うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#144 【2年生対決】

2009-06-30 | #05 海南 選抜編
第4Q 5分

山王 70
海南 62




深津ー沢北ー河田のホットラインで、あっさり得点を奪う山王。

だが、再び静かなこの男が、燃え始める。


(ん!?雰囲気が変わったか・・・。)

神の変化を素早く感じ取る松本。

ボールを受け取る神。


『ドン。』


(パワードリブルか!)


神は、松本に体を接触させながら、押し入る。

更に押し込んだところで、松本が一歩引いた。


その瞬間、神もバックステップ。

やや後方に退きながら、3Pを放った。




「No.1シューター神も、残り時間と得点差に焦りを感じたか。」

と堂本。




ボールは、通常よりも高いアーチを描いている。



滞空時間の長いそのシュートは・・・、



『スポ。』



リングに触れることなく、ネットを揺らした。




「なっ!!」

驚きを隠せない堂本。

「入っちゃった。」

と美紀男。




「当然だ。」

と腕組の赤木。

「1.5m離れていても打てるんだ。少しくらい、のけぞろうがあいつは決める。
今の俺には決められねぇのは、悔しいがな。」

言葉とは裏腹に、嬉しそうな三井。




(三井といい、神といい、神奈川にはなんていうシューターがいるんだ・・・。)

汗を流す松本。




「松本!頑張れ!!」

ここにも静かな男、一之倉が声を出す。

「・・・。」

さらに静かな男、柳葉は、神のシュートフォームを真似していた。




「すげーー!!」

「あんな3P見たことねぇぞーー!!」

「ありえない!!!」

「海南粘る!ついに5点差だーー!!!」




「アンビリーバブル!!!まさに神様や!!3Pの神様やーーー!!」

「まさか、あんな体勢で決めてくるとはね。」

「普通の人は届きませんよね?それを簡単に決めちゃうんだから、神君は凄いですよ!!いやー、尊敬するな。」

「何、高校生相手に、尊敬しているのよ。」

「すっすいません。」

(でも、あの3Pに対する強気と自信は、尊敬に値するわね。)




「ナイッシュ!神さん!神さん?」

神は、沢北を一直線に見つめていた。


視線に気付く沢北。

「へっ、面白れぇ。2年のNo.1を決めよってか。」

「松本さん、俺を神につかせてください。」

「あっ、あぁ。」


「俺が沢北につく。信長は、松本について。」

「えっ。はっはい。」


オールコートマンツー、沢北には神がついた。



深津は、牧のディフェンスを交わしながら、冷静にボールを運ぶ。


(くっ、憎らしいほど冷静だ。)


『バシ!』


その深津から、3Pライン近くの沢北へ。

前には、神が立ちはだかる。


『グッ!』


腰が沈む沢北。


神は、沢北の挙動に集中し、ドライブに備える。


その瞬間、


『シュ!』


3Pを放った。


虚をつかれた神は、全く反応できなかった。



『スポ!』




「わぁぁーーー!!」

「沢北の3P--!!!!」

「何でもありじゃねぇかよーー!!」




神の額から汗が流れる。

「ドライブだけじゃないんだぜ。」にこり。

「・・・。」

(得意でもなさそうな3Pを決めてきた・・・。強いなー。)


「神さん!今のは、しょうがないっすよ。」

「うん。やり返すだけだよ。」




海南のオフェンス。

ボールを持った牧が、ペネトレイトを繰り出す。

山王のディフェンスが、一気に中に集中する。

神をケアしながら、いつでも深津のヘルプにいける体勢の沢北。


(そんな中途半端なディフェンスじゃ、神は止められないぞ!)


牧から神へのパス。

海南の必勝パターンが、勝利を呼び込む。


(わかってるぜ。それ。)


神は、ボールの中心を右手で受け、シュート体勢へ。


「タイミングバッチリ!」

勢いよくチェックに飛ぶ沢北。



だが。



『ダム!』


飛んでくる沢北をドリブルでかわし、インサイドに切れ込んだ。


(やべっ!!)


「河田さん!!」

「わかってる!!」


神の前には、ゴール下の守護神河田雅史が待ち構える。


『キュ!』


神と河田の間が詰まった瞬間、河田のタイミングをずらしたシュートを放った。


『シュ!』



「なに!?」

「あれは!?」

「あっ、俺のスクープシュート!!」

ボールは、鮮やかに河田を越え、落下する。



『ストッ。』




「神が決めたーーー!!」

「スクープシュートだーー!!」

「沢北、河田を抜いたーーー!!!」




「神がスクープシュートだと??」

目を丸くする三井。

「あいつ、いつのまに・・・。」

驚きを隠せない花形。

「ふっ、進化するシューターってところだな。」

藤真は笑った。




先ほどのお返しとばかりに、神が沢北に言葉を放つ。

「3Pだけじゃないんだよ。」にこり。

「ちっ。なんだよ。お前とも来年のこの舞台でやりたくなったぜ。」にっ。


沢北に対抗して神が、神に対抗して沢北が、そしてまた、沢北に対抗して神がシュートを決めた。

会場全体が息を飲む1分間であった。



山王 73
海南 68







続く。

#143 【河田、再び】

2009-06-29 | #05 海南 選抜編
第4Qも残り半分になろうとしていた。

山王 68
海南 60




牧の非常に珍しい3Pが決まった。




「マンツーだ。抜かれないことを優先しろ!」

と高頭が指示を出す。

(プレスを続けたいところだが、リスクも大きい・・・。
個々の力に、かけてみる。頼むぞ!みんな!!)




海南は、プレスをやめ、オールコートマンツーに変えた。

ボールは、深津へ。

8人の選手は駆け上がり、海南コート内には、深津と牧だけとなった。


「もう1本いただくぞ。」

「させないジョ。」


『ダムダム!』


『キュ!』


延長戦まで戦い抜いた前日の疲れなど一切見せない牧の動きに、深津も苦戦する。



だが。



深津が、チェンジオブペースから牧に並んだ。




「巧い!!!」

「PG対決は、深津に軍配だーー!!」




(!!!)


