うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#249 【湘北魂】

2009-12-26 | #09 湘北 県予選編
5人を迎える湘北ベンチ。


「うぅぅ。」

「ぐっひっ。」

涙を流し、言葉の出ない3年生安田と潮崎。


「ぐ・・・。」

角田も涙で答える。


「う・・・。」

「がんどうぅだぁ・・・。」

「ひっひっひ。」

涙を流す桑田、佐々岡らの2年生。

石井は鼻水も垂れ流している。


対する1年。

「お疲れ様です!!」

「凄いっす!!!!」

「勝ったぁ!!!」

「優勝だーーーー!!!」

観客席の1年生は、歓喜に溢れている。



「けっ。情けねぇぞ、お前ら!!先輩のくせにわんわん泣きやがって!!」

宮城が大きな声で怒鳴る。


「ったく。しょうがねーな。リョーちんは。」

と桜木。


「・・・。どあ・・・。」

流川は途中で止めた。


「よくいうよ。宮城さんは。」

笑う柳。


彩子が宮城にそっとタオルを差し出した。


「リョータ・・・。さぁ、涙を拭いて・・・。」


強がってはいたが、宮城の両眼からは、大きな涙がこぼれていた。


「アヤちゃん・・・。」

「なーに、泣いてるのよ!!キャプテンがだらしない!!ビシっとしなさい!!ビシっと!!」

「おっおう!!」

「なんだよ。キャプテンは。あははははっ!」

「泣いて、怒られて、小学生か!!」

「ホント、彩子さんには頭が上がらねぇな、リョーちん!!」

「うるせ!!」



「宮城君。ご苦労様でした。最後のプレーは、最高のプレーでしたよ。」

「先生・・・。なんとか、勝つことができました。
あと2ヶ月、また、お世話になりますので、宜しくお願いいたします!!」

「ほっほっほ。また、頑張りましょう。」


「けっ!また、俺のキャプテン就任が伸びちまったじゃねぇかよ!!」

「花道がキャプテンになると決まってるわけじゃねぇだろ!!」

「俺は、ゴリに勝った男だぜ!リョーちんが、キャプテンやってること自体がおかしいんだ!!」

「なにをー!」


『バシ!』


『バシ!!』


「アヤちゃん!」


「彩子さん!!」


「はいはい。戻るわよ!早く準備しなさい!!」


「はい・・・。」

頭を押さえながら、桜木と宮城は声を揃えた。



(みんな。よく諦めずに、頑張ってくれました。本当に素晴らしいこたちだ。
赤木君、三井君、小暮君、見てますか?これが、君たちの残した湘北魂ですよ。)

そういうと安西は、眼鏡を少しあげ、眼頭を押さえた。




「さぁ。これから、愛知に飛ぶわよ!」

「あっ愛知ですか!?」

「明日は、IH第3位の名朋とベスト8の愛和の試合よ。
神奈川と同じくらいヒートアップするに違いないわ!さぁ、行くわよ!」

「着替えも持ってきてないですよーー!!」

「私は持ってきたわよ!!」

「聞いてないよーー。」




(お兄ちゃん・・・。

 お兄ちゃんたちが、築いてきた湘北バスケ部に、また一つ自慢するものが出来たよ。

 宮城さんは、キャプテンとして、PGとして、チームをまとめ、優勝に導いてくれました。

 ベンチのみんなもプレイヤーと一緒になって戦いました。

 1年生の柳君も白田君も、お兄ちゃんたちの心を受け継いでいます。

 流川君は、まだ仙道さんには勝てなかったけど、全国大会が終わる頃には、きっと追いついていると信じています。

 そして・・・。

 桜木君は・・・。

 大きな挫折もして、大きな怪我もして、それでも自分を信じて、努力を積み重ねて・・・。

 そして、今日・・・。

 湘北バスケ部の救世主になりました。

 桜木君のシュートで、逆転優勝したんだよ。

 「ゴリラダーーンク!」って叫んで、スラムダンクを決めたんだ、笑っちゃうね。

 きっと、1年間、ずっとずーーっと、桜木君の中には、お兄ちゃんたちがいて、一緒に戦ってきたんだと思う。

 次は、全国制覇!

 お兄ちゃんより先に湘北が全国制覇するからね!!)




ベンチを片付け、一番後ろを歩いていた晴子は、選手たちの背中を見つめながら、静かに思ったのであった。




祈願の初優勝を果たし、全国への切符を手にした湘北は、『全国制覇』の目標を成し遂げるため、
自称鬼キャプテン宮城の下、きつい練習の日々がまた始まる。



対する準優勝となった陵南高校は、年始に行われる天皇杯での『2勝』を目指し、
仙道・福田ら3年生が全員残り新しいスタートを切った。



赤木・魚住から始まった両校のライバル関係は、流川・桜木・仙道・福田と受け継がれ、
そして、上杉・黒川・柳・白田へと受け継がれていく。



余談であるが、MVPは異例中の異例ともいえる準優勝校からの受賞となった。




仙道 彰




全部門において、ベスト5以内という好成績を残したため、安西を含め、大会関係者からの反対の声はなかった。



一人を除いては・・・。



「おのれー!!センドーー!!負けたくせに、MVPとは!!!」



-----------------------------------------------

選抜優勝大会 県予選 決勝 

陵南×湘北


陵南 98
湘北 99


【陵南】青 98

#4 越野 4P
#5 植草 2P
#6 福田 27P 11R
#7 仙道 25P 15A 7R 
#9 山岡 19P
#11 上杉 9P
#12 黒川 12P 14R


【湘北】白 99

#4 宮城 10P 13A
#7 流川 24P 7R 7A
#8 角田 4P
#9 柳 21P 8A
#10 桜木 24P 16R 6A
#14 白田 16P 8R

-----------------------------------------------


優勝 湘北高校

準優勝 陵南高校

第3位 海南大附属高校
 

MVP  仙道 彰


得点王  神 宗一郎


得点ランキング
1 神宗一郎(海南) 29.0
2 福田吉兆(陵南) 26.7
3 流川 楓(湘北) 25.9


アシストランキング
1 仙道 彰(陵南) 14.3
2 宮城リョータ(湘北) 13.0
3 清田信長(海南) 12.7


リバウンドランキング
1 桜木花道(湘北) 15.3
2 福田吉兆(陵南) 10.8
3 黒川大蔵(陵南) 10.6


ベスト5
G 仙道 彰(陵南)
G 神宗一郎(海南)
F 流川 楓(湘北)
F 福田吉兆(陵南)
C 桜木花道(湘北)








