障害者自立支援法で人手不足が進行
歩けるのに車いす使用に
下川 悦治
2006-10-19 14:56
10月6日の国会、衆議院予算委員会で民主党の枝野幸男議員が障害者自立支援法の利用料負担(1割)について質問した。安倍総理大臣、柳沢厚生労働大臣共に、負担については軽減措置をとっているので問題ないと答弁。負担額はどうなるかというと、例えば施設利用者の負担が1万5000円であれば、事業費総額は月額15万円ということになり、施設に払われる報酬もその一部となる。
しかし多くの施設では、作業に従事した報酬としての工賃は5000円から1万円程度が多い。利用負担とのバランスを考えると障害者本人の負担額が収入を上回ることになる。利用者は、施設利用日数により負担額が増減するので利用を減らしている人が増えている。
施設自体に払われる報酬も事業費総額が抑制されたため大きく減ってきている。施設の種別や利用実数にもよるが10~40%の収入減となっているようである。ある通所授産施設では昨年8800万円ほどあったのが約3000万円減額となった。さらに、先ほど述べたように、利用者の負担額も利用日数で増減するので、利用回数を減らす人も増えてきている。そうなると施設の報酬も低くなる。今までは月額で補助があったが、どれだけ利用日数があるか分からないだけに、休日を減らしている施設もある。急激な収入減で、人員削減・人件費削減で人手不足が深刻化している。授産施設利用者の負担問題も大きいが、職員側もきわめて厳しい状態に直面している。以下にまとめたことは施設職員が語る現場の問題点である。
■人手不足で見守りする余裕がなくなった。てんかんの人で歩けるのに、(これまでのような介護ができず)車いすを使うようになってしまった。それでも、てんかんという手がかかる人を受け止めているだけでも良いという意見が出るほどである。(複数施設)
■知的障害者通所更生施設Aのケース。マンツーマン対応しなければならない人に施設利用を止めてもらった。
■知的障害者通所授産施設BAのケース。賃金を常勤職員1%、非常勤職員が5%カットした。
■共同作業所Cのケース。国からの補助金がない無認可施設。職員の求人を出しても来る人がいない。それは、待遇の悪さからであり、障害者自立支援法対象事業(法内事業)に移行したなら職員が来るかもしれないので移行する。しかし、今は利用料がないが、移行すれば発生する可能性が高い。
■小規模授産施設Dのケース。すでに当初は1100万円の補助金だったが今年度1000万円に減額された。障害者自立支援法の事業に移行しなければならないが、利用者数などから移行したら職員を半減しないと赤字になる。
■知的障害者通所更生施設Eのケース。土曜日休みをなくして、開所日数を増やす。その理由は、実際に来た人数で報酬が支払われるので、単価が下がったのを取り戻すために、通所日数を増やしている。同じ理由で、旅行やレクリエーションを取りやめるところもある。
■無認可の作業所で、将来の事業展望が開けないと閉鎖したところもある。(複数施設)
■利用者の実数で報酬が支払われるので、体調が悪かったりして休まれると減収になるということで、今までの定員より多く利用者を確保するために、利用者の争奪という面も出ている。職員は減っているので、事故等の不安が強い。(複数施設)
もともとここ数年、障害者施設も高齢者施設も非常勤職員の割合が増えている。この傾向には引き続く補助金削減が原因として挙げられる。契約職員が急増するなど待遇の悪化で、退職する人も多い。その上に今年度の収入減で、障害者施設の職員が減っている。「やりがい」はあっても、疲労は蓄積している。施設の現場も介護疲れによるうつ病が増えていると指摘されている。
2005年度福岡市内精神障害者作業所の実態調査(福岡市精神保健福祉協議会)では、給与が150万円以下の職員が8割を超えている。非常勤職員が多いからでもあるが、これでは職員は集まらない。障害者自立支援法で、さらに人手不足は深刻になっている。1割負担をやめた場合の財政負担は300億円から400億円程度とみなされている。今年の政党助成金が317億円強ということなので、それに近い金額である。
利用者だけでなく、施設の運営にも打撃を与えている障害者自立支援法。これが成立したのが昨年の10月31日である。今年の10月31日に、日本障害者協議会などは日比谷公園で「出直してよ!『障害者自立支援法』10.31大フォーラム」を開催する。
