うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#327 【成長の証】

2010-06-30 | #11 湘北 選抜編
山王 49
湘北 36




『キュッキュ!!』


『キュキュ!』



「あたれーー!!!」

宮城の声が体育館に響き渡る。




「湘北が仕掛けてきた!!」

「オールであたってきたぞ!!」




「当然だ。」

観客席の田岡。




ボールは、エンドラインの河田から烏山へ。

すかさず、桜木と緑川が囲んだ。



『キュ!』


『ザッ!』


「おまえらなんか、俺の相手じゃねぇ・・・が。」

と烏山。


「なぬ。カラスやろーの分際で!!」


「うっせ!!」



『シュ!』



「あっ、逃げやがったな!!」

「作戦があんだよ、バカ。」


「おい、グリ!やつは力ずくでも止めろ!!この桜木が許す。」

「はぁ。」


ボールは、加藤へ渡った。


烏山は駆け上がる。

緑川、河田、桜木もまた湘北ゴールに駆け出す。


山王コートには加藤と宮城が取り残された。


「来いよ。タラ男!」

「うるさいダス!」


加藤の一歩目。

(こういうときは、直感を信じる!左だ!)


宮城は左サイド、加藤の右サイドに腕を出した。


『パシ。』


「!!!」


「へっ。」にや。

(完璧だぜ!)




「スティール!!!」

「宮城が加藤をスティールだーー!!!」




「キャプテン!!」

「加藤先輩!!」

声をあげる山王ベンチ。




「リョータ!ナイスカット!!」

「うぉぉーー!!キャプテン!!」

湘北ベンチからも声が上がる。




『パサ。』


ルーズボールを拾った宮城は、瞬く間にネットを揺らしていた。



「イカすぜ!リョーちん!!」




山王 49
湘北 38




「うわぁぁーー!!」

「1本目から奪ったぞーー!!」

「まぐれっぽかったけど!」




(ぐっ。あのチビ・・・。)

悔しそうな表情を浮かべる加藤は、エンドラインでボールを持っている。


「もう1本、もらうぜ。」

「うるさいダス!!」


戻ってきた烏山にボールが入る。

すぐに加藤へリターンパス。


「ドンマイ。あっちで待ってるぜ。」


再び、加藤と宮城のみが取り残される。



「てめーと深津との大きな違い。」

「・・・。」


「自分の悪口には、冷静でいられないようだな。へっ。」


「黙れ!チビ!」

語尾を忘れるほどの怒り。


「てめーは、そのチビに負けるのさ。」

精神面で加藤の上をいった宮城。


それは、夏の敗戦を乗り越えた宮城の成長の証でもあった。



『キュ!』


『ダムダム!』


『キュッキュッキュ!』



「!!!」




「囲んだーー!!」

「また加藤が捕まったぞ!!」




加藤のドリブルを流川が止めた。

宮城とともに囲む。



「エージ!」

加藤は苦し紛れのパスを放る。



『パシ!』



「ナイスパスだ。タラ男!!」

笑う桜木。




「うわぁーーーー!!またターンオーバー!!」

「湘北のオールコートが機能している!!」

「あの山王を止めているぞ!!」




「リョーちん!」

桜木はすぐに宮城にボールを渡す。



2on1。

流川と宮城が山王ゴールに襲い掛かる。




「いけ!湘北!!」

思わず応援する中村。




「ぶち込め。」

宮城は小声でいった。


ゴール下へ優しいパスをあげる。



『ダン!』


そのボールにあわせる流川。


空中でワンハンドキャッチ。


そのままリングに叩き付けた。



『ガッシャァーン!!』



『トン。』



流川は、この日最初のダンクをクールに決めた。




「ダーーンク!!!」

「一気に4点縮めた!!」

「湘北に風が吹いてきた!!」

「9点差!!一桁に持っていった!!」




「キタで!キタで!キタで!キタで!キタでーー!!」

「今の流川さんの1本は、最高の形ですね。」

「うむ。これで湘北も息を吹き返すか。」

「いや、まだですよ。あいつを止めないと風は変わらない。」

「沢北さんか・・・。」




「・・・。」

堂本が腰をあげた。

オフィシャルに歩み寄る。




「リードしている山王が、タイムアウトですか?」

「この流れは一旦切りたいところね。」

と記者席。




コート上、真ん中に立っている男。


「夏輝ぃぃ!!!冷静になれ!!!」


厳しい顔つきで怒声をあげるたのは、沢北であった。


その言葉は、体育館にいたもの全ての人間に届いた。


「エージ・・・。」

と加藤。




(沢北のやつ。まだタイムアウトは必要ないな。)

堂本は席に戻った。




沢北の咆哮。

今まさに、本当の戦いを迎えようとしていた。




山王 49
湘北 40







続く。

#326 【待望の得点】

2010-06-28 | #11 湘北 選抜編
山王 46
湘北 34




選手交代をした山王。

柳葉に変わり、シューターの烏山が出場した。




「カラス!カラス!カラス!」

「けっ、あんまりのらねぇんだよな。この応援。」




「次、決めたら当たるぞ!」

「はい。」

宮城と緑川。



トップの加藤。


『キュ!』


『キュッキュ!』


インサイドへ放り込む。

両手を目一杯あげて、ボールを掴む河田。



『キョロキョロ。』


桜木を背中に背負い、フリーマンを探す。


「こっちだ!河田!」


緑川をあっさり交わした烏山がボールを呼んだ。


「ふぁい!!」



『パシ。』



「打つぜ。」


何のためらいもなく、3Pシュートを放つ烏山。



『ザシュ!』


意図も簡単に、リングを射抜いた。




「すげーー!!入っていきなり決めたーー!!!」

「この3Pは痛い!!」

「いいぞーー!!烏山!」

「また15点差!」




陵南選手たち。

「湘北が苦労して奪った3点をあっさり返しおった!!」

「シュート力だけなら、神さんクラスですからね。あの人。」

「緑川じゃ、太刀打ちできないかもしれない・・・。」




「俺のシュートは、そこいらの選手とは訳が違うんだ。いつでも絶好調だぜ。」




山王 49
湘北 34




「あのカラスめ。グリ!もっとしっかりつけ!シューターは、シューターの気持ちがわかるんだろ!?」

「はっはい。」

(確かに、あのシュートフォームの綺麗さは、そう簡単には崩れそうもない。
だけど、必死についていけば、リズムぐらいは狂わせられるかもしれない!
そうすれば、リバウンドは桜木先輩が獲ってくれるはず!)



