うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#234 【桜木の秘策】

2009-11-30 | #09 湘北 県予選編
陵南 84
湘北 78




角田がジャンプシュートを決めた。

盛り上がる湘北ベンチ。


観客も湘北の逆転への期待が高まっていた。




「あの#8も意外とやるじゃん!!」

「まだまだ試合はわからないぞーー!!」

「いけーー!!湘北!!!」




「大蔵!」

「はい。わかってます!」

(俺が守る!!)

ベンチの越野の言葉に力強く答える。




陵南のオフェンス。


黒川がエンドラインに立つ。


「あたれーーーー!!!」 

宮城が叫んだ。


それにより、湘北の4人が動き出す。



『キュッキュッキュ!』


『キュ!!』



バッシュとコートが激しくすれる音が聞こえる。




「湘北が勝負に出たーーー!!!」

「オールコートマンツー!!」




「当然だな。」

「ただ、この時間帯で走れるか?」

「俺の後輩たちは、諦めが悪いんでな。」

観客席の三井と新庄が話す。




「さぁ、湘北にとっても、陵南にとっても、ここが勝負どころよ!!」

「あぁーー、ドキドキしてきました!!」




「体力は持つのか?」

「うるせー。」

仙道には一切ボールを触らせない激しいディフェンスを披露する流川。


角田と宮城が山岡を、柳が上杉を徹底マーク。




「陵南が入れられない!!」

「時間がない!!!」




『クル!』


回転する上杉。

柳との間に、一瞬の間を作る。


「大蔵!こっち!!」


ワンハンドからの剛速球が、上杉めがけて、放たれた。


(やっべ!)



『バチィン!!』


受け取る上杉。


すぐさま、ドリブルで湘北ゴールを目指す。



『ダムダム!』


駆け上がる上杉。

柳が猛追する。



(まだ遅い!)



『パチ。』


柳が後ろからボールに触れた。



「!!!」



ボールが前方に転がる。


ルーズボールを奪ったのは。



福田。




「さすが、フクさんや!ボール際は粘り強いでーー!!」

「キープだ!福田!!焦るな!!」




「来い!フク助!天才と庶民の差を見せてやる!!」




「止めろ!花道!!」

と水戸。


「ここが勝負どころだぞ!」

「だが、福田も巧い。経験上・・・。」

と三井ら。




福田は、制止を指示する田岡を無視するかのように、左右に振るドリブルを開始。

そして、ゴール下で桜木を押し込んだ。


『クル。』


振り向きざまのジャンプシュート。



「天才の必殺技を使うとは、まだ甘いわーーー!!!」


ブロックに跳ぶ桜木。


福田は、力強くボールを放る。



『ザシュ!』




「決まったーーーー!!!」

「オールコートを突破されて得点を奪われた!!」

「しかも8点差!!!」




「フッフクさーーん!!」

「フクダ!フクダ!」




「勝つのは俺だ。」


「おっおのれーー!フク助の分際で!」




「桜木には、あの#6はとめられないか。」

と新庄。

「そうでもないぜ。」

と三井。

「湘北のバスケ部は、みんな諦めが悪いっすから。」

と水戸がいった。




陵南 86
湘北 78




第4Qも開始90秒が過ぎ、8点差。

開始2分で10点差。


陵南の思惑まであと1本。



(まじでやべーぞ。どうする・・・よ。)


「リョーちん!」

「ん!?」

「俺がなんとかする。」

「なんとかするって、花道じゃ・・・。なんか名案でもあんのかよ?」

「ない!!」

「ないじゃねーよ!」


「俺は・・・。俺は、ゴリから湘北のゴール下を任された男だ。もう誰にもやられん。」

といつになく真剣な眼差し。


「花道・・・。そうか、わかったぜ。」


「リョーちんは彩子さんを。」


「花道は晴子ちゃんを。」


「全国へ連れて行く!」


2人の声が揃った。


桜木、反撃開始になるか。




陵南 86
湘北 78







続く。

#233 【角田の想い】

2009-11-28 | #09 湘北 県予選編
陵南 84
湘北 75




白田の左手1本によるフリースロー。



『ガン!!』



ボールはリングに当たり、小さく跳ねる。



『ガン。』



『スト。』



小さく音を鳴らした。




陵南 84
湘北 76




「左手1本で決めやがったーー!!」

「やるぜ!白田!!!」




「よくやった!それでこそ、わが弟子だ!!」

(だから、弟子じゃないって・・・。)


「お前は、ベンチに戻って手当てしろ。あとは俺たちに任せろ。」

と宮城。

「・・・・・・。」

「全国大会で、お前を欠くわけにはいかねぇんだ。」

「キャプテン・・・。」


白田は、宮城の言葉を信じ、静かにベンチに下がった。


「・・・。」

流川は、白田とすれ違いざまに、視線が合う。

「流川先輩・・・。あとはお願いします。」

『コク。』




「あいつ、いい根性してやがるな。」

と観客席の三井。

「三井サンだって、ゴリだって、そうでしたよ。
バスケ部はみんなあんなのばっかりの集まりなんだから。」

と水戸が笑っていった。




「白田君は、交代ですね。せっかく、湘北の追い上げムードだったのに・・・。」

「これで湘北は絶体絶命のピンチね。白田君を引き換えに、奪った得点は1点のみ。はっきりいって、マイナスだわ。
結果的に、黒川君のファウルは、ファインプレーとなったわけよ。」

「バスケって無情ですね。でも、残り9分8点差なら、まだわかりません!!」

「そうね。最後まで何があるかわからないのが、スポーツだから。」

(特に、湘北というチームは・・・。)




一方、陵南ベンチの田岡。

(勝った!!白田の穴は、角田では埋められん!!)

勝利を確信し、にやついていた。




「白田、ユニホーム脱いで。すぐに冷やすから!晴子ちゃん、氷もらってきてくれない!!」

「はい!!」


安西に頭を下げる白田。

「・・・・・・。先生、申し訳ありませんでした。」

「君が謝る必要はありません。あとは、先輩たちに任せましょう。」




「ハクタス!!そこで、ゆっくり休んでやがれ!!
そして、この天才のプレーを全国大会のために、よーーーく眼に焼き付けておきなさい!ハッハッハ!!」

「桜木先輩・・・。」

(ありがとうございます。)

試合に出場したくても出場できない、負傷退場した白田への桜木の気配りであった。



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PF…#14 白田 豊 194cm/1年

PF…#8 角田 悟 185cm/3年

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「カク!練習の成果を見せてやれ!!」

「おっおう。」

角田は、若干緊張している。


「先輩。」

「ん!?」

「どんどん打ってください。練習どおりやれば、入るっす。」

「流川・・・。」

(まさか、流川から話しかけてくるとは・・・。ここで足を引っ張るわけにはいかないな。)



湘北のスローイン。

「いくぜ!お前ら!!」

「おう!!」


(白田がいなくなったことで、インサイドは断然不利・・・。
流川は仙道に・・・。やはり、ここは俺たちのスピードが、逆転への突破口!)


