うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#30 【復活の狼煙】

2008-12-30 | #02 翔陽 選抜編
翔陽 10
海南 8



試合開始 6分



『ピィーーー!』


「タイムアウト!青!」



花形の指示により、翔陽ベンチが早くもタイムアウトをとった。




「藤真は、牧に翻弄されているな。」

「あぁ。牧にだけ意識が偏り、周りが全く見えていない。
気持ちばかりが昂り、体と気持ちが上手くかみ合っていない状態だ。
まさしく、山王戦、対河田への過敏意識、赤木状態ってわけだな。」

「なにをーー!!たわけがぁ!!」

「本当のことだろ!?俺が気付かせたおかげで、山王に勝てたんだろう!?」

「ふんっ!お前の力など借りんでも、山王には勝てたわい!!」

「ふんっ!!」

赤木と魚住を無視するかのように、木暮がつぶやく。

「このタイムアウトで気持ちの整理がつけばいいんだが。」




ベンチに戻る両チーム。




「早いタイムアウトだが、悪いタイミングではない。花形の指示か?」

扇子を仰ぎながら、高頭がいう。


「藤真がおかしいっすね?」

清田が牧に問いかける。

「あぁ、試合に集中できていない様子だな。だが、相手のことは関係ない。俺たちは、全力で翔陽をつぶすのみ。」


「OK!そうだ!今の調子でいこう。高砂、武藤、ファウルをケアしていけ。お前らが抜けると、インサイドが辛くなる。」

「はい!」


「ここ1本で同点にして、一気に決めちゃいましょう!!」




「藤真!!!」


花形が藤真に向かって叫んだ。


「・・・。」

振り向く藤真。



「お前の相手は、牧じゃない!海南なんだ!!しっかり、周りを見ろ!!海南を倒すんだろ!?」


「・・・・・・。」

沈黙の藤真。


「藤真!」

「藤真さん!」

「キャプテン!!」

「仲間を信じろ!!」

翔陽の選手が、藤真に声をかける。



「・・・・・・。」

藤真は翔陽ベンチを見渡した。



「・・・・・・。」

(仲間!?牧!?海南!?)



「・・・・・・。」



「行こうぜ!全国!」



「・・・・・・。」

(そうだ。俺の相手は牧じゃない。海南なんだ!このチームで海南に勝つことなんだ!)


藤真は、再びベンチを見渡し、軽く微笑んだ。



「みんな、すまなかった・・・。牧に対して、意識しすぎてしまっていたようだ・・・。ありがとう、花形。」

「あぁ。まだ始まったばかりだ。海南を倒すことは、牧を倒すことと一緒だ。みんなで海南を倒そう。」


「あぁ。花形の言うとおりだ。よし!ここ1本とめるぞ!!」

「おう!!」




『ピィーーー!!』

「始めます!」



両メンバーがコートに足を運ぶ。



藤真が牧を見つめている。


(これからだ。翔陽の築き上げてきたものを見せてやる!)



対する牧は、藤真をちらっと見たあと、花形を見た。


(花形、精神力も、リーダーシップも一皮剥けたな。藤真まで復活させたか。倒しがいのあるやつらだぜ。)



海南のスローインから開始。

清田から牧へ、すばやく神にボールが渡る。


執拗に長谷川から攻める海南。

3Pライン1m手前。


(神にはこの位置からの3Pもありえる。)


腰をかがめ、重心を低く、鋭い眼差しで神を睨む長谷川。

大きな瞳で、長谷川をクールに見つめる神。



『キュ!』



パスフェイク。



シュートフェイク。



(!!!)



腰が上がる長谷川。



『スッ!』



長谷川を抜く神。




「神のドライブ!」

「高確率の3Pがあるがために、どうしてもシュートフェイクには、過剰に反応してしまうな。」

「神をとめるには、ドライブを捨て、外角1本に絞るか、神の倍の運動量が必要になる。」

(桜木のようにか・・・。)

赤木が桜木を思い出す。




『ダム!』



長谷川を抜いた神に、花形がヘルプディフェンス。



『キュ!』



ジャンプシュート体勢。

花形も大きく腕を伸ばし、ブロックに跳ぶ。


(この距離なら届く!)



『ヒョイ!』



(!!)


神は、跳んだ花形の横を通るパスを出した。



そこには、フリーで清田が走り込んでいる。



「さすが神さん!!」



だが。



『バン!』



「あ!!」

「藤真!!」



藤真がパスカット。



「さぁ、行くぞ!!」

「おう!!!」



『ダムダムダム!!』


一気に海南コートまでボールを運ぶ。

サイドを高野、永野が駆け上がってくる。


だが、海南の戻りも早い。

清田が藤真に並走。

牧、神が海南コートで迎え撃つ。




「3対3!」




高さでは翔陽、スピードでは海南。



『キュ!』


一瞬スピードを緩め、再び一気に加速。

藤真のチェンジオブペースで清田を振り切る。




「アウトナンバーーー!!」

「3対2!!」




(高野か?永野か?それとも自分で突っ込んでくるか?)


牧が藤真の動きに集中する。



『キュッ!』


藤真が急ストップ。

高野に目を向ける。



「神、永野につけ!」

「はい。」


牧は神に指示を出し、自身は藤真高野ラインのパスコースを塞ぐ。



にこりと笑う藤真。

高野の方向に伸ばした腕を戻す。


そして、静かにシュートを打った。



(パスフェイク!!スリーか!?)


