ケルベロスの基地

三本脚で立つ~思考の経路

BABYMETAL探究(「謎かけ」考)

2016-01-12 12:57:37 | babymetal
新年早々から、ひたいに汗を滲ませながら仕事をしているうちに、このブログも更新できないまま、もう今日になってしまった。
The One の登録開始日まであとわずか、15日になれば、映像盤などの予約も始まるだろう(希望的観測!)し、ぽっかりと空いた”ベビメタ・ロス”が少しは癒されるのではないか、と思っている。
(それにしても、12月にあんな素晴らしいライヴを行ったばかりなのに、ファンから”ロス”なんて言われる(責められる?)とは、ベビメタ側からは、こいつら何て欲どおしいんだ!って言いたくなるだろうな)

そんななか、あることが、ふと脳裏をよぎったのだった。

ああ、『新春キツネ祭り』の「CMIYC」のイントロ、神バンドソロ回しでの、大神様のソロの締めのフレーズは、”あれ”だったのか!、と。

いやあ、本当にお恥ずかしいが、事実なのだ。
これまでにこのライヴのこの箇所を、映像盤でもライヴ音盤でも繰り返し繰り返し耳にしながら「どこかで聴いたことがあるなあ」と思いつつ、「ええと…、有名なヘヴィメタル、ハードロックの楽曲の一部だったはずだけど…何だったっけ?」などと勝手に思い込んでいたせいか、”あれ”であることに全く思い至らなかったのだ。

『巨大天下一メタル武道会』での、「ハッピー・バースデイ」や、ワールド・ツアーでの各国の国歌など、<TPO>をふまえた大神様のソロから言えば、この『新春キツネ祭り』でのソロは、”あれ”であって当然だった(だから、会場の皆さんは、難なくというかごくごく自然に、理解・体感できたでしょうね)のに、約一年後の2016年の新春になってようやく気づくとは、何ともまあ間抜けな話で、本当に恥ずかしい。

まあこれは、僕の単なる不明でしかないのだが、BABYMETALにはこのような「謎かけ」や「伏線」が数多く仕掛けられていて謎が解けた時、伏線が回収されるのに遭遇したとき、「ああ、あれはこのことだったのか!」「そこまで考えていたのか!」とハッとするというか、場合によってはゾッと鳥肌が立つこともしばしばある。

BABYMETALの、ただでさえどこをとっても最高のパフォーマンスが、「謎かけ」や「伏線→回収」というドラマチックなストーリーのうえに乗って僕たちのリアルな日々の時間とシンクロしながら展開される
なおかつ、とんでもない「成長」「成熟」、「サクセスストーリー」、時には「口惜しい挫折」をも共体験できる。

こんな凄まじいエンタテイメントは、(僕の、気がつけば半世紀にもなる人生のなかでは)なかったし、今後もないだろう。あるはずがない。
おそらく、これは、僕たちオッサンファンすべてに共通する感慨だろう。


ただし、そうした「伏線の回収」や「謎とき」が、いつでもあらかじめ計算されているのかと言えば、そうでもないはずだ。
打ち上げた花火のうちのいくつかを、なりゆき上、あるいは、偶然、できそうであれば回収する、「前にあんなこと言っちゃったから、ここは、こっちにしておこうか」と意志決定する、などということも、けっこう多かったのではないか。

思わせぶりに煽ったものの、結局、雲散霧消してしまった宣言も多いだろうし。(その代表が「解散」を思わせる数々の文句だ。まあ、これらは、X(JAPAN)や聖飢魔Ⅱからの、引用・オマージュ、すなわち「様式美」でもあったのだろうが。)

しかし、皮肉なことに、この”いつでも伏線がきれいに回収されるわけではない”ということが、逆に、伏線が回収された時の、きれいに謎が解かれた瞬間の、意外性となって働いているように思うのだ。(荒れ球ピッチャーだからこそズバッと決まったときにはとても打てない、のようなものだ)。
逆に言えば、「とんでもないどんでん返しがある」と評判になったミステリーを読んで、その評判の「とんでもないどんでん返し」に出逢ったとき、それはもはや「とんでもないどんでん返し」ではなく(大げさに言えば)予想通り・予定調和になりさがってしまうのだ、という逆説。その真逆である。

BABYMETALの場合は、「ああ、様式美的な大言壮語の設定ね、はいはい」と油断してしまうからこそ、「ああ、あれはこのことだったのか!」「そこまで考えていたのか!」という、決まった時の衝撃が大きいのだ。

