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WEB上のニュースや新聞などで扱われたエホバの証人のニュースを取り上げます。シリアスな話題から笑えるニュースまで。

エホバの証人とゲーテッドコミュニティ内の奉仕-プエルトリコ

2012-05-26 12:38:11 | 法的勝利
「ゲーテッドコミュニティ」(Gated community)という言葉を初めて聞いた方も多いかもしれません。

日本語のウィキペディアによると、「ゲーテッドコミュニティ (Gated community) とは、車や歩行者の流入を厳格に制限し、防犯性を向上させた住宅地を指す。ゲートや塀を設けているほか、警備員を雇っているところもあり、要塞街、要塞都市と呼ばれることもある」と定義されています。

日本のオートロック・マンションもその一例ですが、土地の広い外国ではさらに大規模なゲーテッドコミュニティが数多く存在します。

下の写真はゲーテッドコミュニティの一例ですが、住宅地の入り口がゲートで閉ざされており、入り口で門番によって完全なチェックが行われています。




さて、こうした住宅は、時としてエホバの証人にとって一つの挑戦となります。その国の法律が内部への立ち入りを禁じている場合、どのように内部の人たちに証言を行うかということです。

プエルトリコの場合がまさにそうでした。深刻な犯罪に対処するため、住宅地にフェンスを作り、警備員を配置したり、ゲートをロックするという都市作りがいろいろなところで行なわれてきました。アメリカの自治領であるプエルトリコは、麻薬や暴力犯罪、警察の腐敗などによって荒廃して来ました。中流層の収入は、アメリカ全体の平均の3分の1に過ぎまぜんが、殺人率は4倍となっています。そのため、2008年にプエルトリコは、立ち入り制限法(Controlled Access Law)を採用しました。これは、地方自治体によって承認された土地開発者が街の道路への立ち入りを制限することができると言う法律です。ちなみに日本では完全に道路を遮断することは法律上難しく、完全な意味でのゲーテッドコミュニティを作ることはあまりないそうです。

ものみの塔聖書冊子協会のニューヨーク本部とプエルトリコ支部は、この法律に異議を申し立てました。この法律によって、聖書の音信を戸別に宣べ伝えるという宗教的な務めを行えない状態になっており、憲法の趣旨に反する、住宅地を訪問する際にゲートで尋問的なことが行われている、とのことでした。

2004年に協会は、プエルトリコの知事と3人の州高官を相手に、信教の自由や交通、通信、発言の自由などが侵害されていると訴えました。

2008年には、8の土地開発者がエホバの証人の住宅地への立ち入りを認めました。また、裁判所は3つの地方自治体と12の土地開発者にエホバの証人の立ち入りを認めるようにと命令を出しました。

しかし、その一年後、裁判所は立ち入り制限法を支持する判決を出しました。裁判所によれば、住宅地の住民の許可を取らなくてもゲートの門番がエホバの証人の立ち入りを拒否することが可能であり、証人は中の住人から許可をもらえば入れるので、ゲートを閉じていることは問題ではないとのことでした。

これに対してエホバの証人側は、犯罪を抑制することは、プエルトリコ政府の重大な関心事であることを認めながらも、この法律はすべての人をひとくくりに立ち入り禁止としており、言論の自由を妨げると訴えました。

その結果、2011年2月に州裁判所は、ゲーテッドコミュニティへのエホバの証人の立ち入りを認める判決を下しました。また、ゲートでの尋問のような質問ではなく、要求される範囲の限られた質問のみで済むようになりました。

最近、アメリカの控訴裁判所はこの件を施行する判決を出しました。それは、プエルトリコのすべてのゲーテッドコミュニティはエホバの証人の立ち入りを認めなければならないというものです。門番がいるところは、証人たちが来た場合、必ず中に入れなければなりません。また、門番が現在いないところでは、特別の理由がない限り門番を用意しなければなりません。

