インターネット報道掲載分
障害者の小規模授産施設って、どんなとこ?
市民とともに歩む作業所づくり
10周年記念誌
撮影者:下川悦治
10年前のことです。作業所の場所を提供してくれるところはないかと探し回り、福岡市城南区の平屋をやっとの思いで借りることができました。開設の前の年(1995年)に「精神保健福祉法」が制定され、てんかん症状を持つ精神障害者を含め、精神障害者の福祉がスタートしたばかりのころです。てんかん患者の作業所づくりは全国的にも少なく、役所が“どこを窓口にするか”、それとも“受け入れないか”で混乱するという時代でした。そうした経緯を含めて、10年目の課題を整理した記念誌をこのほど発行しました。
そうして10年をなんとか乗り越え、現在、福岡市に小規模授産施設2カ所、生活支援センター1カ所、そして北九州市に小規模授産施設1カ所を運営しています。
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――給料と誇れるようになりたいが――
ここ数年努力しているのが、給料に相当する「工賃」増加です。開設当初は時給60円。今は100円になりましたが、一ケタ世間とは違います。働く時間も6時間程度なので、ひと月働いても、給料は1万円から2万円程度。大学生協の支援で食堂の清掃を請け負ったりして、少しでも補おうとしますが、額はなかなか伸びません。
点字名刺づくり(上)、ケーキ(下)
撮影者:のぞみ作業所、さざなみ作業所
――市民参加の運営をめざして 「団塊世代」のボランティアに期待――
今、私たちは難題に直面しています。借りている民家の老朽化と都市計画道路の整備で、移転しなければならない状況にあります。また、障害者自立支援法による事業の移行などで利用者減も予測されます。低賃金で職員の確保もままなりません。
このような環境でどうしてよいのか……と論議してきました。作業所の後援会があり、運営資金の不足などを補ってもらっています。さらに、応援だけではなく、「団塊世代」などの退職者などに運営への参加をしてもらいたいと、後援会を「市民団体」に切り替えました。運営と仕事の見直しを進めていくためでもあります。
後援会を市民団体に切り替えた理由は、ひとつに「障害者の問題は社会全体の課題」だという思いがあります。これは、私どもの理念のひとつで「関係者だけが苦労していくだけではおかしいのではないか」という問いがあります。
そしてもうひとつは、職員のほとんどが福祉の勉強はしていますが、事業をしていくことにはうといのです。経験豊富な退職者、職人さんに参加してもらい、仕事を確立し、給料と呼べるものが得られるようにしたいと願っています。ボランティアでもいいし、少ないですが謝金を払うことも考えています。
人里はなれたところの施設でなく、狭くても、街中で働く施設づくりをしてきましたが、曲がり角にさしかかっています。思いだけは一杯ですが、現実ではなかなか一歩を進むのに時間がかかります。これから、真価が問われるのだと思っています。
下川悦治
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