うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#00 【大学 新人戦編 目次】

2010-02-26 | #00 ご挨拶&目次
▲ 湘北 選抜編 目次

-----------------------------------------------------------------------

#352 【初制覇】

#353 【新人戦】

#354 【深体×拓緑】

#355 【神体×名稜】

#356 【白金×陵南】

#357 【牧×仙道】

#358 【横学×白金】

#359 【先制点】

#360 【主力選手の実力】

#361 【相性の悪い相手】

#362 【ワンプレー】

#363 【リバウンドを制するものは】

#364 【離れる点差】

#365 【三井始動】

#366 【土屋触発】

#367 【仙道追撃】

#368 【試合決着】

#369 【伸びしろ】

#370 【慶徳×法光】

#371 【4強決定】

#372 【深体×名稜】

#373 【反撃だピョン】

#374 【深体大の心】

#375 【勝敗決す】

#376 【最強大学】

#377 【慶徳80%】

#378 【白金×慶徳】

#379 【牧×藤真&赤木】

#380 【先制点】

#381 【セカンドオプション】

#382 【土屋解放】

#383 【諸星解放】

#384 【止まらぬ攻防】

#385 【組織力と個人技】

#386 【藤真の挑戦・牧の自信】

#387 【赤木の咆哮】

#388 【PF荻野】

#389 【牧の狙い】

#390 【差】

#391 【執念】

#392 【慶徳のオールコート】

#393 【得体の知れぬもの】

#394 【激戦終止符】

#395 【決勝戦の行方】

#396 【河田を超えろ】

#397 【打倒深体大】

-----------------------------------------------------------------------

▼ 神奈川 国体編 目次

#276 【湘北初陣】

2010-02-25 | #11 湘北 選抜編
「相田さん、早く早く!湘北の試合、始まっちゃいますよ!」

焦る中村。

「誰のせいだと思ってるのよ!もう間に合わないわよ!!ったく!!」

怒鳴る弥生。

「あんたが、時間間違えるからじゃないの!」

「すっすいません・・・。」


いつもの2人は、今必死に福岡総合体育館に向かって、ホテルから駅への道を走っていた。




その頃、体育館では。


「まずい状況だ・・・。」

「ええ、コートもベンチも・・・。」

ベンチの宮城と柳が話す。


『イライライラ・・・。』


「オヤジ!!なんで、俺の出場が第1Qだけなんだよ!!」


『タプタプタプ・・・。』


『バシ!』

「やめなさい!桜木花道!!
安西先生は、あんたの背中を心配して、出場を控えさせているのよ!わかってるの!」

「アヤコさん!心配ないですよ!!それに、なんでハクタスはフルで出てるんですか?
怪我したのは、ハクタスのほうだぜ!!」

「そっそれは・・・。」


「桜木君は、秘密兵器ですから。ほっほっほ。」


「もう騙されるか!!」


『タプタプタプ。』


「こらーー!やめなさい!晴子ちゃんも手伝って!!」

「はっはい。」




2回戦、本日の第1試合。

福岡総合体育館では、栃木県代表宇都宮第三高校×神奈川県代表湘北高校の試合が行われていた。

昨年のIHで、当時最強と謳われていた山王工業を撃破。

この夏IHでは、山王、名朋と接戦を繰り広げ、僅差のベスト4。

今大会は、IH覇者の陵南を県予選で破り、名実ともにトップクラスの実力を証明しての全国大会出場。

観客もその湘北を一目見ようと、早朝より多くの観客が体育館を訪れ、
注目度は今大会トップレベルのチームであった。



現在、試合は第3Q終了間近、湘北が10点の差をつけて、リードしている。



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

第1Q


湘北は、宮城、柳、流川、白田、桜木のベストメンバーで初陣に挑む。

序盤から、宮城と柳のスピードが、流川と白田のテクニッが、桜木のパワーが一気に宇都宮第三を畳み掛けた。



『シュパ!』




「速い!!あの2人の速攻は、速すぎる!!」

「眼にとまらぬスピードだ!!」




宮城と柳のツーメンが、宇都宮第三ディフェンスを切り裂いた。


「まだまだだぜ。なぁ、柳。」

「これからですよ。」

2人のスピード、テンションは8割にも満たない。



『ザシュ!』


『バス!!』


白田の左右どちらからでも打ってくるフックシュートが面白いように決まる。




「あの高さで、あのフックシュート・・・。」

「簡単にとめられるものじゃない!!」




(右肩を負傷し、左手だけで練習していたことで、左の精度が前よりも増した。
雨降って地固まるだね。)

と白田は、今日のデキに微笑んだ。



『ザシュ!』


『シュパ!』


流川が中から、外から、リングを射抜く。




「また、流川だーーー!!!」

「まるで、沢北を見ているようだぜ!!」

「いや、沢北以上かも!!」




(沢北、沢北ってうるせー。)

流川の機嫌は良くない。



『バチィン!!』


「簡単にゴールを奪えると思うなよ!!」

桜木が早くも3つめのブロックを成功させていた。

「デカ坊主!見てるか!!いつでもかかってきなさい!!ハッハッハ!!」




「ZZZ。」

森重は、ホテルで寝ていた。




第1Q終わってみれば、


湘北 36
宇都宮 12


圧勝ムードであった。



2分間のインターバル。

「上出来だな。リョーちん。」

「まだまだ、油断はしちゃいけねぇ。全力で相手を叩くんだ!」

「おうよ!」

「いい気合ですよ。宮城君。」

「はい。先生。」

「では、角田君、緑川君、次、流川君と桜木君に代わって、出場してください。」


「なぬっ!」

「!!!」


「なぜだ!オヤジ!!」

「ほっほっほ。」

「なぜ。オヤ、先生。」

「ほっほっほ。」


「大丈夫だ、おめーらがいなくても、負けることはない。
それに、この大舞台での経験は、緑川には丁度いい。」

「リョーちん。」

「ちぃっ。」



安西の意図。

桜木の背中の負担を考え、ベンチに座らせる。

一方的な試合ほど、オーバーワークになりがちになることを安西はよく理解している。


(白田君は、ちゃんと自分を理解している。オーバーワークになることはないでしょう。)

自分をセーブできる白田は出場させた。


そして、流川交代緑川出場。

これは、昨年、山王堂本監督が延北商業戦で見せた、
河田を下げ、柳葉と河田弟を出場させた作戦と同様のものであった。

試合の中で生まれる連携と経験を1年生であり、来年主力メンバーとなる柳と緑川、白田にさせるためであった。


安西の意図を理解していた彩子は。


(でも、それなら、リョータとカクちゃんを外して、桜木と流川をいれたほうが・・・。)


そんなことも思ったが、冷静に考えてみれば、答えはすぐに出た。


(あはっ。あの5人だとチームとしてなりたたないわね・・・。)


その通り、現段階において、フロアリーダーの宮城を欠いた湘北にチームワークが
見られるかどうかは疑問だった。

特に、圧勝ムード漂う現時点では、個人プレーに走りやすい。


湘北の不安要素。

それは、宮城を欠くと、チームが内部崩壊する可能性があるということであった。




第2Q


角田のポジションより、攻め込まれるが、白田が巧くカバーする。

緑川においては、全国大会初出場に関わらず、素晴らしい動きを見せていた。


(僕は、天才だ!シュートは外さない!!)