『チッ!』



「牧。」


「そう簡単に抜かせるか。」




「牧も負けていない!!」

「スティールだーー!!!」




深津に抜かれた牧は、後ろからドリブルをスティールした。

転がるボールを拾い上げたのは、神。


「神!前だ!!」

素早く、神から牧へ、パスが供給される。


『ダム!』


深津も牧を追いかける。


『ダン!』


牧のレイアップ。

スティールされた深津は、牧のシュートを防ごうと、シュートチェックに飛んだ。



(ファウルしてでもとめる!!)



接尾語を忘れるほどの気迫のこもったブロック。



だが。



にやっと笑い、わざと低く飛び、右手を叩かせる牧。



『バチィン!!』



コート全体に大きく響く。



(っつう!)



『スポ。』



ボールは、リングを通過していた。




「でたーーー!!」

「牧の十八番!バスカンプレーーー!!」

「牧が連続得点だーー!!」




「・・・。」

ジーンとなっている右手を見つめる深津。

「思いっきり叩いたんダジョ・・・。」

「仕方ない。あれが牧なんだよ。」

「そうでもないっすよ。たぶん。」

「ん!?」

沢北の予想通り、牧はボーナススローを外した。


(深津のやつ、思いっきり叩いたなっ。)




「珍しいな、牧が外すなんて。」

と魚住。

「さすが、深津。只では起きないということか。」

藤真が答える。



山王 68
海南 62




リバウンドは、河田がキャッチ。

海南のオールコートマンツーが始まる。

ボールは、深津へ。

牧が、激しいディフェンス。


「叩かれた借りを返すぞ!」

「痛いのは好きじゃないジョ!」


「深津さん、こっち!」

深津を呼ぶ沢北。


「一先ず、逃げるジョ!」

ボールは、深津から沢北へ。

沢北が一気に海南ゴールを狙う。


「待てぇー!」

清田が必死に食らいつく。


「待つやつがあるか!」

センターラインを超えたところで、神がヘルプ。


清田と神で、ダブルチームの構え。


『キュ!』


「待ってやる。但し、俺だけな。」

沢北は、神の前で急ストップし、ゴール下へ、パスを放った。



『キュッ!』



『ドガァ!!!』




「モンスターダンーーク!!」

「再び8点差だーー!!!」

「沢北の絶妙なパス!!」




高砂を物ともしない、河田のアリウープが炸裂した。


「うはっ!」

河田は、沢北に力瘤を見せた。


「にっ!」

笑顔で応える沢北が、神と清田に一言放つ。

「ドリブルで抜くことやシュートを決めるだけが、俺じゃないってな。」にっ。

「そんなのわかってらー。沢坊主!」

「さっ沢坊主!?」

「お前、俺は年上だぞ!敬語を使え、敬語を!!ったく、最近の若いやつは・・・。」ぶつぶつ。

「・・・。」

(沢北栄治・・・。1on1だけじゃない。パスも視野も超一流・・・。
仙道と同等・・・。いや、わずかに上か・・・。)

沢北と同学年の神の心が、再び、静かに燃える。



山王 70
海南 62







続く。

#142 【牧、再び】

2009-06-27 | #05 海南 選抜編
山王 68
海南 57




第4Qも4分が経過し、11点差。

沢北を投入し、勢いを増す山王に、苦戦する海南。




「あたるしかない!!」

ベンチの高頭から、オールコートプレスの指示が飛んだ。




ボールは、松本から深津へ。

牧と神が、ボールを奪いにいく。


(んっ。)


「簡単に抜けると思うなよ。」

「思ってないジョ。」



『キュ!』


『ダム!!』


『シュ!』


深津のノールックジャンプパスが前線に供給される。


「なっ!!」


『バシ!』


ボールを受け取ったのは、センターラインまで戻ってきたセンター河田。




「河田が、ここまで来ているーー!」

「アウトナンバーだーー!!」




海南コートにいるのは、河田、野辺、松本と高砂、武藤。




「分が悪すぎる!!」

「早く戻れーー!!」




「死守ぅーーー!」

思わず赤木が声を出す。




牧、清田が必死に戻るが、ボールは更に前へ供給される。


『バス!』


松本へ。

ストップジャンプシュート。


「ぐおぉーー!」

高砂の決死のチェックが、松本の視界を塞ぐ。


「!!」


『シュ!』


「リバウンド!!」

外れるのを察知した松本が声を出した。


武藤は野辺をスクリーンアウト。

河田は飛び込みリバウンドを狙う。


『ガン!』


「ぐっ。」


ボールは、大きく跳ね、武藤を超えた。



『バチン!』



「いいぞ!野辺!!」

山王ベンチから声が飛ぶ。




「さすが、山王のリバウンダー野辺だーー!!」

「海南は運もねぇーー!!」




野辺は、ジャンプシュートを狙う素振りを見せた。


『ヒョイ。』


シュートフェイクに引っかかる武藤の脇から、アンダーでパスを出す。

中央には、河田が待っていた。



「!!」



『チィ!』


そのパスを高砂が弾く。



(しまった!)

(おっ!)


転がるボールに飛びついたのは・・・。



「速攻だーー!!」

清田であった。


「神さん!!」

オーバーハンドの素振りを見せる。

その声と動作につられ、沢北が飛ぶ。

にやっと笑う清田は、沢北の脇をドリブルで抜く。


(っやろー!)



海南の逆速攻。




「今度は海南だーーー!!」

「2対1!!」




清田、神対深津。

冷静に2人の動きを見る深津。


『キュ!』


深津は清田に間合いをつめた。


(よし!神さんがあく!)


神に目をやると、もうすでに沢北がマークしていた。

(なっ!ちくしょう。速すぎだろ。)


だが、後ろから牧が駆け上がってくる。

(まっ牧さん!)