#09 湘北 県予選編 終了
#10 湘北 番外編 に続く。

#248 【陵南仙道物語】

2009-12-24 | #09 湘北 県予選編
湘北ベンチに足を運ぶ陵南の5人。


「うっ・・・。」

上杉は、涙が止まらない。


「ひっく。」

それを見て、福田ももらい泣く。



「安西先生。今日は、ありがとうございました。」


『ガシ!』


安西と仙道が握手をする。


「今日は、うちが勝てましたが、次はどうなるかわかりません。また、いい試合をしましょう。」にこり。

「そのときは、きっとこいつらがやってくれます。」

「楽しみですね。」にこり。


安西は続ける。


「仙道君。」

「はい?」

「流川君は、まだ君を超えていない。だが、近い将来、君と同じ力をつけるはずです。
そしたら、また勝負してください。」

「はい。そのときは、全力で潰しにかかります。」

「ありがとう。仙道君という偉大なプレイヤーが身近にいてくれて、彼らは本当に幸せだ。」

「彼ら?あぁ、桜木もですね。」にこ。

「宜しくお願いします。」

「はい。」



傍らで話す黒川と白田。

「ホントにすまないことをした。」

「大丈夫さ。ただの打撲だ。全国までは治る。
それに、肩が上がらない分、足腰を鍛えるいい期間になりそうだ。」にこり。

「白田・・・。」

「黒川。次、勝負するときも手加減はいらないぜ。」

「・・・。あぁ。全力勝負だ!!」

「福原のことも任せておけ。」

「!!・・・申し訳ないが、春風だけじゃ、うまく話せるとは思えない。頼んだぜ。」

「あぁ。」


『ガッ!』

固い握手を交わした。




湘北ベンチから陵南ベンチに戻る山岡と福田の会話。


「惜しかったっすね。」

「・・・。」

「最後のシュート、まじで入ったと思いましたよ。全身に鳥肌が立ちましたよ。」

「・・・。」

「フクさん。次は、絶対勝ちましょうね!!」

「うるさい。あっちいけ!!」

「なっ!せっかく、励ましてたのに・・・。」


福田が放った最後の弾道の低い3Pシュートは、リング手前で、落下し始め、
リングを通らずに、ネットにだけ触れていたのであった。


(俺が決めていれば・・・。うっうぅ。)


福田は、汗で濡れていたユニホームを更に涙で濡らすのであった。




陵南ベンチ。

田岡と湘北の選手が、挨拶をしている。


「あーーした!!」

「いい試合だった。」

田岡の眼は赤くなっていた。


「うぐっ・・・。」

彦一は泣いている。


「泣くな!彦一!!陵南の仇は、俺がとってやる!!」

と桜木が叫ぶ。

「ばぁい!」

(いや、うちを倒したのは、湘北だろ・・・。)

と植草が桜木に心の中で突っ込んだ。


「流川。全国制覇するには、仙道と同等の力が必要だぞ!!」

「・・・。」

「ふん!流川なんぞいなくなって、俺がいれば、十分だ!!」

「桜木は相変わらずの自信だな。」

「ふん。さては、MVP桜木に嫉妬しておるな!」

「誰がするか!というか、まだ決まっておらんだろ!!」

田岡は続ける。

「だが。お前がもっと活躍しなければ、あいつらにも太刀打ちできないのは事実!!」

「わかってるじゃねーか!!ぜってー、俺が日本一の選手になってやる!!」


『ピク!』


「日本一・・・??てめーじゃ無理だ。ド素人。」

「体力のねぇキツネにいわれても、なんとも思わねぇぜ!ハッハッハ!」



「今更いうことでもないが、全国制覇をする上で、一番重要なのが、
リーダーシップを発揮できる優れたPGの存在だ!!
牧しかり、深津しかり、仙道しかり。」

「あぁ。わかってるぜ!俺がNo.1ガードになる!!それだけだ。」

「ふっ。よろしい。神奈川県の力を見せて来いよ!」

「おう。」

桜木同様、タメ語で答える宮城。




そして、陵南選手を迎える田岡。


「よく頑張った!残念ながら、敗北という結果になってしまったが、今日の試合は、俺の中でベストマッチだった。
その試合で、最後まで戦い抜いたお前たちを俺は誇りに思う。ありがとう。」


そういうと、田岡は、一人ひとり、両手で手を握った。


最後の黒川まで、握手を終えると、再び口を開く。


「さぁ!また、一から鍛えなおすぞ!!仙道!!福田!!お前らも覚悟しておけ!!!」


「!!!」


「俺も!?」


「??」


「当たり前だ!!お前たちをまだ引退させるわけにはいかん!!来年には、天皇杯があるんだからな!!!
2勝だ!!!2勝して、ベスト8を目指す!!!」

「2勝??」


「高校生が2勝もできるほど、天皇杯は甘くな・・・。」

と越野。


「甘ーーーい!!!その考えが甘いのだ!!!俺は、このチームなら、2勝はできると思っている!!
どうだ?お前たちは思ってないのか??」


「・・・。」

「・・・。」

無言の選手たち。



大学生、社会人のレベルの高さをよく理解しているため、安易に言葉に出さない。



だが。


「ふっ。そうですね。」にこり。

仙道が微笑んだ。


「仙道・・・。」

と越野、植草ら。


(仙道さん・・・。)

(仙道先輩がいうなら・・・。)


「よっしゃーー!!陵南のミラクルアンビリーバブルは、来年も続くでーー!!!」


一気に明るくなる陵南ベンチ。


そして、仙道。


(流川・・・。必ず日本一の選手になって来いよ。)


流川の背中を見て、控え室に戻っていった。


IHのMVP仙道は、予選決勝にて、その姿を消した。


だが、天皇杯ベスト8とういう偉業を成し遂げるため、陵南仙道物語は、まだまだ続くのであった。








続く。

#247 【仏様の魂】

2009-12-22 | #09 湘北 県予選編
『ビィーーー!!』



試合終了のブザー。



『ザシュ!!』



福田のブザービーターを狙った長距離3Pシュートは、ネットを激しく揺らした。



陵南ベンチは、沈黙。


湘北ベンチも、沈黙。


同様に、体育館全体が、沈黙していた。


しばしの静寂が訪れる。



『ダムダム・・・。』



聞こえる音は、ボールが弾む音のみ。



『コロコロ・・・。』



そして、ボールが止まった。




「宮城さん・・・。」

コートにいる選手の中で、柳が一番最初に口を開いた。


「リョーちん・・・。」

続いて、桜木が声を出す。


角田は、微動だにしない。



静まり返るコート。



宮城は呆然としていた。


「宮城さん・・・?」

「リョーちん・・・?」

一向に反応しない宮城。


そのとき。


湘北ベンチから、彩子の声が聞こえる。




「リョータ!!!!」




その言葉に反応する宮城。



(ア・・・ヤちゃん・・・。)



「リョーちん!」


『バシ!』


桜木の3度目の言葉は、宮城の尻を叩く、おまけ付であった。



「さぁ。整列だぞ。リョーちん!」


「あっあぁ。」


我に返る宮城、桜木とともに歩を進める。


「宮城さん。キャプテンは、堂々としてください。」

「あぁ、そうだな・・・。」

柳が加わる。


「うぐ・・・。」

「カク、泣くな。」

宮城が角田の腰を叩く。


「大丈夫か!?」

「うす。」

ゆっくりと流川は、センターラインに足を運ぶ。


「ホント、キツネはだらしねぇな!!」


『ドガッ!』


桜木は、流川のつっている足を蹴った。


「何だが!?」


『バコッ!』


流川も負けじとつったほうの足で桜木の背中を蹴る。


「やせ我慢してんじゃねぇ!!」

「どあほうが。」


「流川も花道もよせ!!早く整列しろ!!」

すでにセンターラインで並んでいる宮城が2人をせかした。


「あとで、勝負しやがれ!!」

「てめーにかまっている暇はねぇ。」


桜木、流川がセンターラインに並んだときには、もう陵南の5人は整列していた。



審判が高らかに声をあげる。





「青98対白99!!湘北高校の勝利ーーー!!!!」




「あーーーーしたっ!!!」




10人の勇姿の礼を合図に、静寂の訪れていた会場に、両チームを称える賞賛が沸き起こる。




「うぉぉぉぉーーーー!!!!」

「湘北が優勝だーーーー!!!!!」

「湘北がついに陵南を倒したーーーー!!!」

「流川ーーーー!!!」

「仙道ーーー!!!お疲れ様ーーー!!!」

「福田!!最後のシュート、惜しかったぞ!!!」

「全国でも頑張れよ!!!桜木!!!」

「両チーム、ナイスファイト!!!」




「最後のアリウープは、恐れ入ったな。」

と仙道が桜木に話しかける。

「ふん。当然だ!なぜなら、俺は天才だからな!ハッハッハ!」

「まぁ、宮城のパスがあってこそだけどな。」にこり。

「なっ!?」


「仙道。陵南を倒したからには、俺たちはぜってー優勝する!楽しみに待ってろよ!」

と宮城が割り込んだ。


「あぁ、楽しみにしてるよ。だが、そう簡単にはいかない。わかっていると思うが、山王、名朋は強い。
特に、北沢が戻ってくるとなれば、山王は確実に優勝候補筆頭になる。」

