海南の会議室に選手が集まり、彦一が作成した大栄学園の攻略ビデオを見ていた。
再び、ビデオテープが鈍い音をたてて回り始める。
モニターには、インサイドの2人が映っている。
<#5センター赤井秀樹、身長196cm、#7パワーフォワード青島慶二、身長194cm、大栄のインサイドを守る・・・。>
彦一のナレーションは続いた。
適当なところで、高頭がテープを止め、説明に入る。
「今、見てもらったらわかるように、この2人の特徴は・・・。」
「リバウンドとブロック!」
「その通り、C赤井は、その体格を生かし、大阪のリバウンド王にもなっている。
かたや、PF青島のほうは、持ち前の反射神経で、ブロック王になっている。」
「つまり、インサイドの守りは、鉄壁ということですか?」
「あぁ。青島がブロックでシュートの軌道をずらせ、赤井がリバウンドを奪い取る。
2人で1人を止めるディフェンスだ。そして・・・。」
再び、テープが回る。
『シュパ!』
『ザシュ!』
「軽い動きっすね・・・。」
「それだけじゃないぜ。清田。」
「ん!?」
声の主、武藤に眼をやる。
「こいつら、2人とも左だぜ。」
「左?」
モニターをよくみる。
「あっ!ホントだ!気がつかなかったけど、こいつら2人ともサウスポーじゃん!」
「タイミングが取りずらいな。」
と高砂。
「リバウンドもブロックも普段と違うタイミング、位置からやってくる。しかも、2人だ。
インサイドでは、いつも以上に注意が必要となる。」
「はい。」
ビデオが再生される。
『シュパ!』
『バシ!』
<#6シューティングガード小池哲也、身長180cm、ジャンプシュートを得意とする・・・。>
「これが、SG小池だ。ドライブよりも外角を得意とする選手だ。小池の売りは、何といってもディフェンス。
強気のディフェンスは、何よりも要注意だ。一瞬でも気を抜けば、ドリブルカットにくるから、気は抜けん。」
高頭がモニターを見ながら続ける。
「そして、この男が、2年生PGの桜井。桜井が加入したことにより、土屋がSFに転向した。」
<#10ポイントガード桜井丈、身長174cm、大栄のバランスオフェンスを支える冷静なPGや・・・。>
「試合勘や読みは、土屋と同等か・・・。」
「そう考えておいていいだろう。そして、ここからが、大栄の真骨頂だ。」
『ポチッ!』
高頭がビデオのリモコンを押す。
<大栄学園は、土屋淳を中心としたディフェンスのチーム。
まずは、ディフェンスを打ち破らんと、負けは決まったと同じや。・・・。>
彦一のナレーションとともに、大栄のディフェンス映像が流れている。
「このディフェンスはすげー。」
「オールコートのゾーンプレスは、山王のオールコートプレスにも匹敵する。」
「話には聞いていたけど、想像以上だな。」
「ディフェンスもすぐに変わっちまうしな。」
「対応だけで、体力は削られ、リズムが狂わされる。」
海南の選手が、大栄のディフェンスの凄さに焦りを感じていた。
(打ち破れるのか・・・。)
不安だけが脳裏をよぎっていた。
そんな中、神が言葉を放つ。
「マンツーは、得意じゃないみたいですね。」
「え!?」
誰の眼にもそんなふうには見えなかった。この2人を除いては・・・。
「ここだ!」
高頭が、ビデオを止める。
「一瞬だが、スイッチのタイミングで間が空いているな。」
と牧。
「あっ!ホントだ!!」
「神、この間ならいけるよな?」
「えぇ。問題はありません。」
と牧に向かって微笑んだ。
「よーし!マンツーになったら、神にスクリーンをかけ、シュートチャンスを作る。牧、清田、任せたぞ!!」
「了解っす!俺たちのスクリーンプレーは、完璧っすよね、牧さん?」
「あぁ。」
牧は微笑んだ。
「それともう一つ。やはり、大栄戦は、神に頑張ってもらわなければならんな。」
大栄対豊玉戦、南の3Pの模様が、モニターに映し出されている。
「なるほど。」
と武藤がうなずく。
「神なら、余裕だな。」
と牧もいった。