完全に裏をつかれた牧は、フリーで3Pを打たせてしまった。



藤真の左腕は、綺麗に伸びていた。



『スポッ!』



速攻からの鮮やかな3Pが決まる。




「アウトナンバーで3Pを打ちやがったーー!!」

「きっちり決めてきた!すげーーぞ、藤真!!」




(藤真完全復活だな。)にこり。


センターライン付近で、藤真を見ている花形が笑う。



最強の挑戦者、藤真復活の狼煙が上がった。




翔陽 13
海南 8







続く。

#29 【藤真トラブル】

2008-12-28 | #02 翔陽 選抜編
翔陽 10
海南 8




海南のオフェンス。

牧がドリブルで運ぶ。

翔陽は、トライアングルツーのまま。



藤真は低い姿勢で、牧の動きを見ている。


(また、一志のところか?あるいは、自分でいくか?)


牧が微かに神を見た。


(神か?)


藤真は、一瞬、横に目を向けた。



『キュ!!』



その一瞬の目の動きを見逃さなかった牧は、神とは反対方向にドリブルをはじめ、藤真を抜く。



(!!!)




「藤真があっさり抜かれたーーー!!」

「牧が前半から飛ばしているぞーー!!」




牧は一直線に永野に向かっていく。


「俺の上からは打たせん!」



『ダムダム!』



かまわずジャンプする牧。


永野もブロックに跳ぶ。


長谷川は、神にタイトについている。


(神にはいれさせない!)




『スッ!』



跳んでいる永野を横目に、牧がボールを落とす。



『バン!』


『ガシ!』



「牧さん、ナイスパス!」

ボールを受け取ったのは清田。



「俺をフリーにするとは、誤算だぜ!」

清田がレイアップシュートを放った。



だが。



「フリーでも、点は入れさせん!」



『バチィーン!』



「!!!」



花形が、豪快に清田のシュートを叩き落した。




「おぉぉーー!花形すげーーー!!」

「花形、高すぎる!!」




ボールは、ラインを割った。


「ちきしょう。どっから跳んできやがった!?」

「清田、花形はだいぶ脚力がついている。瞬発力はもちろん、届かないと思ったところからも跳んでくるから、気をつけろ。」

「はい。」

(藤真にも、花形にもぜってー負けねぇぞ!!)



(やはり、花形のあの脚力は、要注意だな。)

花形を見て牧が思う。



海南ボールで始まる。


『ダムダムダム・・・。』


牧が小刻みに体を揺らしながら、ドリブルをついている。




「今のところ、藤真君は牧君を抑えられていないわね。」

「サイズ、パワー、スピード、どれをとっても牧君が藤真君に勝っている気がするんですけど、
なぜ2人はライバルという位置付けなんでしょう?」

「強豪海南、翔陽にして、1年生からスタメンとして活躍している彼ら。
自らがしかけ、攻撃の起点となる牧君に対し、味方を動かし、得点を獲る藤真君。相対する2人の3年生PG。
帝王と呼ばれる牧君、並び称されはしても、牧君に一度も勝ったことのない藤真君。
ライバルというより、因縁の対決といったほうがいいわね。」

弥生が続ける。

「ただ、藤真君は今、牧君しか見えていない。周りが見えていない状態だわ。
最後の対決ということもあり、対牧君に固執しすぎている気がするわね。
普段なら交わせるスクリーンプレーも周りが見えていない分は、簡単に引っかかっているもの。
藤真君がこのままだと、底力で勝る海南が圧倒する可能性もあるわね。」

「確かに、最初のスクリーンだけは、交わせていたけど、今は引っかかってしまっていますもんね・・・。」




『キュ!』


(牧!もう抜かれないぞ!)



『ダム!』


(硬すぎる!らしくないぞ!)



一つのフェイクを交え、牧が抜きにかかる。



「藤真!」


花形が藤真に声をかけるが、藤真の耳には届いていない。



『ガシ!』



再び、清田のスクリーンにかかる。


(くそ!またスクリーンか!)


自分自身に腹が立つ藤真。



(牧さんのライバルがこんなもんなのか?)


少し残念に思う清田。



『ダムダム!!』



『シュ!』



ステップを踏む牧。

オーバーハンドレイアップシュートを放った。



だが。



『バチィーーン!!』



「!!!!」



再び、花形のブロックが炸裂。




「うぉーーーー!牧もブロックしたぁ!!」

「ゴール下の摩天楼!!」




(花形・・・、やるな・・・。)


花形の想像以上の動きに、戸惑いを隠せない牧。


(やはり、跳躍力に、瞬発力が格段にあがっている。これは少々やっかいだな。)



(牧さんが、あんなに綺麗にブロックされたのは、赤木以来だぜ。)

ボールは、再び、ラインをわっていた。



藤真は、花形のブロックを傍観者としてただ眺めていた。

藤真の瞳に写っているのは、牧の姿だけ。



(俺は、牧に勝てないのか・・・。)