「あぁ、わかっているぜ。そのために、あいつにはもっと頑張ってもらわなければならねぇ。」

(沢北だけど・・・。)


『チラ。』


流川を見る宮城と仙道。


「そうだな。」にこり。


(なに、笑ってやがる・・・。)


「流川。日本一の選手になってこい。」

「てめーに言われなくても。」


「リョーちん!なぜに流川だ!!逆転のアリウープを決めたのは、この天才桜木だぜ!!」

「わかってるって!お前には、倒さなきゃいけないやつがたくさんいるだろ!!」

「丸男に、デカ坊主か。この天才の敵じゃない!ハッハッハ!!」


(けっ。ホント、めんどくせー。)


「桜木。期待しているぞ。」

「ふん。俺に勝ちたきゃ、死ぬ気で練習して来い!センドー!ハッハッハ!!」

「ふっ。まいったなー。」にこり。



『ガシ!』


その傍らで、固い握手をする黒川と柳。


「今日は、記念すべき俺の初勝利だな。」にや。

「最初で最後だ。次は、負けないぜ。快によろしくな。」

「あぁ。早く、誤解を解いてやらないと。このままじゃ・・・。」




観客席。


『グフッ!!』


「ようやく飲み終わったぜ・・・。さすがに、きつかったぜ!」

と高宮。


「もうおせーよ!!」

と平手で突っ込む大楠。


「ぶひっ!」

「のわぁぁーーー!!!」

「吐きやがった!!!」

高宮は、コーラをもどしていた。




「勝ったな。」

「あぁ。勝った。」

「本当に諦めの悪いやつらだった。」

「まーな。」

と笑う三井。

「それが湘北。それが三井魂っすよね?」

と笑いながら、水戸がいった。

「三井魂か・・・。」


(「諦めたら、そこで試合終了だよ。」)


三井は、安西のいったあの言葉を思い出していた。


「いや、わりー。あれは、三井魂じゃねーや!」

「えっ今更!?」

「あれは・・・。あれは・・・、バスケットの仏様の魂さ。」








続く。

#246 【残り5秒】

2009-12-21 | #09 湘北 県予選編
試合残り時間5秒

陵南 98
湘北 97




宮城が、上杉を、山岡を抜き去った。


眼の前には、陵南のゴールのみ。


宮城が再びドリブルを進めた。



『ダムダム!』




体育館のボルテージが最高潮を迎える。

「いけーー!!」

「湘北!逆転だーーー!!!」

「宮城ーーー!!!」




『ダン!』


宮城が踏み込む。




「宮城さん!!」

「キャプテン!!」

「リョータ!決めろーーー!!!」

湘北ベンチの声援が、宮城の背中を押す。



『シュ!』


宮城の右手から、ボールが離れた。



(よっしゃーー!)



そのとき。



(!!!)



(!!)



「!!!」



「!!!!!」



宮城の左から、突如現れた大きな手のひら。



「!!」



「!!!」



宮城の視界に現る幾度となく、湘北の勝利を叩き潰してきたその男。



「!!!」



「!!」




「センドーーーーーーーだ!!」

「仙道がキターーーーー!!!」

「仙道のシュートブロックーーー!!!」

「ショーーーホク!!万事休す!!!」




「でかしたぁーー!!!」

「仙道さーーーーん!!」




仙道が、宮城のブロックに跳んでいた。



「!!!」



仙道の手のひらは、宮城のシュートコースをとらえている。



「!!!」



「!!!」



だが。



(なっ!?)



(わかってたぜ。)にっ。



(そういうことか。)



仙道は、宮城の口元が緩んだ理由を悟った。



(てめーが来ることくらいわかっていた!そして、あいつも!!)



宮城は、心に強く念じ、そして叫ぶ。



(きやがれ!!)