湘北・陵南合同練習において、山岡より「シューターは自信が必要」と諭された緑川は、
一番身近にいたあの男を観察した。


そう、最上級の自信家桜木花道である。


持ち前の洞察力で、桜木の言葉、動きをコピーする。


1週間後。

「ハッハッハ!」

桜木の笑い方をマスターしていた。


2週間後。

「僕は、天才だ!」

桜木の口癖をマスターしていた。


1ヵ月後。

『ドガドガ!』

桜木の歩き方をマスターしていた。


そして、全国大会がスタートし、本日。

「流川さん、あとは僕に任せて、ゆっくり休んでください!
なぜなら、僕は天才ですから!ハッハッハ!」

緑川は、全国大会初出場に関わらず、臆することのない自信を得ていた。


(桜木みたいになっちゃった。)

(自信がありすぎるのも問題だ・・・。)

(おのれ!グリ!なんて生意気なんだ!!)


時折、無理矢理感も見られたが、桜木に近い自信を持つと同時に、
シュートフォームは、真っ直ぐとした姿勢となり、シュート成功確率は跳躍的にあがっていた。


「柳君、緑川君は、だいぶ自信をつけたようです。」

「はい・・・。」

(でも、明らかによからぬほうに・・・。)


-----------------------------------------------------------------------








続く。

#275 【神海と名朋】

2010-02-23 | #11 湘北 選抜編
山王が東園寺学園をねじ伏せていた頃、隣のコートでは、沖縄県代表神海が、高知県代表土佐南高校と対戦していた。

平均身長190cmの神海のスターティングメンバー。

あいまみえるだけで、威圧的に感じる沖縄の大波。



『バチィン!』


「いただき!!」


『ダムダム!』


「ボールは、こっちだぜ。」

「へへっ、こっちだって。」


『バス!』



リバウンドは、根こそぎ奪い獲り、高いパスを回しながら、的確に得点を奪う。

第3Qも終盤になったころ、相手の戦意はほとんど失われていた。



『ビィーーー!!』



「つまらん試合だったな。」

「もっと手強いやつらはいねぇのかよ!」

「焦るな、ジュニア。次勝てば、山王だ。そうしたら、今よりもずっと楽しめるぜ。」

「山王?」

「知らねーのか!選抜、3連覇中の山王だ。」

「その山王と俺たちがやるのか?」

「あぁ、次勝てばな。」

「へっ、そりゃ楽しみだ!なぁ、ケビン?」

「俺たちは、海の神だぜ!山のサルどもに負けるはずはない!!」

「それもそうだな!!」

「はっはっは!!」




更衣室で着替えを行っている山王工業。

「ヘックション!」

「どうした、沢北、体が冷えたか?ちゃんと汗拭いておけよ。」


「そうじゃないけど・・・。」

(なんか、今すげぇ気分が悪い・・・。)


沢北は、桜木並に自分たちのことに敏感であった。




土佐南 55
神海  121




大会3日目の午後、注目の強豪校がその姿を現す。



「でたーーー!!!」

「愛知の怪物!!!」

「最強センター!!!!」

「森重だーーー!!」

「山王を倒せるのは、お前たちしかいない!!」



愛知県代表名朋工業の登場である。



「庶民どもが、デカ坊主ごときで騒ぎおって。」

少し機嫌の悪い桜木。

「同感だ!名朋ごときで騒ぎやがって。」

同様に宮城。



コート上には、一際目立つ、背番号15。



「デカ坊主のやろー、また背番号が変わってねぇじゃねぇか!実力不足ってことか!ハッハッハ!」

「花道も一緒だろ!」

「ふん!俺の10番は、意味が違う!実力的には1番だが、敢えての10番なんだ!ハッハッハ!」

「はいはい。」




「ヒロシ!今日は、肩慣らしでいいぞ。」

「わかったよ。おっちゃん。」




「森重ーーー!!」

「豪快なダンクを見せてくれーー!!」

「期待しているぞ!!!」




愛知県代表名朋工業×広島県代表栗原高校の試合が開始された。



『バシ!!』


ジャンプボールを思いっきり叩き落す森重。




「高い!!」

「跳べている!!!」


「フン!俺のほうが2倍は高い!!」

観客の声に過敏に反応する桜木。




ボールを受けるPG中嶋。


『キュ!』


『ダム!!』


『キュ!!』




「!!」

「宮城さん。」

「あぁ、わかっている。」

(中嶋のやろー、速くなってんじゃねぇかよ!)




『ビュン!』


ボールは、一瞬にして前線に渡る。



『ザシュ!』


SF大石のレイアップが決まった。


ジャンプボールから、瞬く間に名朋が先取点をあげる。




「さぁ、こっからだ。名朋の真骨頂は。」にや。

名朋監督冨名腰の怪しい一言から、発動する名朋のディフェンス。




「2-1-2!!」

「名朋がゾーンだ!!」




「ゾーンか・・・。名朋のゾーンは、初めて見たな。」

「しかも、広い。これでは、インサイドを守る2-1-2ゾーンの意味が、あまりないように思えますけど・・・。」


白田の心配をよそに、パスカットをするSF大石。


素早く、森重にパスをする。


その森重が、大きく振りかぶり前線に放り投げる。

コートの左右から、栗原ゴールを狙うPG中嶋とSG森。



『シュパ!』


名朋の速攻が決まった。



2-1-2ゾーンディフェンスは、3Pエリア内にディフェンダーを集中させるため、
インサイド、リバウンド勝負には強いが、反対にアウトサイドのシュートには弱い一面がある。

