ニュースの中のJW

WEB上のニュースや新聞などで扱われたエホバの証人のニュースを取り上げます。シリアスな話題から笑えるニュースまで。

子供に対する輸血が必要な時・・・カナダでの取り組み

2013-01-20 07:00:45 | 医療系
エホバの証人が無輸血手術の普及に大きく貢献してきてことには疑問の余地がありません。多くの病院では無輸血手術が標準的な術式になり、患者を感染症から守ることや血液という資源を有効に活用すること、また病院側のコスト削減にも貢献して来ました。その一方で、大きな事故による出血やある種の病気などのため、輸血しなければ死に直結するケースも引き続き存在しています。

判断能力のある成人が自分の意思で輸血を拒否する時、その意思は最大限に尊重されます。では、判断能力がない、もしくは不十分とされる子供が輸血を必要とする場合はどうでしょうか。

現在、親が子供に輸血を望まなかった場合でも、病院側のガイドラインに基づき、あるいは裁判所の介入によってほぼ強制的に輸血がなされます。しかし、それには時間がかかる場合があり、また後から別の問題が生じてくる可能性もあるでしょう。

カナダではHLC(医療機関連絡委員会)の関与のもと、いくつかの病院で「了解の書面」(LETTER OF UNDERSTANDING)という書式が作られ、それが効果を挙げているというニュースが掲載されました。その書式には、「医師団はエホバの証人が輸血を望まないことを理解しており、出来る限り輸血を必要としない治療を行いますが、命に関わる緊急の場合には法に従った治療を行ない、それには輸血も含まれます」と書かれており、親は、そのことに対して同意ではなく、理解したという意味でサインをするようになっています。

以下、カナダ・ナショナルポスト紙の記事をご覧下さい。


■ファンファーレは鳴らないが、エホバの証人は静かに輸血に関する立場を緩める
ナショナル・ポスト 2012/12/20
 

何年にも渡り、輸血は神の意思に反するというエホバの証人が固く守る信条は、病院が病気の子供に輸血するかどうかを巡って親と衝突し、感情的に激しい公の議論をもたらしてきた。

しかしながら、問題に対する両者の取り組みはまさに変化しており、この法的に混乱した対決状態は消え去ろうとしているようだ、と医療関係者たちは述べている。

エホバの証人が血を取り入れることを禁じていることは変わりないが、いくつかの大きな小児病院は、多くの証人たちが、時として医者は輸血をしなければならないと感じる可能性があることを認める書面にサインをしており、親たちの協会の見解とは違った考えを公に認めはじめている。

医療機関が、親の信仰により敬意を払い、輸血を行なわないよう多くの努力をするならば、しばしば証人たちは輸血を容易にするために児童福祉当局に関わることを避け、カナダの法律が明確に医者寄りの立場であることを受け入れるようだ、と病院の関係者は述べる。

「治療上必要な時には、我々は輸血をするということを彼らは知っています。彼らは裁判の戦いで負けて来ています。彼らはそれを理解しています」とオンタリオ州ハミルトンにあるマクマスター小児病院の生物倫理学者アンドレア・フロリックは述べた。

「彼らにとって、育児放棄や児童虐待などしていないのに児童福祉機関に関わるのは一種の屈辱といえます。まあ一部には、「もう、やってしまって下さい。どうしてCAS(カナダの児童相談所)に関係する必要があるのでしょうか。まるで自分たちが悪い親のように感じてしまいます」というところもあったでしょう」

フロリックは、カナダ生物倫理協会の会議で 彼女の病院の2才児への方針について、今年初めに講演をした。いくつかの別の小児病院も同様の取り組みに従っているという。

それらの病院には、トロントのシック・キッズ(世界最先端の小児医療を行なっている病院の一つ)とモントリオール小児病院(100年以上の歴史を持つ)が含まれている。

輸血の方針に対して長い法廷闘争を行なった元エホバの証人である、カルガリーのローレンス・ヒューズにとって、この明らかな変化は、証人たちが法的な戦いに疲れているサインであり、そうした法廷闘争は成員たちに受けが悪く、彼らに負担をかけるものである。

