うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#379 【牧×藤真&赤木】

2010-10-30 | #12 大学 新人戦編
慶徳のオフェンスが失敗し、白金に先制点のチャンス。


慶徳も白金同様、マンツーマンで対応する。

マークマンは変わらない。



(「白金が勝つには、120%の牧さんが必要ですよ。前半からね。」)

仙道の言葉が、脳裏をよぎる。


(いくぞ!)



『キュ!!』


『ダム!!』



一気に駆け上がる牧。

あっという間に、ハーフライン。


だが、慶徳の戻りは速い。


相対する牧と藤真。



(牧。)


(藤真。)



『キュッ!!』


『ダムッ!!』



間髪入れない牧のドリブルに、藤真は完璧に対応した。




「おぉぉーーーー!!!」

「あれを止めたーーー!!」

「すげーーー!!!」




『キュッ!』



(次は、キラークロスオーバー!)


藤真の予測。



『ダム!ダム!』


『キュッ!!』



「!!!」


「!!」にっ。




「まただーー!!!」

「牧のキラークロスオーバーを止めたーー!!」

「藤真が凄いーーーー!!!」




「やるな。」

止められた牧は、なぜか嬉しそうであった。


「簡単にはやられるわけにはいかないからな。」

なおも、牧を攻めさせない藤真のディフェンス。




観客席で観戦している三井らも驚きの表情を浮かべている。

「藤真のやつ・・・。」

「凄いディフェンスです。」

「気合十分だ。」




攻められない牧。


だが、焦りの表情はない。



(これでお前を抜けるとは思っていない。だが、これでどうだ。)



『ダム!』


『ドン。』



「うっ。」


牧がパワードリブルで、藤真に接触。

藤真の体が、わずかに後方へ退いた。




「ファウル!」

慶徳ベンチが叫ぶ。




だが、審判は、笛を鳴らさない。




「牧が強引に攻めてきたーーー!!」

「パワー勝負だ!!」

「いけーーー!!牧ーーー!!」




「ファウルのラインを引きましたね。」

と中村。

「ったく、専門的なこというようになったのはいいけど、その勝ち誇った顔は余計よ。」

「はっはい。」




「牧め、パワー勝負に出たか。」

「深津にも、藤真にもない最高のアドバンテージ。」

「止められるPGは、そうはいない。」

と観客席の花形ら。




牧のパワードリブルが、藤真の体をわずかに退けた。




「抜いた!!」

「藤真のディフェンスを破ったーーー!!」

「牧のペネトレイトーーー!!」




(牧!!)


『ダムダム!!』


牧は、トップから果敢にリングを襲う。


並走する藤真。


神が、3Pライン外で構え、土屋が牧にあわせるような動きを見せる。


だが、牧は一人で突っ込んだ。


ゴール下の赤木を睨む牧。



(いくぞ!赤木!!)



(入れさせん!!)



『ダン!!』



フリースローライン、牧が跳んだ。


赤木は、牧のシュートを叩き落すべく、タイミングを計っている。


オーバーハンドレイアップの体勢。



『ダッ!』



牧と接触せぬように跳ぶ赤木。


牧のシュートコースに右腕を伸ばした。


完璧なブロックのタイミング。



(もらったぞ!!)



「!!」


「!!」



『グッ。』


牧は、再びボールを胸に持っていく。




「止められたーーー!!」

「赤木が止めたーー!!」



下降する牧は、跳んだ赤木の脇にわずかなスペースを見つけ、
無理な体勢からレイアップシュートを放った。



「なに!!」

(その体勢で打つか!!)


赤木は、牧のボディバランスに驚き、改めてその巧さを感じた。




「無謀だ。」

と宮城。


(いや、ぎりぎり。)

と仙道。




ボールは緩やかな回転をし、リングへ。




「打ちやがったーー!!!」

「すげーーー!!」

「さすが、牧!!!」




『コロ・・・。』


だが、ボールは、リングの根元を通り、逆サイドに流れた。




「おしい!!」

「外したーー!!!」




『バチン!!』


リバウンドは、野辺。


牧のシュートは、失敗に終わった。



『ダン。』


牧、赤木が同時に着地。


「そんなシュートは入らんぞ!」

「バスカンを狙ったつもりだったが、交わしてなおブロックにくるか。
かなり成長したようだな。赤木。」

「フン!昔の俺だと思うなよ。」


(その貪欲さ、変わらんな。牧。)


(ゴール下の威圧感は健在か。赤木。)



お互いに睨みをきかせる。


そのやりとりを後ろから見ていた藤真。



(牧のパワーとボディバランス。
やはり、この試合、あれをどこまで抑えられるかが、勝負の大きなポイントになる。
そして、準々決勝では見せなかった攻撃性。要注意だ。)



(今日は、随分と積極的やないか。)


(珍しいですね、スロースターターの牧さんが、試合早々飛ばしていくなんて。)


(「白金が勝つには、120%の牧さんが必要ですよ。前半からね。」 )

仙道の言葉を再び思い返す牧。


「土屋!神!ガンガン攻めるぞ!」

「おう!」

「はい。」



両校、最初のオフェンスで、得点をあげることはできなかった。


そして、ここから3分。


電光掲示板の0の数字は、変わることはなかった。








続く。

#378 【白金×慶徳】

2010-10-28 | #12 大学 新人戦編
準決勝

第2試合 白金学院大学対慶徳義塾大学の試合が、開始されようとしていた。


8人の選手がセンターサークルを囲むように、ポジションを取っている。

サークル内には、白金の荻野と慶徳の赤木。


放たれたボールに向かって、2つの巨体が舞い上がる。




「わぁぁーーーー!!!」

「おぉぉぉーー!!」

「始まったぞーー!!!!」




『バッチーン!!』


勢い良くボールを叩き落したのは、身長で優位に立つ赤木。


ボールは、SF真下から、藤真に渡る。



「さぁ、1本いくぞ!!」

「おう!!」



藤真は、ドリブルをする前に、一言叫んだ。



(藤真のやつ、気合はいってんな。)

と諸星。



その想いは、慶徳の選手、全てに届いていた。



準々決勝同様、慶徳のスタメンに変更はない。


最強のSGと呼ばれた諸星。

キングコングC赤木。

リバウンドマシーン野辺。

サポートに徹するSF真下。

そして、その選手たちを統率するPG藤真。

導かれた選手たちが、白金越えを目指す。




【慶徳義塾大学】

PG…#14 藤真 健司 179cm/2年/翔陽
SG…#15 諸星 大 186cm/2年/愛和学院
SF…#22 真下 裕也 186cm/2年/浦安工業
PF…#17 野辺 将広 198cm/2年/山王工業
 C…#20 赤木 剛憲 199cm/2年/湘北