湘北の反撃。


「決めたら、あたるぞ!」

「はい!」

「おう。」

「うす。」



『キュッ!』


『ダム!』


トップから加藤を抜きにかかる宮城。

だが、加藤のディフェンスがそれを許さない。


「まだまだダス。」

「うるせ、タラ男!」

「桜木に続き、お前もダスか!」

タラ男と呼ばれて、機嫌を損ねる加藤。



『キュ!』


流川が沢北のマークを外した。



(チャンス!)


宮城から流川へ。




「今度こそ、攻めますかね?」

「さぁ、わからないわ。」




流川の眼が、沢北の後方を横切る緑川を捉える。

その眼の動きを察知した沢北。


(「いいもんが見れる。」また、パスか!?)


「流川さん!」

緑川が流川を呼んだ。


チラッと見る流川。



『キュッ!』


『ダムッ!』


流川の選択。

緑川と逆の方向に突っ込んだ。



(やべ!)


判断ミスを犯した沢北を、一瞬にして振り切り、ゴール手前まで詰め寄る流川。

言葉のフェイクが決まる。




「鋭いドライブだ。」

と仙道。




高く舞った。



「ゴール下は僕が守るんだ!ふんやーー!!!」



河田は両手を高く上げ、流川のシュートコースを塞ぐ。


桜木が空く。

流川は桜木の位置を確認。



『グルン。』


流川は、高く掲げたボール、自分の体に引き寄せ、河田の脇から、難しいアンダーレイアップシュートを放った。



『シュパ。』




「巧い!!」

「さすが流川!!」

「流川の久しぶりの得点だ!!」

「いよいよ、流川が動き出したぞ!!」

流川の声援一色となる体育館。




「ナイッシュ!流川君!!!」

「いいぞ!流川!!」

待望のエースの得点に盛り上がる湘北ベンチ。




「こらぁ!流川!今のは俺にパスだろ!」

「あっちのが狙ってた。でしゃばるな。」

「ぬぐぐっ!!」

「桜木にはパスすると思ったが、また外れたぜ。おい、ようやく自分で攻める気になったようだな?」

「・・・。てめーも本気できやがれ。」

(あと13点・・・。)


「あたるぞ。ド素人。」

「てめーにいわれなくてもわかってる!」




流川のシュートで反撃の狼煙があがった。

仕掛ける湘北。

山王を捉えられることはできるのか。




山王 49
湘北 36







続く。

#325 【不思議な師弟関係】

2010-06-25 | #11 湘北 選抜編
山王 46
湘北 31




湘北のオフェンス。


「緑川。落ち着いていこう。」

「リバウンドは天才に任せろ!!」

白田が、桜木が緑川に声をかける。


「先輩・・・。白田・・・。」




その光景を見て、安西が細く微笑む。

それを見た柳が安西の言葉を思い出す。

(「眼の前の相手ばかりを見て、周りの状況を把握できない。」
今、みんなが周りを見ている。ということは、良いリズムが生まれようとしているのか・・・。)




「15点差だぜ。やばいぞ。」

「・・・。」


「全力で攻めて来いよ。流川!!」

「うるせ!!」


白田が腕を交差し、ミドルの位置で壁となっている。


(スクリーンプレー。流川さんか?)


福原は、流川の挙動に注意する。



『バシ!』


ボールは、流川に渡った。



「来い!」

沢北の眼は、鋭い。

それは、獲物を狩る鷹のような眼であった。


対して、流川。

冷静さのなかに、熱くこみ上げるものが、眼に宿っている。


(来る!!!)

沢北の腰が沈んだ。


流川の腰が動く。



『バス!』



「!!!!」


「!!」


「またか!!」



45°流川は、ボールを0°へ落とした。

そこには、フリーの緑川。

白田のスクリーンは、対沢北ではなく、対柳葉へのものであった。

緑川のシュートチャンスを演出するために。


遅れてチェックに跳ぶ柳葉。

対流川と考えていた福原は、スイッチの対応ができていない。



(自信を持て・・・。)


『キュ!』


(流川さんが託してくれたボール。)


『ダン!!』


(入れてやる!!)


『シュ!!』


パスを受け取った緑川は、得意のフェイダウェイシュートを放った。

ボールは高く舞い上がり、大きなアーチを描く。



だが。



「わぁ!!」


「!!!」


『ドンッ!!』


シュートチェックに跳んできた柳葉が、緑川に接触した。



『ピィーー!!』

審判の笛がなる。



シュートは・・・。



『パサッ。』


ネットに吸い込まれていた。



「カウントーーー!!!」

高らかにカウントを告げる審判。




「わぁぁーーー!!!」

「バスカンだーー!!!」

「あの#15!難しいシュートを決めてきたぞ!!」




「流川!」

なかなか攻めてこない流川に苛立ちを隠せない沢北に流川が一言。

「焦るな。いいもんが見れる。」

(なっ!それ、俺がいった言葉じゃねぇか!)



そして、流川が倒れている緑川に手を出した。

「イッシュ。」

「ありがとうございます。」

不思議な師弟関係を築いているこの2人。




「ホント、変な2人ね。」

「緑川君て、流川君のアシストは、5割に近い確率で決めているんですよね。」

と嬉しそうな晴子。

「ホント、不思議だわ。」

「ほっほっほ。」




「監督、今のは流川君の選択ミスやろか?」

「たまたま入ったからいいものを、あそこは流川が攻めるべきだ!
絶体絶命のピンチのなかでは、エースが仕事をし、チームを救わなければならない。
流川は、まだそのことを理解していない。なぁ、仙道?」

「俺もパス捌いたと思いますよ。だって、きた、沢北、止める気満々でしたし。」

「せっ仙道・・・。」

(それでは、私の威厳が丸つぶれではないか・・・。)

(監督をも超える仙道を俺は超える・・・。)