歩けるのに車いす使用に
下川 悦治
2006-10-19 14:56
10月6日の国会、衆議院予算委員会で民主党の枝野幸男議員が障害者自立支援法の利用料負担(1割)について質問した。安倍総理大臣、柳沢厚生労働大臣共に、負担については軽減措置をとっているので問題ないと答弁。負担額はどうなるかというと、例えば施設利用者の負担が1万5000円であれば、事業費総額は月額15万円ということになり、施設に払われる報酬もその一部となる。
しかし多くの施設では、作業に従事した報酬としての工賃は5000円から1万円程度が多い。利用負担とのバランスを考えると障害者本人の負担額が収入を上回ることになる。利用者は、施設利用日数により負担額が増減するので利用を減らしている人が増えている。
施設自体に払われる報酬も事業費総額が抑制されたため大きく減ってきている。施設の種別や利用実数にもよるが10~40%の収入減となっているようである。ある通所授産施設では昨年8800万円ほどあったのが約3000万円減額となった。さらに、先ほど述べたように、利用者の負担額も利用日数で増減するので、利用回数を減らす人も増えてきている。そうなると施設の報酬も低くなる。今までは月額で補助があったが、どれだけ利用日数があるか分からないだけに、休日を減らしている施設もある。急激な収入減で、人員削減・人件費削減で人手不足が深刻化している。授産施設利用者の負担問題も大きいが、職員側もきわめて厳しい状態に直面している。以下にまとめたことは施設職員が語る現場の問題点である。
■人手不足で見守りする余裕がなくなった。てんかんの人で歩けるのに、(これまでのような介護ができず)車いすを使うようになってしまった。それでも、てんかんという手がかかる人を受け止めているだけでも良いという意見が出るほどである。(複数施設)
■知的障害者通所更生施設Aのケース。マンツーマン対応しなければならない人に施設利用を止めてもらった。
■知的障害者通所授産施設BAのケース。賃金を常勤職員1%、非常勤職員が5%カットした。
■共同作業所Cのケース。国からの補助金がない無認可施設。職員の求人を出しても来る人がいない。それは、待遇の悪さからであり、障害者自立支援法対象事業(法内事業)に移行したなら職員が来るかもしれないので移行する。しかし、今は利用料がないが、移行すれば発生する可能性が高い。
■小規模授産施設Dのケース。すでに当初は1100万円の補助金だったが今年度1000万円に減額された。障害者自立支援法の事業に移行しなければならないが、利用者数などから移行したら職員を半減しないと赤字になる。
■知的障害者通所更生施設Eのケース。土曜日休みをなくして、開所日数を増やす。その理由は、実際に来た人数で報酬が支払われるので、単価が下がったのを取り戻すために、通所日数を増やしている。同じ理由で、旅行やレクリエーションを取りやめるところもある。
■無認可の作業所で、将来の事業展望が開けないと閉鎖したところもある。(複数施設)
■利用者の実数で報酬が支払われるので、体調が悪かったりして休まれると減収になるということで、今までの定員より多く利用者を確保するために、利用者の争奪という面も出ている。職員は減っているので、事故等の不安が強い。(複数施設)
もともとここ数年、障害者施設も高齢者施設も非常勤職員の割合が増えている。この傾向には引き続く補助金削減が原因として挙げられる。契約職員が急増するなど待遇の悪化で、退職する人も多い。その上に今年度の収入減で、障害者施設の職員が減っている。「やりがい」はあっても、疲労は蓄積している。施設の現場も介護疲れによるうつ病が増えていると指摘されている。
2005年度福岡市内精神障害者作業所の実態調査(福岡市精神保健福祉協議会)では、給与が150万円以下の職員が8割を超えている。非常勤職員が多いからでもあるが、これでは職員は集まらない。障害者自立支援法で、さらに人手不足は深刻になっている。1割負担をやめた場合の財政負担は300億円から400億円程度とみなされている。今年の政党助成金が317億円強ということなので、それに近い金額である。
利用者だけでなく、施設の運営にも打撃を与えている障害者自立支援法。これが成立したのが昨年の10月31日である。今年の10月31日に、日本障害者協議会などは日比谷公園で「出直してよ!『障害者自立支援法』10.31大フォーラム」を開催する。