かたや、ディフェンスから始まった白金。

C赤木には、C村松。

PF野辺には、PF荻野。

ともに、自分よりも身長の高い選手を抑えることとなる。

厳しい戦いになるのは、誰から見ても明らかであった。


SF土屋は、諸星をマークした。

「わいが相手や。」

「ふっ。土屋か。悪くねぇな。真下!予定変更だ。俺が土屋を抑える!」


『コク。』

神は、真下をマークした。

(この人は、目立たないけど、巧い選手。好きに動かせてはならない。)



藤真の目の前には、もちろんこの男。


普段より腰を低く構え、藤真を睨む牧の姿。




「牧君のあんな低いディフェンス初めて見ましたよ!!!」

開始早々、興奮もピークに達してしまった中村。

「マンツーマンか。果たして、それで慶徳のインサイドを抑えられるかしら。」




【白金学院大学】

PG…#13 牧 紳一 184cm/2年/海南大附属
SG…#36 神 宗一郎 189cm/1年/海南大附属
SF…#19 土屋 淳 191cm/2年/大栄学園
PF…#24 荻野 武士 193cm/2年/愛和学院
 C…#26 村松 忠文 195cm/2年/浜ノ森




(牧!!いくぞ!)


(来い!藤真!!)



魅せれるか藤真。


止められるか牧。



『ダム!』


藤真は、最初のドリブルをついた。


牧の威圧的なディフェンスを前に、ボールを隠すように、低くドリブルをつく。




「始まったばかりなのに、1点を争っているゲーム展開でのドリブルみたいですね。」

と観客席の織田。

「それだけ、この先制点が重要なことを両者ともに、よく理解しているということだろう。」

と花形は答えた。




先制点を獲ると獲られるでは、大きく心の持ちようが変わる。

両校、先制点は最高の形で獲りたいのである。



『ダムダム・・・。』


横学大戦では、見せなかった白金の攻めるようなディフェンス。

藤真でさえ、パスの供給先を見つけるのが難しい。



『キュッ!!』


『キュッキュキュ!』




「俺らとやったときよりも巧くなってないか?」

「技術うんぬんよりも、意識の問題のようだ。ほれ。」

三井に答えた新庄が、コートを見るように促す。




「しっかり守れ!藤真からのパスを簡単に通すんやないで!!」


『パン!パン!』


そこには、仲間を鼓舞する土屋の姿があった。

横学大では、見せることのなかった土屋の姿だった。




「珍しいな。」

と大和。

「プレーで引っ張るタイプだと思っていたが、わりと熱いやつだな。」

品川は答えた。




「白金の凄いディフェンスだ!!」

「時間がない!!!」

「慶徳!攻めろーーー!!!」




24秒残り5秒。


『バッ!!』


野辺が、ハイポで面を獲った。

背中には、荻野を背負う。

ボールは、真下を経由し、野辺に入った。



『キュ!』



その瞬間、ローポで赤木が構える。


野辺から赤木へ。

ハイ&ロー。



残り2秒。


赤木のゴール下。



『バン!!』



「!!!!」



ボールは、赤木の手から弾かれた。


村松のスティールであった。




「絶妙なスティールだ!!」

「巧いぞ!!あのセンター!!」




「いいぞ!村松!!」

「ナイスカット!!」



(「ゴール下で赤木に勝つのは、至難の業だ。下を狙え。」)

牧から村松への指示であった。



「赤木!緊張してんのか!かてーぞ!」

と諸星。

「うるさい!ディフェンスだ!!」

(あのセンター、さすが白金のスタメンを張ることだけのことはある・・・。)


「気にするな。白金相手に、簡単に点が入るとは思っていない。」

と声をかける藤真。

「フン、いうようになったな。」

「頼むぞ、赤木!」

「任せておけ。」



ボールは、村松から牧へ。

先制点のチャンスを逃した慶徳。



『ダムダム。』


(いくぞ!!慶徳!!)


牧の力強いドリブル。



白金のオフェンスが始まる。








続く。

#377 【慶徳80%】

2010-10-25 | #12 大学 新人戦編
第1試合の興奮冷めやらぬ体育館が、更に湧き上がる。


牧率いる白金学院、そして準々決勝圧倒的な力を見せつけ、勝ち上がってきた慶徳義塾の試合のためである。


場所は東京代々木、舞台は大学、観客に牧、藤真の伝統の一戦を知るものは少ない。

だが、両者から、ただならぬ雰囲気を感じているものは、多かった。



アップをしている両校。


静かに淡々とボールの、リングの、コートの感覚を確認している白金学院。


対して、慶徳は、藤真が指示を出し、5on5の簡単な動きを確認していた。




記者席。

「いよいよですね・・・。」

「チーム力としては、ほぼ互角。いや、わずかに慶徳優勢と見ている。だけど、PGの調子で、それも変わってくる。
藤真君が、どれだけ牧君に追いついたか、はたまた牧君が、藤真君をどれだけ引き離したか。
そこが、チームの勝敗を分けるはずよ。」

「牧君の強さをずっと見てきた僕としては、このまま勝ち続けてほしい気もしますけど、
藤真君や赤木君の想いも知っているからこそ、彼らにも勝ってもらいたかったり・・・。
複雑ですよ。あははは。」