「見てわかるように、南の3Pは全ての桜井の前からだ。
セオリーだが、大栄のゾーンには、プレッシャーの少ない174cmの桜井の前で神に打たせて対抗する。
神、頼むぞ!」
「はい。」
「へへっ、大栄戦は、神さんゲームになりそうですね。」
「2回戦は牧さん、今日は信長、俺もそろそろ仕事をさせてもらわないとね。」
神が笑った。
「リバウンドには、牧も参加してくれ。
清田は、牧がリバウンドにいったら、セーフティーに戻り、相手の速攻を防いでくれ。」
「了解。」
「OKっす!」
「そして、大栄のオフェンスの特徴として挙げられるのが・・・。」
「バランスオフェンスですね。」
「あぁ。誰からも得点をとってくる。一瞬たりとも隙を見せてはいかんぞ。」
「はい。」
「それで、明日はマンツーで守り、勝負どころで、オールコートを繰り出す。」
高頭が続ける。
「牧は桜井。神は小池。武藤は青島。高砂は赤井。そして、土屋には・・・、清田。
大栄以上に足を動かせ!」
『ゴクッ!』
(土屋・・・。超一流といわれている土屋が俺の相手・・・。楽しみでしょうがねぇ。にかっ。)
こうして、海南の長い一日は過ぎていった。
「チュンチュン」
早朝、すずめが鳴く声が聞こえる。
ホテルの前の駐車場で、屈伸運動をしている清田。
「よっしゃー!今日も大活躍してやるぜ!!見てろよ!土屋ーー!!流川ーーー!!」
気合を入れて清田は叫んだ。
『ピクッ!』
「ん!?なんか目覚めの悪い朝やで・・・。」
そして、もう一人、バスケットボールを片手に、MDを聞きながら、自転車をこぐ男。
『ピクッ!』
(電池が切れた・・・。ついてねー。)
ふと、横を見るとナンバー10の車。
ふと、前を見るとナンバー10のバイク。
ふと、時計を見ると6時10分。
ふと、桜木と清田の顔が浮かんだ。
(ますます、ついてねー。)
全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会 ベスト4が決定する当日を迎えた。
続く。
再び、ビデオテープが鈍い音をたてて回り始める。
モニターには、インサイドの2人が映っている。
<#5センター赤井秀樹、身長196cm、#7パワーフォワード青島慶二、身長194cm、大栄のインサイドを守る・・・。>
彦一のナレーションは続いた。
適当なところで、高頭がテープを止め、説明に入る。
「今、見てもらったらわかるように、この2人の特徴は・・・。」
「リバウンドとブロック!」
「その通り、C赤井は、その体格を生かし、大阪のリバウンド王にもなっている。
かたや、PF青島のほうは、持ち前の反射神経で、ブロック王になっている。」
「つまり、インサイドの守りは、鉄壁ということですか?」
「あぁ。青島がブロックでシュートの軌道をずらせ、赤井がリバウンドを奪い取る。
2人で1人を止めるディフェンスだ。そして・・・。」
再び、テープが回る。
『シュパ!』
『ザシュ!』
「軽い動きっすね・・・。」
「それだけじゃないぜ。清田。」
「ん!?」
声の主、武藤に眼をやる。
「こいつら、2人とも左だぜ。」
「左?」
モニターをよくみる。
「あっ!ホントだ!気がつかなかったけど、こいつら2人ともサウスポーじゃん!」
「タイミングが取りずらいな。」
と高砂。
「リバウンドもブロックも普段と違うタイミング、位置からやってくる。しかも、2人だ。
インサイドでは、いつも以上に注意が必要となる。」
「はい。」
ビデオが再生される。
『シュパ!』
『バシ!』
<#6シューティングガード小池哲也、身長180cm、ジャンプシュートを得意とする・・・。>
「これが、SG小池だ。ドライブよりも外角を得意とする選手だ。小池の売りは、何といってもディフェンス。
強気のディフェンスは、何よりも要注意だ。一瞬でも気を抜けば、ドリブルカットにくるから、気は抜けん。」
高頭がモニターを見ながら続ける。
「そして、この男が、2年生PGの桜井。桜井が加入したことにより、土屋がSFに転向した。」