「花道ーー!!!」



振り返る宮城と仙道。



そこには、幾度となく湘北に勝利を導いた桜木の姿があった。



そして、宮城が高々と真上に放り上げたボールに、飛びついていた。



「おらぁーー、どけ!!センドーーーー!!!」



『ダン!!』



宮城がシュートに見せかけ、真上に放ったボール。

勝敗を決める大事な局面で最大の賭けをはった。



「自分を信じなさい。」



安西の言葉を信じて。

桜木を信じて。

自分を信じて。



シュートではなく、パスを選択した。



その想いに応えた桜木。

宮城の信じたとおり、ボールに飛びつき、今まさにキャッチしようとしていた。



『パシ!!』



「くらえぇ!リョーーーナン!!」



『ザッ!』



桜木は、ボールを両手で掴み、頭の後ろに回す。



渾身の力を込めて。



振り落とす。



そして。



叫ぶ。



「ゴリラ!!ダーーーンク!!!!」



「!!!」


「!!」



『ドガァァ!!!!』



桜木のボースハンドダンクが、体育館に響き渡った。



『ギシギシギシ・・・。』



リングの悲鳴が聞こえる。



『ダン。』



着地する桜木。



陵南ベンチの選手の口は開いたまま、言葉を失う。



同様に、記者席の弥生と中村も、口を開けたまま、見つめ合う。



彩子の眼に涙が溜まる。



晴子の眼からは、一粒の大きな涙が零れ落ちた。



安西が、握り締めた両手の拳を高らかに掲げた。



「!!」



宮城は、振り返り、湘北コートへとダッシュで戻る。



「!!!」



「!!」



それを見て、角田、柳もダッシュで戻る。



流川は、つっている足をやや上げながら、片足で立っていた。



桜木は、仙道と一瞬眼が合うと、大きく振り向き、宮城同様に自軍コートへ向かって走り出した。



そして、ありったけの声で叫ぶ。



「センドーが来る!!早く戻れーーーー!!!」



その桜木の声を引き金に、会場が爆発する。




「ぎゃくてーーーーん!!!」

「わぁぁぁーーーーー!!!!」

「桜木のアリウープで逆転だーーーー!!!」

「陵南、絶体絶命だーーー!!!」

「桜木のやつ、どっから跳んできやがった!!!」

「宮城のシュートは、パスだったのかよ!!!」




会場全体が驚きを見せる中、仙道が叫んだ。



「まだ時間がある!!!諦めるな!!!」



その声は、湘北の逆転を喜ぶ観客を黙らせた。


体育館に稲妻のような緊張感が走る。




残り2秒

陵南 98
湘北 99




エンドラインの仙道が、コートにボールを投げ入れる。


高く浮いたボールに飛びつく粘りの男。


福田がキャッチした。



『ピィ!』 


数字が動き始める。



「まずい!!!」


「フク助!!!」


柳がディフェンスに向かうが、一歩早く福田がドリブルを始めた。



残り1秒。


福田の体は、センターラインを超えた。


前には、黒川と角田。


福田の選択は・・・。




「打てーーーー!!!」

「フクさん!打つんや!!!」




「!!」



3Pライン3m手前。


0秒になると同時に。



『シュ!』


「!!」


「!!!」


福田は、陵南ベンチの声に後押しをされるように、弾道の低い長距離シュートを放った。


そして、会場の唸りを断ち切るブザーの音が、響き渡る。



『ビィーーーー!!!』



「!!!」


「!!」



審判が、静かに3本の指を上げる。


緩い回転をしている福田のシュートは、低空飛行でリングを目指す。


そして・・・。



『ザシュ!!』



ボールが、ネットに触れる音が聞こえた。








続く。

#245 【俺の力で!!!】

2009-12-18 | #09 湘北 県予選編
試合残り時間12秒

陵南 98
湘北 97




仙道のボールを流川、桜木のダブルチームが奪った。


そして、湘北の勝利は、宮城に託された。


左右から詰め寄る陵南の波。


山岡と上杉が、宮城をとらえる。




「良く戻った!!絶対に抜かれるな!!」

田岡の額から汗が流れる。


「拓真!!空斗!!宮城さんを止めるんや!!」

彦一の絶叫がコートに響く。


陵南ベンチは、焦りの表情を見せる。




「リョータ!!これを決めれば、勝利よ!!!」

「リョータ!!」

「宮城さん!!」

「キャプテン!!」

湘北の控えメンバー達は立ち上がり、声援を送り続ける。




福田、黒川が、必死に戻る。


柳、角田が、駆け上がる。


流川は、倒れこんだまま、起き上がることはできない。

足をつっていた。


(どあほうは俺だ!)



仙道は踏ん張り、進行方向を宮城へ向けている。


(間に合うか!?)



倒れこんだ桜木は、立ち上がり、リングに向かう。


(リョーちん!!今、いくぜ!)

膝は青くなっていた。



『ダムダム!!』


宮城の低いドリブルが、ボールを陵南ゴールへと近づける。

だが、山岡と上杉のディフェンスが、突破を許さない。

両サイドから、囲みにかかる。



『ダム!』


(ちきしょう!!抜けねぇー!!)



『キュ!!』


「上杉ちゃんは、そっちだ!!」


「はい!!」


陵南の次世代が宮城に攻め込む隙を与えない。



そのとき。




「リョータ!!」

宮城の耳に届いた彩子の声。


(アヤちゃん・・・。)

言葉が、頭の中に映像として一瞬浮かぶ。



(アヤちゃん・・・。

 アヤちゃん。

 俺は、アヤちゃんだけが笑ってくれればいいと思っていた。

 アヤちゃんのために、バスケをしてきたといっても、過言ではない。

 俺が試合で活躍して、チームが勝って、アヤちゃんが笑ってくれれば、それだけで俺は本当に幸せだった。

 今もその気持ちは、変わらない。

 アヤちゃんの笑顔を俺はいつまでもみていてぇんだ。

 ただ・・・。

 いまは・・・。
  
 ・・・・・・。

 あいつらの笑顔も見てみてぇ。 

 ヤスやカクやシオの泣き笑う顔も。 

 きつい練習にも耐えている1年の笑顔も。 

 クソ生意気な花道の高笑いも。

 大声で笑う流川も見てみてぇ。

 先生の顔も笑いじわでいっぱいにしてぇ。  

 そして・・・。

 アヤちゃん。

 アヤちゃんの最高の笑顔を・・・。

 俺は、ずっと見ていてぇんだ。

 だから・・・。

 だから、この試合・・・。

 ぜってー・・・。

 ぜってー勝つんだ!!!

 俺の力で!!!)




『グワッ!』


宮城の眼に力が入る。


山岡は感じた。



(来る!!!)



『ダム!!』



『ビュン!!』



『キュッ!!』



『ダム!』



宮城の前に立ちふさがる影が一つ。



(けっ、やるな!)


(ふっ、さすがっすね!)




宮城の初歩。


上杉の横から突破を図る宮城。


腰が沈みつつある上杉に並ぶ。


宮城のスピードが、上杉を超えた。


山岡は、足首を半回転させ、力を膝にため、宮城の爆発に備えた。



二歩め。


上杉が気付いたときには、宮城は目の前にはいなかった。


山岡は、溜めた力を解き放ち、上杉の後ろを通るサイドステップを繰り出していた。



三歩め。


宮城が放った殺気にも似た気合。


それを感じ取った山岡は、宮城の動きを咄嗟に察知、突破に対応した。


感じ取れなかった上杉は、宮城に完璧に抜かれていた。



(速い・・・。)




「山岡君が止めた!凄いディフェンスセンス!!」

「いや、経験よ。経験が、宮城君の突破を読んだのよ。上杉君にはまだ足りなかった・・・。」

「宮城君のスピードも尋常じゃない。」




「宮城が1人抜いたーーー!!」

「宮城も速いが、山岡も速い!!」

「よく追いついた!!!」

「いけーー!!宮城ーーー!!」

「守れーー!!山岡ーー!!」




宮城と山岡の1on1。


更に速さを増す宮城のスピード。



『ダムダム!!』


『キュ!』


並走する山岡。


足の回転が速くなる両者。


『チラッ。』


宮城の視界が、残り時間を映し出す。



(8秒・・・。どうする?)

(来るか?待つか?)



3Pラインを超えた瞬間。


『スッ。』


宮城の上半身が一度上がる。



(打つか!いや、来る!!)


山岡の推測は当たっていた。



『ザッ!!』



『ダム!』



宮城の稲妻ステップ。



『キュ!!』



確実に、対応する山岡。



(ビンゴ!)


(・・・。)




だが。



『キュッ!』


宮城がさらに急ストップ。

突っ込んで、引いて、突っ込んで、止まった。

その反動で、宮城の体は、大きく前方へ押し出される。

前かがみになる宮城、背筋と膝にありったけの力を込めて、踏みとどまる。


かたや、山岡。



(まじかよぉ!!)



『キュ!』



「ぐっ!!」



つま先、足首、膝に神経を集中させ、必死に止まった。

だが、勢いづいた上半身を止めることは出来なかった。

倒れ掛かる山岡。



『ガクッ!』



手からコートに倒れる山岡。



(やばい!!!)


(よし!!)



宮城の軋む関節が上体を引き起こす。

そして、フロントチェンジ。




「うぉぉぉーーー!!!」

「キャプテーーーン!!!」

「宮城先輩!!!!」

湘北の歓喜の声。




「リョーーータ!!!」

気の強い彩子の眼にもうっすら涙が溜まっている。


『グッ!!!』

安西は、軋むほどの拳を握り締めていた。




「宮城が抜いたーー!!!」

「うぉぉぉーー!!!」

「湘北が逆転かーー!!!」

「なにぃぃぃーーー!!!」

「すげぇーーーー!!!」




眼の前で、山岡が倒れたのを確認した宮城の瞳。


そして、ゆっくりと視線をあげる。


前に宮城の進行を妨げるものはない。


そこには、リングにしか映っていなかった。



試合残り時間5秒

陵南 98
湘北 97






続く。

#244 【宮城の回想】

2009-12-17 | #09 湘北 県予選編
試合残り時間12秒

陵南 98
湘北 97



宮城が逆転へ向け、陵南リングを目指す。



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>


IH 準決勝 第2試合

山王工業 × 湘北



試合残り時間57秒

山王 73
湘北 76



湘北のオフェンス。


(残り1分で、3点差。ここはじっくり時間を使って1本。)

冷静に戦況を分析し、ドリブルでキープする宮城。


その前には、深津イズムを継承した山王PG加藤夏輝。

(時間を使ってくる気だろ。そうはさせないダス。)



『キュッキュ!』


激しいプレッシャーを与える加藤。


(おせーよ。そんなんじゃ・・・。ん!?)