「そうね。私も少し感慨深い試合だわ。」




観客席に、ある一団が現れた。

「おー。ベストタイミングだぜ!席もちょうど空いているし!」

と三井。

お決まりのサングラスをかけている。


「ダンナには勝ってもらいたいが、牧は倒すのはこの宮城リョータ率いる神体大だ。」

「何が宮城率いるだ。打倒牧は、1軍のスタメンをとってから、口にしろ。」

「へい。」

新庄にたしなめられる宮城。


「相変わらずだな。宮城。はっはっは。」


観客席の1列目に座ったのは、白金学院に敗れた横学大の三井。

そして、名稜に敗れた神体大の新庄、宮城であった。



『サッ。』


2列目に腰をかけたのは、拓緑のイケメン3人、花形、大和、織田、そして横学大の品川であった。


「三井も宮城も桜木に似てきたな。」

1列目の3人のやりとりを笑っている。


『プシッ!!』


3列目には、ブラックコーヒーを開けた仙道の姿があった。

ここにいるのは、白金や牧、慶徳や藤真など、第2試合の出場選手に、
何かしら関わったことのある選手たちだった。



「まさか、声をかけた全員が集まるとはな。」

と花形。

「それだけ、みんながこの試合に注目しているということだ。」

大和が答える。

「みなさんは、どちらの応援でしょうか。俺は、一応大さんがいるんで、慶徳です。」

苦笑う織田。

「みんな、身内のいるほうを応援するんじゃないかな。」

と品川。


「となると、俺と三井、宮城、織田は慶徳。新庄、大和と品川、仙道は、未確定・・・。
白金の応援はいないことになるな。」


「こういうことは、先にちゃんと聞いたほうがいい。応援にも力が入るからな。一人ひとり聞くぞ!」

三井が仕切る。



結果・・・。



「おいおい。おめーらちゃんと答えろよ・・・。」

「お前もだろ!」




白金・・・・・・・・・・新庄

慶徳・・・・・・・・・・花形、織田

河田・・・・・・・・・・品川

どっちでもいい・・・大和

眠い・・・・・・・・・・仙道

俺・・・・・・・・・・・三井、宮城




「三井と宮城が同じこといっているのは、ウケるな。さすが、湘北。桜木の性格が移ったな。」

と新庄。

「・・・。宮城のばかやろう!」

「・・・。三井サンこそ!」


「品川の河田もおかしいぞ!!」

「俺の目標だから。」

「・・・。」


「観戦にきたのに、仙道の眠いもおかしいぞ。」

「どーも。少し寝不足気味なんで。」

といって、仙道は昨晩のことを思い出した。



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<<回想>>

時刻は、0時。


「ふぁーーー。」

(眠い・・・。)


今にも潰れてしまいそうなコンビニのレジに立っている大きな男。

学業、部活と忙しい合間を縫って、アルバイトを始めた仙道彰だった。



『ウィーーーン。』



「いらっしゃ。」

「よぉ。」

「・・・。牧さん。」

「バイト始めたんだってな。」

「えぇ。なぜこんなところに・・・。」

「バイト、何時までだ?」

「もう終わりますよ。」

「外で待ってるぞ。」

「・・・。」



バイトから上がった仙道。


『シュ。』


『パシ。』


「飲め。」

「いただきます。」

牧は、仙道に缶コーヒーを投げた。


コンビニの駐車場、車止めに座る仙道。

壁に寄りかかる牧。


しばしの沈黙。


雲の隙間から、月の光が2人を照らし出したとき、仙道が最初に口を開いた。



「明日、試合でしたよね?早く帰らなくていいんですか?」

仙道は、缶コーヒーを一口飲み、牧に尋ねた。


「・・・。お前の眼から見て、俺たちは、慶徳に勝てると思うか?」

「・・・。」

牧の消極的な発言を聞いた仙道は、少し驚いたが、思っていることを素直に述べた。


「慶徳80%ってところでしょうか。」

「ふっ、少しは気を遣ったらどうだ。」

「そんな話を聞きたいわけじゃないでしょう。」

と仙道は微笑み返す。


「白金に藤真さん、諸星さんを止められる選手はいても、赤木さんを止められる選手はいない。
なにより、牧さんが弱気なら、勝つのは間違いなく慶徳です。」

「・・・。」


再び、しばしの沈黙。


「弱気に見えるか?」

「えぇ。」

真剣な眼差しの仙道。


「そうか・・・。」

「白金が勝つには、120%の牧さんが必要ですよ。前半からね。」

「前半からか・・・。俺は体と心が温まるのが遅いからな。
だが、お前に会って、少し温まった気がする。明日は最初から飛ばせそうだ。」


「神奈川出身者は、みんな打倒牧さんを目標としている。
決して負けるわけにはいかない・・・。トップでいるのも大変ですね。」


「挑戦者のほうが、楽に思えることある。だが、あいつらの想いを中途半端な気持ちで受け止めるわけにはいかない。
明日は、全力で叩き潰すだけだ。」

眼に力の入る牧。


「楽しみにしてます。」

「試合、観に来いよ。」

2人は別れた。



仙道は疑問に思う。


(なんで、俺のところに来たんだろ。)


その真意は、仙道にはわからない。


(慶徳80%・・・。俺と同じ考えか・・・。
だが、それも先程まで。今は、白金が100%勝つと断言できる。
お前に会いに来てよかったぜ。)


牧は微笑みながら、熱くなった胸を冷やすことなく、帰路についた。



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続く。

#376 【最強大学】

2010-10-23 | #12 大学 新人戦編
コートサイドでは、今はまだかと白金学院、慶徳義塾の選手たちが、出番を待っている。

第1試合の興奮も後押しをし、両校、最高のモチベーションを維持していた。




白金学院サイド。


牧を先頭に、両サイドに土屋と神が並んでいる。

後ろに荻野と村松。


第1試合を無言で観戦している。

時折、うなずき、笑顔を見せ、選手たちから固さは感じられない。





『ピィーーーー!!』


名稜がタイムアウトを取った。




牧は、コートから反対のコートサイドに眼を移す。


藤真と眼があった。


お互いに、表情一つ変えず、見つめ合う。



(牧!今日こそ、俺たちが勝たせてもらう!)


(勝負だ、藤真。)