と福田。




「ん!?」

「柳葉!」

「敏君!!」

緑川に突っ込んだ柳葉は一向に立ち上がろうとはしない。

右足を伸ばし、左足の肩膝をついている。


「攣ったか?」

『コク。』




湘北ベンチ。

「先生。」

「柳君が彼の足を封じたんですよ。」




「やはり、前半の消耗度が大きかったな。限界だ。烏山、いくぞ。」

「へい。もう待ちくたびれましたよ。ホント。」



----------------------------------------------

SG…#9 柳葉 敏 180cm/2年

SG…#5 烏山 彰隆 182cm/3年

-----------------------------------------------



柳葉、福原の肩を使い、ベンチに下がる。


「コートで待ってますよ。柳葉さん。」

『コク。』
 


堂本は、足をつった柳葉に変わり、シューターの烏山を投入した。

緑川は、落ち着いてワンスローを沈め、3点プレーを成功させる。

だが、一難去ってまた一難。

山王の長距離兵器が、湘北のリングに狙いを定めるのであった。




山王 46
湘北 34







続く。

#324 【ミス】

2010-06-24 | #11 湘北 選抜編
山王 44
湘北 31




『ビィーーーー!!』

第3Q開始を告げるブザーが体育館に響き渡る。



-----------------------------------------------

SG…#9 柳 春風 171cm/1年

SG…#15 緑川 航 184cm/1年

-----------------------------------------------



観客席の陵南。

「おっ。緑川をいれてきましたね。」

「中、外のリズムを作るためだな。」

「全国大会でだいぶ成長しているとはきいてはるが、この決勝の舞台、緑川君で大丈夫やろか・・・。」

「合同合宿で力をつけた一人だ。問題はないよ。」




『パン!』


「はぁ!」

宮城が緑川の尻を叩き、小声で語りかける。

「いつもの自信はどうした?1本目は、お前に預ける。思いっきり、打っていけ。」

「えっ。はっはい。」

「花道、白田。リバウンド頼むぞ。」

「はい。リラックス、リラックスだよ、緑川。」

「おうよ。リバウンドは全て獲る!」



湘北のボールでスタートした。

山王のディフェンスは変わらない。

ハーコートマンツー、柳葉がそのまま緑川についた。



『ダムダム!』


宮城のドリブル。

緑川にアイコンタクトを送る。



『ビィ!』


作戦通り、宮城から緑川にパスが送られた。



『パス!』


軽いステップでボールを受けた緑川は、眼の前の柳葉には眼もくれず、3Pシュートを放った。


「!!」




「血迷ったか!あの1年!」

と田岡が叫ぶ。

「思いっきり打ったな。」にこり。

と仙道。

「雰囲気に飲まれたな!入るとは思えん!」

再び、田岡は叫んだ。




ボールは、低い弾道で、リングに向かっている。



「リバウンドダス!」

加藤の声に、河田、福原、そして沢北がスクリーンアウトを開始。

負けじと、桜木、白田、流川が対抗する。



緩やかな回転をした緑川のシュートは・・・。



『ガッガン!!』


奥のリングにあたった。



「すいません!!」

と緑川。


その声で、ゴール下は戦場と化す。

小さく跳ねたボールは、河田の眼の前へ。


(桜木さんを跳ばせないことが先決だ。ボールはあとでかまわない。)

徹底した桜木へのスクリーンアウト。

河田は跳ばなかった。



ボールは。



「もっらい!」

沢北が奪った。




「だから、言わんこっちゃない!!」

と憤慨する田岡。

「監督が怒っても・・・。」




『キュ!!』


「むっ。」


だが、すぐに流川が沢北にあたる。



「ふっ、いくぜ。ヨーーイ、ドン!」


「!!」


沢北は、柳葉へパスアウト。

自身は、湘北ゴールへ駆け上がる。



「速攻ーダス!!!」


宮城と並走する加藤。


流川もまた沢北に並んでいる。

だが、スタートの遅れた緑川は、柳葉のスピードについていけない。



山王の3線。

アウトナンバー。



『パシ!』


『パシ!』


流れるようなパスワーク。


山王の勢いは止まらない。



「柳葉!叩き込め!」



『パサ。』


あっという間に、柳葉のレイアップシュートが決まった。



(ん!柳葉のやつ、ダンクにいかなかった。もしや・・・。)

と沢北。




山王 46
湘北 31




「ったく。安西先生は何を考えておられるのだ!!緑川に柳葉は抑えられん!!」

ぶつぶついう田岡。

(最初から監督がおったら、うるさくてかなわんかったな。)




「いいぞ!いいぞ!柳葉!!」

「ナイスランダス!」


「・・・。」

『コク。』


「ん、どうかしたダスか?」

「・・・・・・・・・ブ。」

「大丈夫ダスか。」




(ちっ、最悪の結果になっちまった。)

と肩を落とす宮城。


(15点差・・・。)

流川は電光掲示板を眺める。


「オール。」

「あぁ、それしかねぇ。」


宮城の選択がもたらした最悪の結果。

点差は15点に広げられ、山王に更なる勢いをもたらした。

体育館内は、山王の強さに湧き上がり、湘北の脆さに落胆の声。




「強すぎる山王!!」

「15点差はデカイ!!」

「山王が圧倒している!!」




「15点差!!どうしたんだ!湘北は!!」

記者席の中村は、感情を抑えられない。

「今の1本は余計だったわね。きっちり攻めて、2点奪えれば、11点差だったのに・・・。
宮城君の選択ミスだわ。いや、安西先生のミスともいえるわね。」

と弥生。




流川は、山王コートに向かう途中、緑川に一言告げた。

「おい。もっと自信を持て。」

「流川先輩・・・。」

(・・・わかりました!今の1本で、緊張も少し和らいだし、頑張ってみます!!)



緑川のシュートが、湘北のピンチを救うのか?

怒涛の第3Qを迎える。




山王 46
湘北 31







続く。

#323 【後半の前に】

2010-06-21 | #11 湘北 選抜編
山王 44
湘北 31




ハーフタイムを迎えている。


記者席。

「予想以上の得点差ですね・・・。湘北、大丈夫かな・・・。」

「福原君の活躍が素晴らしいわね。今大会、一番の動きを見せている。
何が何でも勝ちにいく気持ちと、何か違うもう一つの信念みたいなものを感じるわ。」

「決勝の舞台で、実力以上のものを見せれるなんて、大物ですね。」




観客席の陵南。

弥生らと同じ話をしていた。

「快のやつ。めちゃくちゃ巧くなっている。」

「ずっと同じチームで、同じような実力でやっていたのにな。
手の届かない存在になっちまったみたいで、なんか悔しいな。」

「それは違うで、空斗!わいらは、夏に優勝したんや!
きっと、福原君も今の空斗と同じような気持ちになって、一生懸命努力したからあの場所におるんや!
わいらももっと努力したら、きっとまた1番になれるで!!!」

