サービス利用計画で厚生労働省に要望 きょうされん
「抜本的な見直しを――利用者に直結するサービスを大切に
きょうされんでは、7月31日に「居住支援ならびにサービス利用計画の策定に関する要望書(以下、 要望書)をもって、厚生労働省の関係担当者と話し合いを持ちました。
要望書の内容は、次頁より掲載 しますので内容を見ていただきたいと思います。ここでは、今年度中にやらなければならないとされ ているサービス等利用計画につい ての厚労省とのやりとりをお伝え したいと思います。
きょうされん一
今年度中にすべての障害福祉サービス利用者が計画相談を受けなければならいとされていますが、各地の進捗状況は、地域間の格差があって政令指定都 市を中心に進んでいない状況があります。また、進んでいるところも数をこなしていくような相談支 援になり、本来の利用者に寄り添った相談支援ができていない現状と聞いています。また、計画相談の報酬が低すぎ、加えて人材も不足しています。厚労省として、この状況をどういう認識しているのかをお聞きしたい。
厚労省一
進んでいない自治体もあることは認識しています。ただ、 進んでいるところもあります。計 画相談については、平成22年にいわゆる「つなぎ法」によって義務付け、平成24年4月から平成27年3月までに策定することとしまし たが、進んでいるところについては、自立支援協議会を中心に平成 23年からしっかりと準備をすすめ ています。策定のスピードについ ては、だんだんと早くなってきて おり、数をこなすにつれ、計画の 質も向上していると考えています。 厚労省としては、「サービス等 利用計画の必要作成数と作成人員 数からみて、2015年3月まで に終わらせるには、あとどれくらい相談支援専門員が必要なのかを把握したい。そうでないと都道府県がどのくらい相談支援専門員の養成研修をしなくてはならないか計画が立てられない」と市町村に指示をだしています。
また、現在のサービス等利用計画の全国作成率が30%なので、各相談支援事業所がしっかりと作成を進めて、あと残り7割ができれば現行報酬で十分と考えています。
きょうされん一
サービス等利用計 画ができないとサービスが受けら れないのではないかという当事者
の声もあります。計画相談が間に合わない場合の対策は検討されて いますか。
厚労省一
計画がなければ支給決定 やサービスが受けられないような 事は考えていません。また、サー ビス等利用計画の策定期間の延長 は考えていません。2015年3 月までに完遂という方針はかわり ません。 計画を立てて終わりではないので、3月までに立て切って、モニ
タリングをすすめていきたい。計画はあくまでもスタートであり、モニタリングが必要。まずスタートを切ることが重要と考えています。
居住支援ならびにサービス利用計画の策定に関する要望書
きょうされん
理事長 西村 直
居住支援部会長 古賀 知夫
相談・支援部会部会長 池山 美代子
平素より、障害福祉の向上にご尽力いただいておりますことに心よりお礼申し上げます。
さて、本年1月に障害者の権利に関する条約(以下、権利条約)が批准され、2月より効力をもつようになりました。権利条約は、「他の者との平等」という文章が35回登場し、第19条には、すべての障害のある人が「地域社会で生活する平等の権利を有する」とされました。その具体化には、選択できうるだけの居住の場の確保と地域での生活を支える仕組みや体制が必要となります。とりわけどんなに障害が重くても希望する地域生活を保障していくことは、きわめて重要なこととなります。
今年度は、障害福祉サービスの報酬単価の見直しが検討されています。報酬単価は、支援体制の質・
量を規定するもので、障害のある人の地域生活のありかたに直結します。求められるべき地域生活の質は「他の者との平等」にあります。この観点にたち、2015年度報酬改定にあたっては、以下の点を検討していただきたく要望します。
記
Ⅰ.グループホームに関して
今年4月、「夜間支援体制等加算」などの改定が行なわれましたが、加算の改定だけでは、基本的に人材確保に苦しむグループホームの運営改善にはつながらず、地域生活を支援するグループホームの実態は厳しいままです。
「個」の生活を大切にしながら、より家庭に近い規模として小規模の形態での運営を安定させ、障害の重い人や支援がたくさん必要な人が安心して暮らせるグループホームへと改善される報酬体系となることを強く要望します。
1.グループホームで生活するすべての障害のある人の地域生活を充実させるために、また入所施設や精神科病院等からの地域移行をさらにすすめていくために、正規職員の配置や深夜も含めて支援する職員の確保ができるよう、基本報酬単価の大幅な増額を行うこと。安心・安定した居住の場の確保のために、毎日日替わりで選択するものではなく、原則月額払いとすること。さらに小規模の形態のグループホームが安定して運営できる報酬体系とすること。
2.障害の重い人への支援では、日々の支援だけでなく、休日や夜間・深夜も複数職員の手厚い支援を必要とするために、夜間支援体制加算、日中支援加算、重度者支援加算などを抜本的に拡充し、大幅に増額を行うこと。
3.あらゆる生活場面において、障害のある人自身の自己決定を支える仕組みとして、パーソナルアシスタンス制度を創設すること。
Ⅱ.居宅支援に関して
現在、居宅支援は「地域間格差が激しい」「ヘルパー不足」「障害の重い人の地域生活を支える居宅支援事業所が少ない」等様々な問題を抱えています。そして、圧倒的に家族介護で支えられている障害のある人の生活実態を改善していくには、居宅支援の抜本的な見直しが不可欠です。
多くの問題を解決し、居宅支援を支えるヘルパーの専門性および雇用、支援の継続性の確保のためには、現状のきわめて低い水準にある報酬体系の改善がどうしても必要です。
1. 重度訪問介護の充実を図ること。
ア.重度訪問介護の対象者を障害の内容や程度で限定せずに「日常に長時間の常時介護が必要な」すべての障害のある人を対象とすること。
イ.利用範囲を限定すべきではなく、通勤、通学、入院、1日の範囲を越える外出、運転介助にも利用できるようにし、制度利用等の支援、見守りも含めた利用者の精神的安定のための配慮も利用基準の範囲とすること。
ウ.時間あたりの報酬単価がきわめて低いため、抜本的な改善を行うこと。
2. すべての地域で必要とされる支援を受けることができ、継続的に専門性の高いヘルパーが安定して働くことができるよう基本報酬単価を大幅に増額すること。また国庫補助の上限額設定のために、必要な支援量が限定されないようにすること。
Ⅲ.相談支援に関して
いわゆる「計画相談」は「障がい者制度改革推進本部等における検討結果を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律」により、2015年3月までにすべての障害福祉サービス利用者を対象に策定することとされています。
しかしながら、第3期障害福祉計画で設定された見込量(目標値)自体が、障害福祉サービス利用者の実数と見合っていないばかりか、同計画で設定された見込量(目標値)に対する到達は、現時点においても大きな格差が生じており、制度は矛盾と破たんを来しているのが現状です。この時期にこそ英断をもって行政判断いただきたく、抜本的な見直しを以下のように要望します。
1.現行のサービス等利用計画の作成については、地域ごとの格差があることや数をこなすことが求められる等、一人ひとりにあった計画の策定とはなっていない。ついては、現行のサービス等利用計画の策定過程や体制、報酬の在り方等について、当事者・家族・関係者の声を聞き、抜本的に見直しを行うこと。
2.「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(「骨格提言」)で述べている、身近な地域で障害のある人自身に寄り添ったより総合的な相談機能が保障されるよう、地域間格差のない施策として相談支援ができる事業所を増やすこと。
3.計画相談事業所の設置(指定)の推進にあたっては、介護保険制度を前提とはしないこと。