うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#162 【選抜終幕2】

2009-07-31 | #06 愛和 選抜編
「続いて、第3位・・・。」




「愛知県私立愛和学院高等学校!」




「いいぞ!愛和!!」

「諸星、得点王おめでとう!!」

「3決もいい勝負だった!ありがとう!!」




「こちらも決勝戦同様、2ゴール差の際どい勝負でしたね。」

「あの最終局面で、諸星君がパスを出すとは、正直私も驚いたわ。」

「しかも、最後は今村さんの3Pやから、これまた驚きや。
今大会初めて打った3Pが決まってしまうんやから、海南も可哀想や。」

「準決勝の博多戦の最後、諸星君が突っ込んだ場面。
あのとき、今村君がもっと外に開いていたら、
諸星君からパスをもらえたかもしれなかったんですよね。」

「その反省をふまえて、彼は大きく外に開いた。
結果、諸星君のドライブからのパスを受けて放った3Pが決勝点となった。
海南にしてみれば、自分たちの必勝パターンでやられた感じね。」

「3決の愛和は、今大会最高のデキだったと思います。
それに比べ、海南は大栄との延長戦と準決の山王戦と体力の消耗が激しかった。
2ゴール差の負けなら、勝ちに等しいですよね!ね!」

「アホ!内容はどうであれ、負けは負けなのよ!!」

「うっ・・・。」


(ただ、中村君の言うとおり、海南が万全だったら同じに結果にはならなかったかもしれないわね。)


「海南の選手は、大丈夫やろか・・・。」


「彦一君!大丈夫ですよ!神奈川の選手たちはそんなに柔じゃない!」

「そっそやな。ありがとう、中村さん!」




「今、思い出しても、ドキドキするな!」

「あぁ、俺もだ。まさか、お前があそこにいるとはな。
パスを出した俺でさえ、出したのは大失敗って思ったんだから。」にこ。

「本当ですよ。よりによって、翼にですからね。」

「虎、俺が3決のMVPだからって、そうひがむなよ。」

「MVPって、それ自分がいっているだけでしょ?」

「まぁ、いいじゃねぇか?3決のMVPってことで。翼にもなんかしらのタイトルがあったってな。」

「そうですね。」

笑う諸星と織田。

「なんか意味深だな・・・??」



(牧、IHの借りはこれで返したぞ。大学では、0からスタートだ!まずは、どっちが先に、深体大の牙城を揺るがすか!勝負だ!)




「第4位 神奈川県私立海南大附属高等学校!」




「おめでとう--!!」

「牧!大学にいっても頑張れよ!!」

「お疲れ様ーー!!」




「おめでとう!牧。」

藤真は、コート場に牧を見つめて拍手をしている。

「これで、俺たち3年生も全員が高校バスケから引退ってわけか。」

と三井。


「結局、牧は進学先を決めたのか?」

魚住の問いかけに藤真が答える。

「決まっているよ。」

「ん!?」

「どこだ?」

「本人から聞けばいい。」

「ったく。教えたって減るもんじゃねぇだろ。」

「まぁ、本人に会う楽しみの一つにでもしておきな。」

藤真は笑った。




「ふーー。これで全部終わったな。」

安堵の表情を見せる牧。

『コク。』

うなずく3年生たち。

皆、笑顔になっている。


「牧さん!お疲れ様です。」

「お疲れ様です。」

1,2年生が3年生を祝福している。


『ガシ!』

牧と神の固い握手。


「牧さん・・・、ありがどうございましだ。」

清田は泣いていた。

「あぁ。こちらこそな。」


この日、牧は、3年間で一番最高の笑顔を見せていた。



(牧。3年間、よく頑張ったぞ。来年からは、西野の下で、成し得なかった全国制覇をするんだ!期待してるぞ!!)

高頭の表情は、実に清々しいものだった。




「これで、牧君世代も引退ですね。少し寂しい気もするな。」

「寂しがっている暇なんてないわよ!これから、選抜の原稿をまとめなくっちゃいけないんだから。
それに・・・。」

「それに?」

「柳葉君を初め、今大会も凄いプレーヤーたちが現れた。来年も益々目が離せなくなるわよ!」

「そうですね!流川君や仙道君、織田君たちも、それに桜木君もいますしね。来年も凄く楽しみです!」

「さぁ、社に帰って、原稿まとめるわよ!」

「はい!!」

「年末年始の休みは返上よ!」

「そっそれはないですよ・・・。」


(山王の三銃士も解体し、牧君や諸星君たち、超高校級の選手がそろって、高校バスケ界を去る。
来年の高校バスケ界は、正しく戦国時代突入ね。
さぁーーて、どこが最初に全国統一を成し得るか!楽しみだわ!!!)




第38回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会は、山王工業の3連覇という偉業で幕を閉じた。


と同時に、牧や深津、河田、諸星、徳永、新庄、土屋といったいわゆる黄金世代も高校バスケ界から引退した。


全国に駒を進めることの出来なかった猛者たちも含め、彼らは大学に進学し、再び熱い火花を散らす。


『打倒!深体大!』『目指せ!全国制覇!』を目標に。




優勝 山王工業


準優勝 博多商大附属


第3位 愛和学院


第4位 海南大附属



最優秀選手 河田 雅史



ベスト5
G 深津 一成(山王)
G 諸星 大(愛和)
F 柳葉 敏(山王)
F 新庄 雄銀(博多)
C 河田 雅史(山王)



得点王  諸星 大


アシスト王  深津 一成


リバウンド王  河田 雅史


スティール王  織田 虎丸


ブロック王  新庄 雄銀








#06 愛和 選抜編 終了
#07 慶徳義塾大学編 に続く。

#161 【選抜終幕】

2009-07-29 | #06 愛和 選抜編
「第38回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会 優勝校 秋田県立山王工業高等学校!」




会場を揺るがす大声援。


「わぁーーーー!!」

「3連覇!おめでとう!!」

「さすが!山王ーー!!」

「不敗神話復活だーー!!」




東京体育館は、盛大な拍手で包まれていた。

キャプテン深津が呼ばれ、緊張した表情を浮かべ、優勝カップを手にしている。




「やっぱり、前評判どおり、山王でしたね。」

「ええ。結局、この2年間、三銃士が揃って出場して、負けた試合は、あの試合だけだったわね。」

(ほんま、奇跡のチームやわ・・・、湘北は・・・。)