「彦一さん・・・。」

「お前が言えた言葉じゃない。お前がもっと頑張れ。」

「なっ。フクさん・・・。せっかく、ええ言葉ゆうたのに・・・。」


そこへ。


「ふーーーー。ようやく辿り着いた・・・。」

「かっ監督!」

「お疲れ様です。」

「遅かったですね。」

「遅かったですねじゃない、バカもの!!ったく。
誰のせいで、こうなったと思っておるのだ!ぶつぶつ・・・。」

田岡の髪は乱れ、明らかに疲れた表情を浮かべていた。


「で、どうだ?試合のほうは?得点を見る限り、山王が随分押しているようだが。」

「その通りです。山王はチーム力で攻め、湘北は個人技中心。
これでは、なかなか差は縮まりません。」

と黒川が答えた。


「個でも同等以上の相手に、チームで攻めないでどうなる?安西先生は?」

「まだ、動いていませんが、どうやら選手を変えるようですよ。」




湘北ベンチ。


「みなさん、どうやら山王戦ということで少し飲まれてしまっているようですね。」

「そんなことはないぞ!キツネは知らんが!」

「うるせー。ド素人。」

「攻守ともに、眼の前の相手ばかりを見て、周りの状況を把握できない。
そのため、無謀で強引なシュートばかりを打つはめに。
幸運にもシュートは決まっているようですが、これでは良いリズムは生まれません。」


(福原ばかりに気をとられている俺のことか。)


(柳葉さんの抑えるということに拘りすぎて、オフェンスも萎縮してしまっていたということか。)


(ちっ、また自分ばかりで一杯一杯になってしまい、みんなをフォローすることができなかった。)


(沢北・・・。)


「どうやら、庶民どもは心当たりがあるようだな。俺はないぞ!ハッハッハ!!」


「桜木君も同じです。ゴール下を守るといったにもかかわらず、河田君や福原君にシュートを許している。
カバーを怠っているのでないでしょうか。」

「ぬっ。」


「ここは少しリズムを変えます。柳君、緑川君と交代です。」

「はい・・・。」


「緑川君を投入する目的は一つ。山王のディフェンスを広げること。
緑川君は、チャンスと思ったら、打ってください。リバウンドは桜木君が獲ります。」

「もちろんだ!オヤジ!!俺のリバウンドをよく見てろよ!!」

「先生にえらそうな口を叩くな!」


「柳君。君のおかげで、柳葉君は後半失速するかもしれません。」

「えっ。」

「得点は奪われてはいましたが、君のスピードとディフェンスは、効いています。ボディブローのようにね。」

「はっはい。」

(そうは思えなかったけど・・・。)


「宮城君。私の指示があるまで、ゲームメイクは任せましたよ。」

「はい。」


「白田君。」

「はい。」

「自分より低い相手だからといって、ゴール下で勝負しなくてもいいんですよ。
君は、ゴール下だけの選手じゃない。」

「はっはい!」

(・・・・・・。そっそうか。福原に固執するあまり、攻めが単調になっていたかもしれない・・・。
眼の前の相手ばかりってそういうことか・・・。)


「流川君。」

「んっ。」


湘北の作戦会議は続いた。




対して、山王ベンチ。


「上出来だ!!」


『パンパン!!』

手を叩きながら、選手を迎え入れる堂本。


「いい動きだ。福原。」

堂本は福原の肩を叩きながら、声をかけた。

「ありがとうございます。」

選手たちが、堂本の周りに集まる。


「前半で13点差。普段の相手なら安全圏に近いリードだといえる。だが、リードなど忘れよう。
相手は湘北、20点差をひっくり返したチームだからな。」

「はい!!」


「沢北、流川はどうだ?」

「パスを覚えたおかげで、オフェンスの幅が広がった。ディフェンスするのも一苦労ですよ。
ただ、1on1は以前ほど、怖くなくなった。
どうやら、やつの優先順位は、パスが1番になっちまったようです。らしくないですね。」

「例え、1on1だけでも、お前には敵わないだろう。」

「ありがとうございます。」

沢北は、流川を睨む。

(流川、もっと攻めて来いよ!!全力でよ!!!)


「敏君、大丈夫?いつもより、疲れているように見えるけど。」

『プルプル。』

首を横に振る柳葉。

「なら、いいけど。後半も頑張ろうね。」

『コク。』


普段と変わらぬ得点を奪っていた柳葉。

そのため、周りのものは気付いていなかった。

柳葉のわずかなリズムの乱れを。


元来、超がつくほどの人見知り。

普段から、前半は相手の様子を伺いながら、オフェンス。

それでも、高いオフェンス力を誇っていた柳葉は、次々に得点を量産していた。

後半は、抑えていた体力で爆発的な得点を奪う。

そんなプレースタイルを持っていたのが、柳葉であった。


しかし、今日の湘北戦。

スタートから、柳の激しいディフェンス。

スピードで振り切ろうともなかなか振り切れないず、
この第2Qまでに後半に使う体力までも消耗していた。

そのことに感づいていたのは、親友の河田、湘北の安西、そして、堂本であった。


(柳葉は、少しオーバーペースかもしれないな・・・。)


「烏山、いつでもいけるように準備しとけ!」

「へっ。待ちくたびれましたよ!!」




再び、湘北ベンチ。

安西は、流川に向かって話をしている。


「流川君のパスは、山王に脅威を与えていますが、沢北君には逆効果かもしれません。」

「むっ。」

(どういうことだ??)


「オフェンスの基本は、最初にゴールを見ることです。味方を探すことじゃありません。
特に君は、チームのエースとして点を獲る使命がある。
1on1、パス、使い分けは難しいですけどね。ほっほっほ。」

「使い分け・・・。」

流川は一人考えるのであった。


「オヤジ!俺は!!」

「桜木君は・・・。」




両校の監督、選手の思惑が交錯する中、第3Qが開始された。




山王 44
湘北 31







続く。

#322 【計算外の福原】

2010-06-18 | #11 湘北 選抜編
山王 39
湘北 29




第2Qも終盤。


現在、山王がこの試合、最大の得点差をつけ、リードしている。


(ちっ、あの福原ってやろーが、計算外だったな。白田が抑えられているじゃねぇかよ。)

と宮城。


(予想以上のディフェンス・・・。思うように動けない・・・。)

(俺は、いつも最強インサイドを相手に練習しているんだ。何度もやられてたまるか!)