「柳!いけ!!」

宮城から柳にパスが渡る。



『バス!』


「空斗、悪いな。宮城さんから指示が出た。俺が点を獲りに行く。」

「そうやすやすと獲らせるわけにはいかない。」


『ダム!』


柳の踏み込んだ、フロントチェンジ。

上杉が機敏に反応する。



『ダム!』



『キュ!』



バックロールから、インサイドにステップを踏む。


前には、黒川が立ちはだかる。




「囲まれたーーー!!」

「あれでは打てない!!」




黒川と上杉がシュートチェックに跳んだ。



『シュ!』



2人の足がコートから離れるのを確認し、柳は軽く笑う。

そして、ボールを頭の上から腰の後ろに回した。




「バックビハインド!!」

「誰にパスだーー!!」




ボールの先に構えるのは、角田。




「カク!いけーー!!」

「角田さん!!」




「カク!打てーーー!外してもリバウンドは獲ってやる!!」

「フリー。」



『バス!』



(みんな・・・。)



左0°の位置。

角田は、フリーでボールを受け取った。




「カクーーー!練習を思い出してーーー!!」

ベンチから安田が叫んだ。


角田は、思い出していた。



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<<回想>>


「角田君、君はジャンプシュートを強化しなさい。練習終了後、毎日200本、打つこと。いいですね?」

「はい。」

「PFの研究も忘れないように。」

「あっ、はい・・・。」

(PF転向か・・・。)


湘北の春、白田が加入したことにより、PFへとコンバートされた角田。

一時は、悩むこともあったが、角田は、安田や潮崎ら3年生とともに、新しいスタートを切った。

1日200本のジャンプシュートのほか、朝50本、昼50本を加え、半年間ジャンプシュートの精度を上げていた。


「少し、ジャンプが低くなってきている。」

「俺がパスするよ。」

「ヤス、シオ。ありがとう。」

時には、優しい同級生たちが一緒になって、練習に付き合ってくれた。


「優秀な1年が加入したことは凄く嬉しい。だけど、それだけじゃいけないんだ。僕たちが、頑張らなければ!
だって、僕らは、全国を経験した先輩だからね。経験は、何事にも変えることのできない財産なんだ!」

角田は安田の言葉に何度も励まされた。


「もう一度、いきたいな。全国。」

「あぁ。いこう!」

「俺たちが1年を連れて行ってやるくらいの気持ちでな。」

「そうだな。」

「あはははは!」

「はははっ!」


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『スト!!』



ボールがネットを通過する音が、角田の耳に聞こえた。



「はっ入った・・・。」




「よし!いいぞ!!カク!!!」

「角田先輩!!ナイッシューー!!」




「カク。いい感じだ。」

「リョータ!」

「先輩、どんどん。」

「流川・・・。」



『バシ!』



「やればできるじゃねぇか!さすが、天才の1番弟子!!ハッハッハ!」

「1番弟子!?まぁ、いいか。」

角田の表情に明るさが戻る。


「へっ。俺は、2番弟子なのか・・・。」

(さっきは、俺のこと1番弟子っていっていたのに・・・。)

ベンチで肩を冷やしている白田は少し複雑な表情をしていた。




「角田、その調子だ。」

と三井。

「お前の後輩たちは、みんな気持ちのいいやつらだな。」

と新庄。

「へへっ。」

「まーな。」

三井と一緒に、水戸らも嬉しそうに答えた。




陵南 84
湘北 78






続く。

#232 【負傷退場】

2009-11-27 | #09 湘北 県予選編
陵南 84
湘北 75




「あと1点だ!!」

と越野。

「ディフェンス!1本!」

植草も珍しく大きな声をあげる。




湘北のオフェンス。


(もう、IHのようなミスはしねぇ!!)

宮城のドリブルにも力が入る。


「白田!」

「はい!!」


ハイポの位置。

黒川の前面を取った。



『バス!』


白田と黒川の1on1。


(ぜってー!決めてやる!!)

(そんなに焦ってどうする。動きが手に取るようにわかるぜ!)


白田のシュートフェイク。

黒川は一切ひっかからない。


(くそ!)

(動きが単調だ!!)


そのとき。


「焦るな!!キープ!!」

宮城が叫んだ。


「!!」


(宮城先輩!)


『クル。』

白田はリングを背後に回転した。


その瞬間。


宮城と柳が、白田目指して、走りこむ。




「シザースだ!!」




宮城の、柳のスピードが、山岡と上杉を振り切った。


「こっちだ!」

「白田!」


宮城と柳がほぼ同時に白田の横を通過する。

白田が小刻みに動く。


(どっちだ!?)


黒川に混乱が生じた。



『キュッ!』



「!!!」



『ダム!!』



「ちぃ!白田か!!」


パスをせず、黒川の横をドリブルで抜ける白田。



「いけーー!白田!!」

「決めろ!!」


宮城と柳が叫んだ。



(宮城先輩と柳が作ってくれたこのチャンス!必ず決める!!)


「うぉぉぉーー!!」

「打たせない!!」


白田がボースダンクの構え。

(俺が流れを引き寄せる!!!)


黒川が白田の後ろから、ブロックを狙う。

(白田を止めれば、勝負は決まる!!!)



(ぬ!高い!)



『バチィーーーン!!!』



(しまった!!!)



黒川は、目測を誤り、白田の両腕を激しく叩いてしまった。



「ぐわぁ!!」



『ドンッ!!!』



その衝撃から、白田は、空中で大きく回転し、肩からコートに叩き落ちた。


白田の手からは、ボールが転がる。



「ハクタス!!!」

「白田!!!」

「黒坊主!!てめー!!」

「やめろ!花道!」

湘北メンバーが大きな声を出す。



「だっ大丈夫です。」

白田は静かに立ち上がる。



『ピィーーー!!』



「アンスポーツマンライク・ファウル!!青!!#12!!」



審判が、黒川に手を上げさせる。




「アンスポだーーー!!」

「ツースロープラス湘北ボール!!」

「一気に得点差を縮めるチャンスだーー!!」

「だが、白田は大丈夫か!?」

「肩からもろに落ちたぞ!!!」

「厳しすぎねぇか!!」

「いや、やりすぎ感は否めない!!」




「白田・・・。」

苦痛に顔をゆがめる白田に話しかける黒川。


「俺なら、大丈夫だ。せっかくの俺の見せ場が、なくなっちまったのは残念だったけどな。」


「すっすまん。」

深く頭を下げる黒川。


(焦っていたのは、俺のほうだったのか・・・。)


「白田君。黒川が申し訳ない。」

仙道も頭を下げた。

「仙道さん・・・。問題ないですから。」


「すまん。春風。」

「白田はそんなに柔じゃないから、心配するな。大蔵。」

「あぁ。ありがとう。」

柳は、黒川の腰を軽く叩いた。



「大丈夫か!?フリースローは打てそうか?」

と心配そうに宮城が話しかける。

「右肩に少し痛みが走っていますが、なんとか打てると思います・・・。」

白田は、額に汗を流しながら、言った。



「ツースロー!」

審判からボールが渡される。



『ダムダム。』


2回ほど、ボールをつく。


(ドリブルは平気だ。)


シュートの構え。


『ピキーン!』


(ぐっ!)