翔陽 10
海南 8







続く。

#28 【weak point】

2008-12-27 | #02 翔陽 選抜編
翔陽 2
海南 2




翔陽のオフェンス。

藤真からハイポの花形、ローポの永野へと流れるようにボールが渡り、得点を追加。




「さすがに、翔陽はでかいな。海南は、そんなに大きくないチームだ。高さのバスケをされると喰われるかもしれんな。」

「ええ、田岡さん。翔陽の藤真さん、花形さんのホットライン、要チェックですね。」

「誰が、田岡さんだ。監督といえ、監督と!」

「ノリですって。もう・・・。」

先ほど、試合を終えた陵南選手が、赤木たちのすぐそばの観客席に座る。



「田岡監督!おめでとうございます。みんなもお疲れ様。いい試合だったぞ。」

「おめでとうは、優勝してからにしてくれ。」

声をかける魚住に、田岡が微笑む。



「ん!?越野、仙道と福田は?」

「帰りましたよ。」

「まったく、自分勝手なやつらだ。」

怒りを通り越して、呆れ顔の田岡に彦一がフォローをいれる。


「お2人は、体育館ですよ。練習するっていってはりました。」

「・・・、そういうことなら・・・。まぁ、よしとするか・・・。」

田岡は納得いかない様子。



「彦一、宮城たちは?」

「宮城さんたちも、一足お先に帰りましたよ。」

「何!?試合を観戦するのも、練習のうちだと言っておいたのに。
あのバカたれどもは。宮城もキャプテンのくせに帰ったのか。」

「ええ。ただ、安西監督も帰りはりましたよ。」

「何!?安西先生も!?ん・・・、そういうことなら・・・。まぁ、よしとするか・・・。」

田岡同様、赤木も納得のいかない様子。


(安西先生、なぜ?WHY?)




「わぁぁーーーー!!」

歓声があがる。




「ん!?」

観客席の赤木らがコートに目を向ける。




『ガシ!』


神のスクリーンに藤真は身動きが取れない。

再び、牧と長谷川の1on1。


(くそっ!)



『キュ!』


だが、今度は簡単には抜かれない。



『キュッ!』


(そう簡単に牧さんは止められねぇよ。)


清田が牧を見て思う。



(ほらな。)


牧が長谷川を抜く。


(ぐっ!)



『ドン!』



思わず、長谷川は抜かれ際に牧を押してしまった。


にやっと笑う牧。



笛がなる。



『ピィーーー!!』


「青#6!プッシング!」



「ドンマイ、一志!ファウル抑えていこう。」

「あぁ。すまん・・・。」

藤真が声をかける。


(やはり、一志のところを狙っているのか・・・。)




再び、海南のオフェンス。

清田から神にボールが渡る。




「神の3Pかーー!」

「打てーーーー!!」




『キュ!』


(速い!)


長谷川がシュートチェックに跳ぶ。


だが、フェイク。


神は冷静にワンドリから、一歩踏み込み、ミドルシュートを決めた。



「ナイッシュ、神さん!」



(俺のところを狙っている・・・。)


「一志、気にするな。抜かれてもかまわん。後ろには俺たちがいるんだ。信頼して当たっていけ。」

花形らが声をかける。

長谷川は、花形、高野、永野を見渡し、小さくうなずいた。




翔陽 4
海南 4




「清田!」

牧が清田に指示。

親指を立てて、藤真をさした。


「OKっす!」



『キュ!』




「おっ、海南が動いたな。いつもより早い対応だ。」

「藤真に清田がボックスワンか・・・、翔陽の高さに対抗するためには、ゾーンが絶対だ。
だが、一般的なゾーンでは藤真がフリーになってしまい、結局は、4人のビッグマンをうまく使われてしまう。
藤真へのボックスワンは、当然の作戦といっていいな。」

「清田でとめられますかね?牧のほうがいいんじゃないですか?」

「確かに清田じゃ藤真を完璧に抑えられるとは思えんが、4人のビッグマンに対抗するためには、
サイズ、パワーは少しでもあるほうがいい。現時点では、牧がゾーンの一角を担うほうが望ましいな。
それに・・・。」

「それに?」

「俺は、海南にとっては藤真よりも花形のほうがやっかいだと思っている。高頭も牧もそう思っているかもしれないな。」

田岡や越野らが、海南のディフェンスを分析している。



(牧さんに任せられた以上、ぜってー藤真をとめる!)


(牧!引きずり出してやるさ。)



藤真が清田に1on1をしかける。



『キュッキュ!』


『ダム』


(いいディフェンスしてるな。だが、まだまだだ。)



『シュン!』



清田の顔面を掠めるような鋭いパスが、藤真からノールックで放たれた。



(!!!)