さらにSG烏山が宮城を襲う。



『キュ!!』




「山王がダブルチームだ!!」

「勝負に出たーー!!」




烏山は、宮城が時間を使い、ボールをキープすると判断するや否や、一気に宮城に詰め寄った。


凄まじいディフェンス。


それは、深津・松本のディフェンスにも匹敵するものだった。



(くそう!なんてディフェンスしてやがる!!だが、これで誰かがフリーになったはず!!)


宮城の視界に、フリーの流川を一瞬捉える。

SF柳葉は、柳のカバーへと向かっていた。


(ツメがあめーんだよ!!)


激しいプレッシャーに耐えながら、低いドリブルで粘る宮城。

そして、2人の間に生じた一瞬の隙を突き、流川へとパスを放った。



「キャプテ・・・。」


「リョーちん!!」



『バス!!』



「!!!」


だが、それは、山王の誘いであった。

流川をフリーのように思わせ、放たれるパスのスティールを狙う。

もちろん、パスコースを意図的に作ったのも加藤、烏山の作戦。


宮城は完璧に騙された。



ボールを奪ったのは、PF福原。

神奈川県出身、柳と同じ中学の福原快であった。



「しまったぁ!!!」



福原から、素早く前線にボールが供給される。



『シュパ!』



PG加藤のレイアップが決まった。

そして、一気に畳み掛ける山王オールコートマンツーマンプレス。



『バシ!』


再び、パスカットされる宮城。



「あっ!!」



柳葉、加藤と素早く回るパスワークから、SG烏山が得意の3Pを沈める。

宮城から奪った2回連続のスティールで、山王はあっさり逆転した。

その後、山王の伝家の宝刀オールコートマンツーマンプレスの前に、宮城は翻弄された。

湘北を、自身を立て直すには、時間が足りなかった。

勝負どころの不用意な宮城のパスが、一瞬にして、湘北に敗北をもたらす結果となった。



山王 82
湘北 76




<<回想>>


IH 第3位決定戦

名朋工業 × 湘北



試合残り27秒

名朋 84
湘北 84




延長戦までもつれ込んだ壮絶な試合となったこの試合。

森重と桜木をファウルアウトで失う激しい3位決定戦となっていた。



『ガコンッ!!』


名朋SF大石のシュートが、流川のチェックにより、外れる。




「リバウンドーーー!!」

「ハクタス!!男を見せやがれーー!!」

ベンチから叫ぶ桜木。




「うぉぉーー!!」



『ガシ!!』


桜木、森重のいないコート内において、最高身長の白田。

本日、20個目のリバウンドを奪い取った。


「流川!!柳!!走れーー!!白田、こっちだ!!」


宮城が、2人を走らせ、パスアウトを指示する。



「キャプテン!!」


白田が、宮城へパス。


(ここは一気に攻める!!)

そして、宮城が前線に、オーバーハンドで投げ込む。




「湘北の速攻ーー!!」

「これを決めれば、決勝点だーー!!」




宮城の放ったパスに飛びつく大石。



『バチィーーン!!』



ボールに触れ、大きく弾け飛ばした。



「!!」



『バシ!』


ルーズボールを拾ったのは、懸命に戻っていたPG中嶋。

大石、森重らとともに、1年前IHを制した猛者であった。



『ビュン!!』



叩きつけられるようなバウンドパス。

3Pライン手前にいるSF大石に再び渡る。

マークマン流川は、前線に走っていたため、大石はフリーとなっていた。


「くっそー!!」


宮城が小さい体を懸命に伸ばし、シュートチェックに飛んだ。


大石は、シュートを打つ構えを見せたが、打たなかった。



『バチィ!』



そして、高らかに響き渡る審判の笛。



『ピィーーー!!』



「白!#4!!」



「・・・・・・・・・。」


歴戦の猛者大石は、3本のフリースローを選択した。

大石の冷静さと身長差に生み出された宮城最大の失態であった。




「わぁぁぁーーー!!」

「宮城のファーール!!」

「フリースローー!!」

「しかも3本!!」

「名朋大チャーーーンス!!」




「ふー。」


冷静に一呼吸ずつ、自分の間を作りながら、放った大石のフリースローは、鮮やかに3回ネットを揺らした。

前日の準決勝に続き、再び宮城が巻き起こした悪夢のような敗戦。



宮城は、この日、引退を決めた。

 

名朋 87
湘北 84



-----------------------------------------------------------------------



(もうIHのような思いはしたくねぇ!!この1本、確実にゴールに沈める!!)


左右から、山岡、上杉が襲い掛かるなか、宮城は冷静にコートをシミュレーションしていた。



試合残り時間12秒

陵南 98
湘北 97







続く。

#243 【2年から3年へ】

2009-12-16 | #09 湘北 県予選編
残り21秒

陵南 98
湘北 97




「大蔵!」


『バス!』


黒川から、素早くコートにボールが投げ入れられる。




「仙道さーーーん!!」

「仙道!いけーーー!!」

「いや、キープだ!!ボールを回すんだーーー!時間を使え!!」

(しまったぁ!植草を入れるべきだった!!)

と渋い表情を見せる田岡。

「大丈夫です。仙道に任せておけば。」

植草は、微笑みながら田岡にいった。




(そうはさせるかよ!)


(てめーはそんなことはしねぇ。)



『キュッ!』


仙道は、急ストップをした。



『ザッ!』


『キュ!』



「きやがれ!センドー!!」

「いいから、足を引っ張るな。ド素人!」

「うるせー。お前こそな!キツネ!!」




「ダブルチームだ!!」

「仙道に、流川と桜木だーーー!!!」

「湘北が最後の賭けに出たーー!!」




「ふっ。死ぬほど練習してきたか!」


「もちろんだ!」

「てめーを倒すため!」



「流川と花道が、仙道を抑える!!俺たちは、4人を抑えるぞ!!
足を動かせ!!ぜってー隙を見せるな!!」

「はい!!」

柳と角田が、気合を込める。




「流川!!!」

「桜木君!!!」

「先輩!!」


「あのこたちが、指示もなく、協力するなんて。」

と彩子。


「今日は、止められるはず!!」

(絶対に!!)

晴子に、陵南との練習試合の記憶が蘇る。


(流川君。桜木君。自分を信じなさい。)

安西の瞳は、光り輝いていた。




「仙道!頼んだぞ!!」

「湘北!止めろ!!」

「仙道さーーん!!」

「流川!守れーーー!!」

「仙道を止めろ!桜木!!」

「キープだ!仙道!!」


会場全体が、3人の男を見守る。




『ダムダム!!』



『キュッキュ!』



『キュ!』



『ダム!』



流川と桜木が、仙道の動きに食らいつく。

進路方向を塞ぎ、パスコースを塞ぐ。


今にも崩れ落ちそうな流川は、最後の力を振り絞る。


桜木は、眼を見開き、両手を大きく開き、懸命のディフェンスを見せる。


仙道は、ダブルチームに攻め倦むもボールを確実にキープしている。


流川の呼吸が激しく乱れる。


桜木の大粒の汗が舞い散る。


仙道の顔に、真剣さと楽しさが垣間見れる。



8秒バイオレーションまで、残り半分。


試合残り時間17秒。



「仙道さん!こっち!!」

山岡が呼ぶ。


『キュ!』


「パスはぜってー通さねぇ!!」

宮城が素早く動き、コースを塞ぐ。



「仙道!!」

福田が、ハーフライン上で呼ぶが、パスコースは桜木の体によって、塞がれている。



『キュ!!』


(ぜってー抜かせねーぞ!!)