右肩に激痛が走る。



『シュ!!』


ボールは緩やかに回転しているが、明らかに弾道が低い。



『ダン!』


『ダンダンダン・・・。』


ボールはリングに触れることなく、コートに落下した。




「ハクタス!!」




「やっぱり、打てない!!」

「これは重症だ!!」




「ここで、白田君が抜けると湘北は一気に崩れる可能性があるわね。」

と記者席の弥生。




「つうぅ!」

あまりの痛さに、右肩を押さえる白田。

苦痛で顔を歪める。


「ハクタス!!」

「白田、大丈夫か!?」

「だっ大丈夫です。なっなんともありません。」

白田は、気丈に振舞った。


湘北ベンチでは、角田がアップしている。


(ここで、白田が抜けるのは痛いが、この状態じゃ仕方ねぇ。9点差・・・。くそっ!)

宮城も焦りを感じていた。


「交代しますか?」

審判が白田に一声かけたが、大きく首を振った。


「このシュートが終わったら、交代だ。」

宮城がそっと白田の腰に触れた。


「・・・。」



『ダム!』


一回ドリブルをし、呼吸を整える。


(まともにシュートが打てない・・・。)


白田がシュート体勢。




「あっ!!!」

「まじかよ!!」




白田は、左手1本で構えた。




「左手で打つ気か!!」

「届くのか!!」




(入れる自信はないけど、可能性はある!)



『シュ!』


白田は、膝をうまく使い、左手1本のシュートを放った。



陵南 84
湘北 75






続く。

#231 【あと1点】

2009-11-25 | #09 湘北 県予選編
陵南 82
湘北 75




『ビィーーー!!』


第4Qの開始を告げるブザーがなった。

いよいよ、全国への椅子をかけて、雌雄が決する。


「最後まであきらめるな!!俺たちが絶対に勝つ!!」

「おう!!」

「おうよ!!」

試合に集中している湘北メンバー。

この試合、5人で戦い抜いているが、彼らの表情に疲労は感じられない。


『クイクイ。』


「宮城君、ちょっと。」

「はっはい。」

「・・・・・・・・・。」

安西は耳打ちをする。


「やれますか?」

「はい。諦めないのが湘北ですよ。」にやっ。


「リョータ!!しっかりね!!」

「任せといて!!」




陵南ボールのスローインから始まる。


『キュッキュ!』


『キュ!』


「おっ!」

(こいつら、指示もしてねぇのに。)

と笑う宮城。


陵南の選手がポジションにつくと、湘北の5人は激しいディフェンスを見せた。




「先生。リョータが指示を出す前に、みんなが動きましたね。」

「わざわざ私が指示することもありませんでしたね。あの気持ちがあるなら、彼らは絶対に勝ちます。」

「みんな!!頑張って!!」

晴子が手を握り、声援を送った。




仙道と流川が対峙する。

「最後の10分だな。」

「てめーだけだ。俺には全国がある。その先には、アメリカがある。」

「おっ。アメリカ。」

(流川はアメリカにいく気なのか。)



『ダム!』


静かにドリブルを始める仙道。

流川は、ドライブに備えて、若干のスペースを空けている。

宮城ら4人は、凄まじいディナイディフェンスを見せていた。


「フク助!さっきの借りは、100倍にして返してやらぁ!!」

「無理!」


『キュ!』

『ガシ!!』

(ここは俺がなんとかしなければ!)

(白田のやつ、随分焦ってやがるな。)

と黒川。


(開始早々の失点は精神的にくる。この1本、絶対に奪われるわけにはいかねぇ。)

「お前ら!!死守だ!絶対に死守だ!!」

宮城が気合を入れる。


(空斗の外はない。ならば!)

と柳が動く。



仙道と流川の1on1。


そこに、柳が一瞬にして加わった。




「ダブルチームだ!!」

「勝負をしかけた!!」




上杉には、白田が寄った。

桜木が、福田と黒川を守る。


「フク助と黒坊主は、俺一人で十分だ!」

(黒坊主って俺?)

と黒川。



『キュッキュ!』


仙道の動きを封じる流川と柳。

柳は、身長差を利用し、低い位置からドリブルのスティールを狙う。

流川は、コースを塞ぎ、パスコースを塞ぐ。


(手強いな。)


防戦一方の仙道。




「仙道君が攻めきれない。」

「オフェンスを重視する流川君と柳君の懸命のディフェンス・・・。
湘北の必死さが、痛いくらいに感じるわね。」

(ただ、仙道君を2人がかりで止めなければならないこの状況。
プライドの高い流川君の心境は複雑ね。)




「仙道さん!こっち!」


山岡がボールを呼ぶ。



『キュッキュ!』


「いれさせねぇよ。」


宮城が山岡を抑え込む。



その瞬間。



『ビィ!!!』


凄まじい弾丸のようなパスが、流川の足元擦れ擦れのところを通った。




「凄いパス!!」

「キャーー!さすが仙道君!!」




(!!!)



その先には、福田が3Pライン外で構えていた。



『バチィン!!』


大きな音を立てて、ボールをキャッチする福田。



3Pの構え。



だが。



「打たせない!!」

白田が果敢にチェックに跳んだ。



『サッ!』


(!!!)


『ダムダム!』


シュートフェイクであった。

あっさりと抜かれる白田。


(終盤の焦りは禁物だぜ。白田!)

と黒川。


福田がゴールを襲う。


「きやがれ!」


ゴール下には、桜木が構える。



『ダン!』


福田は、桜木の存在を否定するかのように、跳んだ。


「ゴールは俺が守る!!」

桜木も跳んだ。




「桜木は高すぎるーー!!」

「やられる!!」

「福田ーー!!いけーーー!!」




福田のレイアップ。


桜木が突き上げた腕を振り落とす。


「もらったーー!!」


桜木の大きな手のひらが、ボールを襲った。



『スカッ。』


「!!!」


「なにぃ!」


福田は、空中で桜木のブロックを交わした。


再びシュート体勢。



『シュパ!』


ボールは静かにリングを通過した。




「決まったーーー!!」

「福田がダブルクラッチだーー!!」

「強いぞ!福田!!!」

「フクダ!フクダ!フクダ!」




(もっともっともっと・・・。)ぷるぷる。



「見せたぞ。本物のダブルクラッチを。」

「おっおのれー!フク助の分際で!!」


(福田のやつ、あんな技まで・・・。9点差・・・。まじで厳しくなったぜ。)


宮城は、戦況を冷静に分析していたが、その眼の奥には、決して曇ってはいなかった。


(だが、まだいける。なぁ、おめーら。)



陵南 84
湘北 75






続く。

#230 【全てで感じろ】

2009-11-24 | #09 湘北 県予選編
陵南 79
湘北 75




第3Q残り27秒、ボールは・・・。



上杉が拾い上げていた。




「福田が流川をブロックしたーーー!!!」

「陵南の3連続ブロック!!!」

「すげーーー!!!!」

「フクダ!フクダ!」




(最悪でも1本。)

宮城の、湘北の願いは虚しく、陵南に阻まれる。


柳のレイアップをブロックした黒川。


桜木のジャンプシュートをブロックした仙道。


そして、流川のワンハンドダンクをブロックした福田。



「うぉぉぉぉぉーー!!!」

福田が吼えた。


(にゃろー!!)