プエルトリコには、57の自治体に587のゲーテッドコミュニティがあると推定されています。また、エホバの証人の会衆は全部で318あり、25,000人の成員がいます。

courthousenews.com/2011/02/11
foxnews.com/world/2012/05/12

アルメニアのエホバの証人が良心的兵役拒否の裁判で歴史的な勝利を得る

2011-07-08 20:32:16 | 法的勝利
JWオフィシャル・メディアサイトのトップニュースです。2011年7月7日、欧州人権裁判所は、アルメニア政府が兵役を拒否した一人のエホバの証人を有罪とし刑務所に入れたことは、彼の良心の自由の権利を侵害する行為だとする判決を出しました。

記事に入る前に、アルメニアにおける近年のエホバの証人の状況を確認しておきましょう。

--1975年 アルメニアでエホバの証人の活動が始まる
--1991年 旧ソビエト連邦から独立する。宗教組織の登録のために国家宗務評議会が設立されるが、エホバの証人の登録は拒否され続ける。その後、2003年までに100人以上の若いエホバの証人が兵役に関する聖書に基づく立場ゆえに有罪判決を受け,大半が投獄された。
--2004年10月 15回目の提出でようやく宗教組織としてエホバの証人が登録される。
--2005年6月 アルメニアに正式に送られてきた最初の輸入文書が税関を通り証人たちの手元に文書が届く。
--2006年 19人の兄弟たちが代替奉仕を拒んだことで刑事訴訟を起こされた。しかし、2006年9月に,刑事訴訟が取り下げられたことを知らせる手紙を検事総長から受け取るも、引き続き可能な代替奉仕が取り決められていないため、投獄状態が続く。2007年の半ばまでに71人の若い兄弟たちが最高3年の刑に服していた。

その中の「バハン・バヤティアンは,アルメニアで起訴され投獄された多くの若い兄弟たちの一人です。1年半の刑の宣告後に検事は,兄弟の良心的兵役拒否は「根拠がなく,危険」であるとして,さらに厳しい刑を求めました。上訴裁判所はこれを受け入れ,刑期を1年延ばし,それは最高裁判所によって確定されました。そのためバヤティアン兄弟は,ヨーロッパ人権裁判所に提訴しました。同裁判所はその訴えを受理し,事情を詳細に調査する姿勢を示しました。この件において有利な判決が下され,バヤティアン兄弟や同様の問題に直面している他の人たちの助けとなることを,わたしたちは期待しています」(年鑑2008年19P)

--2007年4月-2008年4月 聖書や聖書文書7トンが差し止められ、法外な関税を要求される。結局法外な関税を支払い文書を受け取った。
--2009年8月 74人の兄弟が刑務所に入っている。また、引き続き外国から受け取る宗教文書に対して法外な付加価値税が課されている。
--2011年7月 69人の兄弟たちが服役。欧州人権裁判所によりアルメニア政府による投獄は違法とされる。

今回の判決につながるのは、バヤティアンによって提訴されていた訴訟です。ではニュースの記事をみて見ましょう。

欧州裁判所大法廷による良心的兵役拒否の権利を保護する画期的な判決

7月7日、欧州人権裁判所は、16票という圧倒的大多数の賛成によって、アルメニアがバハン・バヤティアン氏の良心の自由の権利を侵害していると結論した。バヤティアン氏はアルメニアのエホバの証人であり、良心的に兵役を拒否したため有罪とされ刑務所に入れられていた。この判決は良心的兵役拒否者の権利を保護する点で、過去44年間のこの問題に関する判決を覆す分岐点となるだろう。

2002年に、バヤティアン氏は武器を取ることを拒んだため、2年半の懲役を言い渡された。彼の聖書によって訓練された良心が個人的決定の動機となった。2001年1月に欧州評議会に対して、兵役に代わる代替市民奉仕制度を設立し、やがて有罪とされたすべての兵役拒否者たちを赦免すると公約したにも関わらず、アルメニア当局はバヤティアン氏を懲役処分に科した。バヤティアン氏はこの件を欧州人権裁判所に提訴した。有罪判決は欧州人権条約の第9条に違反している、というのが彼の訴えだった。2009年の小法廷での判決はバヤティアン氏に不利なものだったが、大法廷はその判決を逆転して、「申立人の有罪は、ヨーロッパ人権条約の第9条の意味するところに含まれる民主社会に必要なものではない干渉によって構成されている。したがって、そこには侵害が存在している」とした。大法廷は、「第9条は軍務に関係することに、例え武器を取らない兵役だったとしても、反対する信念を持っている宗教グループを守るものである」と説明した。