弥生は、IH2回戦、山王対湘北戦を思い出していた。

「しかも、今大会の沢北さんの出場は、決勝、準決勝あわせても、20分だけやから、
余力を残して、優勝してもうたわけや。なんとも恐ろしいことや。」

「それに柳葉君と美紀男君の成長が凄かった。来年も山王の安泰かな。」


「いや、そりゃ違うで、中村さん!来年は、陵南や!仙道さん率いる陵南高校が旋風を巻き起こすで!!」

「そううまくいくかな?
だって、予選では神君や清田君のいる海南や宮城君や流川君のいる湘北にもあたるんだし、
全国にはまだまだ凄いチームがあるし・・・。」


「せやから、陵南なんや!仙道さんが全て倒して、全国制覇するんや!!」

「彦一、夢を大きく持つことはいいことよ。」


「おう!来年は全国に行って、姉ちゃんや中村さんをびびらしたるからな!
こりゃ、また明日から忙しくなるで!!」

「よし!僕も夢を大きくもって、世界的なスポーツジャーナリストを目指すぞ!!」


「中村君は、目の前の選抜の原稿から、コツコツとやりなさい。」

「はい・・・。」


(ぐっ、まずは、相田さんより出世する!!)

深く心に刻む中村であった。




「また優勝カップが戻ってきたな。うはっ。」

「これは俺たちのだピョン!」

「ピョン!?」

「ピョン・・・ですか?」

整列している山王選手が目を丸くする。


「これが1番気に入っているピョン。ただ、湘北に負けたから、縁起が悪いと思って、封印していたピョン。」

「全国制覇を達成したから、復活というわけか?」

「そうだピョン!」

「俺もそれが1番いいと思います。ダジョは、正直、きつかったっすもん。」

笑う沢北。

「俺もだ!うはっ。」

河田が笑うと、山王選手が歓喜に沸いた。



(敗戦を乗り越え、よく戻ってきた。おめでとう。)

関係者席に立っている堂本の眼は、選手たちを力強く眺めていた。





「準優勝校 福岡県私立博多商大附属高等学校!」




「おめでとう!!」

「ほしかったな!徳永!!」

「歴史に残るナイスゲームだったぞ!!」




博多にも、山王同様、惜しみない拍手と賞賛の言葉が投げかけられる。




「ナイスゲームか・・・。確かに4点差じゃ、ナイスゲームだ。だが、それは沢北の出場が10分だったからの話。
あいつが、フル出場してたら、20点差はつけられたかもな。」

と苦笑いの新庄。

「結局、深津と河田には3年間勝てなかった。俺たちならって思っていたんだけどな。
今日がラストチャンスだったし、なんか、ショックだな。」

徳永が両手を頭の後ろに回しながらいった。


「そうか。お前たちは、これから4年間もあいつらにはリベンジできないんだったな。」

笑う新庄。

「うん、そうなんだよね。そして、新庄がリベンジを果たすときは、僕らが負けるとき。」

と牧瀬。

「ちょっと、複雑。」

にやけながら徳永がいった。




勝敗の行方は、第4Q終盤までもつれ込んだ。

一進一退のシーソーゲーム。

一瞬たりとも気の抜けない試合であった。

だが、あの男のプレーによって、均衡を破る。

博多のビッグ3の息の根を止めた3人抜きのジャンプシュート。

そう諸星を止めた博多のビッグ3のディフェンスをあの男は、交わしたのであった。




「沢北君の決勝点は、歴史に残るスーパープレーでしたね。」

「わいもこの眼に、この胸に、しかと刻み込んだで。」

「ところで、中村君!博多の3人の進学先はわかったの?」

「あっ!忘れていました・・・。九州には、鉄さんみたいな仲のいい人はいませんし・・・。」

「わいもチェックできまへんやった。今大会、わいの唯一の汚点やと思っておる・・・、すまん、姉ちゃん。」

「彦一の汚点なんて、まだまだいっぱいあるけどね・・・。
それに、中村君には初めから期待してなかったから。別にいいんだけどね、一応聞いてみたの。」

「なっ。寂しいじゃないですか?そんなの・・・。
でも、僕の勘によると、3人とも関東の一部だと思うんですけどね。」

「中村君の勘なんていいの。私は、真実を知りたいの!」

「当たると思いますよ。だって、3人とも凄く巧いから、レベルの高い関東一部に進学すると思います。」

「そんなこと、わかってるわよ。ったく・・・。」

(はぁーーぁ。今年中に彼らの進路をまとめらるかな・・・。不安やわ。)




「続いて、第3位・・・」



歓声に沸く体育館にアナウンスが流れる。







続く。

#160 【最後の戦いに向けて】

2009-07-27 | #06 愛和 選抜編
愛和、海南が宿泊しているホテル。



準決勝では、両校が敗戦。

翌日、この2校で3位決定戦が行われる。



今日の敗戦が悔しい清田は一人、ホテルの近くにある公園のベンチに座っていた。


「くそ!!俺のせいだ・・・。ぐすん。」


山王戦、最後の自分のブザービーターが決まっていれば、延長戦に突入。

もしかしたら、勝っていたかもしれない。

そう思うと、涙が止まらなかった。



清田が座っているベンチとは反対の方向、一人の青年が座っていた。


「ちきしょう!俺が、あの時もっといいポジションをとっていれば、大さんだって、パスが出せたはず・・・。
俺のせいだ・・・。ぐすん。」


座っていたのは、愛和の今村であった。


その姿に気付く、清田。

「んっ!?誰だ??」


「ずーずー。ぐすん。」

すすり泣く声が聞こえる。


気になった清田は、今村に歩み寄る。

今村まで10mほどのところで、一声かける。

「どうかしましたか?」


ベンチは暗く顔は見えない。

「いえなにも。」


「でも、泣いているようで。」

「今、悲しんです。」


「失恋でもしたんすか?」

清田は歩を進めながら、質問をする。

「俺が悪いんです。」


「そう、そうすか?浮気っすか?」

「え!?浮気?いや、違うんです。俺のポジションが悪かったんす。」


「ポジション?(なんだそれ??三角関係かな?)」

清田は更に歩みを進める。

「三角関係のもつれっすか?」

「そうです。あの3人にやられたんです。」

「3人!?」

(全くわからない・・・。)