最近で言えば、(僕は直接体験してはいないが)何といっても、横アリ1日目のオープニングでの「The One」の降臨、だ。
その伏線は、もちろん、6月の幕張メッセ『巨大天下一メタル武道会』の、あのラストシーンだ。(これが「伏線」であるとは、回収されてはじめてわかることなのだが)

3姫が光のピラミッドへと昇って行き、SU-METALのプログレ調のスキャット「ららら」が流れていた、あの、何とも謎めいた、余韻たっぷりのラストシーンから、約半年が経ち、国内ツアーファイナルの横アリ・ライヴの1日目の、そのファースト・シーンへとつながる。
この伏線と回収(さらに、これは横アリ2日目の、あの”宙を駆ける少女たち”へとつながるのだが)のドラマは、とんでもなく衝撃的・感動的である

その場にいたら、僕も号泣していた。絶対に。

これは、疑いようもなく、構成され計算された演出だ。
幕張のラストの紙芝居で、横アリ2daysが発表されていたのだし、なおかつ、この曲が「The One」という名を負うていることからも、(どこまで細部が詳細に詰められていたのかは別にして)これは今年の国内ライヴ全体の機軸の仕掛けであったはずだ。

そう、今になって考えてみれば(というか、6月時点でも)、6月の『巨大天下一メタル武道会』の物販での「MAGIC CIRCLE PYRAMID」は、実に不可解なグッズだった。
WOWOW放映の映像で観ればステージが三角形だとわかるけれど、僕を含め、2万5千人の観客のほとんどは、3姫が三角形のステージで歌い・踊っているなんて、わからなかったのだから(ですよね?)。
しかし、横アリ2Daysまで終わると、なるほど、と首肯できる(このグッズは僕は全く欲しいとは思わないが)。

そもそも、「Trilogy」とは何だったのか?

この「謎解き」の、標準的な「正解」は、SSA、幕張メッセ、横アリ、を頂点とする三角形のことで、その(ほぼ)中心に、東京ドームがある、ということだ。
(公式には発表されてはいないが、極めて論理的整合性が高く、したがって標準的「正解」というべき「解」だ)。
早いうちから、この「正解」を披露する書き込みを目にしたこともあるが、すばらしい慧眼であると感心しきりである。
で、さらに、その後目にしたネットでの書き込みには、上の「Trilogy」が、単に公演のロケーションだけでなく、頭文字(イニシャル)が、S、M、Y(順序がやや不整合だが)であり、東京ドームは別名<BIG EGG>だから、B(BABYMETALの頭文字)である、というのを見て、(やや苦しいかなあ、とも思いつつ)「おお!」と驚嘆したのである。

しかし、これは、前述した「The One」の伏線→回収ほどには、計算されたものではないように、僕は感じる。
だって、『新春キツネ祭り』の時には、まだ「Trilogy」なんて単語はまったく出てきていなかったのだから(たしか、そう、ですよね?)。
まったくの憶測で、何の証拠もないが、横浜アリーナという会場は、BABYMETALのライヴ2daysの翌々日の火曜日からポルノグラフィティのライヴ2daysがあったことからも、このへんの日程がいわば「アミューズ枠」としてはあらかじめ確保されてはいたもののの、12月12日・13日を、BABYMETALの2daysライヴに充てるという、いわば<経営判断>は、『新春キツネ祭り』以降になされたものだ、と考えるべきだろう。

つまり、上記の「Trilogy」の伏線→回収は、後からこじつけた、という要素が多分にあるのだと思う。

しかし、いずれにせよ、こうしたいわば「謎かけ→謎解き」「伏線→回収」というストーリーが、BABYMETALの活動にはふんだんに盛り込まれ、<意味のふくらみ>として働いている
ステージの超絶的なクオリティに、さらに、そうした「物語」の起伏までもがある。
こんな、連続的な「ストーリー」を(仕掛けとして)体現するバンドやユニットがいる(いた)だろうか?
少なくとも僕には、全く心あたりがない。ていうか、いないでしょ、こんな面白いユニットは
やはり、空前絶後なのだ、この点においてもBABYMETALは。


過去の映像を観ても、ステージのパフォーマンス以外に、そうした「謎かけ→謎解き」にぞっとさせられることがある。

例えば、(これももちろん皆さまご承知のように)『赤い夜』の、(いつ見ても号泣必至の)「ヘドバンギャー!」~「イジメ、ダメ、ゼッタイ」が終った後の、紙芝居で、このような文言が紹介される。