欧州人権裁判所にとって、良心的兵役拒否者の権利が欧州人権条約第9条のもとで完全に保護されているとの認識を示した、歴史上初めての判決となった。またその結果として、良心的兵役拒否者を投獄することが民主社会において基本的人権の侵害と見なされることになった。

里程標とも言うべきこの判決は、ヨーロッパ評議会のメンバーであるアルメニア、アゼルバイジャン、トルコにも、兵役に従事すること許さない深い宗教的信条を持つ者たち個人への迫害や投獄を止めるという義務を課すことになる。良心的に兵役を拒否して刑務所に入れられた69人のエホバの証人たちは、刑務所からの速やかな釈放を待っている。証人たちは、この画期的な判決を人権の保護のための大きな一歩と考えており、欧州人権裁判所によって支持されたこの現在の国際的な人権に対する基準に従って、例えば韓国(800人以上が服役している)のような国が、良心的兵役拒否者を開放することを望んでいる。

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さらに、以前このブログでも取り上げた Forum 18 も早速この判決を記事にしています。背景説明や調査も詳しく読み応えあるのですが、かなり長い記事なので、興味深いと思える部分だけをまとめて見ます。

欧州裁判所は良心的兵役拒否者が不当に有罪とされ投獄されたと認める-しかし政府はどうするのか

■票決

・17人の裁判官中16人が判決に賛成。アルメニア人の裁判官1人だけが反対票を投じた。

■アルメニア政府関係者の判決への反応

・Forum18の質問に対して司法省の報道官は「もしそれがヨーロッパ裁判所の判決ならば、補償を支払わなければならないだろう。政府はこれまでいつもこのような判決が出た時には補償を支払ってきた」と述べている。しかし、現在の服役者たちへの判決の影響を聞かれると、副大臣に聞くようにといった。また、匿名を希望した政府の上級職員は「判決を実行するときには、政府は良心的兵役拒否者の状況を見直すだろう」と言った。

■賠償

・政府はバヤティアンに賠償金として3ヶ月以内に10,000ユーロを支払うこと。これに加え、これまでの裁判費用として、さらに10,000ユーロを支払うこと。欧州人権裁判所に指摘された侵害となる理由を除き去ること。これには法律の変更も含まれる。

■代替奉仕制度は存在しているのだが・・・。

・代替奉仕法は2003年に制定されている。2004年と2006年に修正されているが、それでもヨーロッパ評議会に対してアルメニアが公約した「代替市民奉仕」の選択が可能にはなっていない。エホバの証人とモロカン派は最初、代替奉仕法の受け入れを表明したが、すぐにそれを撤回した。なぜなら、その奉仕とは、軍の管理・監督下に置かれたものだったからである。そして、現在、良心的兵役拒否のため刑務所に入っているのは69人で全員エホバの証人である。彼らは兵役と、軍の管理下での代替奉仕を拒んでいる。69人中、4人が3年の刑、35人が30ヶ月の刑、1人は27ヶ月、28人は2年の刑で、1人は18ヶ月である。7人が今年に入ってから投獄され、最も最近では4月の二人である。彼らは4つの刑務所に入れられている。2011年4月には、3人のエホバの証人たちが、残りの刑期を代替奉仕に切り替える申し込みの機会が与えられた。申し込みに際して刑務所からは、彼らの良い態度やリスクが少ないことを記した推薦状が書かれたそうだが、是非を判断する独立した委員会との面談後、3人全員不合格となった。現在、引き続き修正案が作られているが、不明な点も多く、証人たちにとって有益なものかまだ分からない。42ヶ月という兵役より長い期間も大いに問題だ。