『ダン!』


『グッ!』


白田は必死にゴール下のポジションを獲ろうとしているが、福原の重い足腰により、
なかなかいいポジションを奪うことができなくなっていた。


(お前のパターンは、もうわかったよ!!)



『サッ!』


白田は、足を大きく開き、福原の前を陣取ろうとするが、素早く福原が足を入れる。


(くそっ。ポジションが獲れない。)


ボールは、柳がキープしている。


(あれじゃ、白田は使えない。快のやつ・・・。)


同様に、桜木も河田の大きな体により、ベストポジションを奪えることが少なくなっていた。

奪えたとしても、ガード陣がそのパスコースを潰していた。




「そうだ。桜木へのパスは全て潰すんだ。やつをノらせるわけにはいかない。」

と堂本。




攻め倦んだ湘北は、流川が沢北のマークを交わせぬまま、強引なシュートを放った。


(そんなシュートじゃ決まらねぇよ!!)



『ガン!』


ボールは、リングにあたり、大きく跳ねる。



「美紀男!」

「ふぁい!」


「花道!!」

「おう!!」


(ボールがこないなら、自分から奪い獲るまでだ!!)



福原と白田もゴール下の肉弾戦に参戦。



(このボールは・・・。)



「誰にも渡さねぇーーー!!!とりゃーー!!!」


『ダン!』


「山王のゴール下は、僕が守る!!!」


『ダン!』



『パス!』


先に触れたのは、身長、ポジションで有利な美紀男。

だが、両手で掴むことはできず、ボールは再び舞い上がる。



『ダン!』



「1本目で奪えなかったのは、致命傷だぜ!丸男!!!」


連続ジャンプにおいて、桜木に敵う高校生はいない。



『バチーーン!!』



「よっしゃーーー!!!」


2回目の跳躍、誰もいない空中で、ボールを掴み獲った桜木。




「桜木くーーーん!!!」

晴子がベンチから声援を送る。

「8本目!準決勝を上回るペースよ!」

「だけど、ここから得点に結び付けないと。桜木のリバウンドの意味がなくなってしまう。」

と心配そうな安田。




「桜木さんのリバウンド力は、相手が山王であろうと健在ですね。」

と陵南黒川。

「いやむしろ、パワーアップしたようだ。」にこり。

笑う仙道。

(リバウンドを掴む者は、勝利を掴む・・・。)

福田は魚住の言葉を思い出していた。




すぐに、宮城が指示を出す。


「花道!外だ!!柳がフリー!!」

柳葉は、すでに湘北ゴールにむけ、スタートをきっていた。


「サル風!!」


『バシ!』


桜木のパスアウト、絶好のミドルポジションで、ボールを受ける柳。


「ナイパス!」


そのまま、ミドルシュートを放った。


ボールは、綺麗な弧を描き、リングを目指す。


ジワジワと山王に離されかけている湘北にとって、この1本はどうしても決めたいところ。




「入れーー!!!」

「いけーーーー!!!」

湘北のベンチが大きな声を出す。




下降するボール。



『ガッ!!』



(外れた!)




「外れた!!」

「外したーー!!」




「春風!!」

「外してしもうた!!」




『バシ!!』



「ナイスリバンだ!美紀男!!」

「ふぁい!キャプテン!」


リバウンドは、ゴール下にいた美紀男が奪った。




「あぁーー。」

「残念っ。」

「流れは、完璧に山王や。」




湘北ベンチにも落胆の声が出る。

「桜木が、せっかくオフェンスリバウンド獲ったのに・・・。」

「フリーを・・・。」

「もう!こういうときこそ、応援よ!!ほら、しっかり!」

「そっそうだ。マネージャーのいうとおりだ。よし!!ドンマイドンマイ!!」

「柳!切り替えていこう!!」

「ディフェンス1本だ!」

「ディーフェンス!ディーフェンス!」

ここで、安西の口が開いた。


「緑川君。アップをしてください。」

「はっはい。」

(けっ決勝戦で・・・、きっ緊張してきた・・・。)


「することはわかっていますね?」

「はっはい。僕には、あれしかありません。」

「よろしい。後半いきますよ!」

「はい!!」




コートでは。



『ザシュ!』


「ナーイシュ!柳葉!ナーイシュ!ヤ・ナ・ギ・バ!!」


加藤、柳葉、福原、そして柳葉と素早くつないだパスワークから、
柳葉は柳の厳しいチェックを受けながらもジャンプシュートを沈めた。

またしても、アシストは福原であった。

山王は、福原起点にリズムの良いオフェンスを展開し、危なげなく試合を運ぶ。



かたや、湘北。

桜木のゴール下の1on1、流川のオフェンス、決して安定したものではなかったが、なんとか喰らいついていた。



第2Q終了。




山王 44
湘北 31




湘北は、13点差というビハインドを背負って、後半戦を迎えることになった。








続く。

#321 【華麗なパスワーク】

2010-06-17 | #11 湘北 選抜編
山王 24
湘北 16




第2Q、山王は第1Qと打って変わって、インサイドで勝負をしてきた。


オフェンスの起点は、PF福原。

この選抜からスタメンを務める福原は、潜在能力、器用さを見抜いた堂本監督が、
一から鍛え上げた秘蔵っ子であった。




(沢北や柳葉のように、突出したスキルを持っているわけではないが、
福原は全てでベターなスキルを持っている。)




「白田!お前は俺が山王にいったことを責任からの逃げといったな?どうだ、これが逃げに見えるか?」

「・・・。」

「俺は、アメリカにいく!」

「あっアメリカ!!」

「通用するとかしないとかじゃない、肌で本場のバスケを感じたいんだ。
だから、俺は昔の仲間なんて全て忘れた。俺は未来だけを見る!!」

「福原・・・。」




湘北のオフェンス。


(あの福原とかいうやろー、巧いな。
だが・・・、うちの白田だって負けてねぇはずだ!作戦に変更はなし!!)