驚いた清田がボールの軌道を追うとそこには、牧、神を背中で押さえ、花形がハイポストでボールをキャッチしていた。


花形はそのままノールックでゴール下の高野にボールを放り込む。



『ザシュ!』



武藤の上から、高野が決める。


「よし!」




翔陽 6
海南 4




(翔陽は徹底的にゴール下で攻める作戦か。だが、海南も一歩も引かないぜ。)



海南のゴール下というウィークポイントをつく翔陽のオフェンス。

一方、執拗に長谷川を攻め立てる海南のオフェンス。

お互いが確実に点に結び付けていたが、ここで翔陽に予想外のトラブルが発生する。




翔陽 10
海南 8







続く。

#27 【互いの作戦】

2008-12-25 | #02 翔陽 選抜編
選抜神奈川県予選 準決勝 第2試合

翔陽×海南




「両チームともベストメンバーね。翔陽の摩天楼軍団をどう抑えるか?海南は、ディフェンスが重要よ。」

「最後の決戦に相応しいですね。牧君の中、神君の外をどう抑えるか?翔陽は、ディフェンスが重要です。」


『パコン!』


「同じようなこと言わんでいいの!!」

「いったっい、すいません・・・。」




コートでは。



『バン!』



ジャンプボールは花形が勝っていた。

ボールは、高野がキャッチ。



「藤真!」


いち早くダッシュをきっている藤真を牧が追走。


だが、高野はかまわず前へパスを放つ。




「出た!翔陽のワンパス速攻!!」




「甘いわ!」


清田が叫びながらパスカットを狙うが、届かない。


「あれ!?」



ボールは、海南ゴール下に供給される。



『キュ!』


藤真が跳ぶ。


(この1本で波に乗る!)



『ダン!』


牧が跳ぶ。


(先制点は入れさせん!!)



ボールは。



『バチィン!』


『バン!』



牧がパスカット。

弾いたボールは、ボードに当たって跳ね返った。



だが、そのルーズボールを花形がキャッチ。


そして、そのまま、リングに叩き込んだ。



『ドガァ!!!!』




「先制点は翔陽!」

「うぉぉーーーー!!」

「花形、すげーー!リバウンドダンクだーー!」




「ナイスフォロー。」

「藤真もナイスランだ。」



(みんなが油断していたとはいえ、センターサークルから、ここまで誰よりも速く辿り着いた花形、大分走りこんできたな。)

牧が思う。




(柔のセンター花形か、うちとの相性や身長を考えると翔陽で一番怖いのはやつかもしれないな。)

とベンチの高頭も感じた。




(花形・・・。)

観客席の赤木と魚住も花形の脚力に驚いている。




翔陽 2
海南 0




「花形君のダンクは華麗ですね。
ん!?あれ??翔陽は、ゾーンではないですね。牧君に藤真君、神君に長谷川君、ん??」

「アホ。あれは、トライアングルツーよ。IHのときに、湘北が牧君と神君をとめたゾーンディフェンスよ。」

「どうりで、どっかで見たことがあったと思いましたよ。」

と笑う中村。

「・・・。」

にらう弥生。

「・・・。」

眼を逸らす中村。



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≪回想≫

試合開始前


「海南で怖いのは、牧と神だ。花形、永野、高野がいれば、海南にリバウンドをとられるわけがない。
牧、神にプレッシャーを与えて、リバウンドを全て獲る。いいな?」

「おう!」


「一志、任せたぞ。」

「神を10点に抑える。」


「牧は俺が抑える!」


(牧だけは絶対に・・・。)



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海南のオフェンス。


『ダムダム・・・。』


(そうきたか。だが、翔陽がどうこようが、俺たちは俺たちのバスケをするまでだ!)

牧が神と清田に目で合図を送る。



(来る!)



『キュ!』


牧が藤真を抜きにかかる。


(真っ向勝負か?)


『ガシ!』



清田が藤真にスクリーンをかける。

だが、ファイトオーバーで、清田を交わす。


(甘い。)


(ちっ。)



『ドン!』


続けて、神が藤真にスクリーンをかける。



さすがの藤真も執拗なスクリーンに体勢を崩す。


(ぐっ!)


「一志、スイッチ!」


(にやっ。)


牧が狙っていたのは、この長谷川との1on1。



『キュッキュ!』


『ダム』


『キュ!』



牧が長谷川を左右に揺さぶる。



『ダム!』



長谷川のバランスが崩れた一瞬を突き、長谷川を掠めるように抜いた。



『ザシュ!』



牧がオーバーハンドレイアップから得点を決める。




翔陽 2
海南 2




「藤真、すまない。」

「いや、一志のせいじゃない。次、とめていこう。」



「牧さん、ナイッシュ。」

「作戦通りっすね。」

「あぁ。次、しっかり守るぞ!」


(長谷川は、手を出してこないか。)





「いいぞ!!牧!!」

誰よりも大きな声をかけるベンチの高頭。


(見たか、藤真め。高頭の作戦をーー!!)



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≪回想≫

試合開始前


「藤真め!」

未だに藤真への対抗心に燃えている高頭。



「監督、どうしましょう・・・。」

牧が尋ねる。

「ここは智将高頭の腕の見せ所だ。」ぶつぶつ。

「翔陽に高さで勝てるチームは、全国でもそうはいないだろう。
だが、横の動きではどうだろうか?」

「スピードってことっすか?」

と清田。

「あぁ。スピードに関してなら、翔陽は並みのチームだ。お前も藤真とそう変わらんだろう。」

高頭は続ける。

「そして、翔陽の中でスピードがあるのは、藤真と長谷川だ。
やつらが、長くコートにいられると攻め辛いのも確かだ。神もフリーになれんしな。」

「いや、そんなことはないですよ。」

冷静に対応する神。


「そういうな。長谷川もお前をとめることに必死だ。まずは、序盤の作戦として、長谷川を狙え。
あいつを追い出せは、神についていけるやつは翔陽にはおらん。」


『パタパタ・・・。』


「よし!監督の指示通り、序盤は長谷川から攻める。体力を奪い、ファウルをもらっていこう!」

「おう!」



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スピードで揺さぶり、長谷川の体力、ファウルを奪う海南の作戦。