と流川。


「フク助!よくやった!!ではなーーい!!」

と桜木。


「空斗!!」

仙道がボールを呼ぶ。

攻守の切り替えが速い。


「戻れーー!!」

宮城が叫ぶ。



流川は、ゴール下にいる。


(ちっ!)



『バス!』


フリーの仙道にボールが渡る。




「陵南のアーリーオフェンス!!」

「仙道が速攻だ!!」




「センドー!!待ちやがれーー!!」

必死に追いかける桜木。


宮城、柳も後を追う。

その後ろを、山岡、上杉の陵南ウィングが駆け上がる。


ハーフライン。


桜木が仙道に追いついた。


「追いついたぜ!!」

仙道はドリブルを緩めない。

桜木は、ただ並走するのみ。


3Pライン。


『キュ!』


仙道が急ストップ。


『キュ!』


桜木も急ストップ。


そして、一瞬にして、仙道の前に回り込んだ。


「打たせん!」


「ふっ。打たねぇよ。」


「なにぃ!!」


仙道は、ボールを優しく、左に放る。

絶妙なタイミングで受け取ったのは、山岡。


「ナイスパスっす!」


「じゃねぇーよ!!」


山岡の前に、今度は宮城が立ちはだかった。


「!!」


前に踏み込む山岡。

宮城も構えた。



『ダム!』



「なっ!!!」


山岡は、ワンドリで一歩後ろへ。

3Pラインの外に出た。



「入れーーー!!!」


「しまったーー!!!」


逆を付かれた宮城は、詰めることが出来ない。



『シュ!』


アーチの高い3Pシュート。


審判が3本の指を上げる。




「いいアーチだな。」

と三井がつぶやく。


「あのフォーム、三井サンに似てるっすね。」

と水戸。




ボールの軌道を確かめ、リバウンドに向かう桜木。


だが。



『シュパ!!』


ボールは、リングの真下に落ちた。




「拓真ーーー!!!」

「入ったーーー!!!!」

「仙道さんはなんであんなパスができるんやーー!!!アンビリーバブルやーー!!」

彦一の興奮は、最高潮に達していた。


「よし!!いいぞ!!山岡ぁ!!!」

と田岡も山岡のビッグプレーに叫ぶ。




「3Pーーー!!」

「第3Q終了間際に、デカイ追加点だーーー!!!」

「7点差!!!」

「陵南が引き離したぞーー!!!」




「しびれるパスっすね。」

と山岡。

「ふっ。」

と軽く笑う仙道。


「センドー!!勝負しやがれ!!!」

「してやるよ。俺たちが勝ったあと、たっぷりな。」

「なにをーー!!」


「バカ!花道!早く出せ!!!」

宮城のドリブルがハーフラインを超えたとき、第3Q終了のブザーが無常にもなった。



陵南 82
湘北 75




2分間のインターバル。


「いいぞ!山岡!!」

「ナイッシュ!!拓真!!」

陵南ベンチが、山岡の3Pを称える。


「仙道。お疲れ。」


『コクッ。』

仙道は、植草から渡されたスポドリを軽く飲んだ。


(7点差か・・・。安全圏とはいえないな・・・。あいつがいるし。)


「さすが、フクさんや!!」

「福田先輩、最高です!!」

(もっと、褒めてくれ・・・。)


「福田!ナイスブロックだ!!第4Qも、その調子でいってこい!!」

「おう!!」

田岡が続ける。

「10点差だ。開始2分で10点差をつけろ!湘北の精神力を折るのだ!!」

「はい!!」




一方、湘北ベンチ。


(センドーのやつ、後ろを見てもないのに、なぜあいつが走っているのがわかった??)

流川は、仙道の視野の広さの秘密をさぐっていた。


『ドガドガ!!』

「おのれ!!センドーのやろー!!」

大きな音を立てて、歩く桜木の声は荒い。


「さすがに3本連続のブロックはいてーな。」

と宮城。


「・・・。」

(大蔵のやつ。)

柳は無言。


(俺が、もっといいポジションにいれば。)

と白田。


(なぜだ?)

流川は必死に考えていた。


重苦しい湘北ベンチ。

安西が口を開く。

「さすが、夏の全国覇者ですね。素晴らしい身体能力、そして、素晴らしいチームワークです。」

無言で聞く湘北メンバー。

「ですが、みんなも負けず劣らぬの能力を持っていると思っています。
それを全て出し切れるかどうかは、あなたたち次第です。
残り10分。全神経を集中させて、挑んでください。わかりましたね?」

「はい!!」


「流川君。」

「・・・うす。」

「全てで感じること。これが一番重要なことです。」

「全てで・・・感じる・・・。」

と流川。


(全てで感じる?天才の第七感というやつか。)

桜木も同様、安西の言葉が、脳裏に焼きついていた。








続く。

#229 【ブロック】

2009-11-20 | #09 湘北 県予選編
陵南 79
湘北 75




第3Qも残り1分、一進一退のシーソーゲームを展開している。




「リョータ!落ち着いて!確実に1本!」

「パスまわしていこう!」




(残り1分、同点で第4Qを迎えたいところだな。最悪でも1ゴール差だ。)

ゆっくりとしたドリブル。

小さく右手の人差し指をあげた。


「1本!確実にいくぞ!!」

「おう!!」

「はい!!」




「いいわ!リョータも冷静よ!!」




「こっちだ!リョーちん!!」

ローポスト、絶妙なポジションを取った桜木が宮城を呼ぶ。


だが。


『キュッ!』


山岡がパスをさせまいと、パスコースを塞ぐ。


(ちっ。)


ならばと、バックロールから、山岡を抜き去ろうとする。



『ダム!』


『キュッキュ!』




「山岡がナイスディフェンスだーーー!!」

「宮城が抜けない!!」




(!!)


(にやっ。)




「おっ!拓真がナイスディフェンスや!!」

「山岡のやつ、ようやく完全に試合に集中したか。遅すぎる!!」

と田岡。




(くそ!いいディフェンスしてやがる!)