名朋は、広め高めにポジショニングすることにより、そのウィークポイントを解消したが、
それでは、2-1-2ゾーンの意味をなさない。


その全てを解消したのが、愛知の怪物こと森重寛の存在であった。



『バチーン!!』




「出たーーー!!!」

「森重のブロック!!」

「森重がいる限り、ゴール下からのシュートは決められない!!!」




森重が、ゴール下で守備するインサイドは、実に強固なものであった。




ルーズボールを拾うPF泉山。


「森重。」

「ん。」


泉山から森重にボールが渡ると、再びオーバーハンドの剛速球が栗原ゴールを襲った。



『スト。』


2回連続の速攻が決まった。

4人がアウトサイドで守り、森重がインサイドを死守する。


広いポジショニングをとったこの名朋の2-1-2は、ゴール下の鉄壁なディフェンス能力を誇る森重がいて、
初めて成功といえるディフェンスだった。


そして、もう一つ。




「速攻主体に切り替えてきやがった。」

宮城の判断。

「前列の高めのポジショニングは、少しでも速攻のスタートを速くするためですね。」

と柳。




ボールを奪うと、前列の中嶋、森は相手ゴールに向かって走る。

ボールは、森重に渡され、剛速球パスから、速攻を決めるという、単純なワンパス速攻であった。

ワンパス速攻が封じられると、後方からSF大石がドリブルで、ボールを運ぶ。

そして、森重を待って、ハーフコートで攻める。

正しく、森重を中心としたチーム作りといえるものだった。




「格下相手だから、評価は出せねぇが、まずは合格点だな。」

と冨名腰。




観客席の湘北。

「願ってもねぇディフェンスだ!」

「ん!?」

「ゴール下に邪魔者はいねぇ!俺がデカ坊主をぶっ倒すには、ちょうどいい!」

「ふっ、そうだな。花道。名朋が決勝に上がってきたら、思う存分、森重とやりあえ。」

「任せておけ!リョーちん!!最強&天才Cは、この桜木だ!!ハッハッハ!」




名朋は、この試合、全得点の1/4に渡る12の速攻を成功させた。




名朋 96
栗原 59




翌日、いよいよ、湘北が始動する。








続く。

#274 【沢北現る】

2010-02-22 | #11 湘北 選抜編
大会3日目に突入した。

本日から、各ブロックのシード校が、コートに現れる。



「初戦が一番重要なことは、今まで何度となく言ってきた。
決して、油断はするな。全力で戦え。」

「はい!!」

「加藤、柳葉、福原、河田、そして、沢北、行って来い。」

「はい!!」


「よぉしっ!いっちょ揉んでやるか!」

「エージ、油断大敵ダス。」

「わかってるよ。ったく、そんなところまで、深津さんに似なくていいのに・・・。」

「なんか、いったダスか?」

「いや、なーにも。」


この日、沢北が年始の天皇杯ぶりに、日本のコートに足を踏み入れた。


「さわきたーーー!!」

「エージ!エージ!エージ!」

「沢北見せてくれーー!!」

「待ってたぞーー!!!」



2回戦第1試合。

観客は異様な盛り上がりを見せる。


それは、3連覇中の山王が登場したというよりも、沢北がコートに帰ってきたためであった。


観客席のいたるところで、代表校の選手が、その沢北に注目していた。



「あれが、沢北か・・・。まるで、別人のようやで・・・。」

大阪府代表の大栄学園キャプテン桜井は、その沢北の容姿を見て感じた。



「イメージ変わったな。」

「あんなだったっけ?」

ほとんどの選手が、沢北の容姿の変化に、戸惑っていた。



「アイツモ、オモロシイネ!」

テンションのあがる選手もいた。



「うぜーよ。」

態度の悪い選手もいた。



「ZZZ。」

寝ている選手もいた。



「なんだよ、沢北のやつ、いるじゃねぇかよ!!」

「よかったな、流川!」

「・・・。っうす。」

湘北は、歓迎ムードだった。


「おっ。小坊主のやつ、少しは逞しくなったか。」

と少しだけ嬉しそうに桜木。


「沢北のやろー、坊主にラインいれてやがる。」

と宮城。


「どうやら、3本入ってますね。3連覇中ってことですかね?」

「小坊主のくせに、生意気だぜ!」

柳に答える桜木。


「いや、もっと変わったところあるでしょ。」

呆れているのは、安田。



1年前まで白い肌をしていた沢北であったが、
今、眼の前にいるのは、日焼けで浅黒くなった沢北であった。


そして、更に変化をしていたのは、その体格。

身長が伸びたようには見えなかったが、ユニホームの外に見える腕や脚の筋肉は、
遠目で見ても、隆起しているのが確認できた。



(あんにゃろー。)

流川は、沢北のその変化を進化と捉えた。


そして、それは、試合ですぐに証明された。



『シュパ!』



『バス!』



『ザシュ!』



沢北は、PG加藤から的確に供給されるアシストを確実にリングに沈めていく。

派手なプレーは抑えていたようだが、フリーシュートを打っているかのように決めていた。

ジャンプ力、ダッシュ力、ハンドリング力、どれをとっても昨年よりも向上していたことは明らかであった。




(ちぃっ。)

と睨む流川。




「エージ!エージ!エージ!」

「いいぞ!沢北ーーー!!」

「さすがだぜ!!」

「俺は、お前のその姿を見に来たんだーー!!」

その光景に、酔いしれる観客。



「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

その光景に、無言になる各校の選手たち。



(あれが沢北・・・。)

(想像以上だぜ・・・。)




コート上では、山王工業の対戦相手 奈良県代表東園寺学園高校の選手たちが、
山王のオフェンスを必死に止めようと懸命に走り回っている。


「走れーーー!!」

「沢北を囲むんだ!!!」



『スト。』


相手の健闘むなしく、沢北のレイアップがあっさり決まる。




「5本連続!!!」

「初戦から沢北が全開だーー!!」

再び、騒ぐ観客。


まもなくハーフタイムを迎えようとしていたころ、観客は最高の盛り上がりを見せていた。



「なぁ、流川、どう思う?」

おもむろに、宮城は流川に尋ねた。

「・・・。」

流川は席を立った。

「どこいく?」

「トイレっす。」

ジャージに手を突っ込み、トイレに向かった。


(あんにゃろー、ディフェンダーは眼中にねぇか。)



「負けキツネめ。」

「花道だって、沢北の凄さがわかるだろ?
もう素人じゃねぇんだし。流川じゃなくても、眼を覆いたくなるぜ。」

「だから、負けキツネだっていうんだよ。そして、リョーちんも。」

「なぬ。」


「間違いねぇ。小坊主は、センドーより上だ!!」


「!!!」

(ん!理解してんじゃねぇかよ。)


