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タクソンの定義

2010年07月05日 00時36分54秒 | 生命生物生活哲学
2010年7月5日-1
タクソンの定義

 10年ほど前から積ん読状態だった本でtaxonの定義を昨日見て、びっくりした。

International Commision of Zoologcial Nomenclature. 1999. International Code of Zoologcial Nomenclature. The International Trust for Zoologcial Nomenclature / The Natural History Museum. [B19991105]

動物命名法国際審議会.(日本学術会議動物科学研究連絡委員会 日本語版監修,野田泰一・西川輝昭 日本語版編集 2000.10)国際動物命名規約 第4版 日本語版.日本動物分類学関連学会連合.[y3000, B20001113]

 規約条文中にタクソンの定義は無い。Glosarryにある。

  「taxon, (_pl_. taxa), n. A taxonomic unit, whether named or not: i.e. a population, or group of populations of organism which are usually inferred to be phylogenetically related and which have characters in common which differentiate the unit (e.g. a geographic population, a genus, a family, an order) an order from other such unit.」(p.118)

 分類学的単位というところで止めておけばよいところを、不要なことを書き連ねている。タクソンは、生物個体または個体群とは別個のものである。生物体は、或るタクソンに属するだけであって、どのような生物体を取り出しても、たとえば今現在存在する人をすべて指したところで、それが_Homo sapiens_というタクソンに等しくなるわけではない。あくまで、生物体とタクソンは、生物体は或るタクソンに属する、あるいは、或るタクソンの属員はしかじかの生物体であるという属員関係であって、(狭義の)部分全体関係ではない(Mahner & Bunge 1997を見よ)。

 英語は正文であるが、フランス語も(そして日本語も)正文である。フランス語での語彙集Glossaireでの、タクソンの定義は、

  「taxon, (_pl_. taxons ou taxa), s.m. Une unite' taxinomique, qu'elle ait ou non un nom, p. ex. une population ou un groupe de populations d' organismes, souvent ......」(p.254)

 p. ex.は、たとえばということらしい。『つまり』と『たとえば』では大違いだと思うが。どちらも、個体群を引き合いにしている。タクソンの実例とは、_Homo_とか_Homo sapiens_であって、これらは名称としては(タクソンを指示するので)タクソン名と呼ばれる。決して生物体や個体群を指すのではない。これまでに生きていた(そして死んだ)人、現在生きている人、そして未来に生まれるかもしれない人を全部集めても(むろん一部であっても)、それが_Homo sapiens_になるわけではない。
 国際動物命名規約は、どんどん非論理的になってるようだ。