彼は、自分の10代の娘ベサニーがガンの治療をしている時、証人たちが娘に輸血をしないようにさせたことで、証人たちと、また残りの家族との交流を絶った。

彼によると、転換点は2007年に訪れたようだ。バンクーバーの病院で児童福祉官が、エホバの証人の夫婦に生まれた6つ子のうちの何人を確保し、それゆえに医者は子供たちに輸血をすることが出来た。ものみの塔協会は裁判を起こして争ったが敗訴した。そしてこれは広く人々の知るところとなった。

「私はそれからだと思います。彼らは訴訟を起こすことがもう出来なくなりました」とヒューズは語る。「私は、以前に私の会衆にいた人から連絡をもらうことがあります。彼らもこのことのために、会衆を去っていたのです」

オンタリオ州ジョージタウンにあるものみの塔協会の広報マーク・ルージは、各家族のとる行動まで説明は出来ないが、(世界中に支部を持つ)協会としては輸血禁止を公式に変更はしていないと述べた。

多くの輸血のケースを扱ってきたエホバの証人の弁護士の一人であるデビッド・ナムは、協会の輸血に関する方針に対しての公式の変更はないとしながらも、ある病院は患者がサインする書面を持っていることを知っていると語った。

「私はエホバの証人の患者を代表してケースに関わって来ましたが、ある一定の合意に達することが、時としてすべての関係者にとって最善の益となってきました。しかしそれは、個々の患者、医師、病院との間においてのみです」

証拠が示しているように、裁判官によって審議されるケースが著しく減少している。カナダでの裁判所の決定を掲載しているウェブサイトによると、2000年から2007年までは9件の個別の裁判所による輸血の指示が出たが、2008年から20012年の5年間にはわずか3件の指示があったに過ぎない。

輸血に合意すると永遠の滅びに至るという証人たちの信条は、1945年に採用された。追随者たちに血を避けることを要求するいくつかの聖句から取られている。

論争が起きるのは、決定をすることが出来ない年齢の子供たちに代わって、両親が輸血を拒む場合である。過去のおいて病院は、児童福祉相談所に連絡するというのが典型的な対応法だった。児童福祉相談所は裁判所に一時的な親権の委託命令を願い出て、輸血が施行されることが出来た。

病院の生物倫理学者レベッカ・ブルーニは、「トロントのシック・キッズでは今、エホバの証人が反対を唱えたときにはあらゆる方法を使って、輸血に変わる可能な代替療法を探します」と述べた。
同時に彼らは、親たちに「了解の書面」(letter of understanding)というものにサインすることを求めている。協会のHLC(医療機関連絡委員会)のメンバーの一人の助けの下に、書面の原案が作成された。その書面には、病院側は彼らの宗教上の反対を理解しており、可能なすべての場合において輸血を避ける努力をすると書かれている。その手紙は同意書ではない。しかし、子供に重大な障害や死の切迫した危険がある場合、医療チームは輸血の処置をとるだろう場合もあると付け加えられている。

「この書面の素晴らしいところは、敬意と尊厳を具体的に表現しているところであり、また私たちが輸血が必要な時に、児童相談機関に連絡しなくても良いところです。それは事態を混乱させ、醜いものにしてしまいます」

マクマスター小児病院は、「潜在的に永続する結果が生じる場合」、輸血をすることはトラウマとなることを認めて、同様の了解の書面を持っているとフロリックは述べた。

モントリオールにあるマクギル小児病院でも同様の要綱を約10年に渡持っており、トラブルになるケースが劇的に減ったと病院の医学倫理学者のロリー・セラーは述べている。

すべての倫理学者たちは、「エホバの証人のある人たちは輸血の禁止に同意しているわけではない。しかし、輸血に対する彼らの考えが秘密に保たれるかをとても気にしている」と、強調している。

ある家族たちは、自分たちが輸血に同意したことを、他のエホバの証人が見つけ出したりはしないかということを何よりも気にしていると、セラー氏は語った。

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このニュースで興味深いのは、協会のHLC自らが、「了解の書面」の原案作成に関わっていた、と書かれていることです。あるサイトによりますと、その書面は以下のようなものです。この書類は少なくとも2007年から使用されているようですが、ほとんど公にはなっていません。