『キュッキュ!』


(センドー!お前を倒して、日本一になる!!)



『ダムダム!!』


(手強いな。)



その瞬間。



仙道が、本日1番鋭いフロントチェンジを繰り出した。


自身の足首も悲鳴を上げる。


強く叩きつけられるボールが、激しく弾む。



『ダム!』



(やっ!!)



「!!」




「流川ぁ!!!」


「流川君!!!」




『ダム!』



仙道が流川の横を抜きにかかる。


対応の出来ない流川の膝が崩れる。


仙道の速い1歩めが、倒れ掛ける流川に追い討ちをかける。


桜木は、カバーに入るが間に合わない。



『ダムダム!!』


仙道の2歩めが、崩れる流川に並びかけた。



(またか!!)



倒れかける流川は、真横を通過する仙道の足元を見た。



そのとき。



走馬灯のように思い出された言葉。



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>


「俺は、年が明ければまたアメリカだ。だが、選抜には必ず戻ってくる。
そしたら、また勝負してやる。神や仙道を倒して、勝ちあがって来い!」


「仙道君や沢北君のように、オフェンスでもディフェンスでもチームを勝利に導いてこそ、
本当のエースですよ。流川君。」


「仙道君を止め、仙道君以上の得点、沢北君を止め、沢北君以上の得点を奪い、
日本一になったら、流川君を日本一の高校生プレイヤーだと認めます。」


「流川君、最後まで、やり遂げなさい。」


「おい!キツネ!もう足を引っ張るなよ!」


「根性見せやがれ!!」


-----------------------------------------------------------------------



そして、聞こえるあの男の声。



「日本一は戯言か!!!」



その言葉に、流川が反応する。



「戯言じゃねーーよ!!」



崩れる流川。



その横を突き抜ける仙道。



流川は、懸命に腕を伸ばした。



「!!!」



『チィ!』



それは、倒れる流川の指先が、わずかにボールに触れた音だった。



「なっ!!!」

驚く仙道。



『ドガ!』


流川が倒れこむ。



ボールが仙道の手から逃げる。



「でかしたぞ!流川ぁーーー!!!」 




「流川君が、倒れこみながら、仙道君のドリブルをスティールした!!」

「いや、まだよ!」




「わぁぁーーー!!」

「うぉぉぉーーー!!」

地鳴りのような声援で包まれるコート。




ボールは、ルーズボールとなって転がる。


『キュ!』



「まだだ!」


仙道が、ボールを掴みに行く。



『ダンッ!』



「どけー!!センドー!!」


桜木が、再びダイブを見せる。



「!!!」


一瞬の躊躇を見せる仙道。



そして。



『バシィ!!』



『ゴン!!』



『キュッ!』



桜木は、コートに膝を激しくぶつけながらもボールをしっかりと両手でキャッチした。




「うぉぉぉぉーー!!」

「湘北の凸凹コンビが、仙道から、ボールを奪いやがったーー!!!」

「わぁぁぁーー!!」

「逆転のチャーーーンス!!」




「いけーーーーー!!ショーーーーホク!!」

必死の声援を送る観客席の三井ら。



『グビグビグビッ!』

(久々だから、かなりきつい・・・。)

高宮も必死にコーラを飲む。




「戻れーーー!!!山岡!!上杉!!戻れーーー!!」

田岡が、腕を回し、大声を上げる。

「戻るんや!!みんな、戻るんや!!」




『キュッキュ!!』



戻る陵南。



「走れーー!!前だ!!走れーー!!」



『キュ!』



駆け上がる湘北。



「こっちだ!花道!!」

「リョーちん!!任せたぁ!!!」

花道は、倒れている体勢から、宮城にパスを放った。



『バス!!』


「お前らは、そこで休んでろ!!!」




「宮城にボールが渡ったーーー!!!」

「湘北の速攻ーーー!!!」




「リョータ!!」


「宮城さん!!!」


「宮城君!!!」


彩子が、晴子が、安西が、宮城を声援で後押しする。




2年生コンビが、奪い取ったボールが、3年生キャプテン宮城に渡った。



(お前らの想い、確かに受け取ったぜ!!)




試合残り時間12秒

陵南 98
湘北 97






続く。

#242 【最後の勝負】

2009-12-14 | #09 湘北 県予選編
残り27秒


陵南 98
湘北 95




桜木が、湘北の勝利を信じ、かっさらったボールを流川が受け取った。


流川対ゴール下の黒川・福田・仙道。



流川の素早いオフェンス。


立ちふさがる黒い岩。

黒川大蔵。



『シュ!』



シュートフェイク。



「!!!」

わずかに反応する黒川の右を、雷の如く瞬時に抜く。



(一人!)



襲い掛かる執着心。

福田吉兆。



左足を軸に、バックロールからフェイダウェイ。

福田が、チェックに跳ぶ。


『グッ!』



『キュッ!』



軸足を残し、重心をかがめ、ステップイン。

空中で舞う福田と流川の体が交差する。


「!!!」

疾風の如く、福田を交わす。



(二人!)



迎え撃つ最後の砦。

仙道彰。



(来い!!)


(センドー!!)



『キュ!』



『ダン!!』



跳ぶ流川。



『ダン!』



仙道もファウルをケアしながら、ボールを奪いかかる。


そのとき、更に黒い影が、流川に飛び掛る。




「黒川だーー!!」

「二人がかりで止めに来たーー!!」




だが、冷静な流川。

予想通りと、ボールを掴む。



(スナップシュートか!)



「!!!」



「!!」



『キュッッ!』



だが、仙道の予想と異なり、めいっぱいの力でボールをコートに投げつけた。



『バン!!!』



「なっ!!!」


「なにぃーー!!」


「パスだとーー!!」



「聞こえたぜ!耳障りな音が!!」



「上出来だ!!」



ボールの向かう先にいたのは、紛れもなく桜木花道であった。

ルーズボールを拾うため、果敢にコート外に飛び込んだ桜木は、激しく床に倒れこんだ。

だが、迅速にコートに復帰。

それが、丁度、流川が福田を交わし、仙道と黒川のブロックに立ち向かう瞬間であった。

流川と陵南インサイドの攻防に、選手はもちろん、観客もまた、
コートに戻っていた桜木の存在に気付いてはいなかった。


だが、流川は気付いていた。


いや、待っていた。


そのために、十分に3人のビッグマンを引き寄せていたのであった。


なぜ、誰も気付かなかった桜木の存在に、攻防戦の真っ只中の流川が気付いたのか?



音。



それは、桜木のバッシュの音だった。



桜木のバッシュの音が、流川に桜木の場所を教えた。


雑音飛び交うコートの中で、流川が桜木のバッシュ音を本当に聞きわけられたかどうかはわからない。

だが、桜木はそこにいた。

流川もいると確信して、投げた。

通じ合う2人、信じ合う2人が、もたらしたキセキであった。




『バチィン!!』



フリースローライン45°。


桜木が最も得意とするポジションで、受け取った。


膝を優しく曲げ、ボールに左手を添える。


伸びる上半身。



(よし!)



