山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

剣ヶ峰で割れるダイヤモンド富士を考える

2017年04月01日 | 番外編
 昨年の1月から撮影に取り組んでいる剣ヶ峰で割れるダイヤモンド富士であるが、納得できる画像にはまだ至っていないものの、4月22日開催の「山と花と星の奏でる音楽会」に向けて画像編集しており、今までの総括と今後の展望について考えてみた。

 最初に割れるダイヤモンド富士について耳にしたのは精進湖のほとりにある喫茶店「写ば写ば」の写真家栗林先生からである。その店には南アルプス伝付峠から撮影した「双子の太陽」なる写真が展示されている。当初はこれは富士山から遠く離れた場所からでなければ撮影出来ないものなのだろうと思っていたのだが、数年前に朝霧高原あたりで撮影したという人が居ると聞き、さらにはティアラと呼ばれる多重分割ダイヤモンド富士も撮影が出来るということを知った。人に出来るなら自分にも出来るはず、ハイテク技術を駆使してカシミール3Dで位置を割り出し、GPSにその場所を記憶させておいてその場所に行って撮影するという作業を繰り返した。撮影当初に使っていた200㎜望遠レンズではズームが足りないことがわかり、さらに天体望遠レンズBorg67FL(300mm相当)を購入し、さらに撮影時のブレを抑える装備を搭載したうえにエクステンション2倍を装着して600㎜で撮影できるレベルまで到達した。さらには、円形絞りだとダイヤの光芒が星形にならないため、8角形や6角形に切り抜いた厚紙を絞りに貼り付けて星型の光芒が出るように細工を施した。そのようにステップアップしてきてようやく高確率で割れるダイヤの撮影が出来るレベルまで到達するに至ったが、ティアラなる多重分割ダイヤはまだ満足できるものが撮れていない。


    平成28年2月11日、4度目の朝霧高原での撮影でようやく成功した剣ヶ峰で割れるダイヤモンド富士。


    平成28年2月28日、朝霧高原ふもとっぱら付近で撮影したダイヤモンド富士。円形絞りだと光の光芒がダイヤのような星形にならない。


    平成29年1月28日朝霧高原A沢貯水池付近から撮影したダイヤモンド富士。左右ほぼ同時に光芒が出現した。絞り改造したBorg36ED(200mm)で撮影。


    同じ日の600㎜で捉えた画像。


    太陽の頂部がほぼ剣ヶ峰に立つ建物の真ん中から出ている。しかし、この軌道では剣ヶ峰の左側からは光が出ないことがわかる。

 2分割程度のダイヤモンドならばさほど難しくないことが分かってきたが、多重分割となるとなかなか難しくなってくる。ひとつは富士山との距離で、剣ヶ峰の大きさと太陽の大きさのマッチングを考えなければならない。もうひとつが撮影する方向である。剣ヶ峰は左側(山梨県側)に回り込むほど幅が狭くなりより尖って見え、右側(静岡県側)に行くほど幅が広がってなだらかに見えてくる。これによって撮影する距離も考えなければならなくなる。


    平成29年1月26日朝霧高原富士宮道路から撮影。剣ヶ峰左の平らな部分から太陽が現われ、多重分割している。


    さらに右からも光が現われた時の画像。右で約4分割しているが、同時に左からもちいさな光が2つ現われている。

 富士宮道路沿いから撮影した多重分割ダイヤで撮影位置が最もマッチングしたものが上の2枚と思われる。あと1歩左で良かったかもしれないが、この距離から剣ヶ峰の左右の傾斜にマッチングさせて太陽を出すと、中央部の平らな部分が大きなダイヤになってしまう。

 雲で阻まれてしまったが位置的に最も良かったのが下の画像と思われる。


    平成28年5月1日朝霧高原YMCA付近から撮影。雲に阻まれて光芒はあまり出なかった。


    トリーミング画像。剣ヶ峰の建物が立つ突起の湾曲に太陽がぴったりマッチングして少なくとも6個の光芒が出ている。

 おそらく、朝霧高原でティアラと称して撮影されている多重分割ダイヤモンド富士はこのような画像なのだと思う。

 しかし、私が狙っているのはこれとは少し違う画像である。富士山からもう少し距離を離して剣ヶ峰の左右の凹凸に太陽をマッチングさせれば、少なくとも3つ以上の、しかももっと大きな光芒が輝く多重分割ダイヤの撮影が可能なのではないかと考えている。その最も有力な撮影候補地が竜ヶ岳である。


