mさん〈脳死判定は廃止すべき、「脳死」臓器移植に反対する運動は、象徴的な運動であり、現実には「心停止後」と称する臓器摘出も脳死移植と同じで、ヤミ脳死臓器摘出である。「脳死」小児ドナーは年間1例見込めるかどうかで、今後も「心停止後」と称する臓器摘出が中心になる。脳死臓器摘出を忌避するあまり、「心停止後の臓器提供」の推進を求めたりしないように〉と話した。

*弁護士Mさん「常識がなぜ通らないのかとずっと考えてきた。“最大多数の最大幸福”ということではないか?ナチスドイツのユダヤ人を対象にした人体実験について、ニュルンベルグ裁判で“多数の幸福のために、少数者を犠牲にする”ことを正当化する主張が行われたが、それと同じこと。12月には日弁連でもシンポジュウムを企画している」

*関西市民の会Mさん「情報の開示と透明性の確保を求めていきたい。肝炎の治療が“移植すれば助かる”と変わってきている」と指摘された。

*大本Mさん「臓器提供者は“情報不足のために生命を亡くした社会的犠牲者”と考えられる。犠牲者が救われるように祈りたい。

*反優生思想の会Kさん「臓器移植そのものに反対しなければだめ。世界中で移植用の「臓器不足」という事態になっており、そのため、新たな摘出対象の拡大が進められている。国会の中で行われた福島豊前議員の“自己を喪失したら死”や高原史郎大阪大教授の“生命とは・・・脳が正常に動いている状態”などの発言は、そうした意図を持っている」と命のきりすての拡大の動きに危惧が表明された。

 国会議員からは社民党の服部良一衆議院議員が秘書と共に出席、「大変勉強させていただきました。新人ですが皆さんと一緒に考えていきたい」と挨拶、阿部知子衆議院議員の秘書栗原さんが出席して、議員のメッセージを読み上げ、川田龍平参議院議員はメッセージを寄せられた。



討論の中で
*透析患者のWさん、前国会で全腎協の代表が腎臓移植の推進を主張したが、内部で了解が得られていない勝手な発言であること。少なからぬ透析患者は、移植まで望んでいないと話した。

*大本Sさん 衆議院議員の投票行動と改選後の当落を比較した数字を出された。日本宗教連盟は反対していていること、日本移植学会はそれを捻じ曲げていることを話された。

*仏教の考えから、移植を受けると二つの命にかかわることになり先祖供養の問題が生まれる、との指摘が中央学術研究所の方からあった。

*交通事故遺族、がん患者遺族の方は「突然の別れがあり、うつや精神病にも悩まされている。法が守らない脳死患者をどう守っていくか」が大切と発言された。

*息子が交通事故で意識不明から回復したFさん「もし今後息子と同じことが起こったら、救命が尽くされるのだろうか?と危惧される。脳死の子と共に生きる母親も世論の無言の圧力を感じて声を上げられない状態だ。最弱者として生きる人の立場から考えていきたい」

*医師Kさん「脳には体温を保つ機能があり、温かい体は脳が機能しているということ。正確な情報が足りないし、今の時代、情報をどう活用するかが大事だと考えている」

*脳死臓器移植に反対する市民会議Sさん「情報云々ではなくいまや臓器移植そのものを批判すべきと考える。自己決定を利用して脳死移植を進めようとしていると批判してきたが、アメリカの脳死移植はまさに殺人を伴う生体移植である。ドナーカードはもちろんノンドナーカードも個人的には持ちたくない。」



集会に寄せられたメッセージ
小児科医の杉本健郎医師が「難病と在宅ケア」誌に書いた「“脳死”は「死」でいいのか」および、山口研一郎脳外科医が『「いのち」から現代社会を考える』に書かれた「生体移植、脳死・臓器移植がもたらす未来」もメッセージとして、お送りいただきました。

 

以上

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