「宮城さん!」


「柳!」


Vカットから、上杉を振り切り、柳が宮城からボールを受け取る。


『キュ!』


小さい体をバネのように弾け飛ばす。




「速すぎる!!」




弓矢のように放たれた柳。


だが。




「上杉も負けていない!!」




大きく足を広げ、一瞬にして、柳に並ぶ。


(空斗!)


(まだまだ!)



『ダッダン!』


急ストップから、レッグスルー。


(交わした!!)


上杉との間に、若干の間が生じた。


(打たれる!!)


フェイダウェイシュートを放った。



『シュ!』


ボールは、上杉を超える。



「!!!」



だが。



『ティン!』


ボールに襲い掛かる黒い影がボールに触れた。



(大蔵!!)




「触ったーー!!」

「リバウンドだーー!!」




(読んでたか。)

と悔しそうな表情を見せる柳。




「よし!!」

田岡が拳を握る。

「ナイスチェックや!!」

彦一が叫ぶ。

「リバウンドーー!!」

越野が吼える。




「リバウンドよ!!」

湘北ベンチからも声があがる。

「桜木君!獲ってぇ!!」




『ピクッ!』


(ハルコさんの声援!!)


『ガシィ!』


ゴール下では、桜木と福田の激しいポジション争い。


「フク助!ハルコさんの愛は、お前には獲らせん!!」

「何を言っている!!」



『ガコッ!』



ボールがリングに当たり、白田の反対のポジションにボールが跳ねた。


(逆!)



つまり・・・。




「フクさーん!!」




「花道!!」




「うぉぉーー!!」


「どりゃーー!!」


ボールが激しく叩かれる音が響き渡る。



『バチィーーン!!』



「ゴール下を制するものは試合を制す!!」

赤い坊主がボールをもぎ取った。



『スッ。』

静かにボールサイドによる影。



「リョーちん!!」

桜木は、すかさず外へボールを出す動き。



「と見せかけて、自ら打つ!!」

振り向きざまのジャンプシュート。


打点はリバウンド時と変わらぬ高さ。

速すぎる桜木の跳躍。

福田は、膝を曲げるだけで精一杯であった。



「もらったーーー!!」



綺麗なフォーム。

得意の45°。

桜木のジャンプシュートが放たれた。



『シュ!』



だが。


静かに忍び寄っていた影が、日を浴びる。

福田の背後から、現れる鋭い眼光。



「セッセンドー!!!」



右手を懸命に伸ばす仙道の姿が、桜木の眼に映った。



『バチィン!!』



激しく叩きつけられるボール。




「仙道のブロックだ!!!」

「高い!!」

「桜木をブロックしやがった!!」

「なんてやつだーー!!!」




「打つと思ってたぜ。」

「ぐっ!!おっおのれーー!!」


ボールは、ワンバンドし、フリーのこの男の下へ。




「いや、まだツキは湘北にある!!!」

「流川がルーズを奪った!!!」

「ルカワ!ルカワ!ルカワ!」




(やべっ。)


着地と同時に、流川へと向かう仙道だが、間に合わない。



『キュッ!』


『ダム!!』


流川は力強いワンドリから、大きく空を舞った。

ボールを片手で掴み、大きく振りかぶる。



そして。



『バチィーーーン!!!』



「!!!」


「!!!」




「あぁぁぁ!!」

「うぉぉぉ!!」

「流川ーー!!!」

「流川先輩!!!」




陵南 79
湘北 75






続く。

#228 【怪しき軍団】

2009-11-18 | #09 湘北 県予選編
陵南 62
湘北 58




仙道が流川からバスカンを奪ったその頃。

4人の男たちが体育館に向かって歩いていた。



「わぁぁぁーーー!!!」

「うぉぉぉぉーーー!!!」

体育館の外にまで聞こえる大歓声。



「盛り上がっているな。」

「久しぶりだな。花道の試合を観るのは。」

「去年の夏以来だもんな。」

「バスケのルールなんて、忘れちまったぜ。」

「俺もだ!」

「ふっ、そうだな。」

「あはははは!!」




数分後、4人は体育館に足を踏み入れていた。




『シュパ!』


「おい、2年、どうした?」

と宮城。

「さすが、No.1ガードっすね。やりますね~。」

「おっ!いいこというじゃねぇか。」

「でも、今ので最後っすよ。」

「上等だ。」

流川を囮に山岡を抜いた宮城が、バックシュートを決めた。



陵南 75
湘北 73




再び、4人組。


「宮城サンは、相変わらず速ぇーな。」

「おっ!!流川が#7で、花道が#10だ。花道のやつは、進歩なしか。」

「はははははっ!」

「違うんだ。花道が、うまくオヤジにのせられたんだよ。」

「さすが、帰宅部。バスケ部事情に詳しいな。」

「ふん。俺は、パチスロ同好会だぜ。」




陵南のオフェンス。


常盤中コンビが魅せる。

上杉が柳を引き連れて、白田に完璧なスクリーン。

黒川と柳のミスマッチが生まれる。

そこに仙道からのアシスト。


『バス!』


湘北はあっさりと返された。



陵南 77
湘北 73




「あいつとあいつは、1年か?」

「あっちの小さいのがサル風。デカいのがミッチーの後輩のハクタスだ。
2人ともかなりの実力者らしいぞ。」

「バスケ部のことは、何でも知っているんだな。」

「あぁ。お前らが、汗かいているときに、俺は一人でバスケ部の成長を見ていたのさ。」

「そうだったな。」

「でも、まさか、俺たちがスポーツマンになっちまうとは。」

「不思議なもんだぜ。」

「マジで感動したもんな。花道たちがヤマオーに勝った試合は。」

「あぁ。あの試合が俺たちの心を動かしたといってもおかしくない。」

「今の俺たちがいるのも、みんな湘北のバスケ部に入った花道のおかげってわけか!」

「あいつには、恥ずかしくて面と向かっていえねぇけど。あはは!」

「ははははぁ。」




『シュパ!』


「ハッハ!どうだ!フク助!!」

桜木がジャンプシュートを決めた。

「いい気になるなよ。流川のパスがあってこそだ。」


「なぬっ。おのれーー!流川ーーー!!」

(相手が違うぞ。桜木・・・。)

と複雑な福田。


仙道の裏をつく流川のパス。

ニアのローポに位置取っていた桜木へ、パスを入れた。


「おい!流川!!もっとパスをよこせ!!全て決めてやるぜ!!」

「ふん!これで最後だ。どあほう。」


『ドガ!』


『バギ!』


(流川のやつ。ウィークサイド、ストロングサイドの使い分けができている・・・。
コートが随分見えるようになったってことか。)