藤真は海南の作戦を薄々感じていた。


(フリーの清田ではなく、あえて長谷川との1on1を選択した牧・・・。)



「花形、一志のフォローを頼む。」

「あぁ。」



(一志を狙ってくるか・・・。)



だが、藤真にも予期せぬトラブルが着実に忍び寄っていた。




翔陽 2
海南 2







続く。

#26 【帝王対最強の挑戦者】

2008-12-24 | #02 翔陽 選抜編
選抜神奈川県予選 準決勝 第2試合

翔陽×海南




「俺は予備校があるから帰るが、魚住はどうする?」

と観客席を立つ池上。

「俺は、牧と藤真の対決を最後まで見ていく。赤木と木暮は?」

「俺も残る。」

「あぁ、俺も残るよ。少しでもバスケのある環境にいたいからな。」

木暮が続ける。

「やっぱり打倒海南を目標の一つとしてきた俺としては、
最後は、藤真に勝たせてあげたい気分だな。赤木と魚住はどう思う?」



「はらたいらさんに3000点!」ドーン。


「竹下景子さんに5000点!!」ドーン。


ゴリ顔の両者。


(意味がわからないよ・・・。)

何もいえない木暮であった。



海南応援団から、太い声が発せられる。

「常勝!常勝!常勝!」



藤真応援団も位置につき、黄色声援を送っている。

「藤真!健司!ファイト!健司!」




「牧と藤真の対決を1年待ったぞ!!」

「今日こそ、牧を倒すんだ!藤真ーー!!」

「神、今日も3P見せてくれよ!」

「花形がNo.1センターだーー!!」




陵南×湘北戦が終了し、一旦収まっていた観客席も再び活気にあふれ出す。



両チームがコートに出てくる。




藤真が円陣を組んでいる。

「練習どおりやろう。悔いは残すな。俺たちがNo.1だ!」

「おう!」




「藤真め。」

先ほどの心理戦で敗北を喫した高頭は、ただただ藤真に対抗心を燃やしていた。

高頭の代わりに、牧が指示をだす。


「スピードで勝負。走り負けるな、いいな?」

「はい。」

「清田。相手を揺さぶれ。」

「はい。スピード勝負なら、翔陽で俺にかなうやつはいないですよ。かっかっか。」

ヘアバンドをあげる清田。




アップを始める両チーム。

淡々とコートとボール、バックボードの感触を確かめている。




「さすが、全国の常連、海南と翔陽ですね。雰囲気が違いますね。」

「ん!?どう違うのかしら?」

「んーー、海南と翔陽、それぞれのチームカラーがでてるというか・・・。」


『パコン!』


「そんなの当たり前じゃないの!帝王牧君を中心に神奈川の看板を背負って戦ってきた海南、
かたや県2位が指定席となっている藤真君率いる翔陽。
全国の常連という点では、一見華々しく見える両校だけど、牧君と藤真君が歩いてきた3年間は、大きく違っているわ。
全ての挑戦者を受け入れるが如く堂々と構えている海南、神経を研ぎ澄まし、王権交代を淡々と狙っている翔陽。
まさしく帝王対最強の挑戦者といったところね。」

「おう!さすが、相田さん!言うことが違う!!」


『バチィーン!』


「いい加減にあなたも記者らしい言葉を使いなさい!」

「はっはい・・・。」しょぼーん。


「そして、この牧君と藤真君の対戦は、今日で最後となる。今後の大学バスケ界を占う意味でも要チェックだわ。」




『ピィーーーー!!』


「始めます!!両校前へ。」




「牧、頼んだぞ!!」

「翔陽、頑張れーー!!」

「今日こそ、牧を越えろーー!!」

「負けるな!海南!!」




両チームのスターティングメンバーがコートに立つ。



『ガシ!』

牧と藤真が握手をする。


「今日は、勝たせてもらうぞ、牧。」

「ふっ、生意気な。」

両者が微笑む。



センターサークルに入った花形と高砂。


主審の手からボールが放たれる。



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【翔陽】青

PG…#4 藤真 健司 179cm/3年
SG…#6 長谷川 一志 190cm/3年
SF…#7 永野 満 191cm/3年
PF…#8 高野 昭一 193cm/3年
 C…#5 花形 透 197cm/3年


【海南】白

PG…#4 牧 紳一 184cm/3年
SG…#10 清田 信長 179cm/1年
SF…#6 神 宗一郎 189cm/2年
PF…#9 武藤 正 184cm/3年
 C…#5 高砂 一馬 191cm/3年


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続く。

#25 【高頭VS藤真】

2008-12-22 | #02 翔陽 選抜編
選抜神奈川県予選 準決勝 第1試合

湘北×陵南




試合開始前。

体育館サイドの廊下。


ウォーミングアップ中の翔陽選手。



「終了だ!みんな、汗を拭いて、控え室に集合してくれないか。」

「ん!?陵南と湘北戦は、観戦しなくていいのか?」

「あぁ。今は目の前にいる海南だけに集中する。控え室でもう一度、作戦を確認しよう。
鎌田、湘北と陵南のビデオはちゃんと撮っておいてくれ。」

「はい。わかりました。」



(ふぅっ、今日の藤真さんは、今まで見たことのないくらい気合が入っているな。)