「センドーと比べて、プレーに関しては、さほど差はねぇ。
だが、小坊主のほうが力強くて、貪欲にゴールを狙っている。
だからといって、俺たちがとめられねぇわけじゃねぇ。
1ヶ月もセンドーとやってきたんだ。小坊主よりも、力強く守り、貪欲にゴールを狙えば勝てる。
ようは気持ちの問題だ!」


「!!」

(花道のやろー。見えるようになったじゃねぇか・・・。
それに比べ、また俺は、悪いところが出ちまったな。)

「ふん、花道の言うとおりだ。俺と同じことを思っていたようだな。へへっ!」

「そうだ、リョーちん。その意気だ!ハッハッハ!!」




その頃、トイレの流川は。


(センドーより、やや上。ジョートーだ。)にや。

笑っていた。


『ピチャ。』


(・・・。)




沢北1年ぶりの高校バスケ界での試合は、間違いなく沢北栄治ショーとなっていた。

前半3P2本を含む27得点をたたき出す。

それは、柳葉が前半奪った17点を霞めるほどの衝撃的なものだった。

第3Q、東園寺は、苦肉の策として、沢北へダブルチームを仕掛ける。

だが、全く相手にはならない。

むしろ、沢北の勢いは、尻上がりによくなり、確実にゴールを奪った。


(わりーな、お前たちじゃ何人こようが関係ねぇよ。)


そして。



『ドガァァァァ!!!』


この試合、初めてのダンクを決めた。

リングに腕が入りそうなほどの跳躍力を見せて。


(これで、週バスの表紙はもらったぜ。)にや。



「監督、今日のエージさんは、凄すぎますね。」

「そう思うか。あれほど、油断するなっていったのに、沢北のやつは。」


(やつらがいないこのコートで、本気を出す気にはならねぇぜ。)


山王は、衝撃的な勝利で初陣を飾った。


やつらとは、誰のことか。


底を見せなかった沢北。


勝負が出来ると感じた桜木・流川。


悪夢はまだ始まったばかりであった。




山王工業  158
東園寺学園 39



【山王工業】

沢北 栄治  59P 4R 3A 7S

柳葉 敏  37P 2R 3A 6S

河田 美紀男 22P 17R 4A 8B 








続く。

#273 【選抜開幕】

2010-02-19 | #11 湘北 選抜編
湘北高校は、選抜優勝大会の会場となる福岡総合体育館から、5キロほど離れた小さな旅館にいた。

こじんまりとしたその旅館は、近くに小川が流れ、看板には温泉の文字が、掲げられている。

部屋は、6部屋ほどで、湘北バスケ部25名が宿泊すると、めいっぱいな状態。

湘北高校の貸切温泉旅館となっていた。

古びたソファーに腰をかける湘北選手たち。

午前中に行われた開幕式について、話をしていた。



「結局、沢北はいなかったじゃねぇか。」

「どうなってるんだろう?」

「彦一さんの情報だと、全国大会から出場という話でしたが、
今日の開幕式には、その姿はなかった。」

「寂しいだろうな、流川さんは。」


流川は一人、外を走っている。


「俺は、やっぱりあの加藤の唇が気に入らねぇ。」

と宮城。

加藤に対して、異常な反応を見せる。



昨年優勝した山王工業。

キャプテン加藤が、優勝カップを返還し、選手宣誓を行っていた。



「そういえば、あいつら、態度悪かったですね。」

と白田が、開幕式を思い出しながらいった。

「あーあ、あいつらか。」

「バスケットマンにあるまじき行為だ!」

「お前がいうな!」

宮城に突っ込まれる桜木。


「だが、バイエルンはいいやつだった。」

桜木がしみじみいった。



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

第39回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会

開幕式。


各都道府県47校の代表校プラス開催地福岡の北九州第一高校が、綺麗に整列している。


「うまいじゃねぇか。夏輝。」

「緊張したダス。」

声をかけたのは、SG烏山彰隆。

山王のピュアシューターであり、ムードメーカーである。


「来年は、敏君があれをやるのかな?」

『ブルブル。』

美紀男が、柳葉に尋ねると、柳葉は激しく首を左右に振った。



整列している一番端の列。

沖縄県代表。


『クチャクチャ。』

列の後ろのほうで、ガムを噛んでいる3人の男がいた。

容姿からいって、ハーフ、またはクォーターにみえた。


「だりーな。」

「早く、バスケさせろや!」

「なんで、こんなのでなくちゃいけねぇんだよ!」

「だから、日本人はバカまじめなんていわれるんだよ!」


彼らは、沖縄県代表神海のインサイド陣。

自由奔放な生活をし、ストリートバスケで、腕を鳴らしてきた彼らにとって、開幕式など、なんの価値もない。


「早くおわんねぇかな。」

「俺らはバスケをしにきたんだ!!」


『クチャクチャ。』



整列する選手の中でも、頭一つ分以上跳び出ている河田は、その光景をよく見ることができた。


「なんか、柄の悪い人がいるね。」

柳葉に話しかけるも、180cmの柳葉は神海を見ることはできない。

「・・・。」


「ソウダネ!」


「!!」


右後方から、英語訛りのある声が聞こえた。

河田が振り向くと、褐色で、眼のギョロっとし、口の大きな、男が笑っていた。


「カマタ!」


「やぁ、パウエル。」


秋田県代表山王工業の隣は、青森県代表青森酒田高校。

この陽気な青年は、セネガルからの留学生バリス・パウエルであった。


「オヒスブリ。」

「お久しぶり。」


「アノヒトタチ、ワルイ。ノースポーツマン。」

「うん。」


河田とパウエルは、東北大会で対戦、マッチアップしたのを機に、またお互いが人懐こい性格もあり、
すぐに打ち解け、親友となっていた。


「コンカイモ、ヴィクトリー!」

「僕たちも負けないから。」


「カマタ。」

(河田だけど・・・。まぁいいか。)

「アソコニ、レッドヘア。」

「あっ、あれは桜木君だよ。凄く巧いの。」

「オッオー。クレイジーヘア。オモロシイネ。」

「面白いだよ・・・。」



そんな光景に気付いた桜木。


「む!丸男の隣にいるのは、バイエルンか。」

「違いますよ。パウエルです。」

小声で訂正する白田。


「どっちでもいい。うむ、面白そうなやつだな。あとで挨拶にでもいってやるか!」

「なんか、いやな予感が・・・。」



「以上、第39回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会、開幕式を閉幕します。
これより、第1回戦、第1試合を行いますので、速やかな移動をお願いします。」 