今村まであと5mとなったとき、清田は赤いジャージに気付く。


「赤いジャージ!」

「これですか?今大会中でして。」

「大会!まさか!!」

「ええ。バスケットボールの全国大会なんです。」

「赤!バスケ!まさか、愛和学院!!!」

「そうです。うちをご存知なんすか?」


「俺は、海南の清田信長だ。おたくは?」

「かっ海南!清田だと!!俺は、愛和の今村だ。」

「今村!!」


ようやく、お互いの正体がわかった2人。



性格的には割りと似たもの同士。

準決勝もなんとなく似た感じの敗戦。

敗戦は直接的ではないが、自分のミスだと思っている2人。

意気投合するのに、そんなに時間はかからなかった。



「そうか。そうか。わかるよ。信長君!」

「俺もわかります。翼さんの気持ち。」

「でも、もう俺らが悲しんでも何も始まらない。」

「そうです。この大会が最後となる3年生のために明日の3位決定戦は、絶対に勝たなければ!」

「そうだ!よく言った!信長君!!」

「はい!今村さんも頑張ってください!」


「そうと決まれば、俺たち以上に落ち込んでいる3年生を励まさなければなるまい!!」

「そうしましょう!」

肩を組む今村と清田。



(あれ!何か忘れているような・・・。)


(なんだ!この違和感は・・・。)


2人は、敗戦のショックのあまり、翌日、愛和と海南が対戦することを忘れていた。




ホテルに戻る2人。

愛和と海南の会議室は隣同士。


「よし!」

清田に合図を送る今村。


『コクッ!』

うなずく清田。


2人が一斉に、ドアをあける。



『ガチャ!』



「大さん、明日は絶対に勝ちましょう!!」

「明日は勝って、ぜってー3位になりましょう!!」

ドアを開けるや否や、大声で叫ぶ2人。



ここで気付く。



「あっ!!明日は海南戦だ!!」

「あっ!!明日は愛和戦だ!!」



そして、更に驚く。



「あっ!!なんで!!」

「あっ!!なんで!!」



2人がドアをあけると、2つの部屋の隔てていたパーティーションは外れ、
そこには、海南と愛和の選手らが楽しそうに話していた。


「遅いぞ!翼!何してたんだ?」

「清田!個人行動は厳禁だぞ。」

今村と清田の眼が点になっていたことはいうまでもない。


「何してるんすか、大さん?」

「牧さん、どうなってるんですか?これは?」


「翼も清田も、まず座れ。」

と諸星。

「いや、そうじゃなくて、明日の対戦相手っすよ。海南は!」

「あぁ。知っているぞ。」

と牧。

「だって、明日は愛和でしょ?敵ですよ!こいつらは!」

「っていうお前らも、仲良さそうだったぞ。」


「確かに。」

みんなが笑う。


「なっ!!」

「なっ!!」


「意味がわからないっす。」

「けっ、何がどうなっているんだか・・・。」

とりあえず、2人は大人しく座り、話を聞いた。



最後の試合は、小細工なんて必要なし、全力真っ向勝負。

両校の思惑が一致したうえに、全国の常連校ということで、
監督の高頭と徳光も仲が良かったため、親睦を深めていたという。


そして、1年からの付き合いの牧と諸星。

高校3年間の想い出、大学4年間の未来を楽しそうに語っていた。


(大さん、楽しそうだな。)


(あんなに笑う牧さんを見たのは、久しぶりだな。)


「まぁ、2人が楽しければいいかな。」

清田と今村は一緒に言った。

見合う2人、大きな声で笑った。




翌日。



第3位決定戦の行われるコート場。



「決勝ではないっつうのは残念だが、お前ともう一度戦えて嬉しいぜ!」

笑う諸星。


「あぁ。俺もだ。これが俺たちの高校での最後の戦いだ!悔いは残すなよ!」

笑い返す牧。




第38回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会 第3位決定戦が始まった。








続く。

#159 【ここ1番】

2009-07-24 | #06 愛和 選抜編
愛和 82
博多 81




試合残り時間1分を迎え、愛和学院が諸星の連続ゴールにより、逆転した。



博多のオフェンス。

「落ち着いて1本だ!」

徳永が声を出しながら、ボールを運ぶ。


今村は、抜かれないように、間合いをあけて、ディフェンスをしている。

(あと1分。絶対にここは守らなければ!)



『キュ!』


『ダム!』


フロントチェンジから、一気に抜きにかかる徳永。

そのドライブは、一瞬で今村を抜き去った。



『バシ!』



『ピィーーー!』



今村は、たまらずファウルでとめた。


「ナイスファウルだ。しょうがねぇ。」

と諸星。


「はい・・・。」

(さっきよりも速い・・・。それに、集中力が凄い。この人にシュートを打たせたらダメだ。
ぜってー決められる!)



ここで、C長浜に代わり、PG森田が復帰する。


「助かったよ。ボール、よろしく頼むよ。」

牧瀬が森田に一声かけた。




「マンツーだ。織田は森田。今村は牧瀬。徳永には諸星だ。新庄には荻野。杉本は大原。厳しくあたれ!」

愛和の徳光監督から指示が飛ぶ。




愛和は、トライアングル・ツーから、マンツーに変更。

各選手が厳しくあたった。


サイドから森田にボールが渡る。

織田の激しいディフェンス。

森田が懸命にボールをキープしている。


『バス!』


諸星のマークを外した徳永にボールが渡った。




「徳永だ!!」

「キャプテン対決ーー!!」




(ここは、意地でも通さねぇ!)


(牧瀬でも、新庄でもない。俺が諸星から決めることに意味がある!)




「諸星君、ここは絶対に止めなければいけないわね。
せっかく追いついたのに、彼が抜かれるわけにはいかないわ。」

「逆に、ここをとめれば、愛和の勝利はぐっと近くなりますね。」

「この時間帯でエースがやられることは、敗北を意味する。」



『ダムダム!』



(来る!!)


(小細工なし!)



諸星は、全身の神経を集中させた。


徳永は、全身の筋肉を爆発させた。



その瞬間、徳永は諸星を並んだ。




「うそ!!」

と驚く中村。

「諸星君が動けない!!」

弥生も驚愕する。




『シュパ!』


カバーに来た杉本もあっさり交わし、ゴールを奪った。



愛和 82
博多 83




「すげーーー!!」

「再び、逆転だーーー!!」

「諸星が一歩も動けなかった!!」




「大さん!気にしなくていいっすよ!まだ、時間ありますから。」

「あぁ・・・。」


(ちくしょう!マジで反応できなかった・・・。これが、徳永の力・・・。
集中したときの動きは、ハンパねぇ。)




「攻守の要の新庄君でもなく、名シューターの牧瀬君でもない、
徳永君がどうして博多のキャプテンなのか知っている?」

「いやー、わかりません。チャラいから・・・??」


「ここ1番の集中力やな。」

答えたのは彦一。


「その通りよ。ブザービーターはもちろん、勝負どころの決定力は、高校生の中でも群を抜いている。
頼れるキャプテンであり、博多の精神的な支柱なのよ。徳永君は。」

「うちの仙道さんみたいやな。あの人に任せておいたら、安心やもん。」


(彦一君がわかって、僕はわからなかった・・・。それがすごくショック・・・。)




愛和のオフェンス。


(うちだって、頼れるキャプテンがいる。そうですよね?大さん!)