(まぁ、仕方ないな。牧を倒せるチャンスは、今回で最後だから。)

(何とか勝たせてやりたい。)

翔陽の選手がそれぞれ思う。




廊下から、翔陽控え室に向かう途中、海南の高頭と出くわした。

「おう。藤真。」

「あっ、高頭監督。国体のときは、お世話になりました。」

「いや、こちらこそ。藤真がいてくれて頼もしい限りだったよ。
選手層の薄いセンター陣のなかで、花形もよく頑張ってくれた。」

「いえ。私も大変勉強になりました。」



『パタパタ・・・。』

高頭が続ける。


「ん!?もう控え室か?湘北陵南戦は観戦せんのか?いい試合になると思うのが・・・。」

「ええ。これから対海南戦の作戦会議です。
今の翔陽の選手たちには、今日の海南戦のことしか頭にありませんから。」

「そうか。今日はお手柔らかに頼むぞ。」

「はい。海南は、全力を出し切ってくださいね。手を抜いた海南を倒しても、自慢にはなりませんから。」にや。



『パタ!』

扇子を閉じる高頭。

「あぁ。牧にそう伝えておくよ。」

(藤真め。デカく出おったな。)

どこか嬉しそうな高頭。


「あっ、高頭監督!」

「なんだ?まだ何かあるのか?」


「今日は、プレーでは牧に、頭脳では貴方に勝ちますから。」にこり。



『ピクッ。』


(この智将高頭に頭脳で勝つだと??いいおったな・・・。だが、貴様の考えはお見通しだ。)


「ふっ。楽しみにしているよ。」

高頭が、少し笑いながら答えた。


「では、のちほど。」

「あぁ。」




「藤真、高頭監督にあんなこと言っていいのか?」

と高野が心配そうにいう。

「挑発して、少しでも高頭監督の平常心を奪えればと思ったんだが、そう簡単にうまくはいかなかったな。
さぁ、改めて作戦会議だ。」

少し微笑む藤真。


「そういうことか、相変わらず策士だな。」




高頭×藤真

第1戦 ドロー




翔陽が、控え室で作戦会議中のころ、観客席の海南は。


「藤真さんたちは、どこですかね?」

神が尋ねた。

「翔陽は、控え室で作戦会議だそうだ。」

高頭が答える。

「うちはしなくていいんですか?」


『ポン!』


「なーんも考えておらん。」

(藤真の出方を見るか。)

清田の問いに、扇子をたたんで、高頭が答えていた。




体育館のトイレ。

便器を前に、2人が並ぶ。


「高頭監督。」

「おぉ、藤真。今日はよく会うな。」

「えぇ、奇遇ですね。」

2人とも何かを狙っている様子。


先制攻撃は、高頭。


「第3Qを終了して、62点の同点だ。うち(海南)の決勝の相手は、まだわからん。」

(うちの決勝の相手?)


「そうですか、うち(翔陽)の決勝の相手は、まだ未定ですか?」にこり


すぐに藤真が冷静にやり返す。


(オウム返し、まだ若いな。)

鼻で笑う高頭。


「うちは、どちらが来ても、決勝では勝つ自信があるぞ!」

「えぇ、うちもです。仙道や流川とやるのが、今から楽しみですよ。」

と挑発のやりあい、意地の張り合い。


(やるな、藤真。)


(さすがですね、高頭監督。)


「では、次はコートでお会いしましょう。」

「あぁ、そうしよう。」

すれ違いざまに、藤真がいう。


「あっ、高頭監督!顔の割りに小さ・・・、いえ、何でもないです・・・。」


予想外の藤真の下ネタの口撃に高頭を衝撃と屈辱が襲う。


(気にしていること・・・。)




高頭×藤真

第2戦 藤真勝利




体育館サイドの廊下。

次の試合の海南、翔陽両選手が待機している。

そして、3度、高頭と藤真が出会う。


「おや、翔陽の諸君、また会ったな。」

「えぇ。」


「・・・。」

花形たちは、高頭に返事をしたが、藤真は黙っていた。


「藤真、先ほどは大人気なかったな。いやー申し訳ない。」

後頭部をかきながら、高頭が藤真に謝る。


「・・・。牧、今日は勝たせてもらうぞ!」

「ん!?あぁあ、そう簡単にはいかないぞ。」


(監督を無視??)


少し戸惑いながら、牧が答えた。


「牧・藤真の3年間に渡る闘いも今日で最後だと思うと、お前らの一ファンとしては悲しい。」

高頭がいう。


「・・・。ところで、牧は大学決まったのか?」

そこにいる選手全員が疑問に思う。


(藤真は高頭監督の声が聞こえてないのか??)


「あぁあ、今は検討中だ。選抜中に、決めるつもりだけどな。」

やはり戸惑いながら、牧が答えた。


内心イラっとしはじめている高頭も思う。


(藤真め!無視する気か!!)


「今日は、最後までフェアプレーで。」


と藤真に握手を求める高頭に対し、藤真は・・・。


「牧、悔いを残さないようにやろうぜ。」

牧と握手をした。



そして、そこにいる全ての人が思った。



(藤真は、完璧に高頭監督を無視している!!)