「さぁ、少し観戦していくか!ぬっ、白田。花道は?」

白田がだまって指を差す。

その方向に、湘北選手らが眼をやると。


「ぬあ!」

「なぁ!」


そこには、桜木、河田、パウエルが楽しそうに笑っている光景が映った。



3分前。

開幕式がもうすぐで終わりそうな状況。



『ブス!』


「ブヒィィィ!!」

「ハッハッハ!丸男、久しぶりだな。」

「さっ桜木君、なんでここに!しかも、いきなりカンチョーって・・・。いっいたいよ・・・。」


桜木は、こっそり山王の列に並んでいた。

河田の後ろ、柳葉の前に陣取った。


「ダメだよ。桜木君、怒られちゃうよ。」

「かまわん。」

「カマタ。オモロシイヒト、キタネ。」

「ぬっ。貴様が、バイエルンか!」

「ボクハ、パウエル。コレガ、カマタ。」

「俺は、天才桜木。こいつが、丸男。」

「僕は、河田。こっちが桜木君。こっちがパウエル。」

「サムラギとカマタ。」

「バイエルンと丸男。」

「桜木君とパウエル。」


正しいことをいっていたのは、河田だけだった。


「サムラギ。クレイジーヘア。」

「ぬっ。この天才を侮辱しおったな。」

「ダメだよ。桜木君。」

「丸男はだまっておけ。バイエルン!」

「パウエルデス。」

「俺は、天才バスケットマン桜木だ!よーくおぼておけよ!」

「テンサイバスケットマン、サムラギ。オボエマスタ!」

「俺は誰だ?」

「テンサイバスケットマン、サムラギ。」

「おっ、覚えが早いな。」

「テンサイ、サムラギ。」

「そうだ、うむ、いいスジしているぞ。」

「スジ?スシスキ。」

「寿司好きか!よし、今度スシくわせてやる!丸男のおごりで。ハッハッハ!」

「なんで、僕が・・・。」

「ハッハッハ!」

「ハッハッハ!」


その光景が湘北選手たちの眼に映ったのであった。



-----------------------------------------------------------------------








続く。

#00 【湘北 選抜編 目次】

2010-02-18 | #00 ご挨拶&目次
▲ 湘北 番外編 目次

-----------------------------------------------------------------------

#273 【選抜開幕】

#274 【沢北現る】

#275 【神海と名朋】

#276 【湘北初陣】

#277 【ギャンブル】

#278 【大吉】

#279 【精神的な成長】

#280 【青森酒田作戦会議】

#281 【コンタクト】

#282 【評価A】

#283 【青森酒田×湘北】

#284 【PG松山の実力】

#285 【主導権を取り返せ】

#286 【安西の作戦】

#287 【湘北の逆襲】

#288 【パウエル始動】

#289 【桜木始動】

#290 【てめーに任せた】

#291 【敗北感】

#292 【湘北のセンター】

#293 【ゴール下の勝負】

#294 【一筋縄】

#295 【簡単に負けるわけない】

#296 【復活の息吹】

#297 【エースで攻めろ】

#298 【立ちはだかる壁】

#299 【最強の敵】

#300 【願ってもない展開】

#301 【狂い始めた歯車】

#302 【2人のエース】

#303 【山王×神海】

#304 【大栄×名朋】

#305 【博多×喜多島】

#306 【洛安×湘北】

#307 【決勝の組み合わせ】

#308 【No.1プレイヤー】

#309 【最高潮】

#310 【ひょっこり福田】

#311 【決勝戦直前】

#312 【対戦者】

#313 【この差は縮まらない】

#314 【ぶっ倒す】

#315 【本物】

#316 【集中した俺】

#317 【流川の宣戦】

#318 【沢北の貫禄】

#319 【インサイド】

#320 【地味な選手】

#321 【華麗なパスワーク】

#322 【計算外の福原】

#323 【後半の前に】

#324 【ミス】

#325 【不思議な師弟関係】

#326 【待望の得点】

#327 【成長の証】

#328 【…せてやるよ】

#329 【俺のおかげ】

#330 【好調湘北】

#331 【締めるところ】

#332 【迫る影】

#333 【あの技】

#334 【山王ガードコンビ】

#335 【エースと呼ばれる選手】

#336 【全て】

#337 【溢れる想い】

#338 【変わらない4点差】

#339 【桜木の作戦】

#340 【機転?奇策?】

#341 【流川×沢北】

#342 【起死回生のリバウンド】

#343 【10番】

#344 【1%】

#345 【日本一の高校生】

#346 【奪取】

#347 【くらえ。山王。】

#348 【ラストプレーへ】

#349 【パッサ】

#350 【キセキ】

#351 【キャプテン】

-----------------------------------------------------------------------

▼ 大学 新人戦編 目次

#272 【いざ全国へ】

2010-02-17 | #10 湘北 番外編
「みなさん、お疲れ様でした。この合同練習は、私たちの想像をはるかに超えるものとなりました。
一人ひとりの成長が、チーム力を底上げし、より強いチームへと変えていきます。
この合同練習は、本日を持って、終了となりますが、これが最後ではありません。
全国大会や天皇杯が終了してもです。
みなさんは、まだまだ発展途上、今後も努力を惜しまず、個を磨き、チームを磨いてください。
みなさんの更なる成長を期待しています。」


安西と田岡を取り囲むように、両チームの選手が立っている。


「よくぞ、厳しい練習に耐えてきた。
全くの別チームが一つのコートで、ともに汗を流し、刺激し合い、成長し合った結果、
お互いが今までにない跳躍を遂げたと私は思っている。
今日を最後に、両校は、別の目標を成し遂げるため、別々の道に進むのだが、
私はまた、君たちとこうして、この体育館で会いたいと思う。
湘北が、そしてわれわれ陵南が、目標を達成できたその日、また一緒にやろう。
健闘を祈る。」




6週に渡り、行われた湘北・陵南の合同練習は、本日を持って、終了となる。


来週から、湘北は福岡に乗り込み、全国制覇に向けて、発進する。


陵南は、年始の天皇杯に備え、再び、血の滲むような努力を続けるのであった。



「越野君、一言どうぞ。」

安西が、陵南キャプテン越野に一言を促す。


「あっはい。正直、湘北は嫌いだ。態度も悪い、頭も悪い、無愛想。」


「なぬ!」

宮城らの眼が鋭くなる。


「だが、練習相手としては最高の相手だった。俺たちも必ず目標を達成する。
お前らもぜってー優勝しろよ!」


「ふん、小僧にいわれなくても!」


「ったりめーだ!湘北が優勝して、俺がNo.1キャプテンだ!」


「全員ぶっ倒して、俺が日本一になる!!」


(てめーじゃ無理だ。)


