長谷川櫂選
しみじみと福島忍田植唄 福島県伊達市 佐藤茂
六月の初通勤となり自立 十日町市 平野晶子
一句目、原発事故で避難したままなのでしょうか、懐かしく思う田植唄、しみじみという言葉に思いの深さを感じました。二句目、今回のコロナ禍で、学校も仕事も強制休みとなり、新入社員もずっと出勤できないままだったのが、ようやく初出勤。大変だったと思います。これからがんばってくださいね、新社会人!応援しています。多分、この句はお母さんがお子さんのことを詠んだのではないかしら。
大串章選
宙に浮く地球と気づく夏の月 東京都 青木千禾子
夏蝶の三頭の密楽しさう 三鷹市 宮野隆一郎
一句目、夏の月から、地球が宙に浮いているとの逆転の発想がすごく素敵です。もしかして、青木千禾子さんは、あの「ちっちとサリー」のみつはしちかこさんでは?二句目、蝶は楽しそうに一緒に飛び回っているのに、人間はまだだめなんだよなあ、という気持ち、わかります。夜の蝶の世界には、まだ会いに行くのは心配かもですね。
高山れおな選
色徐徐に吐息の如く紫陽花に 東京都 竹内宗一郎
「父の日よ」と妻に言はれてそれつきり 堺市 奥村英忠
一句目、紫陽花が徐々に色を変えていく様子を吐息と言ったのが素敵です。毎日観察していたのでしょう。二句目、なんだかとってもかわいそう。奥さん、何もプレゼントしなかったんだ~。切なさがにじみでていますね。
稲畑汀子選
木洩日の影より生まれ黒揚羽 芦屋市 笹尾清一路
コロナ禍の風評恐れ梅雨籠 泉大津市 多田羅初美
一句目、黒揚羽が木洩日の影から生まれたという表現が、いいですねえ。私は今年、生れてはじめて黒蝶を見ました。その神秘的な姿に感動したので、取りました。二句目、日に日に、感染者が増えているのが怖いですよね。コロナ禍はまだまだ続いています。なかなか籠城から抜けられません。どうすりゃいいの?最近、稲畑先生もコロナ禍の俳句を選ぶことが多くなりましたね。