両者の眼は、気合と感情がむき出しであった。


牧が、ふと視線をずらすと同じように、諸星と眼が合った。



(今回も勝たせてもらうぜ!)にや。


(諸星め。)にこ。


牧は微笑み返す。



そして、感じるもう一つの強い視線。



「赤木。」


牧は、思わずその名を口にした。




赤木は思い出していた。


観客席から牧のプレーを眺めていた高校1年生のときを。


3年生になり、頼もしい仲間とともに、海南に初めて勝負を挑んだIHのことを。


惜敗したあの日を。



(牧・・・。今度こそ勝つのは俺だ。)にっ。



赤木のその表情は、実に誇らしいものだった。




「そう簡単にいかないぞ。」

牧はつぶやいた。

「ホンマ、牧は好かれておるな。あんなに睨まれて。」

土屋は冗談半分に笑う。

「大学という舞台に変えても、何も変わりませんね。」にこ。

「あぁ。飽きさせないやつらだ。」




『ガシ。』

赤木が、藤真の肩に手をかけた。


「考え事か?」

「あぁ、少しな。」

「藤真らしくねぇな。」

と諸星。


「大丈夫。勝つのは俺たちだ。」


「ふっ。」

藤真は少し笑った。


「何がおかしい?」

「白金を倒した後、牧にどんな言葉をかけようか考えていただけだ。」

「おぉ、それなら俺も考えるぜ!」

「諸星。それは、藤真に任せておけばいい。貴様は、どうすれば神を抑えられるか、しっかり考えろ。」

「ったく。」


「牧は頼んだぞ。」

「あぁ、任せておけ。」


赤木は藤真の想いを、藤真は赤木の想いを汲み取った。




コート上。


残り時間からすると、ラストプレーになると思われる。


ボールは、深津がキープしている。


小関の攻めるようなディフェンス。

試合終了間際であっても、その足は止まることを知らない。


最後のプレーと判断した市原は、深津に詰め寄った。




「囲んだーーー!!」

「ダブルチームだーー!!」

「あれは深津でもきついぞーー!!」




『ダム!』


『キュッキュ!』


『キュ!!』



だが、深津に焦りの表情はない。

むしろ、この機会を狙っていたかのように、澄ました顔で、小関と市原の間のわずかなスペースにパスを放つ。



『ダン!!』



「!!」


「なにっ!」




「巧い!!」

「さすが深津!!」




ボールを受け取ったのは徳永。

ここまで、23得点、5アシスト、8リバウンド、2ブロック、2スティールとマルチな活躍を見せている。



『キュ!!』


「!!」

「やべ!!」



深津は、パスと同時に、小関と市原の間を駆け抜けた。



『パシ!』


ボールは、深津へリターンパス。

名稜大ばりの鮮やかなパス&ラン。


ゴール下では、28得点、14リバウンドの河田がスペースを作り出す。


同じく、10得点、8リバウンドの辻は、瀧川を抑え込んでいる。


この試合、6本の3Pを決めている牧瀬には、SF鴨川がディナイディフェンスをしていた。



フリーの深津。


『キュ!』


3Pラインを過ぎたところで、冷静にジャンプシュートを放つ。


ボールは、高い孤を描き、リングに吸い込まれた。



『パサ。』




「これで、深津君も10得点目ね。」

と弥生。




瀧川がエンドラインからボールを投げ入れ、小関が受け取ったところで、試合終了を告げるブザーがなった。



天井を仰ぐ名稜大。



笑顔を見せる深体大。



試合中盤まで、優勢を保っていた名稜であったが、深津出場後、流れが一気に変わった。

現時点、実績、経験から、牧を抑え、世代最強のPGと称されている深津一成。

この試合、スタッツ以上に、存在感を示したことはいうまでもない。

また、出場した深体大6名の選手は、全員が2桁得点をあげた。



まさしく穴のない深体大。



各大学、関係者、観客に、優勝候補の評価を改めて、深く刻んだのであった。




深体 107
名稜 91







続く。

#375 【勝敗決す】

2010-10-20 | #12 大学 新人戦編
第4Qも中盤に差し掛かっている。


名稜は、攻守ともに足を使い、ひたすらに動き回る。

まさに、無尽蔵の体力集団となっていた。



『スポ!』



河田との1on1から、ジャンプシュートを成功させる里中。


第3Q以降、名稜の中でも一際の活躍を見せている。



「うはっ。不足ねぇ相手だぜ。」

河田は嬉しそうであった。


「深津。パスくれ。」

「好きにするピョン。」


『コク。』

他の選手もうなずく。



ボールを河田に託す。


深体大は、深津投入以来、ハーフにて、中、外、中とリズムの良いオフェンスを展開している。


前半、ベンチにて、名稜の動きを観察、分析していた深津は、
巧みなパスワークとゲームメイクで、最強のフィニッシャーたちを使い分けていた。


ゴール下では、奮起した辻が瀧川と互角の競り合いを見せていた。



『シュパ!!』


河田のジャンプシュート。


里中との1on1から、あっさり決めた。


「うしっ!!」

その表情には、どこかまだ余裕が感じられた。



(河田雅史・・・。避けて通れない相手だな。)

河田を見つめる里中。



(こいよ。手加減はしねぇけどな。)



PG小関から市原へ。

市原から鴨川。

鴨川から里中へ。

速いパス回し。




「また里中だーーーー!!」

「さっきから、あの対決熱いぞーーーー!!」

「河田!止めろーーー!!」

「行けーー!!里中!!!」




ポストアップの里中。



『ジジジッ!』


河田が体で止める。


(力勝負じゃ負けねぇぞ。)


(力じゃ不利。)



『バッ!』


里中、ターンから後方へ、重心を移す。


フェイダウェイの体勢。



『ダン!』



河田がチェックに跳んだ。



『キュッ!!』


里中の軸足は、まだコートに張り付いてた。


そして、力強く一歩、中に踏み込んだ。


宙を舞う河田の横を里中が通り過ぎる。



(やるじゃねぇか!)


(もらった!!)



『シュ!』



森重のインサイドとともにIH制覇に導いた里中の伝家の宝刀、高確率のジャンプシュート。



「!!」



だが。



横から手が伸びてきた。


わずかにボールに触れる。



『チィ!!』



「徳永!!」


「辻!リバウンド頼むよ!!」


インサイドでは、瀧川と辻の、ポジション争い。



『ダン!』


『ダン!!』



2つの巨体が、ボールを狙う。



『バチン!!』



リバウンドは・・・。



辻の手によって、外へ弾かれた。


ボールの向かう方向には、深津。



「速攻ピョン!!」



『キュ!!』



牧瀬が速いスタートを見せる。



『ダム!』


『クル!』



バックロールで小関を交わす深津。


SF鴨川は、深津と牧瀬の間を並走する。


名稜大内でも、ディフェンス評価の高い鴨川。


そのことを理解しているうえで、深津は勝負を挑んだ。



『ザッ!!』


『ダムダム!!』




「深津がいったーーー!!」

「いや、パスアウトもありえるぞーー!!」




牧瀬は大きく開き、スペースを空ける。


もちろん、ポジション取りは定位置。

3Pラインの外。



『ダム!』


深津の低いドリブル。

鴨川を抜きにかかろうとする。



だが。



『ビッ!』


ジャンプバックビハインドパスで逆サイドの牧瀬へ大きく展開した。




「完璧にノーマークだ!!」

「牧瀬の3Pーーーー!!」

「いけーーーー!!」




『パシ!』


ボールを受けた牧瀬。



3Pを打たない。



静かにインサイドへ放る。




『ダーン!!』



ボールに向かって、跳ぶ大きな体。



『バチン!』



牧瀬のボールを台形内中央、リング手前の空中で掴んだその男は、観客の眼を釘付けにする。



「だらーー!!」



『ドガァ!!』



「ぶし!!!」



『ギシギシ・・・。』



リングが揺れている。




「河田ーーーー!!!!」

「アリウープ!!!」

「深体大!!全開だーーー!!!」

「最高!!深体大ーーー!!!」




「あの脚力・・・。あんな大きな体でなんて足が速いんだ・・・。」

中村の眼は、点になっている。

「10点差・・・。勝敗決したとみていいわね。」

と弥生。




第4Q 残り5分。

深体 93
名稜 83







続く。

#374 【深体大の心】

2010-10-18 | #12 大学 新人戦編
深体 49
名稜 57




「反撃だピョン。」


深津の一言で、試合は大きく変わる。



『ダムダム!!』


駆け上がる深津。

だが、名稜の戻りの速さは尋常ではない。



「そう簡単に速攻は許さない。」

PG小関の強気な発言。


「わかってるピョン。」


「!!」


名稜もハーフマンツーで、深体大を迎え撃つ。


「やられたら、やり返すピョン。」



『ビィ!!』



深津から徳永へ、3Pライン内、絶妙な位置。


対峙する市原。



「きやがれ。」


『キュ!』



フェイントもなく、勢いそのままに、ドライブを発動する徳永。



『ダム!』


『キュッ!!』



「!!」


喰らいつく市原。



『ダム!!』


市原の逆をつく、力強いフロントチェンジ。



(俺の真似!!)