「その言葉、忘れるな!!」


越野と湘北の掛け合いは、両校のモチベーションをあげる最高のものであった。


そして。



「宮城もどうだ。」

今度は、田岡が宮城に促した。


「あぁ。俺は、正直、陵南がきれーだ!
うるせーし、軽いし、澄ましていやがるし、監督うぜーし。」


「なぬ!」


「だがよ、今は少しだけ感謝してるぜ!最後の大会に、最高の気持ちで挑めるのは、陵南と湘北のみんなのおかげだ!」


「リョーちん、がらにもねぇな!」

「宮城さんらしくないね。」

桜木と柳が微笑む。


「宮城さんたら。」

「リョータもだいぶ成長したわね。」

晴子と彩子も笑った。


「ありがとな。仙道。」

「こちらこそ。」

宮城と仙道が握手を交わす。


「なぜ、仙道だ、普通俺だろ!」

と越野。

「いや、仙道がキャプテンぽいだろ!」

「それをいうな!」


「わははは!」

「あはははは!」

宮城、仙道、越野のやり取りに、そこにいたみんなが笑った。


「流川、沢北を倒して来いよ!」


『バシ!』


「っつう。」


仙道は、流川に声をかけ、握手を求めると、流川はその手を叩いた。


「そしたら、またてめーと勝負だ。」

「あぁ、待ってるぜ。」にこり。


そして、桜木にも声をかけた。


「桜木、天才Cを証明して来いよ!」


『バチン!』


「っつう!」


桜木もまた流川同様に手を叩く。


「そしたら、てめーを倒しにくるぜ!」

「あぁ、楽しみにしているよ。」にこり。

「おうよ!」




こうして、6週間に及ぶ、計12回の合同練習は終了した。


安西は、個のスキルアップや、2on2、3on3を中心とした指導を行い、
田岡は、5on5を中心に、組織力のアップを図る練習を行っていた。


両校ともに、個人スキル、速攻やスクリーンプレーの向上はもちろん、
ゾーンディフェンスやセットオフェンスなど、試合における動きも県予選時よりも
完成度は確実に上がっていたが、
お互いが同じように、スキルアップしていったため、彼らには、その実感や手応えを感じることはなかった。


ゆえに、彼らがその実感を味わうのは、もう少し先となる。

また、期間中、両校では、多くの練習試合が行われた。


1ヶ月間、白田不在の湘北は、インサイドで陵南に圧倒され、湘北4勝、陵南10勝と大きく負け越していたが、
白田復帰後は、少しだけ盛り返し、最終的には湘北9勝、陵南13勝という結果に終わった。



陵南高校からの帰り道。

宮城と彩子の2人が先頭を歩き、その後ろを桜木らが歩いていた。


「おい!ヤス!なんか、あの2人、いい雰囲気だな。少し、邪魔し・・・。」

「ダメだよ、桜木!せっかくなんだから、もう少しあのままにさせてあげなよ!
桜木だって、晴子ちゃんとのを邪魔されたら、いやだろ?」

「うむ。確かに・・・。しょうがねぇな。」




宮城と彩子の会話。

「アヤちゃん、さっきはあんなこといったけど、本当は俺、自信がな・・・。」

「リョータ!また、そんなこと言って!!それじゃ、IHのときと同じじゃない!
キャプテンのあんたがそんなんでどうするの!!」

「アヤちゃん・・・。」




「なんかリョーちん、怒られているみたいだな。」

「いいの!ほっといてあげろって。」

桜木が楽しそうに、宮城らの様子を伺っている。




「あんたは、相手をバカにしているくらいが丁度いいの!わかった!!
また、弱気なこといったら、怒るわよ!!」

宮城はIHを思い出す。

「・・・。そうだな。もうIHのときのようなことは、まっぴらだ!ありがとう、アヤちゃん!」

「そうよ、あんたはキャプテンなんだから、自分だけじゃなく、みんなも盛り上げるのよ!いいわね!」

「あぁ!それに、アヤちゃんと挑む最後の大会だ。全国制覇して、最高のプレゼントをアヤちゃんにあげるぜ!」

「ふっ、その意気よ。ただ。」

「ただ??」

「これは最後の大会じゃない・・・。」

「なんだよ、それ?」




「また、リョーちんが落ちた!」

「桜木君!」

「ハルコさん!」

「邪魔しちゃダメよ!」

「はい!!」




「リョータにはまだいっていなかったけど、あたしは、将来スポーツジャーナリストになるのが夢なのよ。」

「はっ初耳・・・だ。」

「だから、学生のうちに、もっとスポーツのことや、体のことを勉強しようと思っているの。」

「うん。わかった。でも、それと大会、なんの関係があるの?」


「あたし、神奈川体育大学が第一志望なのよ。」


「神奈川体育大学!!!アヤちゃん、それって!」


「そう、リョータと同じ大学よ。」

「マジかよ!!アヤちゃんと同じ大学かよ!!」




「おっ!リョーちんが一気にハイテンションになった!告白が成功したか!」

「ホント?ホントだったら、嬉しいな!!」

「晴子ちゃんまで、のらないの。」

叱る安田。




「あたしは、一般だから、まだ決まったわけじゃないけど、そうなってほしいわ。
そうしたら、マネージャーは出来ないけど、試合の応援にはいくから。」

「うぉーーー!!アヤちゃん、俄然やる気が出てきたぜ!!
ぜってー、選抜で優勝して、大学でも優勝してやる!!」




『ガシ!』


「リョーちん、やけに楽しそうだな!」

溜まらず、宮城の肩を抱く桜木。


「花道!!ぜってー優勝するぜ!!俺はアヤちゃんに、花道は晴子ちゃんに最高のプレゼントをするんだ!!」


「トーゼン!!!」


「走るぜ!花道!!」

「おうよ!!」


(リョータ、頑張ってね。)