高頭監督は、出した手を引っ込めながら、頭をかいている。


「いやー、まいった。まいった。」

と笑いながら、話す高頭であったが、内心は腸が煮えくり返るほど、憤慨していた。


(藤真め!選手たちの前で恥をかかせおったな!)


もはや、平常心とは程遠い高頭は、心の中では怪獣のように火を噴いて、暴れている。


高頭を見て、ポリポリと顔をかきながら、牧は思った。


(監督を挑発しする作戦だったのか。さすが、藤真だな。)



高頭×藤真

第3戦 藤真勝利




高頭監督、藤真の頭脳心理戦は、藤真の勝利で終わった。








続く。

#24 【翔陽の決意】

2008-12-19 | #02 翔陽 選抜編
選抜神奈川県予選 準々決勝 第3試合

翔陽×武里




翔陽ベンチでは藤真の指示が飛んでいる。

「高野、永野、一志はここで終了だ。伊藤は2番、杉浦は3番、Cには秋が入ってくれ。花形は、4番を頼む。」

「はい!」

「ああ、秋とツインタワーだな。了解。」

「残り10分だが、最後まで手を抜くな。全国まで走り抜けるぞ、いいな?」

「はい!」




『ピィーーー!』


「始めます!」



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SG…#6 長谷川 一志 190cm/3年

SG…#9 伊藤 卓 181cm/2年

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SF…#7 永野 満 191cm/3年 

SF…#12 杉浦 士郎 185cm/2年 

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PF…#8 高野 昭一 193cm/3年 

 C…#13 宮田  秋 195cm/2年 

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「さすが、翔陽!控えもデカイ!!」

「#13は、花形くらいあるぞ!!」




選抜神奈川県予選 準々決勝 翔陽対武里戦は、40分間通して、翔陽ペースで進んだ。

序盤から、4枚の190cm台、通称摩天楼軍団がゴール下を圧倒。

オフェンスでは、司令塔藤真が4人のビッグマンをバランスよく動かし、
ゴール下から着実に得点を重ね、第1Qでは、25点差、前半終了時には41点の差をつけた。

また、藤真をトップに置いた1-3-1のディフェンスゾーンも武里の外、中を封じ、
リバウンドから藤真へのワンパス速攻という場面も多く見られ、
ハーフコートオフェンスだけでなく、アーリーオフェンスにも対応できることを証明した。

第4Qには、控え選手の2年生トリオを出場させる余裕も伺わせたが、翔陽も海南同様ベンチ層は厚く、
C宮田が出場10分でダブルダブルを達成、存在感を見せ付けた。

なお、この試合、藤真は大会新記録となる24アシストを記録した。



翔陽 109
武里 43




IH以降、3年生全員が残り、選抜に照準を絞った翔陽が、ベスト4を争う試合とは思えないほどの大差をつけて圧勝する。




「牧、藤真が去る来年こそ、全国だ。みんな泣くな・・・。」

と太っちょ監督。


選手たちは、体力の限界を感じていた。

「ぜえ、ぜぇ、もう走れない・・・。」




選抜神奈川県予選 準々決勝

翔陽×武里


翔陽 109
武里 43



【翔陽】青

#4 藤真 12P 24A
#5 花形 26P 15R
#6 長谷川 13P
#7 永野 18P
#8 高野 20P 10R
#9 伊藤 4P
#12 杉浦 5P
#13 宮田 11P 10R