「!!」にこ。




「抜いたーーー!!!」

「徳永がさっきのお返しとばかりに、市原を抜いたーー!!」

「うめぇーーー!!」




『バッ!!』


里中がカバーに出た。


想定内とばかりに、ボールを落とす。


先程の名稜と全く同じパターン。


受け取った河田。


ジャンプシュートの体勢。


膝を曲げる。



『バッ!!』



再び、立ちはだかる里中。



そして。



「囲め!!」

C瀧川。


2人がかりで、河田を止めに入った。



「ぶはっ。」



『ビュン!!』



「!!!」


「!!」



シュートフェイクから、ゴール下へ強いパスを投げ放つ。



「!!!」


「ぶち込め!」



『バシ!!』



河田からの剛速球パスを受け取ったのは、ノーマークの辻。



(決める!!)



『ダン!!』



大きく膝を曲げ、ボースダンクを狙った。



「貴様に入れさせるか!!」


瀧川が、辻に体を寄せるように強引にブロックに跳んだ。




「瀧川のブロック!!」

「危なーーーい!!」




「叩き込むピョン。」


「いけ!!」


「決めろ!!」



『ダン!!』



「うぉーー!!!」


「だぁーーー!!!」



『ドン!!』


『バチィ!!』



「っつう!」



(決めるんだ!!)



「うぉーー!!!」



『ドガァァァ!!!』



叩き込んだ。


瀧川のファウルを物ともせず、辻はボースダンクを成功させた。




「わぁーーーー!!!」

「すげーー迫力!!!」

「瀧川を吹っ飛ばしたーー!!」

「バスカーーン!!」




「辻!」


「河田。」


『バチン!!』


ハイタッチを交わす。


「やるじゃん!!」

と笑顔の徳永。

「最高だよ。」

牧瀬も称える。

「まだまだ、辻はこんな実力ではないピョン。」


「みんな・・・。」



「ちっ。あのやろう・・・。」

苦渋の表情を浮かべるのは、瀧川。


「彼を少し侮っていたようだな。」

と里中。


「・・・。」

無言の瀧川。


「もう前半のようにはいかないかもしれない。」

里中の目つきが変わった。




「最高のメンバーが、辻君のプレーの幅を広げ、素質を引き出しているわ。」

「なんか、深体大って、ひたすら勝利だけを求め、冷徹みたいなイメージがあったけど、そうでもないですね。
意外に人情味溢れているっていうか、みんなで盛り上げているっていうか。」

「そうね。確かに、先輩たちはそうかもしれない。だけど、彼らは違う。
山王、博多で歴代最高の代といわれた彼らには、バスケの実力以上に、素晴らしいハートを持っている。
はっきりいうわ。彼らを倒すのは、至難の業じゃないわよ。」




ボーナススローも手堅く沈めた辻。


その心の中には、若葉のような自信が芽生え始めていた。




深体 52
名稜 57







続く。

#373 【反撃だピョン】

2010-10-15 | #12 大学 新人戦編
深体 49
名稜 57




試合は、第3Qを迎えていた。

ここまで、ペースは名稜が握っている。


足を生かし、得意の速い展開を作り、深体大リングをガンガン襲う。

身長の差をカバーために投入されたC辻だったが、名稜C瀧川に走り負け、インサイドを攻められていた。


ボールの占有率は、名稜が6割を超え、名稜の押せ押せムードであることは、
観戦している素人でもわかるものだった。

だが、見た目以上に、点差はついていない。


それは、要所で名稜オフェンスを止め、確実に点を沈めた深体大の意地とも、強さとも取れるものが、
そこにあったためだった。


冷静に守り、冷静に攻める。


深体大選手は顔色一つ変えない。


対して、リードしている名稜は焦りを感じ始めていた。



(完璧にうちのペースなのに、なぜ点差がつかねぇんだ!!)


市原の動きを冷静に見極める牧瀬。

その視線を感じ市原は。


(やりづらい相手だぜ。)


(市原君、だいぶ焦ってきたようだね。)


それは、小関、鴨川、瀧川も同様であった。


ただ一人、冷静に戦況を分析していたのは、PF里中。

名朋時代、森重とともに、IHを制覇した選手である。


(これほど、攻めているにも関わらず、得点差が開いてない。
お互いに速攻を交え、ボールが動き回っているから、なかなか気付かないが、
深体大は、牧瀬の3Pを多用してきている。いや、投数は少ないが、高い成功率を収めているというべきか。
ここは、迫られる前に・・・。)


「朝日!ディフェンス交代だ。鴨川は牧瀬にあたれ。朝日は徳永だ。」

「なに!」


「深体大は、要所要所で牧瀬にボールを集め、3Pを決めてきている。
それが、点差が離れていない要因の一つだ。鴨川なら牧瀬を抑えられる!」

「それは、俺のディフェンスが」

「朝日は徳永!!お前もそのほうがやりやすいはずだ。」

「・・・。」


市原は、少し考えてみた。

視線を徳永に移す。


(確かにガンガン来るやつの方が、やりやすい・・・。)


「わかったぜ。徳永は俺に任せろ!!」


市原は牧瀬から徳永に、鴨川は徳永から牧瀬にマッチアップを変えた。



(さすが里中君、少し遅いけど、よく気付いたね。でも。)

と牧瀬。


(ここから、作戦変更だよん。)

と徳永が笑った。




『ピィーーー!!』


加藤のファウル。



そして。




「メンバーチェンジ!青!」




交代が告げられた。


「あとは、任せましたよ。」

「ゆっくり休むピョン。」

「ピョン!?」

(ピョンが復活した。)

苦笑う加藤。



第3Qも2分が経過したところで、深体大が動きをみせる。




「深津だーーー!!!」

「でたーーー!!!」

「流れを変えられるか!!」




「アップテンポ、スローテンポ、どちらにも対応できる深津君。
さぁ、何を見せてくれるのかしら。」

「うぉーーー!!深津君のゲームメイク、凄く久々です!!」

中村の興奮は隠しきれない。




「集まるピョン。」

「ピョン!?」

「深津、ピョン復活か。うはっ。」

「何度もいうが、これが一番しっくりきているピョン。」

「ホント、面白いよ。深津君。」くすっ。


「焦る時間でもないピョン。じっくり攻めるピョン。ペースを握るピョン。」

「あぁ。」

「辻、ただデカいだけじゃないピョン。瀧川に負ける選手ではない、俺が保証するピョン。」

「深津・・・。」


「さぁ、早いとこ逆転しちゃおうぜ。」

最後、徳永がしめた。

(ピョン連発しすぎじゃん。)




名稜のオフェンスからリスタート。

PG小関に深津、SG市原に徳永、SF鴨川に牧瀬、PF里中に河田、C瀧川に辻がついた。



『パス!』


『パシ!』



名稜の速いパス回し。


そして、市原へ。


『キュ!』


『ダム!!』


間髪いれず、一気にドライブをしかける。

あくまでも、名稜はアーリーオフェンスのスタイルを貫く。



(いきなり突っ込んでくるとは、甘くみられたな!)