SICK KIDSで使用される「LETTER OF UNDERSTANDING」のサンプル

こうした書面は本当に協会により認められているのかという疑問が生じますが、「生命倫理に関するアメリカン・ジャーナル誌」2012年11月号によると、ある証人の両親が医療上必要な輸血に同意することを拒否した時、協会によって任命された地元のHLCのメンバーたちが、児童保護機関によって一時的に親権を取り上げられることを避けるため、こうした了解の書面の一つにサインするように薦めたケースがあるとのことです。

やがて日本でも、こうした書面が標準的なものとなる時が来るかも知れません

一方ニュージーランドでは、2012年の7月、エホバの証人の両親を持つ2才の女の子に対する、輸血の強制執行命令が出されました。女の子は、非常にまれな先天的な病気のために腎臓と脾臓を摘出しており、腎臓と肝臓の移植をしなければ、感染症のために数週から数ヶ月のうちに死ぬだろうと言われました。両親は輸血に反対しましたが、彼女は裁判所の保護下に6ヶ月間置かれることになり、輸血を用いた臓器移植手術が行なわれました。

エホバの証人のニュージーランド支部委員モンティ・ガワは、ニュージーランド・ヘラルド紙のインタビューに対して「この女の子が輸血を受けたとしても、彼女は引き続き心から愛する家族の一員です。私たちの彼女に対する態度は決して変わりません」と述べて、だれも排斥されたりしないことを認めています。
The New Zealand Herald 2012/7/17

ジョージタウン大学病院の無輸血治療プログラム 2

2012-04-21 21:56:52 | 医療系
2011年5月、エホバの証人の医療機関連絡委員会(HLC)のメンバーに対して、ジョージタウン大学病院から様々なレクチャーが行われました。

新しく始まった無輸血治療プログラムについて、その内容に大きく関わってきたエホバの証人のHLCを招いて説明を行っています。

前回、2月に書いた記事では医学部副学部長スティーブン・エバンスからの包括的なレクチャーを取り上げました。

→ ジョージタウン大学病院の無輸血治療プログラム 1

その後、メディカル・ディレクターのマーク・ザワイドスキーからの話があり、それを記事にする予定でしたが、より面白いと感じた3人目の話し手である、ナース・コーディネーターのリチャード・バーストレイトを今回の記事にしたいと思います。最初物語風にしようと思ったのですが、時間がなかったので彼の話をそのままスクリプトにしました。ちょっと長いですが、内容は興味深いものです。

ナース・コーディネータは、患者の入院前後のマネージメントや、患者さんや家族とのコミュニケーション、手術日程の調整など、手術前後の重要なプロセスを担当します。リチャードの話は大変面白く、聴衆を引き付けるもので、高いコミュニケーション能力が伺えました。

■時間を巡る旅

リチャードはこの講演を「時間を巡る旅」と名付けました。アメリカでどのように無輸血医療が進化してきたのかを話します。(リンク先のビデオは18のシーンごとに分けられているので、その通りの順序で翻訳しておきます)→ そのビデオのページYoutube版

1.時間を巡る旅

前の講演者はこのプログラムの詳細を話しましたが、私は少し違う方向から話をしたいと思います。このプレゼンテーションを私は「時間を巡る旅」と名付けます。無輸血治療がこの国でどのように進化してきたのかをお話いたします。

2.タイムカプセル

では、タイムカプセルを開けてみましょう。無輸血治療プログラムについて、過去に何が起こったのか、現在何が起きているのか、そして将来には何があるのでしょうか。


3.最初に無輸血で手術を行った医師

HLCがジョージタウン病院にやって来て麻酔科で講演を行った時、マイク・ランドオフが私の前に立って聖書から始めました。

「誰が一番最初の麻酔科医か分かりますか?」と彼は言いました。
「マイク、ぜんぜん分からないよ」と私は言いました。
(聴衆から笑いが起こる)
「それは神ですよ」と彼は言いました。
「ああ・・・そうですね・・・。」と私は思いました。

それで、私がこの無輸血治療プログラムを組み立てている時に、このように考えました。

「だれが、最初の無輸血手術を行った外科医だろうか?」

(聴衆に話しかける)
それが誰か分かる方いますか? 
誰でも良いです。
いや、これはまあ、私がやりましょう

それで、私は「それは一体誰だろう」と考えていました。
一体それが誰なのか見つけたいと思い、図書館に行きました。

そして、それが誰かついに見つけました。
そして、これがその人です。


(会場笑いの渦)

