何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

ガーデン・パーティー 園遊会

2016-04-27 23:20:22 | 
「園遊会」と訳されることも多い、キャサリン・マンスフィールド「 The Garden Party」
今手元にある「マンスフィールド短編集」(翻訳・西崎薫)では、「ガーデン・パーティー」として収録されているが、あいにくの天気のなかでの今日のガーデン・パーティーに、この短編を思い出した。

美しい描写で知られるマンスフィールドは園遊会当日の天気を、こう記している。
『そして、結局のところ、天気は理想的だった。天気に命令することができたとしても、その日よりガーデン・パーティーに向いている日というのは期待できなかったに違いない。風はなく、暖かく、空には雲がなかった。空の蒼さをわずかに和らげているのは、夏の早い頃の空に時々見られるような、淡い金色の靄だけだった。』

園遊会にお誂え向きな天気のもと、園遊会の準備を取り仕切ることを初めて任された主人公のローラは朝から張り切っていた。
階級社会の理不尽に少し胸を痛めてはいるものの、気のいい職人たちとテントやバンドマンの配置を相談したり、会場を飾る花を運び込む花屋に対応したり、サンドイッチとシュークリームの確認のため料理人と話し込んだり・・・・・。
ローラは屋敷内を駆け回り、生き生きと準備をしているが、そこに、これから起こる出来事を暗示するかのようなジョージ―の歌声が響いてくる。
『人生は厭わしきもの 希望は死にかわる 夢 ― 目覚め』

そして、いよいよ万端整ったと思われた時、屋敷の前の通りで死亡事故があったという一報が入るのだ。

ローラは「表門のすぐそばに死んだ人がいるのに、ガーデン・パーティーなんてできるわけないわ」「バンドの演奏がかわいそうな奥さんの耳にどう響くか考えると・・・」とパーティー中止を訴えるが、ジョージーは「誰かが事故にあう度に、あなたがバンドの演奏を止めるつもりだとしたら、堅苦しい人生を送ることになるわね。私も事故のことはあなたと同じくらい気の毒に思ってる、同情するわ」「でも酒浸りの職人を感傷のちからで、生き返らせることはできないのよ」と、パーティー中止に反対する。
「あたしたち、ものすごく薄情じゃない?」と中止を訴えるローラに対し、姉妹の母は(中止することは)とてつもなくバカなことだと言う。
『ああいう人たちは、私達が犠牲的なことをするのを、期待していないのよ。あなたが今やっているような、皆の愉しみをダメにするようなことは、思いやりのある行動とはちょっと言えないわね』

実際のところ、今まさにパーティーが開かれようとしている段階でそれを中止することは難しく、パーティーが行われてしまえば少し前に感じた躊躇いなど消え去り、ローリーは思うのだ。
『ああ、幸福な人達のあいだにいるというのはなんて幸福なのだろう。手を握りあうのは、頬を寄せあうのは、眼を見て笑いあうのは』 と。

無事にパーティーが終わり母と姉妹が楽しい余韻に浸っているとき、父が「恐ろしい事故だった。亡くなった男は結婚もして半ダースほどの子供もいた」と言ったため、気詰まりな沈黙が落ちる。
そこで母が、残り物のサンドイッチを詰めたバスケットをつくり、あの階級の人が見たこともないユリと一緒に届けましょう、と言い出す。
それが到底良い考えだとは思えないローラはそれに抗うが、結局バスケットを届けるはめになってしまう。

だが、ローラは遺体の夢をみているような眠る顔に驚く。
『これはあるべき状態そのものだ』と語っているようでさえある『とても健やかな眠り、とても深い眠り』にある遺体の顔と、その周りで泣いている人々を見たローラは、日常と隣り合わせにある「死」とその意味を悟るのだ。


迎えに来た兄ローリーに、ローラが投げかける「生きることって―」の言葉の先にあるものは、読者それぞれが考えていかねばならない。
She took his arm, she pressed up against him.
"I say, you're not crying, are you?" asked her brother.
Laura shook her head. She was.
Laurie put his arm round her shoulder. "Don't cry," he said in his warm, loving voice. "Was it awful?"
"No," sobbed Laura. "It was simply marvellous. But Laurie―"
She stopped, she looked at her brother.
"Isn't life," she stammered, "isn't life―" But what life was she couldn't explain.
No matter. He quite understood.
"Isn't it, darling?" said Laurie.

「生きることって」「生きることってー」
私には、まだ、分からない。

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