清田は深津を十分に引き寄せてから、牧にバックパスを送る。


「ナイスパスだ!」



牧は、ボールを受け取るや否や、3Pジャンプシュートを放った。



『シュ!』



「打つのかよ!」

「予想外ダジョ。」

珍しい牧の3Pに、沢北と深津は反応できなかった。



弾道の低いシュートは、ネットを激しく揺らす。



『ザシュ!!』




「牧さーーん!!」

海南の控え選手が立ち上がる。

「でかした!!!」

と高頭。




「よし!もう1本いくぞ!!」




「牧が、3Pとはね。これは、恐れ入ったな。」

と花形。

「俺たちでさえ、驚いたんだ。山王は、止められるはずないさ。」

嬉しそうな藤真。

「あの場面でよく決めた。さすが、牧としかいえないぜ。」

「牧は、あういう男だ。」

三井と赤木。




「8点差だーーー!!」

「残り5分、まだわからないぞーー!!」




「へっ、神奈川のやつらは、ホントにしつこいな。だから、倒しがいもあるんだけどな。」にやっ。

清田のレイアップと牧の3Pに触発された沢北。

目の色が変わった。



山王 68
海南 60







続く。

#141 【認められる】

2009-06-26 | #05 海南 選抜編
第4Qも3分が経過し、海南が待望の第4Q初得点を奪う。

奪ったのは、深津、沢北、河田を一人で抜いた牧の得点であった。


(さすが、牧。終盤になって、より一層集中力が増してきた。)

(次はそうはさせないジョ。)

(へっ、面白れぇ。)



山王 66
海南 55




『キュ!』


『キュキュ!』


オールコートであたる海南。

冷静にボールを運ぶ山王。



沢北が清田に問いかける。

「お前は、流川の知り合いか?」

「なっ?知り合いでもなんでもねぇよ、あんなやつ!」

「ふっ、一応知っているようだな。なら、もし流川に会うことがあったら、伝えてくれ。
俺は、選抜を終えたら、再びアメリカに行く。
だが、来年必ず選抜の舞台に戻ってくる。そしたら、勝負してやる。
だから、お前も必ず勝ちあがって来いと!」

「なにっ!?来年も海南が全国出場するんだ!ナメるな!!」

ボールは、沢北に渡る。



『キュン!!』



突然、清田の前から沢北の姿が消えた。



(うっ嘘だろ・・・。ついてけねぇ・・・。)



一歩も動けず、清田は抜かれた。



カバーに入る高砂の前で急ストップ。

高い打点のジャンプシュートを決める。


IH時よりも、高く、速く、鮮やかに決めた。

派手さはないが、洗練されたジャンプシュートは、見ているものを魅了する。




「たけーー!!」

「速い!!」

「キターーー!!沢北だーー!!」




『ゴクッ。』

息を呑む高頭。

「スピード、高さ、安定感、こんな完成されたジャンプシュートなど、見たことがない・・・。」




堂本は、ベンチに深く腰掛けている。

(こんなに安定かつ高いジャンプシュートを打てるのは、日本全国でもこの沢北だけさ。そして、あのドライブもな。)




コート上では・・・。




「山王も容赦ないオールコートプレスだーー!!」

「伝家の宝刀を抜いてきたーー!!」




牧がドリブル。

深津と松本を相手に攻防を繰り広げている。


清田をマークしている沢北が、再び話し始める。

「お前は、俺はもちろん、流川の足元にも及ばない。」

「なっ!!!」




「牧が抜き去ったーー!!!」

「すげーー!!山王でも止められない!!!」




沢北は続ける。

「そして、うちの柳葉にも遠く及ばないんだ、お前は。」

「くっそー!!」


清田は、ファウルぎりぎりに沢北に接触し、牧からボールを受け取った。


「この清田信長をナメるなーー!!!」



『キュ!!』



清田は、腰を沈め、膝を曲げ、片手をつきながら、体全体で爆発するようにドリブルをした。


沢北に並ぶ。


(低い!!)


『ダム!』


極限まで低い姿勢で、トップスピードまで持っていった清田は、沢北を抜いた。




「マジかよ。清田のやつ、宮城より低いぜ。」

と三井。




そのまま、山王リングを襲った。


「くらえーー!山王ーー!!」

大きく踏み込む。


「ぐっ!」

武藤、高砂は、山王インサイド陣を必死に押さえ込む。


(清田、いけ!!)



だが、



沢北も清田の後ろから、踏み込み、シュートチェックに飛んだ。


(やすやす打たすかよ!)


「清田!パス!」

牧がボールを要求するも清田の耳には届いていない。




「やられる!」

思わず声を出す藤真。




「甘いぜ!1年!」

叫ぶ沢北。




「何が!?」

清田は、空中で右手に持っていたボールを左手に持ち替え、沢北のチェックを冷静に回避。



そして・・・。



『ヒョイ。』


レイアップを放つ。



『シュパ。』




「よし!!!清田、ナイッシュだーー!!!」

「いいぞ!いいぞ!清田!!清田!!」

海南のベンチが一気に沸く。




「流川や柳葉に勝てねぇだと?上等だ!それなら、今ここで、俺はあんたを越える!!」


「・・・。」

(ふっ、ホントに神奈川の1年は生意気なやつばかりだな。)



「沢北。やられたら、やり返すジョ。それが、エースダジョ。」

「はい。出る芽は摘まないといけませんから。」にやっ。

清田は、沢北に認められていた。

本人の知らないところで。



山王 68
海南 57







続く。

#140 【序章】

2009-06-23 | #05 海南 選抜編
第4Q

山王 58
海南 53




第4Q、海南ボールから開始される。

牧には深津、神には松本、清田には沢北、武藤には野辺、高砂には河田がついた。




「より一層厳しくなった。」

と魚住。

「あぁ。だが、俺たちもこのメンバーに勝った。海南だって、勝てるはずだ!」

力強い赤木の言葉だったが、神奈川勢の表情に明るさは戻らなかった。




沢北がドリブルをしている清田を睨む。

(くっ、なんて鋭い目をしてやがる。何もしてないのに、このプレッシャーかよっ。)


臆している清田を察知した牧がボールを要求。

牧にボールが渡った。


『キュッ!』


受け取ると同時に、インサイドへ切れ込む。


『キュ!』


『ダム!』


「!!!」


深津を一瞬で抜き去った。



だが、



『キュッ!』



「今日の俺は、のってますよ!」


牧の前に、沢北が立ちはだかった。



笑う牧。

(1on1は後回しだ。)



『ビュン!』



「あっ、逃げた!」



牧は、すかさず清田へリターンパス。



絶妙なタイミングで、ボールを受け取った清田は、リズム良く3Pを放った。


(よし!入った!!)


