絵画(たち)の英語訳として pictures を、わたしは使っている。「絵画」は、paintings の訳語であることが多い。線描絵画 drawing pictures も絵画にうちに入れれば、両者を含む語として、絵画 pictures を使うのが良い。
May I take a picture ? でのpictureは、カメラなどを使った「写真」である。写真という訳語は意訳である。技術から言えば、光を使った graph であり、photography 光写術、光書術、または光図術によって作成した絵画である。絵画は、「写真」よりも前に出現しているのだから、「写真」(=光書または光図または光画)をpicture の訳語に専用とする所以は無い。
さて、日本語は漢字仮名交じり文である。絵、画、図、そして書は、互いにどう違うのだろうか?。
たとえば、漫画である。漫絵とも漫図とも言わない。『鳥獣戯画』である。「画」は、画するという意味がある。何かを画する場合、図示するならば、一本の線を引くのが手っ取り早い。
『鳥獣戯画』と、『北斎漫画』が展開し、その描き方を継承する今日の漫画の本質は、本質的には輪郭線とその内部を面塗り painting 、または塗り絵 painting することによって個体を画面に存在させることである。放射状の多数個体の線たちによる表現も、この本質が適用される。
いわさきちひろ さんの画も、ほぼ漫画的技法の延長とも取れる。とどのつまり、鉛筆で輪郭線を描いて(多少食み出しても)面塗りする水彩画(アクリル画も油彩画)も、漫画である。漫画と水彩絵画を分けるとすれば、描き方以外の、漫画に特徴的な吹き出しとかの表現方法とかで違いを見つけるしかない。
高階秀爾『ニッポン現代アート』の??頁に、「絵」という字は、糸が
さて、ホックニーとゲイフォードによる『絵画の歴史』の原書題名は「A History of Pictures」である。
ところが、「画像(たち)」の英語も picturesである。
そして、pictures が画像という訳語が当てられたり、painting に絵画が当てられたりする。
目次のいくつかの章の英語と日本語訳を、下記に並べる。(英語目次は電網上にあったもので、原書は見ていない。また、章立てがずれていたりする。日本語訳書での「7 ルネサンス:自然主義と理想主義」が見当たらない。
訳書の4頁目の「 A History of Pictures (c) 2016 Thames & Hudson, London(as in Proprietor's edition)」の、(as in Proprietor's edition)の意味がわからない。Proprietorは持ち主の意味なので、また単数形なので、もしかしてホックニーかゲイフォードのどちらかが持っていた原稿からの訳なのかもしれない。そして、出版時の原稿での章立てが変更されたのかもしれない。)
1. Pictures, Art and History
序章 画像、美術、そして歴史
2. Pictures and Reality
1 画像と現実
3. Making Marks
2 徴[しるし]をつける
4. Shadows
3 影とごまかし
5. Picturing Space and Time
4 時間と空間を描く
6. Brunelleschi’s Window and Alberti’s Mirror
7. Mirrors and Reflections
6 鏡と映像
7 ルネサンス:自然主義と理想主義
8. Paper, Paint and Multiplying Pictures
8 紙、絵具、複製される画像
9. Painting the Stage and Staging Paintings
10. Caravaggio and the Academy of the Lynx-Eyed
11. Vermeer and Rembrandt: the Hand, the Lens and the Heart
12. Truth and Beauty in the Age of Reason
13. The Camera Before and After 1839
14. Photography, Truth and Painting
14 写真、真実、そして絵画
15. Painting with and without Photograph
15 写真を使う絵画、使わない絵画
16. Snapshots and Moving Pictures
16 スナップショットと動く映像
18. The Unending History of Pictures
18 終わりのない画像の歴史
本の題名である「A History of Pictures」を、日本語訳では「絵画の歴史」としているが、最終章の「History of Pictures」は、「画像の歴史」としている。意味としては、絵画の歴史についての本ではなくて、画像の歴史についての本のようだ。題名としては、『絵画の歴史』とした方が売れるでしょうが。
日本語として、「絵画」と「画像」は区別しなければ、議論が混乱するに違いない。
ここでの現実とは、物質界的生活である。物質界に意識の焦点がある、つまり「覚醒」意識のときの世界での生活である。それは、「日常生活 dailey life 」とと言われるが、わたしたちの24時間のうち、およそ8時間前後は睡眠の時間である。
夢を見ているときの逆説睡眠中の五感の意識の焦点は、アストラル界または情緒界 astral plane or emotional plane にある。夢見の無い深い睡眠中の五感の意識の焦点は、心界 mental plane にある。
デイヴィッド ホックニー & マーティン ゲイフォード.2016[木下哲夫 訳 20170301].絵画の歴史 洞窟壁画からiPadまで.〔0+〕360頁.青幻舎インターナショナル[発行]/青幻舎[発売].[本体5,500円+税][中720.2]
[David Hockney & Martin Gayford. A History of Pictures: From the Cave to the Computer Screen. ]