『ガシ!』


『キュ!』


山王ゴール下では、4つ体が激しいポジション争いをしている。


『ザッ!!』


河田の前でポジションを奪う桜木。



「リョーちん!パス!!」

桜木は、大きく手を振りパスを要求する。



だが。



「簡単にはいれさせないダス。」


加藤がインサイドへのパスを警戒。

宮城からのパスコースを塞ぐ。


(ちっ、仕方ねぇな。)



『ビィ!』


ノールックパス。


『キュ!』


『キュッ!』


山王選手に緊張が走る。



「やっぱり、おまえしかいないようだな。」

「・・・。」

ボールは、流川の下へ。



だが、沢北の言葉を無視するかのように、流川はボールを優しく放った。



『フワァ。』



「パス!!!」

驚く沢北。


『パシ!』


「上出来だ!流川ーー!!!」

ボールは、ハイポ桜木に渡った。


(へっ、どうだ、驚いたろ、沢北!今の流川には、山王、いやお前に勝つことしか頭にねぇ。
例え、それが花道と協力してもだ。)にやり。



角度を変えることによって、ハイポの桜木へボールを入れる。

しかも、流川という山王の盲点を突いた位置からのパス。

宮城の思惑通りだった。


「ナイスパスだ!流川!!」

宮城は嬉しそうにいった。


「お前が桜木にパス!!」

「負けるよりましだ。」



桜木は河田を背負い、ハイポの位置からゴールを狙う。



『キュッキュキュ!』


『キュ!!』


ピボッドと小刻みなフェイントを織り交ぜ、河田を抜く。




「横なら桜木だ。」

と仙道。




『キュ!』


そこに加藤と柳葉が囲みにきた。




「山王のヘルプが速い!!!」

「桜木が囲まれる!!」




-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

2分間のインターバル。


宮城と桜木、白田の作戦。

「花道が、ハイポでボールを受けたら、2回目からは必ずお前を囲みに来るはずだ。」

「複数でこの天才を止めようと。」

「あぁ。だから、囲まれる前にさばけ!ノーマークを見つけ、すぐにパスだ!!」

「いつもやっとるぜ!」

「わかってる。だが、いつもよりも速くだ!相手は山王、対応は他のチームと比べ物にならないくらい速い。
ぐずぐずしているとすぐに囲まれちまう。
白田は、花道にタイミングをあわせて、ゴール下でポジショニングだ。湘北のチームワークを見せてやれ。」

「わかりました。任せておいてください!」

「天才のパスと視野の広さをもってすれば、問題はないはずだ。
任せたぜ、花道!」

「当たり前だ!ハクタスが点を獲るのは納得できねぇが、キツネよりはましだ!」



-----------------------------------------------------------------------



(ハクタス!)


ゴール下の白田に眼を向ける桜木。


だが、白田へのパスコースは福原によって、遮られている。


「福原!」

(2度も簡単にとらせるか!)


(バカタレ!出せないではないか!)



「花道!」

柳とポジションチェンジをした宮城が0°近くまで下がっていた。



「リョーちん!」

桜木は、高くジャンプし、宮城にパスを通した。



『バス!』


『サッ!』


『ダン!』



宮城は、すぐにインサイドへバウンドパスを放った。

そこには、前を防ぐ福原の裏をかき、違う角度のポジションを奪っていた白田。



『シュパ!』



横から跳んでくる福原のチェックを物ともせず、ゴール下のシュートを決めた。

湘北の3角パスが、山王インサイドから得点を奪った。


「いいぞ!花道!!白田もナイッシュ!!」

「さすが天才!ハッハッハ。」

「キャプテン、ナイスパスです。」


(くそう、白田。)

(俺は勝つ!柳のためにも!)




「湘北の華麗なパスワーク・・・。えらく成長してるやないですか!!」

「しかも、流川さんが、あの位置から桜木さんにパスですか?」

「なんか、プレーの幅が広がりましたね。」

「1on1だけが、オフェンスだと思っていたあのころの流川が懐かしいな。」にこ。


(45°からハイポへパス。)

福田は眼に焼き付けていた。




山王 24
湘北 18







続く。

#320 【地味な選手】

2010-06-14 | #11 湘北 選抜編
山王 22
湘北 14




リングを掴む桜木の姿。




「アンビリーバブルや・・・。」

と彦一。




同じく、記者席。

「センセーション・・・。」

と中村。

「あの桜木君を・・・。」

弥生が続ける。




「ブロックした。」

と福田。




隣の仙道は苦笑している。



「すげー跳んだな。きた、沢北。」




「わぁぁぁーーー!!!!」

「桜木がブロックされたーーー!!!」

「沢北ぁぁーーーーー!!!!」

「いくらなんでも、跳びすぎだろ!!」




跳ね返ったボールは、柳が拾い上げた。



「おのれぇぇーー!!小坊主!!!」


「湘北がインサイドで攻めてくることぐらいわかってたぜ。」

「ぐっ。何度となく、この天才の邪魔をしおって!!!あっ、逃げるな!」

「逃げるんじゃねぇ、まだプレーは続いているんだ!」


ボールは、柳から流川へと渡っていた。



『ザシュ!』


流川のミドルが決まる。



「あっ!ほら見ろ。また流川に決められたじゃねぇかよ!」

「ぬっ。流川!ドサクサ紛れに!どいつもこいつも、天才の邪魔ばかりしおって!!」

「まぁ、いいさ。すぐにやり返してやる!」

「おう。任せたぞ、小坊主!」


そのやりとりを聞いていた流川。

(どっちの味方だ、どあほう。)




山王 22
湘北 16




(沢北の迅速なカバー。やはり、山王は、うちのインサイド勝負をわかってやがったか。
さすが、ヒゲやろーといったところか。)

山王ベンチを見る宮城。




『パンパン!』

「ナイスカバーだ!」

堂本は、選手たちを鼓舞していた。




(その前に・・・。)


「こら、花道!白田にちゃんとパスしろ!」

「リョーちんのいうとおりにしてやるぜ。」

「おっ。今度はやけに素直だな。」

「勝つためだ。」

(流川に決められるなら、ハクタスのほうがましだ。)




山王のオフェンス。


『ジロジロ。』

トップでドリブルをしている加藤の瞳が、静かに動く。


(今度はなんだ?)


『サッ!』

加藤の左手があがる。


「4番ダス。」


(また、ナンバープレーか!)