自信を持って放った清田の3Pシュート。



『チィン!』



「お見通しダジョ!」

横から、深津がチェック、かすかに指をあてた。


「なぁに!!!」

ボールの軌道がずれる。


「先に行きます!!」

沢北は声を出し、海南ゴールへ走り出す。


「しまった!!」

沢北を追う牧。



『ガコン!!』



清田の3Pはリング手前にあたり、小さく跳ねた。



『バチィーン!!』



空中でリバウンドをとったのは、野辺。

すかさず、河田にパス。


「沢北!行って来い!!」

河田は、オーバーハンドへ剛速球パスを前線に投げた。



『バシ!!』



「ナイスパース!!」



「ちぃ!」

牧を置き去りにする沢北の脚力。



ボールを受け取った沢北は、フリースローラインを30cm超えたところから踏み込んだ。



背筋を伸ばし、ワンハンドで掴み、大きく振りかぶる。



重力を感じさせない跳躍。



そして、長い滑空時間から、リングに向かって、ボールを叩き込んだ。



『ガシィィ!!!』




「のわぁーーーー!!!」

「沢北のダンクーーー!!」

「これを見に来たんだよーー!!」

「すげー強烈なダンクだーーー!!!」

「跳び過ぎーー!!!」




『ダン。』


沢北の着地と同時に、牧が追いついた。


「まだまだ飛ばしていきますから。」にやっ。

「・・・。」

さすがの牧も沢北のダンクを見て、返す言葉はなかった。



「ナイッシュダジョ。」

「もっと暴れてもいいぞ。」


「お言葉に甘えさせてもらいます。」

(んー。やっぱ・・・、まだか・・・。)




「沢北さん、本当に完治したみたいですね。よかった。」

「いや、違う。」

と美紀男の言葉を否定する堂本。

「えっ?」

「もし完治しているなら、フリースローラインからでも決められたはずだ。
やはり、明日の出場は20分のみ。できれば、出場もさせないつもりだ。」

「・・・。沢北さん・・・、頑張って。」




観客席の神奈川応援団も言葉は少なかった。

「間違いない・・・。」

「スピード、ジャンプ力、IH以上だぜ・・・。」

三井と赤木から冷や汗が流れた。



山王 60
海南 53




第4Q開始から、3分が経過。

海南のオフェンス。

第4Qの作戦は、点を獲りにいく牧、ゲームメイクをする清田であったが、
清田は、沢北を前にパスはおろか、ドリブルさえもスムーズにできないでいた。

結果的に、牧にボールは渡らず、悪循環を生んでいた。


(清田には、まだ早かったか・・・。)

「清田!」


牧は清田からハンドトスでボールを受け取る。


「うっ!」

パワードリブルで深津を押し入る。



だが、



『キュッキュ!』



「あんたを止めれば、海南はお終いだ。」


「!!」

(上等!!!)




「深津と沢北のダブルチーム!!!」

「さすがの牧でもあれは無理だーーー!!!」




深津と沢北が牧を囲った。

それに伴い、清田には松本が、神には河田、野辺は高砂と武藤2人を守る形となった。



『キュ!』



『ダム!』



『キュキュ!』



『ダムダム!!』




「凄いダブルチーム!!」

「いや、牧も負けてないぞーー!!」

「抜けーー!!!」

「奪えーー!!」




『キュ!!!』


レッグスルーからバックステップ、すかさずバックビハインドを繰り出すと、体勢を崩した沢北側を抜いた。


「なっ!しまった!!」


牧は、そのままゴールに突っ込む。


河田がカバーにでる。

牧は、高砂、神の動きを目で確認する。

牧の目を追った河田がかすかに反応、神へのパスを警戒。



だが、



(フェイクか!!)



『スポ。』



牧は、遠い位置からのオーバーハンドレイアップを決めた。

山王三銃士を抜いた牧のシュートが、海南にとって第4Q初の得点であった。




「海南!待望の得点だーー!!!」

「牧一人で、山王三銃士を抜きやがったーー!!」

「牧はまだ死んでいない!!」




きょとんとする清田。

「おら、どうした?まだ試合は終わっていないぞ。諦めるのか?」

「・・・。」

(あの3人を一人で抜いちまった・・・。ホントにすげーよ・・・、牧さんは・・・。)




「すげーー。」

と改めて思う三井。

「一人で得点を奪う気か・・・。」

と赤木。

(牧。頑張れ!!)

藤真は、心の中で強く思った。



山王 66
海南 55






続く。

#139 【至宝登場】

2009-06-22 | #05 海南 選抜編
山王 58
海南 53




点差は縮まりもせず、開きもせず、第3Qが終了した。

海南は、第3Qから、6thマン真田を投入したが、堂本の対応は早かった。

すぐさま、野辺に代え、美紀男を投入する。

美紀男は高砂を、河田は真田をマークし、オフェンスマシーン真田の封じ込めを行った。

さすがの真田も河田の前では、いつものような動きを披露することはできず、
10分間の出場で4得点と平均を大きく下回っていた。

堂本の対応は、大成功といえた。


だが、結果的には、点差は離れていなかった。

高頭も上出来だと考えていた。



2分間のインターバル。

残り10分で、決勝の舞台に立つチームが決定する。




海南ベンチ。

汗を拭う選手たち。

「仕事ができなくて、すいませんでした。」

「いやっ。相手はあの河田です。仕方ないっすよ。」

と真田を慰める清田。

「むー。確かに、河田が真田についたのは誤算だったな。だが、点差は離れておらん。
お前らが、第4Qでどれほどの修羅場をくぐってきたか、誰よりもお前ら自身がわかっているはずだ。
終盤の勝負強さは、海南のチームカラーでもある。自分たちを信じろ。残り10分に、全力をかけるんだ!」