    平成29年1月3日竜ヶ岳で撮影。左側の凹凸で3分割して見える。


    これを600㎜望遠で捉えてみると、おそらくは5分割。


    さらに右側からも光が現われ、剣ヶ峰で割れるダイヤとなる。


    残念ながら左側の光りは融合してしまっている。あと5~10m右寄りの位置に立てば(立てれば・・・)。

 竜ヶ岳は朝霧高原に比べて剣ヶ峰の幅が狭く見え、より尖って見える。距離的にも剣ヶ峰の湾曲と太陽の形がマッチングするのは竜ヶ岳が最適であろうと考えている。しかし、問題なのは撮影地である。竜ヶ岳の剣ヶ峰から昇るダイヤモンド富士は太陽がいちばん北側に来る冬至の時でも山頂の平らな草地よりも端足峠側の笹薮の中である。足場の良いまともな撮影地の確保はまず困難でGPSに登録した座標点通りの位置に立つことはきわめて難しい。そのうえ山の上は微妙な凹凸があるため、数メートルの高さのずれが起こるのはあたりまえである。しかも重い撮影機材を担いで2時間以上登らなければならない。しかしそのような厳しい条件があるからこそ、この剣ヶ峰で割れるダイヤモンド富士撮影の価値があるのだと考えている。12月中旬から始まる竜ヶ岳多重分割ダイヤモンド富士、今年こそは撮影を成功させたいと今から意気込んでいる。


 今回4月22日に開催する「山と花と星の奏でる音楽会」では富士川町高下で撮影した白山岳ダイヤモンド富士を含めて、約20回に及んだ撮影の中から比較的良かったものを厳選して連写した画像を動画に編集し直して上映します。静止画像とは違った感動があること間違い無しです。使う音楽はクラシック部門でCD売り上げ2週連続1位を記録しているサラ・オレインの「ANIMA」というアルバムから「Animus」というバイオリン曲です。人間の中の荒々しい感情や魂を現したハラハラドキドキ感のある楽曲と一緒に、この割れるダイヤモンド富士の映像をお楽しみください。皆様のご来場をお待ちしております。   
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知らずに昔見ていた花たち 

2017年04月01日 | 番外編
 平成29年4月22日に開催される「山と花と星の奏でる音楽会」に向けて、過去11年分の写真データをひっくり返して画像を探していると、思わぬ画像を発見することがある。名も知らずに撮影した花の中には今ではもう無くなっているだろうと思われるものもある。


    ウスバシロチョウとオドリコソウ

 まだ登山を始めていなかった平成17年5月、購入して間もなかったデジタル一眼レフカメラをぶら下げて芦安の界隈に蝶を追いかけて出かけた時に撮影したものである。蝶はウスバシロチョウという春先に里山で比較的容易に観察されるものであるが、そこに写っていた花には全く目が行っていなかった。これはオドリコソウではないか。かつて南アルプス広河原のバス停周辺にたくさん生えていたらしいが、鹿の食害著しく今では少ししか残っていない。そんな花が芦安の駐車場界隈に咲いていたことに驚いた。おそらく今はもう無くなっているのではないだろうか。



    トダイハハコ

 平成18年9月、まだ登山を始めて2年目の時に単独で鋸岳を訪れた時に撮影したトダイハハコである。この花の存在は知っていたので、毛の多い葉と茎、花数が少ないことからその花であることは容易にわかった。覚えておくべきだったのはこの花は石灰岩地に咲くヤハズハハコの変種だということである。



    シライワシャジン

 同じ日に同じ場所で撮影したシャジンの仲間である。この頃はイワシャジンもヒメシャジンもミヤマシャジンも全く見分けがつかない程度のレベルだったので、この花はその後注目することも無くハードディスクの中に眠っていた。しかし改めて見直してみれば、花弁から花柱が異様に長く突き出している。これは石灰岩地に咲くヒメシャジンの変種シライワシャジンではないか。この花の咲く場所を昨年花仲間に教えていただき、今年は見に行ってみたいと思っていたのだが、知らず知らずのうちに既に出会っていたということだ。




 平成19年6月に再訪した鋸岳の直下で見たコザクラである。南アルプスに咲くコザクラと言ったらクモイコザクラである。しかし、ここが鋸岳であるということを考慮してひょっとして別物?という目で再度葉っぱを良く見直してみると・・・葉の切れ込みが深く、やはりこれはクモイコザクラであった。シナノコザクラは石灰岩地に咲く変種で、葉の切れ込みが浅いことが特徴である。長野県側の南アルプス林道に咲くことが知られているので、これも見に行ってみたい花のひとつである。





    アズマイチゲ

 花自体はそれほど珍しいものでは無いかも知れないが、山梨県では絶滅危惧種Ⅰb類に属する花である。広角レンズで捉えた画像では周辺にも葉がたくさん写っている。ここは平成24年にコシノコバイモを初めて探しに行った時に見た花である。その後毎年訪れている場所であるが、気にかけていなかったこともあるが翌年からの画像にはこの花は全く出て来ない。いかにも旨そうに見えるこの花、鹿に食われた可能性が高いと思っている。今年はコシノコバイモだけでなくこの花にも気をつけながら歩いてみたいと思う。


 おそらくは良く見直せば知らず知らずのうちに見ていた花がたくさんあるのだろう。これからは知識と勘と運を携えて、見落としの無いように歩いてみたいと思う。
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