<#10ポイントガード桜井丈、身長174cm、大栄のバランスオフェンスを支える冷静なPGや・・・。>
「試合勘や読みは、土屋と同等か・・・。」
「そう考えておいていいだろう。そして、ここからが、大栄の真骨頂だ。」
『ポチッ!』
高頭がビデオのリモコンを押す。
<大栄学園は、土屋淳を中心としたディフェンスのチーム。
まずは、ディフェンスを打ち破らんと、負けは決まったと同じや。・・・。>
彦一のナレーションとともに、大栄のディフェンス映像が流れている。
「このディフェンスはすげー。」
「オールコートのゾーンプレスは、山王のオールコートプレスにも匹敵する。」
「話には聞いていたけど、想像以上だな。」
「ディフェンスもすぐに変わっちまうしな。」
「対応だけで、体力は削られ、リズムが狂わされる。」
海南の選手が、大栄のディフェンスの凄さに焦りを感じていた。
(打ち破れるのか・・・。)
不安だけが脳裏をよぎっていた。
そんな中、神が言葉を放つ。
「マンツーは、得意じゃないみたいですね。」
「え!?」
誰の眼にもそんなふうには見えなかった。この2人を除いては・・・。
「ここだ!」
高頭が、ビデオを止める。
「一瞬だが、スイッチのタイミングで間が空いているな。」
と牧。
「あっ!ホントだ!!」
「神、この間ならいけるよな?」
「えぇ。問題はありません。」
と牧に向かって微笑んだ。
「よーし!マンツーになったら、神にスクリーンをかけ、シュートチャンスを作る。牧、清田、任せたぞ!!」
「了解っす!俺たちのスクリーンプレーは、完璧っすよね、牧さん?」
「あぁ。」
牧は微笑んだ。
「それともう一つ。やはり、大栄戦は、神に頑張ってもらわなければならんな。」
大栄対豊玉戦、南の3Pの模様が、モニターに映し出されている。
「なるほど。」
と武藤がうなずく。
「神なら、余裕だな。」
と牧もいった。
「見てわかるように、南の3Pは全ての桜井の前からだ。
セオリーだが、大栄のゾーンには、プレッシャーの少ない174cmの桜井の前で神に打たせて対抗する。
神、頼むぞ!」
「はい。」
「へへっ、大栄戦は、神さんゲームになりそうですね。」
「2回戦は牧さん、今日は信長、俺もそろそろ仕事をさせてもらわないとね。」
神が笑った。
「リバウンドには、牧も参加してくれ。
清田は、牧がリバウンドにいったら、セーフティーに戻り、相手の速攻を防いでくれ。」
「了解。」
「OKっす!」
「そして、大栄のオフェンスの特徴として挙げられるのが・・・。」
「バランスオフェンスですね。」
「あぁ。誰からも得点をとってくる。一瞬たりとも隙を見せてはいかんぞ。」
「はい。」
「それで、明日はマンツーで守り、勝負どころで、オールコートを繰り出す。」
高頭が続ける。
「牧は桜井。神は小池。武藤は青島。高砂は赤井。そして、土屋には・・・、清田。
大栄以上に足を動かせ!」
『ゴクッ!』
(土屋・・・。超一流といわれている土屋が俺の相手・・・。楽しみでしょうがねぇ。にかっ。)
こうして、海南の長い一日は過ぎていった。
「チュンチュン」
早朝、すずめが鳴く声が聞こえる。
ホテルの前の駐車場で、屈伸運動をしている清田。
「よっしゃー!今日も大活躍してやるぜ!!見てろよ!土屋ーー!!流川ーーー!!」
気合を入れて清田は叫んだ。
『ピクッ!』
「ん!?なんか目覚めの悪い朝やで・・・。」
そして、もう一人、バスケットボールを片手に、MDを聞きながら、自転車をこぐ男。
『ピクッ!』
(電池が切れた・・・。ついてねー。)
ふと、横を見るとナンバー10の車。
ふと、前を見るとナンバー10のバイク。
ふと、時計を見ると6時10分。
ふと、桜木と清田の顔が浮かんだ。
(ますます、ついてねー。)
全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会 ベスト4が決定する当日を迎えた。
続く。