残り34秒 1点差



諸星が全身全霊を賭けて、勝負に挑む。



織田から、諸星へ。

諸星には、徳永がマッチアップしている。

両者の呼吸が、眼が、筋肉が、激しく動く。


(隙がねぇ・・・。)


(左か・・・、右か・・・、・・・上だ!)


『キュ!』


『ザッ!』


『ダム!』


「!!!」



『キュッキュ!』


シュートフェイクから、徳永を抜いた。


それは、先程徳永が見せたドライブと遜色はなかった。



『キュ!!』



だが、牧瀬が一瞬にして、諸星のコースを塞ぐ。



チャージングを狙う牧瀬。


(やばい!)


『バス!』


叩きつけるドリブル。


『キュ!』


強引にフロントチェンジ。

倒れかける体を左手で支え、牧瀬を交わす。



今村がフリー。



崩れかける諸星には、パスを出せる余裕はなかった。

前には、博多最後の砦、新庄。

パスを警戒。


(くそっ!!!)


倒れこみながら、ボールを放る。


高く舞い上がるボールは、シュートともパスともいえるものではなかった。



「リバウンドだ!獲れーー!!」

諸星が叫ぶ。



『ダン!』



諸星は倒れこんだ。



『ガン!』



ボールは、リングにあたった。



「だっ大さん!」

「リバウンドだーー!!!」



『バシ!』



小さく跳ねたボールは、



「ナイスリバン!!」


新庄が奪っていた。




「諸星が止められたーー!!」

「愛和、痛い!!」




諸星のドライブを止めた博多のビッグ3。




「諸星君1人に3人がかり。」

「ええ。それくらいしないと彼をとめることはできなかった。」

「パスしてもよかったんじゃないですか?」

「パスをさせなかったのよ。彼らのディフェンスが・・・。」

「どういうことや?」


「徳永君との最初の1on1。徳永君の後ろには、しっかり牧瀬君と新庄君がカバーして、コースを塞いでいた。
徳永君を抜き去るも、牧瀬君が一瞬にしてカバー。パスを出す余裕はなかった。
そして、新庄君。倒れかける諸星君を見て、シュートはないと判断。パスコースを塞いだ。
つまり、3人がかりで、コース、パス、シュート全てを封じていたのよ。」

「さすがの諸星さんも3人を抜いてシュートは打てへんかったということか・・・。」

「最後の望みをかけて、放ったシュートも、リバウンドは新庄君に奪われ、ジ・エンド。
勝負は、あのプレーで決まったわ。」




その後、新庄がゴール下のシュートを決めた。

時間のなくなった愛和は、織田が博多ゴールを攻めるが、タイムアップ。




諸星の全国制覇の夢は、儚く散った。



愛和 82
博多 85




【愛和学院】

諸星 大  29P(3P3本) 5R 5A

織田 虎丸 18P 11A 5S

今村 翼 16P   


【博多商大附属】

徳永 保 24P

新庄 雄銀 31P 10R

牧瀬 篤弘 21P(3P5本) 8A








続く。

#158 【センセーション】

2009-07-22 | #06 愛和 選抜編
牧瀬から弾道の低い3Pが放たれた。



『ザシュ!』



大きな音を立てて、ネットを揺らす。




「強い!ここで、3Pを決めてきたーー!!」

「愛和にとっては、でかい3点だーー!!」

「とにかく2ゴール差は痛い!!」




残り2分。

第3Q以来となる4点差に開く。



愛和 77
博多 81




「5本目、決めたよ。」

嬉しそうな牧瀬。

「・・・。」

織田は、返す言葉がなかった。

(インサイドって決め付けていた俺のミスだ・・・。)



『ガシ!』


後ろから、織田の頭を掴む諸星。


「まぁ。気にするなって。言ったろ?お前には止められないってな。」

織田のミスを笑って許す。

「大さん・・・。」

「俺の動きにあわせろ。そしたら、ミスは帳消しにしてやる。」

と小声の諸星。

「はい。」


「翼!」

「えぇ。わかってますって。」




愛和の反撃。

織田が三度、牧瀬を抜きにかかる。


(だいぶ、焦っているようだね。)


「虎!シュートだ!残り時間も少ねぇ!!」

今村が大声で織田にシュートを促すと、博多選手は、一切にリングに集中した。



その瞬間を織田は見逃さなかった。



『ダン!』



叩きつけるようなバウンドパスが、諸星に供給される。



「やべっ!」


新庄も他の選手同様に、博多ゴールに視線を向けていた。

新庄から、離れた位置でボールを受け取ると、諸星は、ためらいもなく3Pシュートを放つ。



「おう!いつになくいい感じだ!」



『ザシュ!』




「凄いで!姉ちゃん!!再び1点差やーー!!」

「ここ1番の信頼度は、やはり他の選手とは比べ物にならないわね。」

「グッドーー!!んっ、ミステリアス!!んっ、違うな・・・。」

中村は意味不明なことをいっていた。




「虎!ナイスパスだ!さっきのミスはこれで帳消しだ!」

「大さん!ありがとうございます!」

「後輩のケツを拭くのは、先輩の役目だ!」

「おーー!大さん!いつになく格好いいっす!」

今村も感動。


(よし!俺も大さんの気持ちに応える!!)

再び、気合が漲る織田。




牧瀬と織田の1on1。


しつこい織田のディフェンス。

(ちぃ。こういうとき、PGのありがたみがわかるな。)

徳永は今村に抑えられ、新庄もまた、諸星のマークから外れていない。

バックビハインドで抜きにかかる。


「だ!」


「!!」


織田がボールに触れた。




「織田のスティール!」

「博多、ターンオーバーだ!!」




「えーと、えーっと、この試合5本目のスティールや!さすが、愛知のスティール王!!
もう誰にもとめられへんで!!」

「この最終局面にきて、PGの森田君がいないことが裏目に出たわね。
得点の能力は牧瀬君のほうが上でも、ボールのキープ力は森田君のほうが上!」

「終盤になればなるほど、PGの存在が大きくなりますからね。」

「あら。いいこというわね。」

「牧君や、深津君を見ていて、僕もそう思いました。
やはり、凄いPGがいるチームは強いです。」




そのままルーズボールを奪った織田。

ワンマン速攻で、博多ゴールに駆け上がる。


(くっ!ファウルしてでもとめなければ!!)