LEGEND”巨大コルセット祭り”、またの名を、天下一メタル武道会ファイナル

メタルマスターより与えられし数々の過酷な試練を乗り越え
遂にBABYMETALは天下一メタル武道会で勝利し
(1)
ホントのメタルを手に入れた

ホントのメタルは鋼鉄魂(メタルボール)へと姿を変え
まるで龍(ドラゴン)が昇天するかの如く音速のスピードで駆け上がり
(2)
天空を紅に染めた

メタルレジスタンスの最終章へ向け
カウントダウンは始まった


この後、翌日の『黒い夜』の予告があるから、上記の文言も、盛り上げるための修辞、壮大な煽り文句、という風にも見える。

まさか、(1)が、この『赤い夜』での事件を指しているはずはないから、(1)は一般的な様々な活動・ライヴパフォーマンス等を指していたはずだが、ライヴの涙のラストを観てからこの文言に触れると、まるでキツネ様=METAL GODは、この「事件」までもBABYMETALに試練として与えたのかのように思えてしまう

そして、(2)は、もちろん「Road of Resistance」のことだが、ライヴ当日のこの段階でそのことに気づいている人はいるはずがない。(それとも、「ドラゴンフォースとのコラボによる、ガチ・メタルの音速チューンが降臨するのだ!と見抜いた慧眼の主がいたのだろうか?)

そして、そうしたことの数々から敷衍して、
僕は、今年の東京ドームのライヴには、ある「謎かけ→謎解き」が仕掛けられているのではないか、と思っている。
横アリ2日目の、ラストで披露され、会場全体が歓喜・鳥肌・感涙ではじけた、あの紙芝居の文言に、その伏線が張られている。

2016年のワールドツアーは、ここ日本で最終公演・史上最大のメタルレジスタンスを行う
選ばれし者・THE ONEが大集結し、奇跡を起こす時が来たのだ


と、ここまでは、結果的に発表された<東京ドームでのライヴ>の単なる前振りに見える。問題はこの後である。

歴史は繰り返される。あの日あの時あの場所で運命の時計の針は動き出したのだ。

と、ここで映る絵を見て、横アリでの僕は、「えっ、また武道館?」と驚いたのであった。
つまり、ここに映される会場の絵は、今まで見てきた紙芝居(LEGEND Z)での武道館の絵姿と同じなのである。

迫り来るDOOMSDAY・運命の日はもう誰にも止めることはできない。

で、「東京ドーム」という文字が映る。

2016年”運命の日―DOOMSDAY―”
ついに世界はひとつ―THE ONE―になる


と続くのだが、
この紙芝居から、単に、東京ドームという過去最大の会場でのライヴの告知、だけを情報として受け取るのは不十分だと思うのだ。

それならば「史上最大のメタルレジスタンスを行う」だけでよいのであって、その後の、「選ばれし者・THE ONEが大集結し、奇跡を起こす時が来たのだ」とは単なる煽り文句ということになる。
(あ、もちろん、解散があるはずはない。だいいち、紙芝居の文句にも全く合わないし)

a.選ばれし者・THE ONEが大集結し、奇跡を起こす時が来たのだ
 +
b.歴史は繰り返される。あの日あの時あの場所で運命の時計の針は動き出したのだ。
 +
c.武道館を思わせる絵
 ↓


ここから導き出される「謎解き」の解は、すばり
超巨大コルセット祭り
である。

そう、cは、武道館ではなく、コルセットの絵なのだ。
『赤い夜』はコルセット祭りであり、そしてb「運命の時計の針は動き出した」のがそれであることは、去年6月の幕張ライヴの冒頭でも明言されていた。
単に5万人(?)が観客として集まっただけではa「奇跡」とはいえまい。しかし、その5万人の老若男女がすべてコルセットを着用して、一糸乱れず「合いの手」を挙げ、シンガロングし、モッシュシュやWODをしていたら、その壮観はまさに「奇跡」と言うべきものではないか。
(さらに言えば、黒ミサ、赤ミサのドレスコードも課されていたら、なおさら「奇跡」になるはずだとわくわくするが、さすがにそこまではやらないだろうし、その「伏線」は見当たらない)


もちろん、妄想です。
ありえない。
でも…、ありえないことを次々と実現してきたBABYMETAL、「道なき道」を切り開いてきたBABYMETALの東京ドーム公演は、単なる5万人動員のライヴ、だけでは終わらないような気が、より強くするのです。

「謎かけ→謎解き」「伏線→回収」の荒れ球、果たして、今回はどっちに行くのか。
いずれにせよ楽しみです。