【武里】白

#4 林原 隆行 5P
#5 戸沼 一宏 8P
#6 今村 恵三 8P
#7 大山 一宏 7P
#8 秋田 智成 15P




それから、1週間後・・・。



翔陽高校 体育館。


『ピィーーーー!』


「練習終了だ。明日の試合に備えて、各自しっかりクールダウン、ストレッチをしておくように。」

監督兼選手の藤真は、コーチも兼任、練習も仕切っている。

「はいっ!」



「ついに牧との最後の試合だな。」

藤真の横で、ストレッチをしている花形が言った。

「あぁ。決勝ではないのが残念だが、牧を倒して、全国に行く!そのために、3年全員が残ったのだからな。」

「あぁそうだ。最後は、うちがもらおう。このチームでもう一度、全国にいこうな!」

「あぁ。」

藤真が少し笑った。




いよいよ、明日。


3年間に及ぶ、神奈川のバスケ界をリードしてきた牧と藤真の闘いに終止符が打たれる。








続く。

#00 【はじめまして】

2008-12-18 | #00 ご挨拶&目次
こんにちは。毎回、拙いブログを見ていただきありがとうございます。

うまだんくと申します。

名作スラムダンクの続きを勝手にアレンジし、書かせて頂いております。



【スラムダンクの続き】は、多くの方が、神がかり的にに、そして天才的に書いており、

諸先輩方に比べれば、足元も及ばないと思っております。

文章表現、バスケの知識も乏しく、スラムダンクのイメージにそぐわない不適切な表現等あると思いますが、

うまだんくはうまだんくなりの【スラムダンクの続き】を書かせて頂きますので、今後とも宜しくお願いいたします。

ヘタはヘタなりに頑張ります。



また、素人が勝手にアレンジしていますが、もし著作権絡む問題等がございましたら、ご連絡下さい。

#00 【陵南 選抜編 目次】

2008-12-17 | #00 ご挨拶&目次
#1 【新生陵南】

#2 【秘密特訓】

#3 【新キャプテン】

#4 【前哨戦】

#5 【福田吉兆】

#6 【試合開始】

#7 【嵐の前】

#8 【エース仙道】

#9 【最初の一歩】

#10 【後半の行方1】

#11 【後半の行方2】

#12 【駆け引き】

#13 【陵南の風】

#14 【ディフェンスの穴】

#15 【チームプレー】

#16 【流川始動】

#17 【てめーに勝つためだ】

#18 【三井と福田】

#19 【選択肢の一つ】

#20 【1on1】

#21 【日本一の選手】

#22 【ライバル】

#23 【勝敗の果てに】

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▼ 翔陽 選抜編 目次

#23 【勝敗の果てに】

2008-12-16 | #01 陵南 選抜編
「安西先生、ありがとうございました。」

「いい試合でしたよ、仙道君。次は負けませんよ。」

「楽しみにしております。」にこり。

「牧君を倒してこそ、神奈川県一です。頑張ってください。」

「はい。」




「ありがとうございました。」

湘北のメンバーが田岡に頭を下げる。


「三井。」

「あ!?」

三井の眼は、今にも涙で溢れそうである。


「膝冷やしておけ。お前には、この先もある。」

(あいつには、この先もバスケをやらせたい。)

「あぁ。ありがとうよ。」

三井は、面倒くさそうに答えた。



だが、数日後、三井は、安西、田岡の推薦状が、決め手の一つとなり、県内の大学から推薦をもらうこととなる。




「宮城君、新キャプテンとして、初めて挑んだこの大会。みんなを引っ張ってきてくれてありがとう。」

「先生、負けてしまい申し訳ありませんでした・・・。」

安西は、宮城の肩を軽く叩く。



「三井君、君のあきらめない心が、チームを何度でも蘇らせた。3年間、お疲れ様でした。」

「先生・・・、3年間お世話になりました。」

三井の眼から、大粒の涙が流れ落ちた。


宮城が小声でボソッと言う。

「実質、半年だけどな。」

「何だとーー!こらーー!」

湘北ベンチは、笑いで包まれた。



「流川君、君にはまだやらなければならないことがあります。もっと練習しなさい。努力は裏切りません。」

「うす。」

流川は、崩れるように椅子に腰掛けた。


安西は、その後、選手の一人ひとりに声をかけた。


そして、最後に言う。


「負けたのは、至らなかった私の責任です。君たちはよくやってくれました。お疲れ様でした。」




「おまえらーー!よくやったぞ!!」

歓喜に溢れる陵南ベンチ。

「福田、ナイスプレーだったぞ!」

「越野、植草、山岡もよく頑張った!」

「仙道、お疲れ様!!」


田岡もコートから戻ってきた選手に声をかけ、勝利の余韻に浸る。

隣で、福田も浸る。


「・・・。」ダブルぷるぷる・・・。


「俺、何もしなかった・・・。せっかくのデビュー戦だったのに・・・。三井さんの前だったのに・・・。」

山岡は泣いた。




「あいつがいたら、この結果も変わっていたかもしれないな。」

「それは、どうだかな。」

「自慢の後輩たちだろ?俺は、自慢の後輩たちだ!!」

「ふん!たわけが。」

「素直じゃないな。」にこり。

魚住と赤木の会話に、笑いながら小暮が交じる。




「ハルコちゃーーん!うちらは、帰るよ!駅前のパチンコ屋、今日は回るんでね。」

「うん、頑張ってね!私は、控え室に行ってくる。」




流川親衛隊、仙道親衛隊、三井応援団は消え、代わりに、ベンチ入りできない海南、翔陽両選手が座る。


そして、海南応援団、藤真応援団も位置についた。




「決勝の相手は、陵南か。再び、仙道と対決だな。牧。」

「えぇ、相手にとって不足ないです。だが、もう一人倒しておかなければならないやつがいる。」

「おぉ、そうだったな。さぁ、思いっきり、やってこい!!」

「はい!!!!」

高頭が快く選手を送り出した。




「牧を、海南を倒すのは、うちだ。最後の大会で、うちが優勝し、有終の美を飾る!ゴール下は、頼んだぞ、花形!」

「おう、任せておけ!」

「よし。行くぞ!!」

「シャー!!」




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選抜神奈川県予選、準決勝

湘北×陵南

湘北 88
陵南 89


【湘北】赤 88

#4 宮城 10P 10A
#5 安田 4P
#6 潮崎 0P
#7 流川 36P 7A 11R
#8 角田 8P
#9 三井 30P(3P7本)


【陵南】白 89

#4 越野 11P
#5 植草 6P
#6 菅平 8P
#7 仙道 35P 13A 10R
#8 福田 29P
#12 山岡 0P


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IH最強の王者山王工業を破る偉業を成し遂げた湘北高校バスケットボール部は、
選抜神奈川県予選、準決勝で陵南に破れ、敗退する。


天才エース仙道彰率いる陵南高校が決勝進出を決めた。


この日、中学MVP 湘北高校の三井寿は、本日を持って、高校バスケ界から引退した。







#01 陵南 選抜編 終了
#02 翔陽 選抜編 に続く。