織田のあとを追いかける牧瀬。

後ろから、掴みにいくが届かない。


『ダムダム!』


織田のスピードが落ちる。

レイアップの体勢。



(届く!!)


牧瀬は飛んだ。


(予想通り!!)


口元が緩む織田。


(!!!)



『ヒョイ。』



織田は、肩越しにバックパスを放った。


(ん!!僕を引き付けるために、わざと追いつかせたのか!)


牧瀬が振り向くと、そこにはボールをリングに叩きつける寸前の諸星が舞っていた。



「ナイスパスだ!!虎!!」



『ドガァァァァ!!』



諸星のダンクが決まり、一瞬会場が静まり返る。

そして、一気に爆発する。




「逆転ーーーー!!!!」

「諸星のダンクで逆転だーー!!!」

「すげーーー!!!」

「なんていうレベルの高い試合なんだーー!!!」




「俺が走ってくるって、よくわかったな?」

「俺の動きをあわせろっていったのは、大さんですよ。」

「上出来だぜ!」



『パン!!』


2人はハイタッチを交わした。




「アンビリーバブルやーーー!!!」

「センセーーーション!!!」

「んっ、中村さん、なんやて?」

「センセーションです。彦一君のアンビリーバブルの真似ですよ!」

「ええやないですか!!それ!!」

「センセーションやーー!!わいも使わせてもらうで!」

「アンビリーバブルですーー!!僕も使っちゃいます!」

「ったく。叫べばいいってもんじゃないのよ!!」




諸星の3P、ダンクと連続得点で、ついに愛和が逆転をする。

残り1分、1ゴールを奪う最後の攻防戦が始まる。



愛和 82
博多 81






続く。

#157 【MISS】

2009-07-21 | #06 愛和 選抜編
愛和 73
博多 76




織田が牧瀬をシュートブロック、ボールは今村の腕の中でキープされていた。


「虎!」

ボールは、今村から織田へ。


愛和のスタートは速い。

だが、それ以上に博多の戻りは速い。


「翼。俺たちで1本獲っていこう!」

「あぁ。大さんや荻野さんばかりに頼ってられない。」



『ダムダム・・・』



(この子は速いからな。気をつけないと。)

牧瀬は、織田の動きに集中している。



『キュ!』


牧瀬を抜きにかかる織田。



『ガシ!』


今村のスクリーンを利用し、中に切れ込んだ。



『キュ!』


高い跳躍からのレイアップシュートの体勢。

だが、徳永、大原、長浜の大きな壁が、前を、上を塞ぐ。




「高い!!」

「ダメだ!!!」




『クィッ!』


織田は、顔をクィっと上に向けると、ボールを背中へ回す。



『シュ!』


ノールックからのバックビハインドパス。



「完璧だぜ!」


受け取ったのは、今村。



『ザシュ!』


牧瀬との競り合いのなかで、難しいミドルシュートを決めた。




「でかしたぞ!!」

愛和徳光監督が拳を握って喜ぶ。




「1点差ーーー!!」

「またしても、2年コンビだーー!!」




「けっ、あいつら・・・。主役を忘れるなよ。」

嬉しそうに見つめる諸星。



愛和 75
博多 76




博多の反撃。

牧瀬がボールをキープ。



『シュ!』


小さな動作から、素早いパスがゴール下へ放たれた。


「!!」

織田は、3Pシュートに意識が集中しすぎているため、反応できなかった。


ボールは、諸星の頭上を越え、荻野、杉本の裏へ。



(届く!)


荻野が懸命のジャンプを見せるが、その上から、新庄が奪い取った。



「何!!!」


着地後、ポンプフェイクで、杉本をかわすと、ボースダンクを叩き込む。



『ドガァ!!』




「キターーー!!」

「久しぶりの新庄ダーーンク!!」

「すげー、迫力!!」




博多は、3年生コンビのワンパスであっさり返す。



お返しとばかりに。



(さすが、百戦錬磨の博多だぜ。でも、俺たちだって負けてない!!)

高揚する今村。




『ピィーーー!!』


その今村が徳永のファウルをもらい、ツースローを獲得した。


(ちぇ、交わせたと思ったんだけどな。さすが、徳永さん。一筋縄じゃいかないな。)

(この時間で、この動きか。侮れないな。マジでいいスジしてるな。)


確実に2本を決める。

再び1点差。




「いいぞ!いいぞ!今村!今村!」

「織田!頑張れーー!!」

「ディフェンス1本だーー!!」




「おいおい。ホントにあいつら、俺を忘れてやがるぜ。」

少し悲しむ諸星。



愛和 77
博多 78




(1点差、ここは絶対に守らなければいけねぇ!)


「よし!こことめるぞ!!」

「おう!」

諸星が檄を飛ばす。


(ここ1本のときは、新庄さん、いや徳永さんか・・・。
どっちにしても、確実性のあるインサイドでくるはず。)

トップの牧瀬から、ハイポの新庄に。

新庄は、ボールを片手で掴み、諸星と対峙する。



「来るか!」



『ダム!』



『キュ!』



ワンドリから、バックロールをかますと、フェイダウェイ。



ではなく、インサイドを切れてきた徳永にパス。

今村が、間合いをつめると、徳永はボールを後ろに弾いた。


そこには、牧瀬がいた。



「しまった!」


一瞬マークを外してしまった織田。

必死に飛び込むが、牧瀬の指からは、もうすでに3Pが放たれていた。




「速い!神君と同じ!いや、弾道が低い分、もっと速く感じるわ!」

と弥生。




アーチの低いシュートは、愛和ゴールを一直線に目指していた。



愛和 77
博多 78







続く。

#156 【牧瀬VS織田】

2009-07-17 | #06 愛和 選抜編
第4Q開始。

両校ともメンバー、マッチアップの変更はなかった。

愛和は、織田が牧瀬を、今村が徳永を、他3人がトライアングルを形成し、
博多のハイタワーインサイドを守り、頼れるエース諸星を中心に博多リングを攻めた。


対して、博多は、ハーフコートマンツーで対抗。

新庄が諸星にマッチアップし、攻守ともにチームを引率していた。


第4Q開始早々、PF荻野の連続得点により、一時同点とするも、牧瀬の3本目の3Pが決まり、再び3点差となる。

その後、試合はシーソーゲームの展開に、5分を経過しても、3点差は変わらなかった。



愛和 70
博多 73




「織田君だっけ?」

「はっはい。」

「試合前に今村君にもいったんだけど、今日は5本の3Pを決めるから。あと2本だよ。」

「あと2本・・・。」

「君たちのディフェンスは評価している。だけど、僕にもやらなければならない仕事がある。」

「そうですね。俺にもやらなければならない仕事がある。もう牧瀬さんには打たせませんよ。」

「ふっ、勝負だよ。」

「はい!」




愛和のオフェンス。

ドリブルをしている織田。

(なかなか、縮まらない。でも、今は確実に1本ずつとって、喰らい付いていくしかない!)