と仙道。



陵南 77
湘北 75




観客席。

「流川が花道にパスしやがった。」

と金髪の男。

「どうなってんだ!バスケ部は!!」

とヒゲの男。

「バスケ部七不思議のひとつだ。」

と小デブの男。

「花道はともかく、流川は花道を認めたってことか。」

小さく笑うリーゼントの男。


そして、気付く。


「あれは、三井サンじゃねーか?」

「おっ!どれどれ!」

「あっ!ミッチーだ!!」

「ホントだ!ミッチーだ!!」


「ミッチーーー!!!」

叫ぶ小デブ。



『ピクッ。』


「なにか聞こえる・・・。」



『クルッ。』


振り向く三井。

そして、叫ぶ。



「お前らは!!!」



「よっ!ミッチー!!」

「チュース!!」

「お元気そうで。三井サン。」

「水戸。そして・・・、桜木軍団。」


「だぁーーー!!桜木軍団じゃねーー!!」


「柔道部主将 ヒゲのチュウとは俺のこと。」

「金髪の大楠、拳闘部主将をやっているんだぜ。」

「そして、パチスロ同好会会長 高宮望。」


「おっお前ら、部活やってるのか?」


「まーな。花道やミッチーのことをずっと見てたら、俺たちもなんかやりたくなっちまってよ。」

「お前ら・・・。柔道部に、ボクシングか。喧嘩もつえーし、結構いいところまでイケるんじゃねぇか?」


「チュウも大楠もIHまであと少しってところっすよ。」

と水戸。


「そりゃ、すげーじゃねぇかよ。」


「いやー、どうしても足が出そうになっちゃうんだよな。」

と大楠。

「俺も殴りそうになっちまって。」

と野間。

「ただ、大楠は一人部活なんだけどな。」

突っ込む高宮。

「それは、洋平も一緒だろ。」

と大楠も答える。


「三井、こいつらは。」

「あーぁ。わりー。こいつらは、桜木の仲間で、湘北バスケ部の応援団だ。」


「ミッチーには、専属の応援団がいたけどよ。」

と高宮。


「そうだったな。」

堀田番長らを思い出し、三井と4人が笑った。


「水戸は何してんだ?」

「洋平は、空手だ。元々やっていたこともあり、今ではIHベスト16の実力者なんだぜ。」

自分のことのようにいう大楠。


「マジか!!」

「たいしたことないっすけどね。」

「どうりで、お前のパンチはおめーわけだ。」

再び、やんちゃだったことを思い出し、みんなが笑った。


三井と桜木軍団が、懐かしい再会を楽しんでいたころ、コートでは福田が吼えていた。




「うぉぉーーー!!」


「ぬっ!!」

しかめっ面をする桜木。




「でたーーーー!!福田のアリウーーープ!!!」

「仙道、福田のホットラインだーーー!!!」




息もつかせぬ両チームのオフェンス。

最初に止めるのはどちらのディフェンスか。

第3Q 残り1分を切り、あの男たちが流れを引き込む。



陵南 79
湘北 75






続く。

#227 【後半の入り方】

2009-11-17 | #09 湘北 県予選編
陵南 59
湘北 56




湘北ボールから、第3Qが開始される。

陵南は、植草を下げ、SFに上杉を投入する。


-----------------------------------------------

PG…#5 植草 智之 173cm/3年

SF…#11 上杉 空斗 185cm/1年

-----------------------------------------------


再び、仙道がPGを任される。




「上杉を投入だーー!!」

「更にでかくなりやがったーー!!」




宮城対山岡、柳対上杉、15cm近くのミスマッチが生まれた。


(バスケは身長だけじゃねぇ!)

宮城が静かにドリブルをつく。


『キュッ!』


『キュ!』


流川と仙道の激しいポジション争い。


(少しは体力が回復したようだな。)

と仙道。



宮城と流川とのアイコンタクト。


(パスくれ!パスくれ!パスくれ!パスくれ!パスくれ!パスくれ!)


(おっ!やっぱり、お前はそっちのほうがお似合いだ。)


『バス!』


宮城から流川へのパスが通った。




「わぁぁーー!!」

「流川ーー!!いけーーー!!」

大観衆が沸く。




「凄い人気ですね。」

「IH、MVPの仙道君を圧倒するオフェンス力。流川君の株は、もう仙道君と同等よ。でも・・・。」

「でも?」

「彼はまだ仙道君を超えられない。」

と弥生。




「流川。この1本重要だぞ。」

と観客席の三井。




(雰囲気が戻ったな。)


(センドー。)


構える仙道。


『キュ!』


柳が、仙道の裏へ切れ込む。


(#9か!いや、来る!!)


仙道の腰が沈む。



その瞬間。



『シュ!』



流川は、腕のスピードと反比例した緩やかなループパスをゴール下に放った。



(なっ!?)


仙道は虚をつかれた。


流川のパスに反応したのは、ファーポストの白田。



『パス。』


ボールに軽く触れ、弾道を変える。

ボールは、45°にいる桜木へ。



「ナイスパァーース!」



「あまい。」


福田が間合いをつめる。


「ほい。」


『ダッ!』



「いいぞ!花道!」



『キュ。』


『ダム。』


『バス!!』



桜木は、シュートフェイントとワンドリから福田を交わすと、鮮やかにゴール下のシュートを決めた。




「よっしゃー!!」

「いいぞーー!!桜木先輩ーー!!」

「ナイッシュー!桜木!桜木!」

観客席の湘北応援団が声援を送る。




「どうだ!フク助!!」

「・・・。」



陵南 59
湘北 58




「相田さん・・・。流川君のパス、巧かったですよね?」

「・・・。仙道君も反応できていなかった。」

(まさか、あの場面でファーサイドにパスを出してくるとは・・・、前半とは少し違う。)




「後半もいい入り方だな。」

と観客席の新庄。

「俺なら、3Pで同点にしたけどな。」

と笑う三井。




(流川も気付いたか?これは、止めるのは至難の業だな。)


「なに、にやついてやがる?」

「お前は凄い勢いで成長している。だが、俺のほうがもっと凄い。」

(にゃろう!)




陵南のオフェンス。


トップの仙道。

左右に山岡と上杉。

インサイドに福田と黒川。

仙道を中心とした超攻撃的な布陣。

全国制覇を成し遂げたとき、コートに立っていたメンバーでもあった。



『スッ。』


『キュ!』


インサイドの福田と黒川が、外に開く。


『ダム!!』


仙道が動く。




「仙道がキターーー!!!」

「仙道対流川!!」

「後半もこの2人から眼が離せない!!!」




『シュン!!』


弾んだボールが、コートから戻ってきた瞬間、仙道はクロスオーバーを繰り出した。


「!!」


流川の右サイドを半歩抜く。




「流川が抜かれたーーー!!!」

「さすが仙道だーーー!!!」




だが。


「あめーよ。」

流川がつぶやく。



仙道の先には、桜木が待ち構える。



「来い!!センドーーー!!まずは、てめーからだ!!」




「流川と桜木が協力して仙道を止めようとしている??」

「嘘でしょ?あの2人が?」

「頑張って!!流川君!!桜木君!!」

湘北ベンチが2人のプレーに声援を送る。




宿敵仙道を倒すために、流川と桜木の取った選択は・・・。


『協力』だった。



仙道が跳ぶ。


流川も横から、仙道のシュートコースを塞ぐ。


桜木が体でリングを隠す跳躍を見せる。



『スッ。』


仙道がボールを下に降ろした。



だが。



「シュート!!!と見せかけてパスだろ!!」

桜木が叫ぶとともに、右手を大きく伸ばした。


「!!!」


「ふっ。」


仙道は小さく笑うと、今度はボールを左手で掴み、流川の腕を右手で抑え込むように、シュートを放った。



(スナップシュート!)