ちょっと、この彼のことを考えてみてください。

いままで、マッコイ・ボーンズ医師が「スタートレック」の話の中で、血液を使って手術をしているシーンを見たことがありますか?いいえ、一度もありません。すべての手術は無輸血で行われました。それで、私たちは、彼に最初に無輸血手術を行った人物という名誉を与えたいと思います。

4.無輸血治療プログラムの発展

では、無輸血治療プログラムの発展について話を進めていきましょう。

アメリカで無輸血治療のプログラムが始まったのはいつでしょうか?
皆さん、いつだと思われますか?

(聴衆を見回す)
1987年と行ったのは誰です? 
誰か言いましたね。
あなたには賞がありますよ。ただで手術を受けられます。
(会場大笑い)
アベンス医師からのね。
彼はこの話の後であなたに証明書を作ってあげます。

(話戻る)
最初の無輸血治療のプログラムは1987年、シカゴにあるOur Lady of the Resurrection Medical Centerで創設されました。その後、1990年代の終わりまでに52のプログラムが全米にありました。さて現在、いったいいくつの無輸血プログラムが存在しているでしょうか。

(客席ざわつく。誰かが数字を言う)
皆さんは答えを何でも知っているんですね・・・。
そうです、約200ものプログラムが全米で存在しています。
なんと多くのプログラムが存在しているのでしょう。

ここ(ワシントンDC)は、無輸血治療プログラムを持つことになる最後の大都市圏であり、私たちジョージタウン・ホスピタルでそれが行われるのは非常に素晴らしいことです。

5.発展と実施

これは私の家のネコ、シューリオですが、彼が、私がここでナース・コーディネーターの仕事を得たことを聞いた時、「おめでとう」と言って手をたたいてくれた時の写真です。


(会場大笑い)

それで、私はこのプログラムでナース・コーディネーターの仕事が出来ることに胸を躍らせています。

私は、輸血保存に情熱を持っています。私がホスピタルセンターにいた時ですが、心臓の冠動脈バイパス手術を受けるエホバの証人の患者を受け持っていました。私は、この患者をどのように扱ったら良いのか全く分かりませんでした。

「一体何が出来るだろうか」と考えました。

血を全く与えない・・・。
OK、でも他には何が出来るだろうか?

その時、無輸血治療プログラムはそこにはありませんでした。

それで、私がそのプログラムを作りました。
興味深いことに、私が夜勤の時がありました。
その翌朝、神の偉大な業が行われました。自宅に戻ってベットに入ろうとしたところ、エホバの証人が家にやってきました。彼らは家のドアをノックしました。

(会場大笑い)

「どなたですか」と聞きましたら、「私たちはエホバの証人です」と答えました。

「どうぞ入ってください!!!」(と大声で言いました)

私はあんなに喜んだ顔をこれまで見たことがありません。

(会場大笑い)

こういう訳で、私はエホバの証人(彼はウィットネス・コミュニティーという言葉を使っている)と関係を持つようになっていきました。

私はこう言いました。

「あなたの宗教がどうして輸血を受け入れないのか教えて下さい」

彼らはすべて教えてくれ、キャン・ピックニーと連絡を取れるようにしますと言ってくれました。
キャンを知って6年程になりますが、彼はその間、いろいろな情報の源となってくれました。

しかし、私が、このプログラムを開発して来ました。
私は、ホスピタル・センターの外科医たちに言いました。

そのホスピタルセンターの心臓外科医たちは多くのエホバの証人の手術を経験していました。彼らは、証人のために、非常によいプログラムを持っていました。

血液保存プログラムを持つのはどうでしょうかねと言いました。
そして、彼らすべての前で話しをしました。
そして、私が最初に彼らの前で話をした最初のナースとなりました。
私たちは血液保存プログラムが必要だといったのです。