諸星と今村のポジションチェンジから、諸星にボールが渡る。


「今の俺は、すっげーノってるぜ!」


「来い!」


目線を落とし、ボールを落とす。


(左か、右か・・・。)


『キュ!』


軸足を残し、右に一歩踏み出す。

新庄も素早く対応、コースを塞ぐ。



だが。



諸星は、すぐさま右足を戻し、シュートを放つ。



「上か!」



新庄は、咄嗟にシュートブロックに飛ぶが、届かない。



(入った!)



笑う諸星。



『シュパ!』



決まった。




「諸星の3P---!!」

「同点ーーー!!」

「再び、愛和が並んだーーー!!」

「すげーー、諸星!!」




「恐れ入るな。ホント、あの人は。」

「あぁ。本当に頼りになる先輩だよ。」

「さぁ、俺たちもディフェンス頑張ろうぜ!」

今村と織田に気合が入る。



だが、



『シュパ!』




「あっさり、決めやがったーー!!」

「さすが、牧瀬!!」

「No.1シューターーー!!」

「また、3点差だーー!!」




「4本目・・・だよ。」

微笑みながら、織田と今村に放った。

「くっ。」

「くそ!」


「諸星君には負けたくないからね。」


徳永と牧瀬のスクリーンプレーから、牧瀬が3Pシュートを決めた。



愛和 73
博多 76




ボールを運ぶ織田。

目の前には、先程4本目の3Pを決めた牧瀬。


(ホントに5本決める気か。)

(この子、いい眼をしているな。)


『キュ!』


低いドリブルから一気に突っ込む織田。

牧瀬は抜かれまいと並走する。


『キュ!』


急ストップから、今村へパス。

今村は、ワンステップから、徳永を交わして、ジャンプシュートの体勢。


だが、徳永も後ろから、ブロックに飛ぶ。

牧瀬もサイドから、プレッシャーを与える。



『スッ。』



今村は静かにボールを落とした。




「フェイクだ!!」

「巧い!」




ボールを受け取ったのは、荻野。

ワンステップから、第4Q3本目のゴール下のシュートを放った。



『シュ!』



『バチ!』



「また来ると思ってたぜ。」

「なにっ!!」

新庄のブロックが炸裂した。


「お前は、地味に巧いからな。」

「狙っていたのか?」

「まぁな。」

(諸星をマークしながら、なんてやつだ。)



ボールは、C長浜から、前線の徳永へ。




「2対2!」

「いけーー!!」

「とめろーー!!」




博多のガードコンビが、愛和の2年コンビに襲い掛かる。

ボールは牧瀬へ、徳永はゴール下に走りこむ。

牧瀬は、3Pライン手前、パスの構え。


『シュ!』


徳永が、ゴールに向かって飛んだ。

今村もつられて飛ぶ。

織田もわずかに反応する。


だが、牧瀬は、パスを出さない。


(かかったね。)



『シュ!』


ためらわず、速攻からの3Pを放つ。



『キュ!』



「届けーー!」



「!!」



『チッ!』



「織田君!!」



織田が、牧瀬の3Pシュートに触れた。

間合い、身長差、跳躍力、タイミング、全てを計算した上で牧瀬にシュートを打たせ、
シュートチェックに跳んだのだった。



「必ず、打つと思ってましたよ。」

「・・・計算高いね。」

「5本目は、決めさせませんから。」

「まだまだ楽しめそうだ。」にこり。


織田の計算されたブロックが、愛和のピンチを救った。




「今のブロックは、凄いですね。」

「自信を持って打ってきた牧瀬君。自信を持ってブロックした織田君。
2人とも熱いタイプには見えないけど、心の中は、かなり燃えるタイプね。
最後まで、見逃せない戦いだわ。」

「もうわからない。わかりません。どっちが勝つかなんてわかりません!」

中村は、混乱していた。




試合時間も残り4分となっていた。



愛和 73
博多 76







続く。

#155 【博多の本気】

2009-07-16 | #06 愛和 選抜編
愛和 44
博多 48




第3Q開始早々から、今村がダンクをみせる。


「あいつら、いい動きを見せるな。」

「まだまだ大したことはねぇぜ。」

感心する新庄に、諸星が笑って答えた。


織田は、牧瀬に対して、タイトにあたり、ボールを持たせない、3Pを打たせない構え。

反対に、今村は、徳永に対して、ある程度の距離をあけている、抜かれない構えであった。



ボールを運ぶ徳永。


ハイポに大原と長浜がポジションを取る。


(ダブルハイポか!)

長浜は諸星を抑え、ボールは大原に渡る。



『シュ!』


大原は、振り向くと素早いリリースでジャンプシュートを放つ。



『ガコ!』


ボールは、ボードとリングの間にあたり、大きく跳ねた。



杉本が新庄をスクリーンアウト。

荻野がリバウンドをとる構え。



だが、



『クルッ!』


新庄は、ワンフェイクから一瞬で杉本のスクリーンアウトを外し、
逆に杉本をスクリーンアウトした。



そして・・・。



『ドガァ!!』



新庄は、リバウンドを掴むとそのままダンクを炸裂させた。

真下に叩きつけられる高いダンクシュート。




「うおーーーーー!!」

「高すぎるーーー!!!」

「あの体格で、あの速さ、止められねぇーだろ!!」




(・・・マジかよ。)

諸星は唖然としている。

荻野、杉本も声が出ない。


「諸星。」

「ん!?」

「このままだと、新庄に好き勝手やられちゃうよ。」

そういうと徳永は、自軍コートに戻っていった。



(その通りだな。忠告あんがと。)