「はい!!」

「牧!頼んだぞ!やはり、この逆境を打ち破れるのはお前しかいない。」

「えぇ。やってやりますよ。点を奪いにいきます。」

「清田。ゲームメイクをしろ。牧の負担を少しでも軽くするんだ。」

「はい。任せてください。もう柳葉には負けねぇ。」




『ピィーー!』




コートに足を運ぶ10名の選手。


「あっ!!」

「なっ!!」

山王の選手を見て驚愕する海南の選手。


会場からも、この日一番の大歓声が沸き起こった。



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<<回想>>

インターバル

山王ベンチ。


「よし!作戦通り、神と真田を抑えることに成功したな。」

選手を迎え入れる堂本が続ける。

「これで、海南の2つの大波は防ぐことはできたと思っていい。
だが、これで安心できるほど、海南は弱くない。」

「確かに・・・。」

「そうダジョ。」

「ここで、叩き潰すのが山王のバスケだ。」

「はい!」


「用意はできているな?」

「ええ。1ヶ月も前から待っていましたよ。」

「よし!深津、松本、野辺、河田、そして、沢北。
IHのメンバーで、神奈川県の代表を倒して来い!神奈川にリベンジだ!」

「はい!!」


「最後まで、走り抜けるジョ!」

「おう!」

「深津さん!俺にパス下さ・・・。」

「お前がエースダジョ。」

「ふっ深津さん・・・。やっぱり、俺のことを・・・。嬉しいっす。ぐすん。」


沢北が続ける。

「柳葉!俺は選抜が終われば、またアメリカだ。だが、来年必ずこの選抜には戻ってくる。
その間は、お前がエースだ。お前が、チームを勝利に導け。そして、この山王のエースナンバー#9を継ぐんだ!」



「・・・・・・・・・エージ。」


「あっ!先輩を呼び捨てしやがったな!!前文撤回だ、このやろー!!」

一揉めする山王ベンチであった。


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大歓声が、会場に響き渡る。

「キャーーーー!!」

「わぁぁぁーー!!」

「沢北だーーー!!!」

「沢北の登場だーーーー!!!」

「待ってましたーーー!!!」

「やっと、沢北のプレーが見られるぜー!!!!」




「とうとう、出てきやがったな。」

と開口一番は三井。

「あぁ。しかも、ベストメンバーで来た。」

赤木が腕組をする。

「最後の追い討ちか。」

と魚住。

「牧、負けるなよ!」

藤真は拳を握った。




「凄い声援ですね。」

とベンチの美紀男。

「それほど、待ちわびたんだろう。この沢北の出場を。」

「なんか、全日本の選手以上の人気ですね。」

「あぁ。沢北には、そのくらいの価値はある。いや、それ以上の価値がある。」

と堂本は力強くいった。




「わぁーーーーー!!!」

「いけーーーー!!!」




「すげーな。うはっ。」

「今日は、勘弁してやるジョ。」

「気持ちがいいな、この歓声は。今日は、いつも以上にのれそうっす。」




「さっ沢北かよ・・・。」

と清田。

「そう来ると思っていた。問題はない。」

牧の顔に焦りはない。

「避けては通れないですからね。行きましょう。」

神も冷静だった。

「おう!!」

「はい!」

覚悟を決める海南選手たち。



壮絶な最終Qを迎える。




山王 58
海南 53







続く。

#138 【挑戦者】

2009-06-20 | #05 海南 選抜編
山王 33
海南 25




河田の3連続ダンクにより、海南はタイムアウトを取った。



「さすが、山王だ。2つも3つも上をいっているな。」

と冷静さを取り戻した高頭。


重苦しい海南ベンチ。

こういうときは決まって、神が口を開いたが、さすがの神も言葉が出ない。

牧も同様であった。

神の連続3Pと河田の3連続ダンクは、同じ得点なのだが、インパクトは河田のほうが数倍上であった。


『パタパタ・・・。』


「高砂。」

「はっはい。」

「河田は凄い選手だ。パワーもあり、スピードもあり、スキルもある。
大学生を入れても、学生センターのトップ5に入ると思われる。
ましてや、1on1で太刀打ちできる選手など、高校生のなかには見当たらん。
だがな、全てがお前に勝っていると俺は思わん。
俺は思っているぞ。技巧派センターとしてなら、お前がNo.1だ。」

「かっ監督。」

「パワーで、スピードで、スキルで勝てないなら、お前の勝てるところで、勝負してみろ。
全て勝てとはいっていない。
一矢報いるんだ!その一矢が、徐々に広がり、やがて致命傷となるはずだ。」

「・・・。はい。」

「高砂さんなら、大丈夫っすよ。だって、河田よりもデカい品川や真壁を抑えたんですから!」

「そうだ!」

「そうですよ!」

高砂に対して、海南ベンチから、声が上がる。


「高砂。根性を見せてみろ!そのために、あんなに練習したんだろ?」

「牧・・・。」

「あぁ。やってやる。1本でも、2本でもいい。あいつのシュートを止めて、俺が決めてやる。」




一方、山王ベンチ。

「河田。いい調子だ。」

と選手を迎え入れる堂本。


「河田さんの中の、モンスターが大爆発ですね。」

と沢北。

「誰がモンスターだよ。だが、今は気分がいいぜ。うしっ。」

「河田。油断はしてはいけないジョ。」

「あぁ。わかっている。神奈川のやつらは、何を仕出かすかわからないからな。」

「それでいいんダジョ。」

「よし。このまま、河田中心でいくが、松本がベンチにいる分、今はオフェンス力が欠けている。
柳葉、お前も狙えるときは狙っていけ。」

『コクッ。』


「柳葉、代わりたくなったら、代われ。」

『ブルブル。』

沢北の言葉に首を振る柳葉。

「ぬっ。生意気な。」



『ビィーー!』


タイムアウト終了のブザーがなる。




海南のオフェンスから始まる。




「今のタイムアウトで、流れは変わるかな。」

「わからん。だが、高頭監督が、何もしないで、タイムアウトを終えるとは思えん。」

観客席の三井と赤木が話していた。




牧のドリブル。

深津が徹底マーク。

息を呑む激しい攻防。

このPG対決に終わりはない。



だが。



(キレが増したジョ!)