『バス!!』


ボールは激しくボードに当たり、リングを通過する。



そして・・・。


『ピィーーーー!!!』


「バスケットカウントーーー!!」

審判が激しく腕を振り下ろした。




「仙道がバスカンだーーー!!」

「流川からバスカンを奪った!!」

「仙道が本領発揮だーー!!」




「リョ!リョ!リョーナン!!リョ!リョ!リョーナン!!」


「さすが仙道さんやーーー!!また、流川君と桜木さんを抜いて、点を決めおったでーー!!」

「そうだ!仙道!お前は、誰にも負けることが許されんのだ!!」

と田岡。




「てめー。」

「お前のスナップシュート、使わせてもらったぜ。」



「センドー!」

「今度は、よくパスコースを抑えた。だが、シュートコースが空いてしまったな。」

「おのれ・・・。」


「2人ともまだまだ甘い。」


「センドー!!!」

2人の声が揃った。



『シュパ!』


仙道は、ボーナススローもきっちり決め、4点差とした。


幾度となく仙道の前に立ちはだかる流川と桜木。

本人は嬉しさを感じていた。


(この2人を相手にするのは、ホントに楽しいな。)


その頃、ある男たちが体育館を目指していた。



陵南 62
湘北 58






続く。

#226 【仙道包囲網】

2009-11-16 | #09 湘北 県予選編
陵南 59
湘北 56




ハーフタイム中。


「ぜぇぜぇ。」

ベンチに倒れるように座る流川。


(やはり、仙道を抑えながら、得点を決めることは、尋常ではない体力を消費する・・・。)

(あと、20分やれるのか・・・。)

(でも、流川先輩じゃないと仙道は止められない・・・。)


「流川君。」

安西が口を開いたそのころ、陵南ベンチでは・・・。




「仙道さん、お疲れ様です。」

彦一がタオルを渡す。

「さんきゅ。」


上杉が、山岡と黒川を笑顔で迎える。


「いいぞ。植草。」

越野が植草と固い握手を交わす。


「フクダ!フクダ!」

ベンチの下級生たちが、福田コールで迎え入れる。

「お前ら・・・。」

(もっと、褒めてくれ・・・。)


意気揚々と盛り上がる陵南ベンチであったが、この男が違う。


腕を組み、小刻みに震えている。


陵南ベンチの選手らは、気付かない振りをしていた。


だが。


「仙道・・・。」

静かに声を出す。


「ん?」

活火山のように爆発する。


「何をやっておるかーーー!!!相手は、流川とはいえ、お前はIHのMVPだぞ!!
10分間に13点も奪われおってーー!!!」

その声は、会場に響き渡っていた。




「おっ。陵南の監督がキレているぞーー!!」

「仙道が怒られているみたい。」




「ふーーー。」

仙道は一息ついて、こう返した。


「すんません。でも、もう大丈夫です。掴めましたから。」

そういうと、スポドリを飲んだ。

「その言葉、信じるぞ。うちは、お前がやられるわけにはいかないのだ。」


『コク。』


「上杉ーー!!」

「はい!」

「後半、行くぞ!準備しておけ!」

「はい!」




一方、湘北ベンチ。


「流川君。」

「・・・うす。」


「流川君と仙道君との大きな違い、わかりますか?」

「・・・パスセンス。」

(認めたくねぇけど・・・。)


「半分だけあたりですね。」

(ぬっ。)


『ギクッ。』

流川にパスセンスが違うと悟らした宮城が苦笑いをする。


「それは・・・。」

安西が続けようとしたときに、桜木が割って入った。


「キツネは眼が細いから、周りがよく見えてねぇ!!」


「!!!」

「おっ!」

(むっ。)


「ほっほっほ。桜木君正解です。」


「ハッハッハ!天才だからな。庶民の流川にはわかるまい。」


「流川君と仙道君との大きな違いは、視野の広さです。
オフェンスにおいて、感情を抑え、パスを捌くことが来たことに対しては、評価できます。
ですが、流川君の視界は、せいぜい4、5人を捉えているのみ。
仙道君のように、9名全てを捉えているわけではありません。そうですよね?」


「・・・。」

無言で返す流川。


「簡単に視野を広げることは難しい。かといって、このままだと、仙道君を抜くことはできません。
もう彼も気付いているはずです。流川君のパスの多くが、ニアだということを。」

「むっ。」

「流川君、これからの20分。遠い仲間から、見ていくように心がけてください。
仙道君は、流川君のニアに湘北の選手がいればニアパスを、いなければ1on1を警戒してくるはずですから。」


「裏をかくということですね?」

と安田。


「仙道君ほどの選手の裏をかくことができるかはわかりませんが、
流川君が長いパスを意識すれば、彼もきっとニアばかりを気にしていられません。」

「・・・。うす。」

流川は小さくうなずいた。

「でも、先生。仙道のパスはどう防ぎますか?あれは、PGの俺から見ても、そう止められるものじゃないですよ。」

と宮城。

「それは。」


『ガシ。』


「ぬっ。」


『ガシ。』


「ん!」


安西は、桜木と白田の手首を掴んだ。


「君たちが防ぐ。そして、宮城君と柳君が走る。それだけです。ほっほっほ。」

「やはり、最後はこの天才に頼らざるを得ないということだな!ハッハッハ!!」

「君たちは、自分のマークマンを守りつつ、仙道君の動きを把握してください。
ボールは、必ずリングに向かってきます。
積極的に動いてかまいませんが、そのあとのカバーと速い戻りは怠らないように。わかりましたね?」


「おう!任せておけ!!流川が抜かれるのを前提で守ってやる!!」

「はい。」


「宮城さん。俺らも足を止めるわけには行かないですね?」

「あぁ。そうだな。どっちが速いか勝負だ。」

「はい!」



安西による仙道包囲網が湘北メンバーに伝えられる。

かたや、陵南ベンチでも、メンバー交代が告げられ、更に仙道を中心とした攻撃的なチームへとなっていた。


残り20分。


神奈川県代表の椅子をかけて、まもなく第3Qが開始される。



陵南 59
湘北 56







続く。

#225 【圧倒的な違い】

2009-11-13 | #09 湘北 県予選編
第2Qも半分が過ぎていた。



陵南 37
湘北 42




流川がハイペースに得点を重ねる。



『シュパ!』




「3Pーーーー!!!」

「流川が止まらねぇーーー!!!」




イライラが最大級に募っている田岡。

「仙道ーーー!!お前まで、何をやっておるかーーー!!しっかり、ディフェンスせんかーーー!!」

眼が血走っている。




(感情が表に出ない分、どこから攻めてくるかわかりずらい・・・。)

