小林秀雄は、戦後最高の批評家とか、日本の知性とか言われる。
私はそれほどいい小林の読者ではないが、いつもその雷名にコンプレックスを感じてきた。
そんな小林は、母が天理教へ入信したら自分も入信し、母がお光り様(今の世界救世教だろうか)に入信したら、自分も入信して免状を取るまでになったという。
父親を早くに亡くしたからだろうか。だから母親への愛情と同情を人一倍注いだからだろうか。
宗教2世の被害者意識がかまびすしく論じられる令和日本からすると、奇異に映る、この母子関係。
ただ、これが小林秀雄の本質だ、と『文士 小林秀雄』の著者はいう。
「批評家」にならない。「当事者」になる。
小林のそんな「覚悟」が、小林をして、他人にない凄味を滲み出させているんだろう。