とマークが変わったばかりの徳永。



『キュ!!』


市原の前を塞ぐ徳永。


『キュッ!』


『ダム!!』



切れ味鋭いフロントチェンジ。



「!!!」


(遅い!!)


(やろう!)



市原は、徳永を抜き去った。


ぽっかり空いたスペース。


レイアップシュートでゴールを狙った。



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

深体大体育館。


『ドガァ!!』


「ぶしっ!!」


1軍と混じり、ボースダンクを決めた河田。

その光景をコートの隅で見つめる辻。


「すっ凄い・・・。」

「河田はすげーよ。1軍でも見劣りをしない。だが、俺たちだって負けていないさ。」にこ。

隣の徳永が答えた。


「え!?」

「河田君は、器用な万能選手。そういう選手はなかなかいない。
でも、僕らにも彼に勝てる部分もある。全てで負けているわけじゃない。」

「でも、俺には、そんなものないし、なぜ深体大から推薦がもらえたのかもわからない・・・。」


「高さケロ。」


「深津・・・。」

「辻の高さは、このチームに必要ケロ。」

「河田は、エース級の選手とマッチアップする可能性が高いだろ。
そこで、インサイドでは辻が必要となるわけさ。」

「今すぐじゃなくていい。河田君のプレーを盗み、ゆっくり成長すればいいよ。」

「お前は、ただデカいだけじゃないケロ。深体大に必要不可欠な選手ケロ。俺が保証するケロ。」


(深津・・・、徳永、牧瀬・・・。)

「ありがとう。」



-----------------------------------------------------------------------



(あれから1年。毎日、励ましてくれたみんなのためにも練習の成果を見せてやる!)



市原のレイアップ。


「うりゃーー!!」


「止める!!!」


辻が、カバーに入った。


市原の前に壁のような辻。



(デッデカい。)



「打たせない!!」


「ちっ。」


市原は、咄嗟にボールを下に落とした。

受け取ったのは、C瀧川。



「ナイスパスだ!!」



『ダン!!』



ゴール下を狙う瀧川。



横から河田がブロックに跳ぶ。



『バッチィン!!!』



「!!!!」


「河田か!」


力強い瀧川のシュートを河田が力でねじ伏せた。



「辻!ナイスディフェンスだ!!」

「河田!!!」



「サンキュ!辻、助かったぜ!!」

と徳永。

「辻君!OK!」

「おう!」




「河田のブロッーーク!!」

「辻もナイスディフェンスーだ!!」

「いいぞ!河田ーー!!」




ルーズボールを奪った深津が不気味に一言。


「反撃だピョン。」




深体大の逆転へのカウントダウンが始まる。




深体 49
名稜 57







続く。

#372 【深体×名稜】

2010-10-13 | #12 大学 新人戦編
準決勝

第1試合 深沢体育大学 × 名稜大学

第2試合 白金学院大学 × 慶徳義塾大学




40校が参加した関東大学バスケットボール新人戦。

勝ち上がってきた4校の大学。


深体大カルテッドといわれる深津、牧瀬、徳永、河田を有する関東1部リーグ1位の深体大。


その深体大を脅かす1番手評価は、同じく第2位の名稜大学。
3位の神奈川体育大学を撃破しての準決勝出場。


チームの完成度に不安を残す牧率いる白金学院大学は、リーグ5位。
2部リーグの横浜学芸大学に苦戦を強いられたが、かろうじて4強へ。


そして、高校時代全国トップレベルの選手が運命によって、導かれた慶徳は、リーグ7位。
下克上を虎視眈々と狙う。




準決勝当日。

記者席には、いつもの顔が2つ。


「いや~、懐かしい選手がいっぱいいますね。わくわくするなぁ。」

神奈川のIH予選も終了し、本日から関東大学の新人戦の取材に挑む中村。


「ここ近年の高校バスケ界を沸かした選手たちが、そろい踏みね。」

(仙道君がいないのが、残念だけど・・・。勝ち上がったメンバーを見れば、致し方ないわね。)


「注目は、第2試合!牧君と藤真君との試合ですね。
赤木君、神君、諸星君、土屋君、野辺君と他にも魅力的な選手がたくさんいます。
考えただけで、目が回ってしまいそうなくらいです。あははは!」

「第1試合も見逃せないわよ。誰が主役になってもおかしくないメンバーよ。」

「早くも興奮してきましたよーー!!」




深体大、名稜大、両校のアップも終了し、ベンチにて、ミーティングを行っている。




「でも、相田さん。深体大のラインナップ、他の大学に比べると少し小さいですよね。
90台は、河田君しかいませんし。」

「えぇ、スタメンはね。」

「スタメンは?」

「確かに、今年の深体大は小粒よ。
名稜と比べても、PGの深津君が小関君に1cm高いだけで、あとは全てのポジションで名稜の身長が勝っている。」

「いくら、深体大でもこれはまずいんじゃないですか。」

「それは、深体大も重々承知よ。だから・・・。」




「わぁぁーーーーー!!!!!」

「うぉぉぉーーーー!!!!」

歓声が沸いた。




それは、準決勝第1試合の始まりを知らせる合図でもあった。




「あっ相田さん!!」

「だから、いったでしょ。深体大も重々承知だって。
秘密兵器としてああいう選手を温存させておくあたり、さすが深体大。懐が深いわね。」

「おっ大きい・・・。」

「辻崇君。全国の常連校、桃倉工業のCを務めるも、バスケのセンスは薄く、ただ大きいだけといわれていた。
今大会、横学大の品川君を越える、206cmの最高身長を誇る。
まさか、深体大が彼を獲得するとは・・・。どんな選手に成長したか、見ものだわ。」