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ドイツでは7月1日から徴兵制が廃止になり、台湾でも3年後には廃止になります。様々な理由がありますが、ドイツでは、兵役を良心的に拒否する何万人も人たちが奉仕活動を選択し、わずかな報酬で社会福祉を支えてきた大きな働き手でした。兵役の廃止と共にそのような有益な働き手もいなくなるので問題となっているようです。徴兵制度は世界的に時代遅れの感がありますが、アルメニアでそれを残すなら、せめて良心的に兵役に就きたくない者たちを使って社会的に有用な仕事をさせれば、刑務所に閉じ込めて税金で食べさせるよりはるかに生産的だと思いますけどね。いずれにせよ、一日も早くアルメニアの兄弟たちが刑務所から出てくることを祈りましょう。

ちなみに欧州人権裁判所はどのくらいの影響力を持っているのかウィキペディアを見てみました。

◎欧州社会に対する影響

欧州人権裁判所は人権問題に関する限り、フランスの破毀院やドイツの連邦憲法裁判所といった、日本で言えば最高裁判所の判決さえ覆すことのできる国際裁判所であり、その判決が欧州加盟各国に与えた影響は甚大なものがある。詳しくは直接リンクでどうぞ。欧州人権裁判所

いや、これはすごい。むちゃくちゃ強力な影響力じゃないですか。イギリスやフランスでさえここの判決が出ればそれに従うという・・・。これは確かに心強い判決です。

エホバの証人がフランスで大きな法的勝利を勝ち取る

2011-07-04 19:07:51 | 法的勝利
エホバの証人への法外な課税で問題となっているフランスで喜ばしいニュースです。ヨーロッパ人権裁判所はフランス政府の不当な課税を違法としました。これをきっかけにエホバの証人に対する処遇が正常化することを願います。


■ ヨーロッパ人権裁判所はフランスでのエホバの証人を擁護する
   jw-media.org 2011/06/30

ストラスブール・フランス  今日ヨーロッパ人権裁判所は、フランス政府がエホバの証人に対して、1993年から1996年の間のエホバの証人たちの寄付について遡及的に60%の税金を科したことは、エホバの証人の権利を侵害しているとの判決を下した。

フランス政府は、フランスのエホバの証人の協会に対して総額5800万ユーロ(約68億円)の支払い義務があるとしていたが、これは協会のすべての資産を足してもはるかに及ばない金額である。フランスの他のどの主要な宗教もこれほど法外な税金を納めたことはかつてない。

裁判所は、政府の行動がヨーロッパ人権条約によって保障されているエホバの証人の信教の自由を侵害しているとして満場一致で判決を下した。

論点となった税によって協会の必要な資金を削減させることになり、結果として信者たちが実質的な意味で彼らの宗教活動を自由に行うことがもはや出来なくなってしまった。税は協会の存続を脅かし、また少なくとも組織内部、協会の運営、宗教活動に重大な阻害を生じさせるものである。また裁判所は、フランスの課税当局が課税の根拠としている法律が不正確であり、その適用が十分に予期できるものではなく、証人たちの信教の自由の侵害は正当化されないと指摘した。

この件についてエホバの証人は、差別的な課税はフランスにいる12万3000人のエホバの証人たちの崇拝活動を出来なくさせるために課されたものだと主張し続けてきた。これは、エホバの証人を誤って性格付け、疎外するために反セクトの議員たちによって取られて来た多くの手段の一つである。今日の裁判所による判決は、すべての市民に対する信教の自由を支持するようにとの、フランス政府への強力なメッセージとなるだろう。

ルビエにある協会本部にいる宗教団体のメンバーたちは、この勝利のニュースをもちろん歓迎した。「我々はいつでも、この問題に関する我々の立場は正しいものだと確信していた。フランスで5番目に大きい宗教に対して課税を武器として使用するのは政府にとって正しいことではない」とフランスのエホバの証人の協会の会長、ミシェル・ブレザーは語った。彼はまた、「エホバの証人は納税に関して良心的かつ正直である。証人たちによってなされた寄付は、他の教会での寄付に対する税以上に課税されるべきではない。この件での勝利は、フランスに住むすべての人の人権についての勝利であり、フランスに住むエホバの証人への宗教的ハラスメントの終わりとなることを願う」と付け加えた。