検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

町長、自宅に課長を呼ぶ 連載小説96

2012年09月06日 | 第2部-小説
  「大平さんはこの話、わたし以外から聞かされたことはある?」と松本はきいた。
「だれからもないよ。お前からだけだ」
「本当に」
「本当だよ」
「そうか」
「お前、おかしいぞ」
「いや、おれが早とちりしたようだ。この話はお前もどこからか耳にして、そして帰ってきたのだと」
「何も聞いてないぞ」
「いや、お前がおれに電話してきて、町の議会だよりや広報など欲しいといったものだからてっきり」
「何いっているんだ。おれは会社の上司だった人が中山間地の振興を勉強したいといっているから、そのための資料として用意してくれないかと頼んだのだ」
「確かにそうだ。それをおれは早とちりした」
「おれが町長選に出るのを承知したと思ったのか」
「そうだ」

 将太は公平と松本のやりとりを聞いていて、話が混乱していると思った。その混乱にどうも自分も巻き込まれたことに気づいた。そしてうかつにも公平に決断を促す説得までしてしまったのを知ると汗がにじむ思いをした。しかし公平を町長に押し上げることでは一致している。摩訶不思議なことだと思った。
 いずれにしても公平に町長出馬を要請する話はしかるべきところで話し合われていたことは間違いなかった。松本は秘密裏にすすめていたことが自分の知らないところから公平に伝わったと思ったようだ。
「この話はかなり前からすすんでいたわけですか」と今度は、将太が松本にたずねた。
「1カ月ほど前だった。町長がわたしを自宅に呼んだ」