「!!!!」



「さっ桜木さん!!」

と柳が叫ぶ。



桜木の体が完全に伸びきる瞬間。


シュートコースを覆う影が、瞬時に視界に入った。



「うっ上杉!!」


「空斗!!!」




「よく反応した!!」

と拳を握る田岡。




リバウンド争いに参戦しなかった上杉は、桜木の動きをわずかに捉えていた。

完璧なまでのシュートブロックのタイミング。



(ファウルでもいいから、止めるんだーーーー!!!)



だが、桜木は冷静であった。



「ふん。お見通しだ。」



桜木もまた、上杉の動きを感覚で捉えていたのであった。

まさしく野生の勘。



『ダム!』



桜木は、冷静にワンドリで、空中を跳ぶ上杉を交わし、綺麗なジャンプシュートを放つ。



逆転に望みをつなぐ、湘北の想いを乗せたシュートは、綺麗なアーチを描きながら、リングに向かった。



(決まった!!)



『シュパ!』



「よっしゃーー!!見たか!!陵南!!!」

と桜木が叫ぶ。




「キターーー!!」

「桜木のジャンパーだ!!!」

「1点差!!!」

「まだわからない!!!」




「桜木くーーーん!!」

晴子は涙を流している。


『グッ!!』

立ち上がる安西は、両手の拳を握り締めている。


ベンチで座っているものなど誰もいない。


白田は、持っていた氷を高く上げている。




「流川君と桜木君が、陵南の壁を打ち破った・・・。」

中村の眼にはうっすら涙が溜まっている。


「結末が全く予想できないわ・・・。」

弥生のペンが止まる。

「あと、21秒・・・。」

「21秒で全てが決着する・・・。」




「流川・・・。桜木・・・。」

険しい表情で、コートを見つめる田岡。


「仙道さん・・・。そうや!こういうときこそ、応援や!!みんな応援や!!」


「リョ!リョ!リョーナン!!リョ!リョ!リョーナン!!」




陵南ベンチから始まった陵南コールは、会場全体を巻き込み、陵南コールで体育館を染めた。




「なっなんだよ。陵南ばかり応援しやがって。」

と野間。

「なんだかんだで、IH優勝校が、予選で負けるわけにはいかないのさ。
結局は、みんな陵南の勝利を願っている。」

と水戸。

「くそう!!」

大楠が悔しがる。

「いくしかないぜ!!ジャジャーーーン!!」

高宮は、足元から1.5Lペットボトルのコーラを取り出した。

「全国まではと思っていたが、いまいくしかない!!いくぜ!!!」

「なっ!!」

「そっそれは!!」

「まっまさか!!」


『グビグビグビッ!』


そういうと高宮は、一気にコーラを飲み始めた。


「残り20秒で飲めるのか!?」

と驚く新庄。

「お前、アホだろ!?今から飲んだって・・・。」

三井がつぶやく。


「高宮は、ほっておいて!!応援だ!!」

「ショーホク!!ショーホク!!ショーホク!!」




大楠らが始めた湘北コールは、波のように観客席を飲み込んでいく。

気付くと体育館は、再び陵南と湘北の2つの色に分かれていた。


「リョーナン!!リョーナン!!リョーナン!!リョーナン!!」

「ショーホク!!ショーホク!!ショーホク!!ショーホク!!」

「リョーナン!!リョーナン!!リョーナン!!リョーナン!!」

「ショーホク!!ショーホク!!ショーホク!!ショーホク!!」




湘北ベンチ。

「気がついたようですね。」

安西がつぶやいた。

「気がついた?」

彩子が尋ねる。

「桜木君が気付かせてくれたようです。さっきのタイムアウトで。」

晴子、彩子は少し考え、思い出した。

「・・・。あっ!!」

「バッシュの音!」

「そうです。音が聞けるくらい周囲の状況を把握しなさいという桜木君なりのヒントだったのです。」

「あのこが・・・、流川のためにね・・・。」

「桜木君も流川君のこと心配してたんですね。」


「パスに必要な要素は、練習から生まれる精度、経験から導かれる予測、
そして、視野や聴力といった周囲の状況を把握できる感覚です。」

「流川は、先生や桜木花道のヒントで、視野や聴力に気がつくことができた!」

「桜木先輩は、わざと気付かせるようにあんなことをやったのか!」

と白田。

「桜木花道は、精度や予測は全くないけど、感覚だけは鋭い。反対に流川は、精度と予測だけに頼っていた。
真逆な2人だけど、本当に通じ合っているのかもしれないわね。」

「これで、流川君は仙道さんと同じようなパスが出せるようになったということでしょうか?」

「少なくても、近づけたはずです。」




そのころ、コートでは・・・。



(流川のやつ、気付いたようだな。)

「最後の勝負だ。」

仙道がつぶやいた。



残り21秒

陵南 98
湘北 97








続く。

#241 【戦場】

2009-12-12 | #09 湘北 県予選編
残り37秒


陵南 98
湘北 95




湘北のオフェンスから始まる。




「早い段階で、1本が必要ね。」

と弥生。

「今度こそ、流川君ですね。」

と中村。




「安西先生。俺は信じてます。必ず、湘北を勝たせてくれると。」

と三井。




「センドー。」

「ん!?」


(勝つ。)

「今度は俺が、日本一になる番だ。」

鋭い眼光の流川。


「ふっ。できるもんならな。」

(ふっきったようだな。)

流川と同様の眼力を放つ仙道。



(まずは、俺のゲームメイク。)

と宮城。


(パスくれ!パスくれ!パスくれ!パスくれ!パスくれ!パスくれ!)


「流川!!」

宮城が流川を呼ぶ。

陵南の選手に緊張が走る。



だが。



「!!」

「!!!」


宮城から放たれたパスは、流川とは逆方向。



『バス。』



そこには、柳。

陵南の裏をかく宮城のパス。



(俺のスピード。)


柳が一気にインサイドに切れ込む。




「速い!!!」

「柳がいったーーー!!」




『ダッダム!!』


上杉をかわし、陵南ゴールに襲い掛かる。



(早い1本!!リバウンドは任せましたよ!)



『シュ!』



軽やかなステップから、ジャンプシュートを放った。



だが。



『チィ。』


柳の後ろから伸びた手がボールに触れた。


「!!!」


「空斗!!」


右手の中指が、ほんの掠る程度のシュートチェック。



「外れろ!!」

上杉が叫ぶ。


「入れ!!」

柳が後押しをすると同時に、ゴール下は、戦場と化す。



(ガッデム!)


(もらったぁ!)


角田は、黒川にがっつりスクリーンアウトされ、ポジションが取れない。

福田と桜木は、激しいボディコンタクト。


「どけ!フク助!!」


『ガシ!』


「桜木こそ!!」


『ガツ!!』


お互い譲らない、せめぎあい。



「リバウンドを掴む者は、勝利を掴む!!」



「リバウンドを制する者は、試合を制す!!」

(そして、天才の全てが勝利に導く!!!)