それから、私がこれを発展させました。
プロフュージョンのチーフと私のメディカル・ドクター、ルイスと一緒に向こうで発展させました。

私たちは病院の手術のやり方を変えました。
証人たちに対してするようなやり方に変えたのです。
すべての人に対して手術のやり方を変えました。

それで、私はここに今いることに大変わくわくしています。


6. 3つの重要な出来事

私は、歴史の中で3つの主要な出来事を取り上げてみました。無輸血治療に関してこれらの出来事はどれほどのインパクトを与えてきたのでしょうか。

最初のものは、JWがホスピタル・インフォメーション・サービスを発足させたということです。

すごいことです。彼らがやってきて、医療界に対して、
「私たちはドクターを探しています。だれが私たちと働いてくださいますか?」と言いました。
「だれが、私たちの宗教的信条に対して共に働いてくれますか?」 と言ってきたのです。
それで、「私がそれをやりたい」といいました。
すごいことでした。

次の点は、デントン・クーリー医師です。
皆さんのほとんどは知らないかもしれませんが、彼は最初に無輸血心臓手術を発展させた人です。彼はテキサスにいました。彼は、無輸血の外科手術を発展させる最前線にいました。

そして、もちろんエイズの流行です。

この3つについてもう少し解説してみたいと思います。
無輸血治療の発足に関係したいくつかの歴史的な出来事をお話いたします。

8. ホスピタル・インフォメーション・サービス

明らかなことですが、HISは最初、輸血の代替医療について、医師たちを教育することに力を注いでいました。
外科医たちは、そのような方向では考えていませんでした。

「エホバの証人の治療のための研究に基づいた臨床的な戦略の発展」という小さな冊子は大きな助けとなりました。

それは私たちの部署の助けとなりました。それは素晴らしいことでした。
しっかりと研究に基づいており、私たちの手術のやり方を変えました。

いまや、無輸血治療プログラムというのは、アメリカ全土で標準的な治療方法となりつつあります。

9.コーリー博士の研究

彼は1967年に、エホバの証人と複雑な冠動脈大動脈バイパスに関する研究成果を発表しました。
心臓外科手術、これは、数ある手術の中で最も血液の損失が起こる手術です。

その後、1977年、彼は本を出版しましたが、そこには500件以上の証人に対して彼が行なった手術のことが書かれていました。

彼は、まったく違いがないことを発見しました。
輸血を受け入れなかった証人たちが、より死亡するということはありませんでした。
コーリー医師は、証人たちへの治療において、より細心の注意を払ったのです。

その時代、もしあなたが心臓外科医に行ったなら、この国のほとんどの外科医はこういったでしょう。
「あなたが血液を受け入れない限り、手術は行いません」

しかし、彼は手術をしたのです。
彼は本当に手術に対する考えを変える最前線にいました。
「はい、私たちはそれが出来ます。その手術をあなたたちにやってあげることが出来ます」と言いました。

10.エイズの流行

そして、最後の点はもちろん、エイズの流行です。

エイズの前には、この国中の人々の意識のようなものでしたが、血液は命を救うとみなされていました。
エイズの流行によって、人々はそれが常に真実ではないかも知れないと思うようになりました。

それは私たちの考え方を変えましたし、人々はそれを恐れるようになりました。

その流行がまさに起こっている時に、私はテキサスの病院で働いていました。
その時、私たちのうちの1人の麻酔科医がエイズで亡くなったことを知りました。
彼は、5000件もの手術を受け持っていました。
病院は5000人すべての患者に連絡を取り、「病院に来て下さい。エイズの検査をします」と言いました。
私は血液を使用した人々の検査を手伝っていましたが、人々は本当に恐がっていました。

人々は私に聞いてきました。
「私は死ぬのでしょうか」

私にもわかりません。
私たちもとても恐ろしかったのです。
それはエイズのためでした。

何が起こったでしょうか。
献血が減少しました。
今、私たちは献血が引き続き減っている一方で血液の使用量は上がり続けています。供給が減っているのに、需要は増えています。

これでは、うまく行くはずがありません。

11 それから

ドクターコーリーは、リスクの高い心臓外科手術を成功させるという挑戦を受け入れ、証人たちに手術を行いました。
1980年代までにはゆっくりと、血液マネージメント治療が発展していきました。さらなる手術の選択肢、が証人の社会で利用できるようになってきたのです。
しかし、まだはっきりとした無輸血治療プログラムがこの国には存在していませんでした。