『キュ!』


柳葉が流川にスクリーンをかけにいく。


「流川さん、スクリーン!」


柳の声に、湘北選手が沢北に集中。



『クル。』


『ガシ!』


「おっ!」

「!!」

「桜木先輩、スイッチです!!」

インサイドでは、河田が大きな体で、白田の動きを封じている。


福原はハイポへ。

桜木が福原を後ろから追う。


ボールは、流川にスクリーンをかけると見せかけ、逆サイドに切れた柳葉に渡っていた。

ゴール下では、河田が白田を背負い、ポストアップをしている。


山王選手、ボールの素早い動きに、観客たちは食い入るように見つめる。




「誰が打つんだ。」

「湘北のディフェンスが混乱している。」




「すっすごい。」

「単純なさっきのナンバープレーとは大きな違いね。」




「河田ダス!」

加藤が声を出す。


その言葉に、ハイポ福原の後ろにいた桜木が、ローポ河田の前に下がった。

福原はハイポから、河田の逆ローポに下りる。


そこへ。


『ビィ!』


柳葉からのパスが福原へ渡った。


「そっちか!!」



『キュ!』


コートを力強く蹴り、福原のマークに行く桜木。


「大福!打たせん!」



だが、間に合わない。


福原は、流れるように0度からのジャンプシュートを放つ。



『シュパ!』



決めた。




「また、山王のナンバープレーが決まった!!」

「山王が本領発揮してきたぞ!!」




「福原君、本当に器用なプレイヤーね。ディフェンスだけでなく、パス良し、シュート良し。
チームの潤滑油としては、申し分ない動き。
シューターの烏山君を外して、彼を入れている理由がよくわかったわ。」

「山王は、どこからでも点が取れてますね・・・。」

「えぇ、まだ去年と同じとの評価はあげられないけど、それに近いものはあるわね。」




「空斗。あのPFは、同じ中学だったっけ?」

と上杉に尋ねる仙道。

「はっはい。」

「以前から、あの動き?」

「いや違いますね。確かに、全てをこなせる器用なやつでしたけど、もっと荒削りだったような。
それにあまりスポットライトのあたる選手ではありませんでした。」

「地味に巧いって言葉が丁度あっていたな。」

と黒川。

「地味に相手のエースを止め、地味にリバウンドを奪い、地味にシュートを決める。
だけど、存在感は大きい。今思えば、快がいたから、俺たちのチームは巧く回っていたような気がします。」

「地味な選手に、日を浴びせるためのナンバープレーっか。」

(福原の潜在能力に気付き、プレーの幅を広げた堂本マジックといったところかな。)


「うちの監督とは、えらい違いや!おっ、そういえば、忘れてましたが、監督はまだけえへんな。」




その頃、田岡はタクシーに乗車し、会場に向かっていた。

(金を払っている私が、なぜ観戦できんのだー!!)




山王 24
湘北 16







続く。

#319 【インサイド】

2010-06-12 | #11 湘北 選抜編
山王 20
湘北 14




沢北、流川の両校のエースが跳ばす展開で始まった決勝戦。

振り返れば、桜木に活躍の場は、ほとんどなかった。




2分間のインターバル。



湘北ベンチ。

「ナイスプレーです。」

安西は、流川に一言かけ、迎え入れる。

「うす。」

「流川君。」

晴子は、流川にタオルを手渡し、流川はそれを受け取った。


「ぬっ。」

その光景を見た桜木。


「リョーちん!俺にもっとパスをくれ!!」

「あぁ!?」

タオルで顔を拭っている宮城が答える。


「バカ。花道は、河田に抑えられてるだろうが。いれたくてもいれられねぇんだよ!」

「なぬっ。」

「今は流川が沢北と同等の動きを見せている。
ここで、インサイドから攻めることができれば、更に流川も動きやすくなる。
だから、花道の動きが重要になるんだ。」

「流川に活躍させるために動くのは納得できんな。」

「あのやろーに負けるよりはましだろ?流川との勝負は、勝ってからやればいい。」

宮城は沢北を指差す。

(はぁ、もう少し仲良くならねぇかな。)


「・・・。おい、キツネ!」

「ん。」

「一先ず休戦だ。勝負は、また今度してやる。」

(おめーと勝負なんかしてねぇ。)


「で、リョーちん、どうすれば?」

「おい!白田!」

「はっはい!」

宮城の下に白田が寄ってきた。


「点を決めるのは、お前だ!」

「なぬ!!それでは話が違うではないか!!」

「うるさい、最後まで話を聞け!」

宮城が続ける。


「福原のディフェンスはどうだ?」

「しんどいですよ。あんなにディフェンスのいい選手じゃなかったはずでしたけど・・・。
ただ、俺のフックは、あいつには止められない。」

「OK!作戦はこうだ。」

「・・・・・・・。」

「・・・・・・・。」

「わかりました。任せておいてください!」

「当たり前だ!ハクタスが点を取るのは納得できねぇが、キツネよりはましだ!」

(うるせー、どあほう。)


「よし!いくぞ!」

「はい。」

「おう!」


宮城からの作戦を胸に秘め、桜木はコートに向かった。




第2Q開始。


ボールは、山王。

加藤の立ち上がりは、静かである。


『ダムダム!』


(あたっている沢北か、それともミスマッチの柳葉か、最初はどっちだ?)

「ん?」


「5番ダス!」


(ナンバープレー!!)



その瞬間。



『ビュン!』


「!!」

ボールは、宮城の顔すれすれのところを通った。


加藤の選択は、インサイド。


(インサイド勝負!!)


それは、宮城の思惑を一致していた。



『バス!』


ミドルで受け取ったのは福原。


シュート体勢に入る。


『サッ。』


絶妙なシュートフェイク。


白田は、あっさり引っかかった。

「しまった!」




「巧い。」

思わず観客席の黒川が叫ぶ。




『ダム!』


ワンドリで、白田を抜いた。



だが。



「あまいわ!」

桜木が、すぐさまカバー。

コースを塞ぐ。



『バス!』



「!!」



福原は、ボールを叩きつけるように、逆サイドにパス。


そこには、センター河田美紀男。

「快君、ナイスパス。」



『バス!』



ゴール下のシュートを決めた。


あっさりと湘北インサイドを切り裂いた山王のインサイドコンビ。




「山王、今度はインサイドで攻めてきたぞーー!!」

「もう山王のオフェンスは、とめられない!!」




山王 22
湘北 14




(福原・・・。巧くなったのは、ディフェンスだけじゃないか・・・。)

山王コートに戻る福原の背中を見つめる白田。


「桜木さん!僕たちのほうが、強い!」

「ぬっ、いうじゃねぇか!丸男の分際で!」

「僕は、桜木さんに勝って、No.1になるんだ!!」

「丸男は2番のほうがお似合いだ!」



(加藤のやろー、同じことを考えていた?いや、たまたまか?)