「杉本、監督の言うとおり、ファウルで構わねぇ。ありゃ、森重よりも上だ!」

「あぁ。」



博多は、マンツーを敷く。

織田に牧瀬、今村に徳永がつく。



そして、



「お前かよ・・・。」

「俺じゃ、役不足か?」

諸星には、新庄がついた。




「相田さんがいっていた諸星君対新庄君の対決ですね。
ジュニア選抜の主力を務める2人の対決!ワクワクします!!」

「ええ。縦では新庄君、横では諸星君、さてどちらが優位にもっていけるかしら。」




「なーーー!!!」

「抜いたーーー!!」

「諸星、速いーー!!」




先制は諸星。

新庄を横の動きで揺さぶり、抜き去る。

そして、大原、長浜の2人のセンターの前で、必殺技スクープシュートを放つ。



『スト。』



高いアーチを描いたボールは、リングに触れることなく、吸い込まれた。



「完璧だぜ。」

自画自賛の諸星がにやける。


「大さん!ナイッシュ!」

「スリー完成したんっすね!」

「バカ!これは、ビッグスターシュートフォーだ!」

「なっ!」

「えっ!」

「虎、スリーとどこが違うかわかるか?」

「いや、何も・・・。」

「気持ちの問題だ、バカヤロー。」



「諸星のやつ、いいシュート持ってるじゃん。」

と徳永。

「あれは、沢北の真似だね。っていうか、最近は誰でもできる。」

軽く牧瀬がいう。

「シュートはともかく、ドライブの鋭さは、沢北並だった。」

少しだけ新庄は驚いていた。



愛和 46
博多 50




第3Qは、新庄と諸星の点の取り合いとなっていた。

両者譲らない攻防戦だが、諸星の3Pで1点差に迫ると、博多の長距離砲が、本日2度目の火を噴く。


タイトにあたっていた織田の一瞬をつくと、新庄からの速いパス。

クイックリリースで、アーチの低いシュート決めた。



『スパ!』



「えっ!」

驚く織田の横で、諸星がそっとつぶやく。


「いよいよ、本領発揮だな。」

「えっ!?」

「大人しすぎるだろう?牧瀬は神と並ぶ、名シューターだぜ。
経験は神より1年多いし、今大会だって、神より成功数、成功率はいい。
虎に完璧に抑えられる相手じゃねぇよ。」

「相手じゃねぇって・・・。ちょっと、大さん、そりゃ、ひど」

「気を引き締めて、かかれよ!!」

織田の言葉を最後まで聞かずに、諸星は言葉を放った。



諸星の目は、本気になったときにだけ見せる気合のこもった鋭い眼をしていた。



(大さん・・・。)



第3Q終了。


愛和 61
博多 65







続く。

#154 【3-2】

2009-07-15 | #06 愛和 選抜編
第1Qが終了した。

予定通り、博多の全得点は、ビッグ3によるものだった。

新庄が10得点4リバウンド、徳永が7得点、牧瀬が3得点。

今村によって、牧瀬が抑えられていたものの、新庄が穴を埋めるべく、ゴール下で、大車輪の動きを見せていた。


だが、その新庄以上のインパクトを与えたのが、愛和のPG織田であった。


3P1本を含む13得点3アシストを記録。


博多PG森田を手玉に取る動きを披露した。

森田も決して格下ではなかったが、織田はその上を軽く超え、
2年生2大PGの一角として力を見せ付けていた。



愛和 24
博多 20




続く、第2Q。

SG牧瀬が、織田にマッチアップをした。

これにより、織田は第1Qのような動きは見せられず、愛和の得点が止まる。

前半、徳永に抑えられていた諸星であったが、中盤、徳永からバスカンを奪うと一気にギアチェンジ。

織田に代わり、第2Qを引っ張る動きを見せた。

また、県予選で、名朋森重を抑えた愛和インサイド陣は、徹底したダブルチームで、PF新庄を抑えることに成功した。


だが、終盤、博多の中須監督は、PG森田に代わり、控えC長浜を投入。

牧瀬をPG、徳永をSG、新庄をSFにポジションチェンジをする作戦に出た。

これにより、博多は、3枚の190cm台で、ゴール下を支配、愛和のボックスを崩す。


インサイドに集中した愛和のディフェンスは、大きく外に開いた徳永のミドルシュートに対応することはできず、
大量得点を許した。


結果、愛和は、3枚のインサイドと、徳永のミドルを止めることは出来ず、逆転を許し、第2Qが終了した。



愛和 42
博多 48




「さすがに3枚の190台、1人は新庄となると、インサイドは止められねぇな。」

汗を拭う諸星。

「虎も牧瀬さんに止められちまったし。」

ドリンクを飲む今村。

「正直、3Pだけかと思っていたら、あの人、ディフェンスも相当レベルが高いですね。」

織田の額から汗が流れた。

「俺は、牧瀬さん抑えるのに手一杯だし、ディフェンスのカバーはほとんど不可能・・・。」


「ちっ、牧瀬一人に、虎と翼がやられちまうとは、誤算だったな。
監督、後半はどうしましょうか?」

諸星の問いに徳光が答える。


「高校生の中でトップレベルの選手が3人もいるんだ。3人とも抑えるなんて、正直うちには無理だ。」

「監督も弱気だな。」

「あぁ弱気だ。だが、弱気でも勝てるもんもあるんだ。」

「ふーん。」


「第2Q同様に、インサイドが3人なら、こっちはトライアングル・ツーで対応する。」

「なっ、それじゃ、新庄にやられちゃうじゃないっすか?」

驚く今村。


「だから、先にいったろ。3人、抑えるのは無理だって。」

「牧瀬には織田がつけ。第2Qの借りを返して来い!」

「ふー、しんどいですね。」にこっ。

織田は、楽しみだと言わんばかりの顔をしている。


「徳永には、今村がマッチアップ。完璧に抑えるんだ。」

「げっ、あの筋肉さんを俺がっすか?」

「とにかく、このディフェンスは、織田と今村が抑えてこそ成功する。
2人は責任重大だぞ!わかったな?」

「はい!」

「へいへい。」


「残りの3人は、諸星をトップで、トライアングルを形成しろ。荻野、杉本、新庄がのってきたら厄介だ。
その前にファウルをしてでもいいから止めろ!」

「はい!」


「そして、オフェンスは、引き続き、お前が引率しろ!」

「了解。でも、徳永のディフェンスだって、かなり巧いっすよ。」

「あぁ。わかってる。だが、お前は沢北を越える選手だと信じている!!」

「なっ。」

(自信ねぇんだけどな・・・。)

