何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

博覧強記の香り

2015-05-25 00:03:16 | ひとりごと
「土曜は雨」の予報が、いつの間にか「土曜の夜から日曜が雨」に変わり、結局日曜日も一滴も降らなかった。
巷で「よそうはうそよ」と諦めムードが漂っているのをいいことに、真面目に観測をしていないのではないかと、腹立たしい。
猫の額の家庭菜園でも水やりには気を遣うのに、大規模農家にとって天気予報が外れるのは一種の業務妨害ではないだろうか。
そんなことを考えながらボケッと生活の締めくくり、懸案のものを求めて園芸店と本屋に足を運んだ。

博覧強記の香り
ハーブというのは強いもので、紫蘇もレモンバームも多少香りは落ちるものの毎年どこかから生えてくる。
紫蘇はあらゆる料理に重宝するが、レモンバームは突然来客があったとき活躍する。常備のバニラアイスにレモンバームをあしらい自家製ブルベリージャムを乗せれば、話しのタネにも茶菓にもなるので、何とかと体裁を整えるのに役立つのだ。

今迷っているのはバジル。
バジルの香りが好きで以前は植えていたが、煮る焼く蒸すの単純料理が基本の我が家ではあまり出番がないので、ここ数年は植えずじまいでいたところ、去年絶品のジェノベーゼを頂いたので、迷っている。
庭のバジルで作られたというそのジェノベーゼの美味しさを思い出せば、すわ挑戦といきたいが、絶品ジェノベーゼを調理した人の日頃の博覧強記ぶりからすれば、只者ではない技ありの品のはずで、到底自分には真似ができそうにもない。
バジルバジルと迷って検索していると、こんなニュースを見付けた。

<弥生時代にバジル伝来、纒向遺跡 花粉を発見>共同通信2015/05/22 05:22 より一部引用
邪馬台国の有力候補地・奈良県桜井市の纒向遺跡で22日までに、日本で自生しないバジルの花粉が見つかり、分析した奈良教育大の金原正明教授(環境考古学)らが論文発表した。弥生時代に中国から持ち込まれたとみられ、金原教授は「遺跡が大陸との交流の拠点だった事を裏付ける発見」としている。
バジルはインドや東南アジアなどが原産。見つかった花粉は、国内最古のバジルの存在を裏付けるという。



中国から持ち込まれたとみられるバジルが卑弥呼の時代の遺跡から発見されたことを邪馬台国畿内説派は歓迎しているらしいが、これで思い出したのは、邪馬台国九州説を採る作品。
「日御子」(帚木蓬生)
帚木蓬生氏、東大仏文科を卒業後、テレビ局勤務を経て、九州大学医学部で再度学ぶ。
精神科医をしながら執筆活動をする作家らしく医療系の作品も多いが、重厚な歴史ものも多く、12・3世紀のフランスの宗教迫害を書いた「聖灰の暗号」や、第二次世界大戦下ドイツの日本大使館に派遣された武官から見たドイツとヒットラーを描いた「総統の防具」の圧倒的な読み応えを覚えている者からすると、インパクトの弱い作品の感は否めない。
「日御子」という題名だが卑弥呼が主人公ではなく、卑弥呼時代を含む200年ほどの間、後漢・晋との使譯(通訳)を務めたアズミ一族9代の話である。
本を読みながら、あちこち思いが飛ぶのは私の悪い癖だが、アズミと聞いて思い出すのが、安曇野にある穂高神社。
海がない県の神社にもかかわらず海神をお祀りする安曇野の穂高神社の御舟祭りは勇壮だ。
安曇野という地名は、海運に従事した北九州の安曇族が造船に適した木材を供給するため彼の地の定住したことから名づけられたと何かで読んだ記憶があるが、「日御子」ではアズミ族は使譯。もっとも、海運業の交易先は中国であり、使譯として訳していたのも当時の中国語であれば、海運業で得た言語能力を日本に定住したアズミ族が活かしたと考えれば筋は通り、そのような説が紹介されていたような記憶もある。
図書館で借りて読んだので記憶が曖昧な部分も多いが、読書備忘録に記した言葉は、大切にしている。

アズミ族が代々守り伝えていた教え
1つ、人を裏切らない
2つ、人を恨まず、戦いを挑まない
3つ、良い習慣は才能を超える
ここに日御子の巫女頭となったアズミ一族の女の教えが加わる
4つ、仕事と仕事の間に骨休めがある

田んぼに張られた水に映る北アルプスが美しい今頃の安曇野を思い出すと、牧歌的な彼の地には今なおアズミ族の教えが受け継がれているのではないかと思う。

ところで邪馬台国となると、畿内説やら九州説やら熱心な信者が現れる。
歴史資料館で展示物の間違いを指摘し学芸員を唸らせたほどの歴史学者でもあられる皇太子様が自説を語られるのは、小6にして「御堂関白記」についての考察をされるほどの敬宮様とのお話しの中だけだろうか。
敬宮様の歴史の勉強は皇太子様がみておられるという。
学びを通じて大切なものが受け継がれていくと信じている。

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