「さっきの話の通りだ。俺たちもいくぞ。」


「おう。」

(まずは、丸男を黙らせる。となると、やはり・・・。)にや。


「はい。」

(少し桜木先輩が心配だけど、作戦通り、いくぞ。)




湘北の反撃。


宮城のドリブル。

ボールは、柳へ。

リターンパスが宮城に入る。



『キュ!』



「来い!」


(いいぞ、花道!!)



『バス!』


トップから、ハイポの桜木へ。




「あっ、湘北もインサイドから仕掛けてきた!」

と中村。

「第2Qは、インサイド勝負の肉弾戦かしら。」




さらに、



『キュッ!』


(とった!!)

(やばいっ!)


白田は、ゴール下、福原を背負い、最高のポジションを奪った。


「桜木先輩!」

パスを要求する白田。



だが。



「くらえ!丸男!」

「桜木先輩!!」

「バカ!花道、パスだ!!」



『サッ!』



「!!」



『ダム!』



低いドリブルから、一瞬にして、桜木は河田を抜き去る。



(えっ!速い!!)



『キュ!!』



『ダン!!!』



そして、白田に見向きもせず、高く舞った。

ボールを片手で掴み、渾身の力を右腕に注ぐ。



「くらえ!ヤマオー!!」



「高いーー!!」

「花道!!」



「うぉぉーー!!!」



『ガシィィ!!』


体育館には、桜木がリングを掴む音が響き渡った。




山王 22
湘北 14







続く。

#318 【沢北の貫禄】

2010-06-11 | #11 湘北 選抜編
山王 16
湘北 12




流川が沢北のチェックを技術で交わし、シュートを決めた。




「流川君!!」

湘北ベンチの晴子が叫ぶ。

「頼もしいわね。」

と彩子。

「流川君の力はこんなもんではないですよ。・・・、沢北君も。」

「本当の勝負はこれからということですね。」

彩子は、少し嬉しそうに微笑んだ。




「アンビリーバブルやーー!!!
沢北さんをも交わす流川君のスナップシュート!しかも、左手やでーー!!!」

「いいシュートだな。」

(いつの間にそんな技を。)

と仙道。

『クイ。クイ。』

隣では、福田が左手の手首を振っていた。

(難しい・・・。)




「エージ。」

「わかってるよ。」

加藤に答える沢北。


「・・・・・・・・・。エージ。」

「だっ!お前は真似するな!!」

柳葉は、なんとなく加藤の真似をした。


「やられたら、やり返すダス。」

「夏輝は、ほんと深津さんみたいだな。」

(そんなに真似しなくてもいいのに。お前にはお前の良さがあるんだけどな。)



山王の反撃。

いや、沢北の反撃。



高い位置から、沢北にボールが渡る。




「沢北がリベンジだーー!!」

「いけーー!!沢北!!」

「流川!止めろ!!!」




「いくぜ。」

「きやがれ!」


『キュッ!!』


コートを蹴るバッシュの音が、コートに響き渡る。



『ダム!』


『キュ!』




「おおぉぉーー!!」

「流川がしっかりマークしている!!」




『キュ!』


『ダム!』


「!!」




「すっ凄いよ!流川君!!」

思わず叫ぶ中村。




沢北にぴったりとマークする流川。

沢北の突破を許さない。


その1on1に会場が盛り上がる。




「さっきのプレーでノッてきましたね。流川さん。」

にこやかな表情の上杉。

「だいぶディフェンスも巧くなっているな。」

と感心する仙道。

隣では、福田が流川のディフェンスを食い入るように見つめている。

(仙道が認める男、流川。桜木とは違う。)




コートでは。



『シュ!』


ボールは、沢北から加藤に。




「うぉぉーー!!」

「あの沢北を止めた!!」

「流川ー!すげーーー!!」




「とめたぜ。」

と流川。

「ふっ。」

「何が可笑しい?」

「いい気になるなよ。」



『ダン!』


『キュ!』


再び、沢北が動く。



「!!」



沢北は、素早いVカット。

加藤からリターンパスが入る。



だが。


『シュ!』


今度は、逆サイドの柳葉へパス。

自身は、インサイドへ切れ込んだ。



(中!)


『バス!』


山王の速いパス回し。


沢北は、台形内でボールを受け取った。


流川は追走。


マークを外さない。



「ぬっ。」

桜木は、河田に抑えられている。

(相変わらず重てぇな。)

(沢北さんの邪魔はさせない!)



『キュ!』


『サッ!』


沢北は、ボールを受け取るや否や、ジャンプシュートの体勢。



『ダン!』

跳んだ。


(打たせるか。)

流川も跳ぶ。


大きく伸ばした手は、シュートコースを塞ぐ。

2つの体は、まるで空中に静止しているかのように、浮かんでいる。


「!!」

「!!」にや。


『シュ!』


「!!!」



沢北は、足を広げ、体のバランスをとりながら、ジャンプシュートを放った。



ボールは、流川の手のひらを越えた。



『シュパ!!』




「たけーーーー!!!!」

「高すぎる!!!」

「とめられるはずねぇーー!!」




着地する2人。

沢北はどうだと言わんばかりの表情である。

無言の流川。


流川の完璧なまでのシュートチェック。

だが、沢北は空中で一伸び、その上をいく跳躍を見せ、ジャンプシュートを放った。



沢北栄治、最高レベルのジャンプシュート。


留学で得たスキル。



それは、尋常ではない高さのジャンプシュートであった。



「目測を誤ったか。」

「・・・。」

「俺の本気のジャンプシュートは、もっと高いぜ。」

「・・・。とめてやる。」

「あぁ、やれるもんならな。」


沢北が続ける。

「ハイスクールのやつらでも、俺のシュートをとめられるやつは、そうはいなかったぜ。」

「上等だ。」



沢北が、流川のチェックを身体能力で交わし、シュートを決めた。

熱い火花を散らす両者は、ライバルを前に、チームを引率する力強いプレーを見せる。

その後、両者1本ずつのシュートを決め、第1Qのブザーが鳴った。



沢北 8得点

流川 8得点



河田とのゴール下の争いをしている桜木は、いまだ沢北との接触はなかった。

(ぐっ。小坊主をぶっ倒す前に、丸男をどうにかしねーと・・・。)


第2Q、インサイドが動き出す。



山王 20
湘北 14







続く。