『キュ!』


深津を抜き去る牧。

一之倉は神から離れることはできず、清田は柳葉を抑えていた。

武藤は野辺を引き連れて、大きく外で待機している。


『ダムダム!』


中央突破を図る牧。


「こい!」

河田が迎え撃つ。


『キュ!』


河田が一歩踏み込んだ瞬間に、高砂にクイックパスが放たれた。


逆をつかれた河田。


「まだまだ!」

河田は高砂を狙う。


ボールを受け取った高砂は、ステップインでゴールを襲う。


「だらぁぁ!!」


高砂のステップにあわせ、河田がブロックに飛んだ。



だが。



『クルッ。』


「なっ!?」


高砂は空中で体勢を変え、バックシュートを放つ。

虚をつかれた高砂の動きに対応できない河田は、そのまま高砂と接触。

主審の笛を鳴らした。



『ピィーー!!』



『ガン!!』



シュートは惜しくも外れたが、絶好調の河田から奪い取ったファウル。

何かが変わろうとしていた。



「いいぞ!高砂!!」

「おっおう!!」

牧と高砂のハイタッチ。




「あのセンター、河田相手に挑んでいったぞーー!!」

「センターらしからぬ軽い動き!!」

「なんか、応援したくなるなーー。」

河田の声援一色だった会場から、海南#5番を応援する声が聞こえ始めた。




「おし!」

高砂は気合で2本のフリースローを沈めた。



「河田。気を…」

「わかってる。一切油断はしない。」

(本気で叩き落すつもりだったが・・・。なんだよ、お前巧えじゃねぇかよ。
少しは楽しめそうだぜ。)

河田が不適に笑う。



山王 33
海南 27




だが、




『ピィーー!!』




「なっ!?ファウル??」

主審のほうを振り返る河田。


にやけながら、起き上がる高砂。

高砂は2つのプレーで、河田から2つのファウルを奪った。



清田の際どいチェックで、柳葉のシュートは外れた。

ゴール下のリバウンド争い。

神は野辺をスクリーンアウト、武藤と高砂が、2人がかりで河田をスクリーンアウトしていた。

ボードにあたり、跳ね返ってきたボールは、ちょうど高砂と河田の前に落下。

リバウンドを奪おうと河田がジャンプしたとき、高砂は河田に押されるような格好で前に倒れた。

河田は、確かに高砂に触れたが、ゴール下においては、当たり前といっていいくらいの接触だった。


だが、主審の口からは、ファウルがコールされた。

高砂によって、巧みに生み出されたファウル。

仕方なく手をあげる河田。


「高砂。」

「ん!?」

「熱くさせるじゃねぇか?好きだぜ、そういうの。」

「ありがとよ。」

「ただ、立ち向かってくるやつには手加減できねぇんだ、俺は。」

「あぁ。持てる全てのものを出して、お前と戦う。」

「うし!いっちょ、楽しもうぜ。うはっ。」



牧と深津

神と一之倉

清田と柳葉

そして、ここにも

高砂と河田

熱い火花を散らす。


目を合わせる武藤と野辺。

「俺らは・・・。」

ロールプレイヤーの戦いも始まる・・・??



山王 33
海南 27







続く。

#137 【河田タイム】

2009-06-19 | #05 海南 選抜編
第2Q

山王 28
海南 25




山王のオフェンス。


松本を一旦ベンチに戻し、一之倉を投入、ディフェンスの強化を図った山王だが、
オフェンス力の低下は否めない。

このメンバーで、海南から得点を奪えるか、今後の試合の展開を占う重要なオフェンスである。



深津がトップでドリブルをしている。

前列の牧と清田が、パスを警戒している。


(柳葉か、河田だ。どっちだ?)


海南の選手は、ポジションを取りながら、柳葉と河田の動きに集中している。


「作戦の変更はないジョ。」


『バス!』




「キター!柳葉だ!!」

「いけーー!!」




トップの深津から、45°の柳葉へ。

深津が、牧と清田の間をきれる。

ボールは、トップに上がった一之倉に入り、さらにハイポの野辺へ。

牧、清田、高砂が囲みにかかるが、野辺は素早くゴール下に放つ。

目にも止まらぬ速いパスワーク。



ボールは・・・。



『ピィーー!!』



『ドガァァ!!!』




「また、河田だーー!!」

「モンスターダンクー!!」




武藤のファウルを物ともせず、連続ダンクを叩き込む河田。




「高校最強センター!!!」

「マジすげーー!!!」




「ぶしぃ!!まだ、これからだぜ!!」


(すげーってもんじゃねぇぞ・・・。あのパワー、あの動き、赤木よりも数倍上だ・・・。)

清田の口は塞がらなかった。




「あーぁ。河田さんの中の、モンスターが目覚めさせちまった。もうマジで俺の出番はないな・・・。」

とショボンとする沢北。




『シュパ!』


河田は、ボーナススローも沈め、点差を広げた。



山王 31
海南 25




海南のオフェンス。

牧が、神に合図を送る。

武藤が、野辺を連れて、外に広がる。

高砂も同じようにハイポに位置取る。

ボールは、清田を経由して神へ。




「なっ!?神のポストプレーだ!!」

「アウトサイドだけじゃないのか!?」




「陵南戦で見せたプレーだな。このQは、あくまで神で勝負か。」

「170台の一之倉相手じゃ、当然だろうな。」

観客席の神奈川勢は、余裕の表情を浮かべている。




神は、スピンムーブを繰り出すも一之倉がしっかりついている。

だが、身長差14cm、強引にシュートを打つ。



『シュ!』



『バチィン!!!』



「!!!」



「予想どうりだ。うはっ!」




「また、河田!!」

「河田がブロックしたーー!!」




河田は、神のインサイドを読み、ハイポから一気にゴール下へ、シュートをブロックした。




「予定通り。」

にやける堂本。




「うそだろ!!」

と魚住。

「・・・。」

(あの脚力、夏以上だ。スピードもアップしていた・・・。河田のやつ、相当走りこんだな・・・。
敗戦を糧に、一回りも二回りも成長してきたか・・・。)

赤木は静かに思った。




ブロックしたボールは、清田の元へ転がった。

「まだだ!山王!!」

(決めてやるぜ!)