12 今-その結果

無輸血治療は医療行為へと変わってしていきました。
今、ほとんどの主要な外科手術は無輸血で行うことが出来ます。
心臓手術、整形外科、婦人器官、肝臓手術や臓器移植すら可能です。
現在でも挑戦となっているのは血液腫瘍の分野ですが、多くの調査がなされており、ある分野では無輸血で手術が行われています。

13.益

どんな益があるでしょうか。

ここで皆さんに知っていただきたいのは、エホバの証人が、私たちの理解を深めるために大変多くの助けとなってきたということです。
医療文献の中で大きなインパクトを与えてきました。

証人たちが我々に与えてきたいくつかの益はのひとつは、輸血マネージメント治療が発展したということです。



それは、毎日の外科手術のなかで標準的なものとなりました。
この戦略は大変大きな益を与えています。
病院がそれに対する理解を持つことによって、輸血の量が激減しました。
毎回の輸血で、$1,000ものコストが病院側に発生します。
もし、毎月1,000件の輸血を行えば、それは大変な額になります。
病院は、膨大な額を支払っているのです。

14.医療文献に対する証人たちの貢献

それで、無輸血治療の発展を含むエホバの証人の貢献により、高度の貧血に体が耐えられることについてよく理解出来るようになりました。
それは非常に興味深いことです。
私は、非常に低いヘモグロビンで体がどのように反応するのかということにとても関心があります。

証人たちのために、無輸血治療プラグラムを徐々に私たちは採用していった訳です。
私たちは患者の権利の問題についても理解を深めました。

15.感謝

皆さんが医療界の一部として大きな貢献をしてきたことに感謝を述べたいと思います。

16 未来

無輸血治療は、世界中で急速に標準的な医療行為となりつつあります。
患者の血液マネージメントは標準的な治療ともなるでしょう。
無輸血治療と手術プログラムは拡大していくでしょう。
ジョージタウン大学病院のプログラムは、皆さんのためにあります。


17. 新たな旅が始まる

今日、私たちは新たな旅行を始めました。
皆さんが、これに参加してくれることを期待しています。

ハイ・ファイブをもらっていいでしょうか!



※ ホスピタル・インフォメーション・サービス(HIS)については、1996年の年鑑22-23Pに詳しく載せられています。
※ 医療機関連絡委員会(HLC)については1993年の目ざめよ誌11月22日号24P-27Pに書かれています。

ジョージタウン大学病院の無輸血治療プログラム 1

2012-02-16 20:19:13 | 医療系
ジョージタウン大学はアメリカの首都、ワシントンDCにある大学で、クリントン大統領も卒業している歴史ある名門校です。そのジョージタウン大学病院が無輸血手術に非常に意欲的に取り組んでおり、無輸血手術の特別なプログラムが作成されました。

アメリカのエホバの証人のHLC(医療機関連絡委員会)は、無輸血手術の手法・運用・メリットを説明するために病院を訪問し、賛同を得られた病院と協力してプログラムを練り上げていくという手法をとっているようです。今回の記事では、ジョージタウン大学がなぜ無輸血手術プログラムを受け入れ、どのように運用しているのかをジョージタウン大学のウェブサイトから見てみると共に、HLCの関係者を集めてレクチャーを行っているビデオも日本語に訳しながら紹介します。

今日の医療界では、無輸血手術というのは間違いなく最先端医療のひとつであり、今後発展していく技術の分野であるということを感じました。証人たちの信条について賛否両論があったとしても、病院側にはこの医療技術に挑戦する十分な理由と利益があるに違いありません。

■ジョージタウン大学の無輸血手術への取り組み



HLCへの無輸血手術のレクチャービデオ

このビデオは、2011年5月に行われた医学部副学部長スティーブン・エバンスの無輸血手術についてのレクチャーです。
ジョージタウン大学に来たエホバの証人の医療機関連絡委員会(HLC)のメンバーに対して話しをしています。