「デカイ!!!!」

「気になってはいたが、誰だあいつは!!」

「深体大が秘密兵器投入だ!!」

「デカイってもんじゃないぞ!!!」




『ズンズン。』


「緊張してるか?」

河田が声をかける。

「だっ大丈夫。」

「カッチカチじゃん!あははっ。」

と徳永。

「練習どおりやれば、結果は自ずとついてくる。リラックスしていこう。」

「牧瀬さんのいう通りですよ。リラックスですよ、辻さん。」

「練習の成果、見せていこうぜ!」

「おっおう。」




【深沢体育大学】 関東1位

PG…#37 加藤 夏輝 182cm/1年/山王工業
SG…#18 牧瀬 篤弘 182cm/2年/博多商大附属
SF…#17 徳永 保 188cm/2年/博多商大附属
PF…#9 河田 雅史 197cm/2年/山王工業
 C…#24 辻 崇 206cm/2年/桃倉工業




「出てきやがったな!でくの坊。」

と反対コートのSG市原。

「桃倉工業の辻か。IHの1回戦で対戦したことあるが、ただデカかっただけだ。怖れることはないよ。
高さを優先した代償が大きかったことを教えてあげよう。」

そう答えるのは、白松高校出身のSF鴨川。


「それよりも気をつけなくてはいけないのは、深津がスタメンじゃないということだ!」

とPG小関。

「加藤をPGにし、うちと速い展開でやりあおうということか。」

PF里中が答える。

「深体大がどういう作戦でこようが、うちは名稜のスタイルを貫くだけだ!!」

「おう!!」

C瀧川がしめた。




【名稜大学】 関東2位

PG…#16 小関 一志 179cm/2年/洛安
SG…#17 市原 朝日 185cm/2年/浦安工業
SF…#18 鴨川 太一 187cm/2年/白松
PF…#19 里中 悠介 194cm/2年/名朋工業
 C…#20 瀧川 譲次 198cm/2年/洛安




「深津君がベンチ!?どっどういうことでしょう?」

「うーん。まず第一に考えられることは、深津君よりも速い展開を好む加藤をPGにすることで、
名稜のラン&ガンに真っ向勝負を挑むということかしら。
そして、もう一つは、深津君がベンチにいる、余力を残しているというプレッシャーを名稜に与えるということかしらね。」

「でも、もし、このメンバーで一気に持っていかれることがあったら・・・。」

「それは絶対にない。彼らには、そういう自信があるのよ。さすが、深体大。ハートもチャンピオンだわ。」

(リーグ2位の名稜でさえ、格下扱いなの・・・。)




対峙する10名の選手。


「河田、どういうことだ?」

第一声は、名稜SGの市原朝日。

高校時代、千葉の朝日との異名を持ち、SGの中ではトップレベルの実力を持っていた。


「どういうこと?勝つために試合をする、それだけだ。手加減も、手を抜く気もねぇ。」

「では、負けても言い訳はなしということでいいか。」

里中が冷静に対応する。


「負けねぇから、言い訳もねぇ。うはっ。」

「了解。」にこり。

河田の笑いに、里中が微笑み返した。



「始めまーーす!!」

センターサークルには、河田と瀧川。


「そっちのデカいのじゃねぇのかよ。」

と瀧川。

「俺は、里中とやりたかったんだが。」

「ぬっ。このやろう。」



『シュ。』


審判がボールを放った。



『ダン!』


『ダッ!』



『バチィ!!』



深体大対名稜大の威信をかけた試合が今、開始された。








続く。

#371 【4強決定】

2010-10-12 | #12 大学 新人戦編
慶徳 28
法光 10




法光大のボールで、第2Qが開始された。

慶徳は、マンツーで対応する。


PG内村に藤真、SG烏山に諸星、SF御子柴に真下、PF高砂に野辺、そしてC若林に赤木という布陣。



『ダム!ダム!』


PG内村が静かにボールを運ぶ。

うかがうのは、烏山の動き。


諸星は、烏山と距離をとって、ディフェンスしていた。


(やはり、烏山の情報は入っていないと見える。)



『ビィ!』


内村から烏山にパスが供給された。


(OK!一発かましてやるぜ!)


『パシ!』


烏山はボールをキャッチすると、すぐに流れるようにシュートモーションに持っていく。

そして、素早く、かつ繊細にシュートを放った。



「ん!」



『チィ!!』



「なっ!!」



烏山の手を離れたボールは、すぐに軌道を変えた。



「お前、3Pが得意なんだってな。簡単に打たせるかよ。」にや。



諸星が触れた。



(マッマジかよ。あの位置から一瞬でここまで!)



『ガン!!』



軌道を変えられたボールは、リングに当たることなくボードに当たる。

ゴール下では、赤木が、高砂、若林の2人を抑え、ポジションを確保している。



『バチン!』



ボールは、野辺の手の中に収まった。



「へい!」


サイドでは、真下が構える。

野辺は、すかさずパスアウト。



「真下!」



『パシ。』



あわせて、藤真が中央から、パスを貰い受ける。


そして、諸星がサイドを駆け上がった。


各選手が、与えられた仕事を完璧にこなす慶徳。


基本に忠実であり、統率されたプレーは、観客を魅了する。




「速い!!」

「完璧なリバウンドからの速攻だ!!」




『ダムダム!!』


藤真が中央突破。

早くも2on1に持っていく。


藤真・諸星×内村。


(こうなったら、シュート前にファウルだ!)


内村は、藤真を捕まえにいった。



だが。



『キュ!!』



お見通しとばかりに、急ストップ。



「!!」



『フワァ。』



ゴールに向かって、柔らかい優しいパスを放つ。

そして、藤真は振り返り、慶徳コートに戻る。


ボールの行方を確認しない。



(ホント、文句一ついえねぇパスだぜ!!)



『ダン!!』



ボールに向かい、跳ぶ諸星。



『バシ。』



空中でキャッチすると、そのままワンハンドで振り下ろす。



「どりゃーー!!」



『ガッシャーン!!』




「うぉぉぉぉーー!!」

「キターーー!!」

「藤真、諸星のアリウーーープ!!」

「すげーーー!!!」




着地する諸星。


「藤真!ナイスパス!!」

振り返り、叫ぶ。


「なに!!」



『バチーン!!』



そのとき、藤真は慶徳コートで、赤木とハイタッチを交わしていた。



「おいおい。普通、俺とやるもんだろ。」

と残念そうな諸星。

「早く戻れ!!」

と赤木。

「へいへい。」



諸星が戻り、再び烏山をマークする。

「うちのPGは、相手チームの研究に入念でね。」にや。

「誘ってたのか?」

「まぁね。ある程度、距離を開けておけば、必ず打ってくると思ったからな。」

「・・・。」

(勝ち目がねぇよ・・・。だが、いつかこいつを超えてやる!!)