『キュ!』



流川と仙道もリバウンドに加わる。

ゴール下の肉弾戦。

6人の男が、ボールを求めて、汗を散らす。


緩やかな回転をする柳のシュートは、リングに一直線に向かっている。




「入れ!!!」

湘北ベンチ。




「外れろ!!」

陵南ベンチ。




『ガン!』




「外れた!!」

「いや、まだだ!!」




リングにあたり、大きく垂直に跳ね上がる。

ボールは、最高点に到着し、リングを目指して、落下し始める。

体育館にいる全ての視線が、ボールに注がれた。



「!!!」


「!!!」



『ガッ!』




「わずかに外れた!!」

「リバウンドだーー!!」




一斉に6つの体が動き出す。


ボールは。



「うぉぉぉーー!!」



『バチィン!!』



両腕を懸命に伸ばした福田が、空中で掴んだ。

ポジション取りは互角。

女神は福田に微笑んだ。




「福田の粘りが、桜木の跳躍力を超えた!!」

「陵南がぐっと勝利を引き寄せた!!」




だが。



「うぉりゃーー!!」



『バシ!!』



落下してくる福田の手から、ボールが上へと弾かれる。



「!!!」



「さっ桜木!!」



「まだだ!!!」



まるで、自由を手に入れたかのように、ボールは再び舞い上がる。



『ダン!』



『ダン!』



仙道が、流川が、桜木がボールを奪いにいく。



『バス!』



『トン!』



仙道と桜木が、同時にボールに触れた。




「また、桜木だ!!」




ボールは、エンドラインに向かう。




「エンドラインを割る!!」

「どっちのボールだ!!!」




『キュ!!!』



「俺のボールだーー!!」



桜木は、着地と同時に、ボールに突っ込んだ。



『ダン!』



エンドライン手前で大きくコート外にダイブする桜木。



『バス!』




「桜木が掴んだーー!!!」

「なんていうボールへの執着心!!」




空中で、振り返る桜木。


「男なら、根性出してみろ!!ふん!!!」



『ビュン!!』



『ドガ!!』


桜木は、ボールをコート内に投げ込むと、そのままコート外に倒れこんだ。



『バシ!!』


「誰にいってやがる!!どあほう!」


受け取ったのは、もちろんこの男。



湘北のエース、流川楓。




「流川くーーーん!!」

「流川ーー!!」

「決めてくれーーー!!」

「ルカワ!ルカワ!」

「流川先輩!!!」

「決めろーーー!!」



未だ戦場となっていたゴール下に、流川が果敢に一人で攻め込む。




残り27秒

陵南 98
湘北 95






続く。

#240 【音】

2009-12-11 | #09 湘北 県予選編
残り52秒


陵南 96
湘北 95




(音・・・。)


流川は、仙道の秘密に、一歩近づいていた。




陵南のオフェンス。


宮城は、ハーフマンツーを指示。


(1本確実にとめる!)



仙道がボールを運ぶ。

流川が、ハーフラインで待ち構える。


(相手の立場・・・。)


流川が全神経を集中させる。

耳から飛び込んでくる様々な音。



『ダムダム』

弾むボールの音。


「うぉぉぉーーー!!」

「わぁぁぁーーー!!」

観客の声援。


『スー。』

空気の囁き。


「へい。」

ボールを呼ぶ声。


「オッ!オッ!オフェンス!」

陵南の応援団。


『キュッキュ!!』

バッシュの音。


流川は、耳に飛び込んでくる音に集中していた。


(音・・・。!!!)


流川の眼が見開いた。



その瞬間。



『ダム!』


仙道が仕掛ける。



「流川!!抜かれんじゃねーぞ!!」


桜木がゴール下から、大声を上げる。


(ったりめーだ!!)


踏ん張りのきかなくなった足を懸命に前に押し出す。



『キュ!』



だが、仙道の切れたサイドステップが、流川の足を襲う。



(ぐっ!)


悲鳴を上げる流川の膝。


(やっろう!!)



『ガクッ!』


膝から崩れ落ちる流川は、しりもちをつく。




「流川君!!」

晴子の眼が潤む。


『ガタ!』

安西が立ち上がる。




『ダムダム!!』


流川の眼に映る仙道の背中。

背番号7が光り輝いている。




「仙道が抜いたーーー!!!」

「流川は限界だーー!!」




「なにやってやがる!!」


桜木が流川を鼓舞するが、起き上がることはできない。



(くっ!)



流川の眼には、コマ送りのように9人の動きが映った。


桜木が、一気に仙道の前に立ちふさがる。


仙道から福田へのパスを狙う柳。


上杉が、宮城へスクリーン。


宮城のマークが外れた山岡が、仙道の死角へ。



『キュ!』



そして、仙道から山岡へのノールックバックパスが通る。



『シュパ!!』



フリーの山岡は、冷静にリングを射止めた。




「仙道さーーーん!!」

「拓真ーーーーー!!!」




仙道に抜かれ、得点を奪われたにもかかわらず、
流川が見た今の光景が、流川の心に一筋の光をもたらした。



(!!!)




「仙道のノールックパスが凄い!!!」

「3点差!!!!」

「湘北ピーーーーンチ!!!」

「流川は限界だーー!!」




残り37秒

陵南 98
湘北 95




『ピィーーーー!!』


安西は、タイムアウトを要求した。


鳴り止まぬ声援。

ざわつく体育館。


流川は、ゆっくりと立ち上がり、ベンチに足を運んだ。


「シオ!」

彩子がいう。

「彩子君・・・。流川君の交代はありません。」

「先生!!」

驚く部員たち。

「流川君、最後まで、やり遂げなさい。」

「うす!」


「根性見せやがれ!!」


『ドガ!』


「うるせー!どあほう。」


『バゴ!』




「流川君は交代ですかね?」

「いや。彼は絶対にコートに立つ。」

確信を持って、弥生がいった。




「流川のあんな泥くらい格好を初めて見たぜ!」

と野間。

「もう限界じゃねぇのか?」

と大楠。

「いや、まだだ。ここから燃えるのが、三井魂よ。」

「三井魂?」

「俺が唯一、流川に教えてやったもの。それが、最後まで諦めない三井魂。」

「ミッチー。体力が持たないところまで、教えちまったのかよ。」

と高宮。


「なっ!」

緊迫した湘北ベンチとは違い、和やかな観客席であった。




一方、陵南ベンチ。


「仙道。あと、37秒だ。」

と越野。


「あぁ。流川が限界に近いが、油断は出来ない。福田、それは桜木も同じだ。」

「おう。」


「拓真、空斗。宮城と柳に走り負けるな!大蔵は、ゴール下の仕事をしっかり頼む。」

「はい!!」


「もう一度、陵南がてっぺんに立とう!!」

「はい!!」


(ふっ。俺が、いおうとしたことを・・・。やはり、仙道。お前は、最高のプレイヤーだ。)

と田岡。


「よし!!円陣だーー!!!」

キャプテン越野の掛け声により、陵南は円陣となり、最後の攻防に気合を入れた。




再び、湘北ベンチ。


「先生。」

宮城が安西の言葉を促す。

少し間をおいて、口を開く。


「私は信じています。君たちが勝つと。自分を信じなさい。」


「はい!!!」


(自分を信じろ?つまり、俺のゲームメイク。)

と宮城。


(自分を信じろ?つまり、俺のスピード。)

と柳。


(自分を信じろ?つまり、俺がセンドーに勝つ。)

と流川。


(自分を信じろ?つまり、天才の全て。)

と桜木。


「よっしゃー!お前ら、今までこのチームで気持ちがひとつになったことなんて、一度もなかった。
だが、残り37秒!絶対に一つにしろや!!自分たちを信じろ!!」

「はい!!」

「OK!」

「おうよ!!」

「うす!!」


「いくぞ!!」

「おう!!!!」



「おい!キツネ!もう足を引っ張るなよ!」

「てめーこそ。ド素人。」

「その細い眼と、その耳で、この天才に追いついて来い!!」


『キュッッ!』


「これが天才桜木だ!!」

桜木は、思いっきり一歩踏み込み、急ストップした。


「耳障りだ。」


湘北は、逆転に望みをかけ、コートに歩を進めた。



残り37秒

陵南 98
湘北 95






続く。