9つのセクションに分かれていますが、まとめて訳します。

S : まず、新しい無輸血手術プログラムについて聞くためにジョージタウン大学まで来てくれた事を感謝します。この講演ではプログラムの説明と担当医師を紹介します。これまで、無輸血手術プログラムが、どこかの国の首都で行われたことは、今まで決してありませんでした。しかし、今はそうではありません。約1年半前に、エホバの証人のメンバーが病院を訪問し、無輸血手術とそれを発展させるアイディアを持って来ました。多くの話し合いが持たれた結果、私たちは、ジョージタウンにとってそれが最適なプログラムであると結論しました。

-ここで、右側に BMSP Objectives というスライドが出ます。BMSPとは「無輸血医療及び手術のプログラム」の略ですが、その「プログラムの目的」がスライドに表示されています)

-スティーブンは続けます

 このプログラムは無輸血手術を望む人たちのために作られました。主に証人たち、そしてその先にはもっと多くの人たちが利用するでしょう。このプログラムに関わる人たちへの教育、啓蒙活動、血液や血液製剤の使用を減らし、または無くすことで患者の生活向上と安全を高めることを目的とします。

 今日、ここにはHLCのメンバーたちが来ていますが、スケジュールを調整してここに来てくれたことに本当に感謝します。特に、HLCメンバーの一人、ジョンソンは私たちと共に多くの時間を使い、無輸血手術の指針やプログラムや手続きの作成に大きな貢献をしてくれました。ここで皆さんに心から感謝したいと思います。

 特に大切なのは、血液や血液製剤の使用を減らす点で最善の方法を用いて、すべての患者の生活と安全の向上を図るということです。

 BMSPの方針は以下の通りです。

1. 確立された手術や代替療法を用いて血液の損失を最小限にする
2. 包括的かつ計画的な、集約された病院サービスを提供する。
3. BMSP事務局を通して治療のコーディネートを行う。
4. 病院全体に適用される方針を作成しウェブサイトで見れるようにする。

この方針は、証人たちが真に必要とするものと調和し、また正確なものであるようにHLCと協力して作られています。

- スティーブンは続けます。

では、こうした医療プログラムにはどのような益がありますか?

最先端技術も大切ですが、最も重要なことは、血液のロスを最小限にするための最善のテクニックを私たちのスタッフすべてに教育し理解してもらうことです。最新のテクニック、例えば・・・(4種類言及しているのですが、セルセーバーしか分かりませんでした)などは非常に重要であり、スタッフはこれを理解していなければなりません。

また、汚染のリスクを減らし、入院の日数を減らすことが出来ます。これは、ほとんどの手術医が認識していることだと思いますが、もし輸血をすることなく手術を行うことが出来た場合、その経過はより良いものとなります。

(スライドの文)
・ジョージタウン大学病院を最先端の医療技術の場に置く。
・ワシントンの唯一の血液保存プログラムを構築する。
・血液使用におけるインパクトを与える。
・感染の危険を減らし、入院期間を減らし、血液の損失を減らす。

- その後、スティーブンは3人の医師を紹介します。プログラム・コーディネーターのマイケル・ホフマン、メディカル・ディレクターのマーク・ザワイドスキー、ナース・コーディネーターのディック・バーストレイトです。彼らの経歴を紹介し、最後に、このプログラムに関係する人々の紹介をしてビデオは終わります。

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この後、メディカル・ディレクターのマーク・ザワイドスキーのレクチャーのビデオが始まります

彼は無輸血手術のメリットを、数字をあげてより具体的に説明しており、なかなか興味深い内容となっています。

これは次の記事で取り上げますので、ご期待下さい。

二人のエホバの証人の間で無輸血の腎臓移植が行われる

2011-12-03 10:17:00 | 医療系
イギリスで、エホバの証人の母娘間での腎臓移植が行われました。いわゆる不適合腎移植だったのですが、拒否反応も抑えられて手術は成功しました。詳しくは記事をご覧下さい。

Metro.com.uk 2011/11/29

移植に先立って行われた検査では、母親の不全となった腎臓は、娘の腎臓と適合しませんでした。しかし、医師たちは手術を進めることにしました。

この腎臓移植は二人のエホバの証人の間で行われました。

母親と娘の信仰がこの手術をさらに複雑なものにしました。彼らは輸血を受け入れることが出来ず、それは医師たちにとって出血を最小限に抑えなければならないことを意味しました。