これ以降、烏山は諸星を超える為に、努力を続けるのであった。




観客席の深体大。


「これは驚いたね。」

「うはっ!早くこいつらと試合がしてーー!!」にやり。

「予想を遥かに上回るチームだな。白金、勝てるかな?」

「チームの完成度となると、慶徳のほうが白金を越えているケロ。準決勝は、波乱があるかもケロ。」




同じく、観客席の白金学院。

「・・・。」

無言の牧。

(藤真・・・。いいチームを作ったな。)

そして、微笑んだ。

「牧さん、嬉しそうですね。」

「まぁな。高校時代、俺が尊敬した優秀なキャプテンと再び対戦できるチャンスが巡ってきた。
しかも、2人同時にだ。こんな嬉しいことはない。」


「三井、仙道の次は、藤真、赤木か。ほんま、神奈川のやつらは、牧を倒そうと必死やな。」

「しかも、今回は諸星さんと野辺さんもいます。」

「これは、難儀やで。」

「だが、負けるわけにはいかない。」

「もちろんや。」

「ええ。」




第4試合は終了した。


圧倒的な力を見せつけ、慶徳が圧勝。


準決勝に駒を進めた。




慶徳 111
法光 51




翌週、壮絶な準決勝を行うこととなる。


第1試合 深沢体育大学 × 名稜大学

第2試合 白金学院大学 × 慶徳義塾大学








続く。

#370 【慶徳×法光】

2010-10-09 | #12 大学 新人戦編
「わぁーーーー!!!」

「あぁぁーーーーー!!!」




ロッカールームまで、体育館の声援が聞こえる。


「始まったか。」

クールダウンを終え、椅子に腰をかけていた牧。


「そろそろ、観にいきますか?」

「そうだな。」

選手らが、腰をあげる。


「慶徳には、藤真さんと赤木さん、諸星さんと気になる選手がたくさんいますね。」

「法光にも、一人身内がいるしな。」

「そうでした。久しぶりだな、会うのは。」


「神、誰やったっけ。」

「神奈川随一の技巧派センターといわれた方ですよ。」

「あぁ、高砂か。確か、法光には常誠の御子柴もおったな。」

「熊本第3の内村や、太田森の若林、どいつも業師といえる扱いにくいタイプの選手が集まっている。」

「藤真さんたちも、手を焼くかもしれませんね。」




第4試合の慶徳義塾大学(1部)と法光大学(1部)の試合が開始され、第1Qも終盤に差し掛かっていた。



ここまで、予想外の展開をみせている。



『シュパ!』


諸星のレイアップシュートが、華麗に決まった。



『パン!パン!』


「もう1本いくぞ!!」

「おう!!」


藤真の声が、コートに響き渡る。



『キュ!』


『キュッキュ!!』




「つっ強すぎる!!!」

「慶徳が凄いぞーー!!!」

「じゅっ15点差だーーー!!!」




慶徳 23
法光 8




試合開始早々、慶徳はオールコートゾーンプレスを張ってきた。


1-2-1-1。


センターに諸星、左右に藤真と真下、センターライン上に野辺、そして慶徳ゴール下に赤木が陣取る布陣。




「このゾーンは、強烈だな。」

「あの#14が巧く統率しているね。深津君や牧君とは、また違った凄みを持つGだ。」

と牧瀬。

「あいつは、藤真ケロ。
神奈川では牧と同等の評価を受け、1年次から全国に出場していた実力あるPGケロ。」

「おっ。さすが深津、PGの情報には長けているな。うは。」

「PGの道は、1日にしてならずケロ。」

「好きだね。その言葉。」

徳永が笑う。




「囲んだーー!!」

「藤真と真下が、内村を捕らえたーー!!」




法光PG内村のピボッド。


苦し紛れの大きなパス。



『バシ。』


野辺がキャッチ。




「おう。野辺の動きも機敏になったな。」

と嬉しそうな河田。




すぐさま、逆サイドの諸星へ大きく展開。


「ナイスパス!野辺っち!」



『シュ!!』


躊躇のない3Pは、豪快にネットを揺らす。



『ザッシュ!!』




「また諸星だーーー!!!」

「強すぎるぞーー!!」

「早くも慶徳で決まりだーー!!」




慶徳 26
法光 8




「おいおい。どうなってんだ。」

と荻野。


白金学院が観客席についた。


「予想外だな。」

苦笑うしかない牧。

「法光は、そんなに弱いチームやないで。それでいて、この点差。ほんま強いとしかいいようがないで!!」

「冷静に考えれば、スタメン全員が世代を代表する選手。これは当然だったかもしれませんよ。」

神は微笑んだ。




第1Q終了間際、法光は、御子柴がなんとかミドルシュートを決め、10点目を獲得した。



慶徳 28
法光 10




「よぉし!!上出来だ!!練習の成果が出ているぞ!!」 

藤真が選手に声をかける。

「予定通り、圧倒的なところを見せ付けることができたな。」

笑う諸星。

「深体大や白金が、そうは思っているとは思えんな。」

「ったく、赤木は固いんだよ。牧たちだって、少しは驚いているって。」


「深津と河田は、何事にも動じない。」

と野辺。

「牧も同様だ。」

と藤真。


「はいはい。」

少し膨れる諸星であった。




【慶徳義塾大学】 関東7位

PG…#14 藤真 健司 179cm/2年/翔陽
SG…#15 諸星 大 186cm/2年/愛和学院
SF…#22 真下 裕也 186cm/2年/浦安工業
PF…#17 野辺 将広 198cm/2年/山王工業
 C…#20 赤木 剛憲 199cm/2年/湘北




対する法光ベンチ。


「随分、やられちゃいましたねぇ。」

#35をつけたSGの男の名は、烏山彰隆。

言わずと知れた山王工業出身の1年生シューターであった。


「ゾーンプレスとは・・・。正直、やられたな。」

と御子柴。

「いかにも、藤真らしいな。」

と高砂。

「どうするか、簡単に突破できるプレスじゃないぞ。」

とC若林。

「囲まれる前にパスを捌こう。ドリブラーの後ろには、必ずセーフティーを置く。
前にパスが捌けないなら、後ろからもう1度攻める。」

御子柴が的確な指示を出す。

「あぁ。そうだな。」


「烏山、慶徳は2年生主体のチームだ。運よく、お前の情報は薄いかもしれない。
マークがきつくなる前に、打っていってかまわないぞ。」

「了解っす。でも、俺だって一応全国制覇したメンバーの一人だから、
情報くらいは、入っていてほしいもんですけどね。」




【法光大学】 関東4位

PG…#28 内村 喜文 183cm/2年/熊本第三
SG…#36 烏山 彰隆 183cm/1年/山王工業
SF…#21 御子柴武彦 186cm/2年/常誠
PF…#29 高砂 一馬 191cm/2年/海南大附属
 C…#24 若林 一郎 198cm/2年/太田森




第2Qを迎える。


慶徳 28
法光 10







続く。