清田は、3Pを狙った。




「バカ!リズムが悪い!あれじゃ入らねぇよ。」

怒鳴る三井。




『ガコン!』


リングの手前にあたり、弾け飛んだボールは・・・。


『ガシ!』


「もーらいっ!」


河田がもぎ取った。

「よっしゃ。いくぞ!」


『ダムダム・・・』


ドリブルを始める河田。



「戻れ!清田、河田を止めろ!!」

牧が指示を出す。


「センターが何やってんだよ!!」

清田は、スティール狙いで河田のドリブルに手を出した。



『クルッ。』


「えっ!?」


バックロールで鮮やかに清田を抜き去ると、前線の深津へパス。

自身もゴールに駆け上がる。


そして、深津からリターンパスを受けると、ワンドリからボースハンドダンクを炸裂させた。



『ドガァァァ!!!』




「河田!!3連続ダンクーーー!!!」

「止まらない!!止められない!!!」

「最高ーー!!!!」

「河田タイムだーーー!!」

会場は、山王の、河田の声援一色となっていた。




「・・・なんてやつだ・・・。」

高頭の表情に冷静さは見られない。




「よし!!」

拳をコートに突き立てる堂本。


沢北は、ひじを曲げ、腕の力瘤を河田に見せる。

「にっ!」

河田も同じように見せた。

「うはっ!」




「くそーーー!!」

清田は、センターの河田に抜かれた悔しさから、大声で吼えた。

プライドは、引き裂かれていた。


牧も神もかける言葉が見つからない。

それは、海南応援席の彼らも一緒だった。




「俺たち、あいつらに勝ったんだよな?」

と三井。

「・・・。」

赤木は無言のままだった。

(これは、夏とは比べ物にならんぞ・・・。)




河田の3連続ダンクが決まった。

山王ペースと誰もが疑わなかった。

だが、あの男がSTOP THE MONSTERに名乗りをあげる。



山王 33
海南 25






続く。

#136 【作戦通り】

2009-06-18 | #05 海南 選抜編
山王 26
海南 22




第2Q初め、この日初となる神の3Pが決まった。




山王ベンチ。

(神をのらせるわけにはいかない。神がのれば、牧のペネトレイトが活きる。逆も然りだ。
今のうちに、不安要素は全て潰さなければならない。)

「一之倉、準備はいいか?」

「はい。」




「おっ、一之倉がジャージを脱いだな。」

「さすが、堂本監督。策が早い。」

と観客席の三井と藤真。




山王のオフェンス。

(海南がアウトなら、俺たちはインサイドだ。)

河田に気合が入る。


深津がボールをキープ。

(柳葉、作戦通りいくジョ。)


『コク。』

ボールは、柳葉へ。

1on1の姿勢。


『キュ!』


清田の腰が沈む。


『キュ!』


野辺がハイポにあがった瞬間、柳葉が清田を抜いた。


清田は一歩も動けない。

「!!!」

(はっ速え・・・。)


武藤が詰め寄る。


『ヒョイ!』




「あっ!俺のスクープシュート!!あいつ!!いつのまに!!」

ベンチの沢北が大きな声をあげた。




詰め寄る武藤の前で、スクープシュートを放った柳葉。



だが、



「違う!高砂!後ろだ!!」

牧が声をあげたときには、もう手遅れだった。


逆サイドから、飛んでくる河田。

柳葉が放ったスクープシュートまがいのパスを掴み、そのままリングに叩き込む。



『ドガァァァ!!』




「うわーーーー!!河田のアリウープ!!!」

「河田全開だーー!!!」

「柳葉のパスが巧いーー!!!」




「ぶしっ!!」


『パン!』

河田と柳葉がハイタッチをする。




「おう!」

山王ベンチから、驚きの声があがる。

「あの柳葉がハイタッチだとよ!!」

「こりゃ、ノリノリだぜ。柳葉のやつは!」

「沢北の出番はないな。」

「あっはっは。」

「くそぅ。柳葉め。調子にノリやがって・・・。」

ますます、柳葉に対抗心を燃やす沢北であった。


堂本は、美紀男の頭を掴んで話す。

「美紀男、来年、お前があれをやるんだ。」

「あっあれをですか?」

「そうだ!兄に代わり、お前が柳葉とするんだ!!」

「でっできるかな・・・。」

「やるんだ!」

「ふぁい!!」




そして、ここにも柳葉に対抗心を燃やす男が一人。

「ちくしょう!柳葉め!俺だって。」


『ガシ!』

「そう熱くなるな。あいつは、相当巧い。」

「なっ!?」

「いくぞ!!」

清田の頭を掴みながら、牧が一声かけた。




海南のオフェンス。

ボールは、牧から清田へ。


「熱くなるなよ!」

目の前にいる柳葉を睨んでいた清田であったが、牧の一言に冷静さを取り戻す。


「ふーーー。」

息を整える。

(こんなときだからこそ、個人の感情を抑えるんだ。)


牧は、深津を連れて、松本にスクリーンをしかける。




「来るぞ!神だ!!」

ベンチの堂本が声を出す。




「スイッチダジョ。」

だが、牧は松本を背中に抑えながら、開く。


「牧がフリーだ!」

河田の声に、神にスイッチした深津が牧に寄った。


その瞬間、神が外へ開く。


「しまったジョ!!」


ボールは、清田から神へ。


神が3Pを放つ。



『ザシュ!』





「連続3Pーー!!」

「神が絶好調だーー!!」




「いとも簡単に決めてきやがったな。」

と三井。

「ノッた神は誰にも止められないさ。」

と藤真。




海南がカットボール。

「清田、ナイスカット!」

冷静さの増した清田の動きが、柳葉のドリブルをカットする。


『ビィーー!!』




「出たーーーー!!!」

「スッポンの一之倉だーー!!」

「神を止めに来たーー!!」

「山王、対応が早いーー!!」




「松本。」

「おう。神はいまノリ始めている。頼むぞ。」

『コク。』


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SG…#6 松本 稔 184cm/3年

SG…#8 一之倉 聡 175cm/3年

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「一之倉のお出ましだ。厳しくなるぞ。」

「ええ。でも、これで山王の攻撃力も落ちます。追いつくチャンスです。」

「あぁ。一気にいくぞ!!作戦の変更はない!」

「はい!」


神の連続3Pに、堂本監督は、迷わずスッポンディフェンスの一之倉を投入した。

神にとって、これからが勝負の時間となる。



山王 28
海南 25







続く。

#135 【必勝パターン】

2009-06-16 | #05 海南 選抜編
2分間のインターバル。


山王 26
海南 19




「中を抑えても、松本と柳葉が、外から奪いやがる!」

清田は声を荒げていた。


『パタパタ・・・』


「上々じゃないか?うちは、まだ神が本調子ではなく、この点差なら、まだ射程圏内だ。」

と選手らに安心感を与える高頭。


「山王は、まだ一之倉を温存しています。
これで、一之倉でも出てきたら、ますます神は抑えられる。」

と高頭の意見をばっさり切った牧。


「なっ!?」

(牧!ここで、絶望感を与えてどうする?)