仙道はここまで、流川に3本連続のシュートを許していた。


そして、もう一人イライラ最大級のこの男。


「ごらぁーー!!センドーーー!!しっかり、止めやがれーー!!」


『バシ!』


「仙道を応援するこたぁねぇだろ?花道。」

「しかし、リョーちん!」

「おめーは、仙道を倒した流川を練習で倒せばいい。それだけだ。」

「つまり・・・。」


「流川を倒せば、お前が1番だ。」


「うむ。そうなるな。」

桜木の顔が変わる。


「よし!今日のところは、キツネを応援してやる。ありがたく思え、流川!!」


(はぁ~。面倒くせぇな。)

と苦笑いの宮城。


(どうでもいい。)

と呆れ顔の流川。



陵南 37
湘北 45




「8点差!!」

「流川先輩ーーー!!」

「流川ーーー!!!」

(流川君・・・。)


湘北のベンチが盛り上がる。


「先生。流川の調子がいいですね。」

「ほっほっほ。流川君は今、心身ともに高いレベルを維持している。
ですが、仙道君もまだまだです。仙道君に対しても、自分に対しても、本当の戦いは、これからですよ。」




「流川。だいぶ、成長したようだな。」

「てめーを倒すためだ。」

「だが、もっと成長しないと俺には勝てない。」

「んだと?」



植草から仙道へのパスが通る。


『バシ!』


すぐにボールを弾く。


桜木を抑え、ポジション取りをしている福田の元へ、仙道から絶妙なパス。


『バス!』


福田の粘り強いポンプフェイクから、ネットを揺らす。



「しまったーー!!」

「桜木、抜かれて当然だ。俺のほうが巧い。」

「フク助め、調子に乗りおって!!」



対して、流川。

「逃げやがったな。」

「ふっ。」

仙道は小さく笑った。



陵南 39
湘北 45




「リョーちん!パァーーース!!フク助に負けておれん!!」


(ちっ。しょうがねぇな。)

宮城から桜木に。


「フク助。見ておれ。」

「もう、抜かせない。」


『キュ!』


桜木のフェイクに、素早く反応する福田。

珍しく粘り強いディフェンスを見せる。


「これは、どうだ!!」

桜木がドリブルをついた瞬間。



『パシ!』



「!!!」


「なっ!」


「いただき。」


「センドーーーーー!!!」




「流川さんをマークしながら、桜木さんも止めるとは、なんちゅうディフェンスやーー!!!」

「仙道なら当然!!」




カバーリングしていた仙道が、桜木のドリブルをスティール。

そのまま、ドリブルをしながら、湘北コートに駆け上がった。


「待ちやがれーー!!センドーーー!!」


桜木も追いかけるが、福田が体で進行方向を塞いだ。


「フク助!」

「お前の相手は俺だ。」


(いかせるか!)

仙道と並走する流川。


『ダム!』


仙道の多彩なドリブルワークにも対応している。



だが。




「陵南が速い!!」

「アウトナンバーだーー!!」




いち早くスタートを切った山岡が仙道のサイドについた。




「2対1---!!」




流川が仙道の前に回りこんだ。




「とめろーー!!流川ーー!!」

「流川くーーーん!!」

湘北ベンチの声。




仙道が横目で、左サイドにいる山岡を確認。

そして、左手でボールを後ろへ回す。


(バックビハインド。パスはフェイクで・・・右か。)


流川は、仙道の右手に集中した。



だが、後ろに回したボールは、流川の前には、現れなかった。



『スポ。』



ボールがネットを鳴らす音が聞こえた。


流川が、振り返ると山岡がレイアップシュートを決めていた。



(何が起きやがった・・・??)



「ふっ。」

仙道が再び、小さく笑う。




「わぁぁぁーー!!」

「なんていうパスだーー!!」

「アンビリーバブルやーーー!!!!」

「仙道さん!!!すげーーー!!!」

「センドー!センドー!」




「あっあんなパス・・・、はっ初めて見ました・・・。」

大きな眼をして驚きを隠せない中村。

「まるでNBAでも見てるようだわ・・・。」

と弥生も今映った光景を受け入れられずにいる。




「おいおい!大学でもあんなパスできるやつ、いねーぞ。」

と観客席の三井は、思わず席を立った。

「あはっ。ホントに凄いな。あのツンツン頭は。」

と新庄。




「流川・・・。今のは仕方ねぇよ。あんなパスされちまったらなっ。」

「何が・・・。」

「仙道の前にいた、お前がわからないのも無理もねぇ。
仙道の後姿が見えるやつじゃないとわからねぇさ。」



観客も仙道のスーパーパスに酔いしれいているもの、
何が起こったか全く把握できないもの、両極端になっていた。



「今のはな。仙道が左手でボールを後ろに回した瞬間、右の肘でボールを弾きやがった。
俗にいうエルボーパスってやつだ。お前の逆をついたんだ。」


「エルボーパス・・・。」


「俺は、お前と仙道の得点能力に差があるとは思わねぇ。だが、2人には絶対的な差がある。
それは・・・、パスセンスだ。あいつは、一流、いや超一流のPG並みだ。」


「・・・。」

無言の流川。



宮城と流川が話をしているころ、湘北ベンチでは。




「ポイントフォワード??」

控え選手が声を揃えていた。

「そうです。ポイントフォワードとは、フォワードのポジションにいながら、
ポイントガードの仕事をこなすポジションのことをいいます。
仙道君は、正しくポイントフォワード、そして、流川君が目指す最終型でもあります。」

「今は、仙道のほうが、流川より上ということですか?」

「はい。数段上でしょう。ですが、流川君がこの試合で気づくことができれば近づける、
いや並ぶこともできると私は信じています。」



第2Q開始から、陵南ゴールを果敢に攻めた流川は、第2Qだけで13得点を奪った。

対する仙道は6得点。


流川は、仙道を超える最高のオフェンスと仙道を抑える最高のディフェンスを同時に披露した。


それは、仙道、田岡の予想を大きく上回る流川の攻守にわたる動きであった。

だが、第2Qが終わったときには、陵南がリードを奪っていた。


流川と仙道との圧倒的な違い。


それは、アシスト数。

第2Q、流川の2アシストに対し、仙道は、Fのポジションにいながら、驚異的な7アシストを記録していた。


仙道は、時には自分から、そして、満遍なく味方を動かし、得点させ、一気に逆転させた。

流川は、自らが切れ込み、体力をすり減らし、得点を奪った。


対照的な2名。


チームへの貢献度という意味では、仙道に軍配が上がっていた。


「ぜぇぜぇ。」

涼しい顔の仙道に対し、流川の呼吸は乱れていた。



陵南 59
湘北 56







続く。