その2人の姿を、彩子は嬉しそうに見つめるのであった。


「彩子さん、OKしたんですか?」

「ちっ違うわよ。そんな話じゃないわよ。」


翌週、湘北高校バスケットボール部は、福岡に乗り込んだ。







#10 湘北 番外編 終了
#11 湘北 選抜編 に続く。

#271 【代表2】

2010-02-16 | #10 湘北 番外編
彦一による全国強豪校のレクチャーが続いている。

練習開始まで、残り30分。



-----------------------------------------------------------------------


■愛知県代表 【名朋工業】


決勝戦で、全国の常連校愛和学院を粉砕した名朋工業が、2度目の全国制覇に名乗りをあげる。

愛和学院の織田さん、今村さんとともに、国体優勝を果たした森重君は、いまや最強Cの呼び声が高い。

昨年IHを制覇したPG中島さん、SF大石さんも最後の大会とこの大会にかける情熱はひとしおや。

準決勝で、山王とあいまみえることとなったが、正直どっちが勝つかわからへん。

再び、全国を制覇してもおかしくない最要注意校や。


★★★★★★★★★☆


-----------------------------------------------------------------------



『ビシ!』


「ぬわ!なにすんですか?桜木さん!!」


「デカ坊主が最強Cだと!!」

「では、俺はなんだ!!」


「!!」


(森重君を最強と謳ったもんやから、怒ってはるんやな。)


「さっ桜木さんは、天才Cや!」


「天才C・・・。ふむ、その通りだな。ちゃんとわかっておるではないか!ハッハッハ!!」


(ふー、うまく逃げれたで。)


(単純・・・。)

体育館にいる全ての人間が思った。



-----------------------------------------------------------------------


■大阪府代表 【大栄学園】


昨年ベスト8、IHベスト8の強豪校。

昨年のスタメンに名を連ねたPGの桜井さん、PF青島さんを中心にまとまったチーム。

大栄学園伝統のバランスオフェンスも健在や。

爆発力はあらへんが、底力は最上位クラス。非常にやっかいな存在。


★★★★★★★☆☆☆


-----------------------------------------------------------------------



「大栄はまた名朋のブロックっすね。」

「リベンジといけますやろか?」

「森重をどこまで抑えられるか、勝負の行方を左右するのは、この1点だな。」

「ダイエーにはデカ坊主は抑えられん。あいつを抑えらるのは、俺くらいだ!!」

「でも、国体のとき、桜木はこの大栄陣に巧く抑えられていたよな?」


「ぬっ。」


「そうや。大栄の鉄壁な2-3を用いた大阪代表に、桜木さん手も足も出てへんかった!
もし、あのディフェンスが更にようなっとってたら、もしかするで。」


「おのれ、彦一!余計なことをいいおって!!天才の裁き!!」


『ビシ!』


「いったーー!!」

桜木の理不尽なチョップが彦一の頭に炸裂した。


「ほんまのことゆうただけやのに・・・。しかも、2連続やで・・・。ぐすん。」



-----------------------------------------------------------------------


■沖縄県代表 【神海】


フリースタイルのバスケットボールを展開する新しい形のチームや。

アメリカ人との混血選手が3名、スタメンに名を連ね、平均身長190cmと今大会最も高いスタメンとなった。

デビット・平良、ケビン・比嘉、知念裕樹ジュニアの3人が、インサイドを支配し、
得点、リバウンドを量産する。

個人技、オフェンス主体のチームのため、ディフェンスに問題ありや。


★★★★★★★☆☆☆


-----------------------------------------------------------------------



「個人技主体のチームか、この桜木を中心にまとまった湘北の敵ではないな!」


「いや、花道中心じゃねーし。」

「むしろまとまってねーし。」

「バラバラ・・・。」

桜木に、宮城、柳、流川の順で突っ込む。


『ピクピク!』


「ぬっ!沖縄3兄弟はこの桜木が叩き潰してやるぜ!」


「いや、花道一人じゃ無理だし。」

「むしろ叩き潰されそうだし。」

「どあほう・・・。」

再び、桜木に宮城、柳、流川の順で突っ込んだ。


(山王ブロックだし、たぶん当たらないから・・・。)

冷静な白田。


対する桜木。


『ピクピク!』


『プチッ。』


「こらぁーー!!流川!!表でろーー!!!」

怪獣のように暴れる桜木を安田らが必死に止めている。


「ガルルルルルル!」


(なぜに流川さんだけにキレる??)

不思議がる白田。


(どあほう。)

「ふぅーー。」

一呼吸置いて、流川はシュート練習に入った。


『スタスタスタ・・・。』


「おのれーー!!!流川!!!!」

それから、5分間桜木の興奮は収まることはなかった。



「以上が、注意すべき全国の出場校となっております。
そして、これが姉ちゃんの週刊バスケットボールの寸評と注目選手です。」

そういうと、彦一が再び、A4用紙を配った。



-----------------------------------------------------------------------


AA 【山王工業】 沢北出場で優勝候補筆頭。4連覇に視界良好。◎沢北栄治


AA 【名朋工業】 最強C森重の調子次第で、逆転優勝も可能。◎森重寛 


A 【青森酒田】 パウエル加入により、一気に全国強豪クラスに。◎B・パウエル


A 【博多商大附属】 ホームの利を生かし、全国制覇にあと一歩。◎井上幸水


A 【湘北】 IH覇者の陵南を破った力は本物。再びキセキを起こせるか?◎流川楓


B 【喜多島】 抜群のスピードを誇る北陸の新勢力◎速水かける


B 【大栄学園】 ディフェンス能力は随一。得意のスローテンポに持ち込めば。◎桜井丈


B 【神海】 スタメン平均身長190cmは脅威。個人よりチームを優先したい。◎D・平良


-----------------------------------------------------------------------



「なんだとーー!!天才バスケットマンことリバウンド王の桜木を差し置いて!!なぜ、流川だーー!!」

しばらく大人しくしていた桜木が再び吼える。


「なんだとーー!!No.1ガード、No.1キャプテンの俺を差し置いて!!なぜ、流川だーー!!」

宮城も桜木同様に吼える。


「なぜに、流川なんだ!流川ぁーー!!」

2人が同時に流川を呼びつける。


『クル。』 


シュート練習をしていた流川が振り向く。



「ふぅーーー。」

2人を見て、ため息をついて、再びシュート練習を再開した。


「ごらぁ!!無視すんな!!!」

息の合った宮城、桜木。


「あはっ。面白いな。湘北は。」

笑う仙道。


「なんでこんなめちゃくちゃのチームに負けたのか、納得できねぇ。」

と越野が呆れる。


(俺も名前が載りたい。)

福田が静かに思った。


(やれやれだぜ・・・。)