「いや、まいったなー。だが、うちには真田もいる。一気に流れを変えることもできるぞ。」


「山王だって、沢北がいます。やつが出場しないと決まったわけではありません。」


「なっ!?」

重苦しい空気が漂う海南ベンチ。


牧が再び口を開く。

「だが、うちが負けたとも決まっているわけでもない。
まだ試合も1/4を経過したばかり、逆転のチャンスは十分にある。」


『パタパタ・・・』


「そっそうだ。牧の言うとおりだ。まずは、しっかりインサイドを抑えていこう。
外角のシュートが、この調子で入り続けるとは思えん。」


「はい。だが、外すとも限りません。仮に、外れてもゴール下には、最強のインサイド陣。
簡単にリバウンドがとれるかどうかもわかりません。」


「牧・・・。」

(今日はやけにつっかっかるな・・・。山王の強さを肌で感じたというわけか・・・。)


牧の表情は、今まで見たこともないくらいに険しかった。


「牧さんらしくないですね。俺たちは、海南のバスケをするだけですよ。
そうすれば、自ずと結果がついてきます。」にこり

神が牧にいう。


(海南のバスケか・・・。)

考えながら、【常勝】の旗をみる牧。


(少し山王を意識しすぎたかな・・・。)

目に力が入る。


「そうだな!ここで、色々考えていても仕方ないか。
仲間の想い、3年間の想い、全ての想いをコートにぶつける!それだけだな!
神!強烈なのいくからな!覚悟しとけよ!!」にこ。

「はい。待ってますよ。」

「よっしゃーー!!第2Qは、海南の最強コンビの復活だ!!見てろよ!山王ーー!!」

清田が、まとめる。


(牧よ。一人で背負い込むな。お前には、信じられる仲間がいる。忘れるな・・・。)

高頭は、コートに足を踏み入れる5人を見送った。




一方、山王ベンチでは・・・。

「河田、もっと暴れていいぞ。」

「はい。そのつもりでしたが、予想以上に、手強いディフェンスです。
立ち上がりは、攻めることができましたが、その後はきっちりとしたゾーンをしいています。
ポジションやスクリーンアウトなど、付け入るミスはありませんでした。」

「弱音を吐くとは珍しいな。」

とひげをさする堂本。


「いえ。今のは、ただの報告ですよ。堅い守りも、ミスがなくとも、俺はその上を超えていきます。」

「ふっ。頼もしいな。よし!第2Qは、河田中心でいくぞ。
第1Qで見せた松本たちの外角で、海南は外に意識しているはずだ。中で押していこう!」

「はい!」


「沢北。」

「はい?」

「悪りぃな。今日もお前の出番はない。うはっ。」

「ええ。この大会は、3年生最後の大会ですから。思いっきり楽しんで来てください。」

「あんがとよ。」




第2Qが始まる。



海南ボールからスタート。

牧がボールをキープ。

(第1Qは、はっきりいってやられたジョ。だが、このQは、好きにはさせないジョ!!)


『バシ!』


深津の手がボールにあたる。


(!!!)


だが、そのままボールは牧がキープし続ける。


(深津も本領発揮か。ふっ、上等だ!)




「深津も牧に触発されたな。」

「あぁ、あの攻めるようなディフェンスには、宮城も相当やられてたからな。」

と赤木と三井。




攻めるような深津のディフェンスに真っ向勝負を挑む牧。


「しつこいな。」

「抜かせないジョ。」




PGの攻防に観客が沸く。

「No.1決定戦!!!」

「いけーーー!!牧ーー!!」

「深津、抜かれるなーーー!!」




牧と深津の攻防の裏では、この男たちも熱い火花を散らしていた。


(オフェンスもディフェンスも、超一流。今までのSGとは、格が違う。)

松本のディフェンスに手を焼く神であったが、河田、野辺、高砂らの体を巧く利用し、
一瞬でフリーポジションをとった。


そこに、牧からの強烈なバウンドパスが供給される。


(ダッ!ジョ!!)


(なっ!!!)




「あの深津との熾烈な攻防の中で、あんなパスを出してきたーー!!」

「神だよ!松本の執拗にディフェンスを交わしたぞーーー!!」

「2人とも凄すぎだぜーー!!」




(まずい!!打たれる!!)

松本は懸命に手を伸ばすが、神のクイック3Pの前では、虚しいだけ。



『シュ!』


神の指から、この日初めての3Pシュートが放たれる。


そして、河田、高砂らのインサイド陣の上を超えていくボールは、静かにネットを揺らす。


『パサ!』




「キターーー!!!」

「待ってましたーー!!」

「ナイッシュー!!神!神!!」

観客席の海南応援団が熱くなる。




「よく松本を交わしたな。」

「牧さんこそ、最高のパスでしたよ。」


『トン。』

牧と神は拳をあてた。




「凄い・・・。牧君はいつ神君を見ていたんだろう。それに、パスを受けて決める神君も凄い・・・。」

「パスを出す側、受ける側、2人の呼吸はピッタリやわ。」

「アンビリーバブルや!!海南の必勝パターンの復活やで!!第2Qも目が離せまへんでーー!!」




この日初めての神の長距離砲が、山王のゴールを射抜いた。

海南の必勝パターンが、山王を脅かす。



山王 26
海南 22







続く。