しかし、手術から4ヶ月経過して、移植を受けた母親は拒絶反応の兆候もなく完全に回復しました。

彼女は「娘から腎臓を提供されることは、強い感情を伴う経験でした」と述べています。

南ロンドンにあるセント・ジョージ病院で手術は行われました。この手術は、二人のエホバの証人の間で行われた、不適合腎移植の初めてのケースと考えられています。

医師たちは、手術の一月前に、ゴールドボーンさんの白血球の一部を取り除きました。これは、不適合な臓器移植に対する体の自然な反応、つまり拒否反応を回避するためでした。

27才の娘のジェイドはこう述べました。「事前のテストで不適合の結果が出た時にはがっかりしました。でも、一つでも方法があるなら、それをやってみようと私は決めていたんです」

50才になる母親のデボラは、生まれつき腎臓に問題があり、1986年に最初の腎臓移植を受けていました。

英国腎臓研究協会の代表者、プロフ・ターナーは、「新しい治療法が、提供者の臓器の適合性を改善するための助けとなったことは、非常に励ましとなる」と語りました。

無輸血手術の医療コーディネーター

2011-07-27 22:01:06 | 医療系
医療コーディネーターという仕事を聞いたことがありますか?日本医療コーディネーター協会のサイトによると、「医療コーディネーターとは、医療サービスを提供する側(医療者)と医療サービスを受ける側(患者さん、ご家族を含めたすべての医療消費者)の間に立って、治療法、医療サービス、医療システム、医療倫理など様々な面で「立場の違い」から出来る隙間を埋める新しい形態の21世紀型医療ソリューションビジネスです」だそうです。

つまり、患者と医師との間に立ち、多様化する治療の選択肢と患者の状況や価値観をもとに患者にとって最善の治療をコーディネートする人たちと言えます。

患者がエホバの証人の場合、ほとんどは輸血をしないという前提のもとで治療が行われますが、アメリカのある病院で、エホバの証人専門の医療コーディネーターの募集をしていました。まあ、簡単に言うと病院の求人なんですが、内容が興味深かったので記事にしてみました

求人していたのはコネチカット州にあるハートフォード病院です。急性期病院で病床数約1000ほどあり、州で2番目に大きな病院とのことです。

残念ながらリンク元の求人期間はすでに終わっています。(キャッシュだけは残っていましたが)

以下、求人の内容です。

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職種 : 無輸血治療と手術のコーディネーター
場所 : ハートフォード病院
時間 : 日勤/夜勤 シフト
仕事内容・求められる資格 : エホバの証人の組織と信条に対する知識が必要。高校卒以上が必須だが、関連する分野での病院経験があり学士以上が望ましい。血液と血液製剤、また輸血の代替療法に関する知識が必要。患者の世話及び、仕事上の管理とマーケティングの経験。優れたコミュニケーションスキル。患者と家族、医療スタッフ、手術医と他の分野の人々とのスムーズな連絡係として機能し、コミュニケーションや協働作業によって患者の前進を助ける。患者が「医療上の事前の指示」を完成させるように助け、患者のケアのために医療提供者と問題についてよく話し合い、患者と患者の権利を擁護し、医療計画を助ける。入院患者の身の回りの世話をし、承認された手順とガイドラインのもとに病院のスタッフに無輸血管理治療法を準備する。ハートフォード病院によって確立されたインフォームド・コンセントの方針を支持し、患者の事前指示書を管理する。無輸血手術に関係するすべての問い合わせを適切に処理し、電話でのサポートを提供する。病院に掛かってきた電話に答える。十分に資格があることを知識と行動で実証し、患者の年齢に応じて個々の必要に応える。
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血液の知識のみならず、証人たちの組織や信条への深い理解が必要なので、おそらくエホバの証人でなければ出来ない仕事ですが、内容を見ると体力的にも精神的にもタフさが求められます。やりがいは大きいと思いますが、相当忙しい仕事であることも事実でしょう。

ちなみに、アメリカの無輸血医療手術センターがペンシルバニア州ピッツバーグにありますが、そこでは無輸血手術を希望する患者のために「事前の医療上の指示」が作られています。-Advance Medical Directive/ Release-

このあたりも調べると結構深くなりますので、そのうち記事にしたいと思います。