松前城  ~ さまざまな「唯一の・・・」を持つ、北海道のお城 ~

2014-07-08 02:16:24 | うんちく・小ネタ
松前城  まつまえじょう  (北海道松前郡松前町)



松前城は、北海道で唯一の天守を持つお城です。


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城主の松前氏のルーツは、室町時代の若狭国の守護大名・武田氏の一族と伝えられます。
故あって蝦夷地(北海道)に移り住み、その地の豪族・蠣崎(かきざき)氏の客分となり、やがて入り婿として蠣崎の家督を継ぎ、勢力を広げていった・・・・・と、されています。
しかし、確かなことは分かりません。

15世紀半ば頃、北海道の道南地方には、蠣崎氏のような豪族が12家あって群雄割拠していました。
この時代、北海道では稲作は出来ず、豪族たちは支配地を広げ、そこでのアイヌとの交易を財源としていました。

その後、蠣崎氏の当主にとても外交上手な人物が登場しました。
5代目とされる蠣崎慶広(かきざき よしひろ)です。
慶広は、豊臣秀吉によしみを通じ、文禄2年(1593)に「船役徴収権」を公認されました。
また、慶長9年(1604)には徳川家康から、アイヌ交易独占権を公認されて、大名としての財政基盤が整いました。

その少し前、慶長4年(1599)に氏を蠣崎から松前に改めています。
北海道で唯一の大名、松前氏の誕生です。

しかも、その財源が年貢米ではなく、海産物を主とする交易品によって成り立っている点でも、唯一の大名でした。


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慶長5年(1600)、松前氏は津軽海峡を見下ろす福山丘陵に新たな居城を築きました。
後の松前城ですが、当初は屋敷構え「福山館」(ふくやまだて)と称していました。
その規模は、東西93間(168メートル)、南北126間4尺(228メートル)で、決して大規模なものではありませんでした。

ただし、屋敷の内部はかなり立派だったようです。
後に福山館を訪れた幕府巡検使の一行は、その見事さに驚き、改めてアイヌ交易の利益の大きさを実感しています。

嘉永2年(1849)、幕府は松前氏に対し、福山館を本格的な城に改築するよう命じました。

この時期、日本近海に欧米の船が頻繁に出没し、特に北海道ではロシア侵略の危機感が高まっていました。
こうして誕生した松前城は、本丸に天守が建ち、その周囲に石垣と土塀を築き、櫓や門を配置した近世城郭でした。
しかし、その一方で、海に向かって砲台が並ぶという和洋折衷の部分もありました。


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外国の侵略に備えた松前城でしたが、明治元年(1868)、皮肉にも内戦の舞台となりました。
同年10月、榎本武揚を首魁とする旧幕府軍が北海道に上陸。
11月1日、旧幕府軍の軍艦が松前城へ艦砲射撃を開始、続いて新撰組生き残りの土方歳三率いる部隊が城に迫りました。
こうして5日間の戦いで松前城はあえなく落城しました。


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【ちょっと雑談・・・。】


江戸時代の大名は、参勤交代の制度によって、基本的に領国と江戸での1年ごとの二重生活を義務付けられていました。

参勤交代の制度は、建前では1年ごとに交代で将軍のお膝元の江戸を守るというのが目的でした。
実際には、大名の妻(正室)とその子供を江戸に人質として留め置き、大名に道中で多大な出費をさせ、反乱を起す力を削ぐ目的が大きいのでした。

そんな中、松前氏は領地が江戸からあまりに遠いという理由で、参勤交代では特例が認められていました。
諸大名の中で、唯一 「六年一勤」、つまり6年のうちに一度、江戸に出て暮らせば良いとされていたのです。
しかも、江戸での滞在期間は半年に短縮されていました。

この特例のよって、松前の殿様は、経済的には大変助かったことでしょう。

しかし、その一方で、家族との接し方では、かなりとまどったのではないでしょうか・・・。
なぜなら、松前の殿様は、江戸で奥方と半年暮らせば、その次はもう5年以上も会うことが出来ないのです。


また、殿様の江戸暮らし中に、奥方がめでたく懐妊したとします。

半年の江戸詰めを終えた殿様は、わが子の誕生を見ることなく、北海道に帰ってゆきます。
そして、殿様が念願のわが子に初めて会うとき、その子はもう数えて5歳になっています。
赤ちゃんの頃を知らないまま、いきなり5歳児の父となるのです。

そして半年間を子供と一緒に暮らし、また北海道の領地に帰る。 その次に会うときには、子供は10歳になっています。

再会するごとに、子供は一気に5歳ずつ大きくなっている。
また、殿様と奥方は、一気に5歳ずつ年を取っている・・・。

今、「超高速参勤交代」という映画がヒットしていますが、
松前氏の参勤交代をモチーフに、「超高速(で、子供が成長する)参勤交代」とか、
「超高速(で、夫婦が年を取る)参勤交代」というのも、
映画化してみたら面白いかも・・・ とか、勝手に想像してますが、いかがなものでしょうか?


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