苦笑する諸星であった。




博多のボールで、第3Qが開始する。

博多は変わらず、C長浜を出場させ、牧瀬がPGを務めた。


「マンツーか。」

「いや、違うぞ。」

と徳永。


「ふっ、トライアングル・ツーか。新庄を捨てて、僕と保を抑える作戦だね。」

「そう、うまくはいかないぞ。2年生諸君!」にやっ。


「笑っていられるのも今のうちっすよ。なぁ、虎!」にかっ。

「ええ。」にこり。

笑う織田。


「だから、2年生は甘いんだって。」

徳永が声を発するとともに、織田にスクリーンをかける。


『ガシ。』


「ぐっ!」

徳永の強靭な体が、織田の進行方向を防いだ。


『キュ!』


『ダムダム・・・』


『ダン!』


スクリーンを利用して、織田を抜いた牧瀬は、開いた徳永にパスを出す。

博多ガード陣の鮮やかなピック&ロールで、一瞬にして、織田と今村を抜き去った。


『ダムダム・・・。』


ドリブルを進める徳永。



だが、



「保!!」



『パス!』



牧瀬が声を出したときには遅かった。

徳永のドリブルをスイッチした織田が、後ろからスティールした。




「さすが、虎丸!!」

「スティールにかけて、右に出るものなし!!」

沸く愛和ベンチ。




ルーズボールをキャッチした諸星は、素早く前線へパスを放った。


「しまった!」


牧瀬が振り返ったときには、今村はすでに博多ゴールに向けて走っていた。



『バシ!』



ボールをキャッチし、ワンドリから、大きく舞う。



「反撃開始だぜ!!」



『ガン!!』



鋭いダンクを決めた。




「愛知の翼のダーーンク!!」

「よく飛ぶぜーーー!!」




今村は、徳永をマークすると一言発する。

「勝負はこれからっすよ。」にかっ。

「ふっ、いいだろう。」

徳永も不適に笑った。



愛和 44
博多 48






続く。

#153 【ビッグ3】

2009-07-13 | #06 愛和 選抜編
準決勝 第1試合

愛和 2
博多 0




愛和のPG織田が、スティールから先制点を決める。




「ええやないですか!!さすが、愛知の虎、織田さんやーー!!」

「わっ!いきなり、大声出さないの!」

「姉ちゃんには、この興奮がわからへんのか?わいは今、もーれつに興奮しとるでーー!!」

「さすが、愛知のスティール王ですね!僕も今、もーれつに興奮しています!!」

「中村君!彦一と同じようなこといわないの!!」

(はぁー。昨日の進行ぶりが嘘のようやわ・・・。一番最初のプレーで、これやで。
やっぱり、先が思いやられるわ・・・。)




「虎!ナイシュだ。」

「はい。もう1本いきましょう!!」




2年生織田の先制点に、観客席にいる2年生たちが一気に沸く。

「いいぞ!いいぞ!織ー田!織ー田!」

「負けるな!今村!今村!今村!」




「ちっ、俺にもちゃんと応援してくれりゃいいのに。」

「そういうな。今日は、お前にかかっているんだ。頼むぞ。」

「ほーい。」



愛和は、SGのシューター牧瀬を封じるために、SFの徳永のパワードライブを封じるために、
PFの新庄のゴール下を封じるために、今村を牧瀬にあたらせるボックスワンを形成した。



「そうきたか?」

と新庄。

「相手がどうこようが、俺たちは博多のバスケをするだけさ。」

徳永が仲間に声をかけた。


総得点の9割を博多のビッグ3といわれる徳永、新庄、牧瀬であげている。

愛和にとって、この3人をどう抑えるかが勝利の鍵であった。

入念な作戦会議の結果、名将徳光は、ボックスワンを選択した。



「牧瀬さん、今日は1本も決めさせませんよ。いや、打たせません!」

「ふっ、それじゃ。今日は、控えめに5本にさせてもらうよ。」

「なっ。いいっすよ。勝負っす!」


『キュッキュ!』




「おーー!最初から、今村のディフェンスがすげーー!!」

「あんなに動いて40分持つのかよ!!」




ボールは、PG森田から、徳永へ。

一瞬のキレをみせて、ボックスワンの中心へ突破を図った。


ボックスの4人が一斉に囲みにかかる。

(おっ!いいディフェンス!)


たまらず、徳永は、森田へリターンパスを出した。

(ある程度、崩してからではないと無理だな。)


「森田、パス回していこう。」


森田から、新庄へ。

新庄から、逆サイドの徳永へ。

徳永から、インサイドの大原にボールが渡る。


博多の素早いパスワーク。


だが。


『バス!』




「諸星のスティールだーー!!」

「ターンオーバー!!」




諸星は、大原がボールをキャッチした瞬間、下から上へボールを弾いた。


ボールは、荻野から織田へ、愛和のアーリーオフェンスが始まる。

森田が、織田を止めに入るが、素早いフロントチェンジで、置き去りにされた。


(まずい!!)


懸命に戻る徳永と新庄。

牧瀬は、今村にコースを押さえられていた。



『シュ。』


織田のレイアップ。



『バチン!』


(なっ!)


「2本も連続で決めさせるか。」


新庄が、尋常ではない跳躍から、ブロックを成功させた。




「戻りが速い!!!」

「さすが、新庄ーー!!」




ボールは、ボードにあたり、大きく弾け飛ぶ。


「やべっ!」

今村の上を越え、徳永がキャッチ。

力強いドリブルで、愛和ゴールを襲う。


「大さん!」

徳永の前には、諸星が立ちはだかった。



「ここはとめる!」



「ここは決める!」



愛和ゴールの下では、杉本が大原を押さえている。


徳永のパワードリブルにより、押し込まれる諸星。


(このバカ力が!)



『ダムダム!!』



(一先ずおあずけだ!)


ボールは、鋭いバウンドパスから、牧瀬に渡った。



『バシ!』



『シュ!』



牧瀬の手から放たれたボールは、愛和リングを目指し、アーチを描く。



『シュパ!』




「きたーーー!!」

「牧瀬の3P---!!!」




「すっすいません。一瞬、マークはずしてしまいました。」

頭を下げる今村。

「まぁ、今のはしょうがねぇか。あっちが、巧かっただけだ。」

(一瞬の隙をつき、あんな鋭いパスと素早いシュートを打たれたら、納得せざるを得ないぜ・・・。)




「今村君、早くも1本目だよ。」にこり。

「ぐっ。」

(ちきしょう。絶対、この人をフリーにしてはダメだ!!)


新庄のブロックから、徳永のアシスト、牧瀬の3Pで、得点を決める。


博多のビッグ3が、静かに動き出す。



愛和 2
博多 3








続く。