流川は澄ましてシュート練習を続けていた。


「まぁまぁ、宮城さんも桜木さんも、練習前やし、そんな怒らんといてください。」


「ぬっ!!」

「あっ!!」


『ギクッ!』


「もとはといえば、てめーの姉ちゃんが書いた記事じゃねぇかよ!!」

「そうだ!リョーちんのいうとおりだ!!悪いの彦一だ!!」


『ビシ!!』


『バシ!!』


「いったーーー!!」

再び、宮城と桜木から、理不尽な暴力を受ける彦一であった。


「ぐすん。わいが悪いんやないのに・・・。しかも、4回もはたきおったで・・・。ぐすん。」








続く。

#270 【代表】

2010-02-12 | #10 湘北 番外編
-----------------------------------------------------------------------


■青森県代表 【青森酒田】


今年、全国初出場となる青森県代表青森酒田高校。

IH後に、セネガルより、身長202cmのCバリス・パウエルを留学生として迎え、
秋季に行われた東北大会にて、前代未聞の事件が起こった。

準決勝 秋田県代表山王工業を7点差で破る快挙を達成し、東北大会を初制覇。

パウエルは、山王柳葉君を抑え得点王、同じく山王河田美紀男君を抑えてリバウンド王、
そして、MVPの3つの称号を得た。

間違いなく、山王工業と肩を並べる強豪校として、脅威的な存在となった。


★★★★★★★★★☆


-----------------------------------------------------------------------



「山王に勝ったチームがあったんや!!」

驚く彦一。

「いや、俺たちも去年勝ったぜ!」

と桜木。

「俺たちも優勝した。」

福田もいう。

「違いねぇ。」

宮城が締める。


「彦一、きた、いや沢北は、その東北大会に出場していたのか?」

「えーと、沢北さんはアメリカ留学中のため、出場していません。
今回の選抜県予選も出場していませんでした。」

彦一は、仙道の問いに答えた。


「うーん。そうか・・・。それじゃ、一概に山王より強いとは言えないな。」

「関係ねぇ。全員、ぶっ倒すまでだ!」



「彦一!それ、週バスで見たぜ!」


「俺も!」

「俺も!」


「なんやて!!」

「なぬ!」

結局、青森酒田の快進撃を知らなかったのは、宮城、桜木、仙道、福田、彦一の5名だけだった。


(しまった。小遣いなくて、週バス買えへんかったときか・・・。えらい恥かいてしまったで。)



「他の出場は、どんなふうになってんだ?」

宮城が聞いてみると、

「よくぞ聞いてくれました!!次のページを開いてみてください。」

彦一は、宮城らに資料の2ページをめくらせた。



-----------------------------------------------------------------------


■秋田県代表 【山王工業】


2年エースSF柳葉敏、同じく2年生Cの河田美紀男を中心に、4連覇を狙う山王工業。

東北大会では、まさかの第3位という結果に終わったが、
秋田県予選では、全試合100点ゲームを展開し、王者の貫禄を見せた。

いまや伝説のSFと呼ばれている沢北栄治さんは、今回またしても予選には出場せず、
本大会からの出場と予想されている。

その沢北さん抜きで、IH準優勝ということを考えると、やはり今大会も優勝候補筆頭や。

沢北さん不在の山王をまとめ上げるのは、キャプテンのPG加藤さん。

深津イズムを継承した加藤さんは、若いチームの精神的な支柱になっている。

現時点で、PG、SF、Cで最高ランクの選手が揃っているとゆえる。


★★★★★★★★★☆


-----------------------------------------------------------------------



「ヤマオーか。丸男とは、4回目の戦いだな。」

「兄雅史さんとは違い、1年時からCの動きのみを叩き込まれた美紀男君のポストプレーは、
誰も止めることができないといわれていまっせ。」

「ふん、この天才桜木がとめてやるぜ!」

「ですが、桜木さん。美紀男君は、今212cmに達したとか・・・。もう壁でっせ。」

「ぬっ!デカけりゃ、いいってもんじゃねぇぜ!!」


(沢北。)

と流川。


「今回でどっちがNo.1ガードか最後の決着をつけてやる!」


(どっちにしても、俺が。加藤を!)


(沢北を!)


(丸男を!)


(とめれば、勝てる!!)

宮城、流川、桜木が同じことを思っていた。



-----------------------------------------------------------------------


■福井県代表 【喜多島】


IHベスト8に食い込んだ北陸の新勢力。

平均身長182cmと小柄なチームだが、そのチームスピードは、群を抜いている。

「足を使い勝つ」という典型的なチーム。

全ての選手が外角を得意としている厄介なチームともゆえる。

喜多島に勝つためには、走り負けへん体力が必要や。


★★★★★★★☆☆☆


-----------------------------------------------------------------------



「IHで対戦したときは、もっと高かったような気がしたんだけど。」

と植草。

「それは、3年生です。今大会、3年生は全員引退し、2年生だけで県予選を勝ち抜き、全国出場を決めてきました。
若いチームですが、侮れまへんで。」


「スピードと体力勝負ね。是非、戦いたいな。」

と柳が少し微笑んだ。

「でも、相手が博多じゃ、勝ち上がるのは難しいだろうな。」

上杉が答えた。


その喜多島がベスト4をかけて戦うことになる博多商大附属。


「新庄のダンナが抜けても、レベルが落ちねぇとは、ホント層の厚さに驚かされるぜ。」

宮城は、新庄の在籍している神奈川体育大学に推薦が決まっている。

そのため、初対面した県予選準決勝から、敬意を込めて、新庄のダンナと呼んでいた。



-----------------------------------------------------------------------


■福岡県代表 【博多商大附属】


九州で磐石なチーム力を誇る博多商大附属。

去年の徳永さん、牧瀬さん、新庄さんのようなビッグ3はおらんが、その分チームが組織だっており、
基本に忠実な、堅実なチームと変貌した。

IHは、新チームの完成度も低かったが、夏以降、着実に力をつけ、その勢いは、九州のみならず、本州も脅かす。

ホームというアドバンテージもあり、昨年2位のリベンジを果たしたい。


★★★★★★★★☆☆


-----------------------------------------------------------------------



「ラーメンやろうたちだな。この桜木が、また食い倒してやろう。ハッハッハ!」

「ネーミングがださい。」

と福田。

「なぬ。フク助の分際で。」

「ぬっ。福田さんと呼べ。先輩だ。」

「ふん。」


「どあほうが2人。」

流川が小声でボソっといった。


「うるせー!負けキツネ!」

怒鳴る桜木。


「俺に勝ったからといって、いい気になるな。」

1on1の敗戦を未だに根に持つ福田であった。








続く。

#269 【対戦校】

2010-02-10 | #10 湘北 番外編
週末限定の湘北・陵南の合同練習が始まってから、1ヶ月が経過した。


湘北では、白田も復帰し、全員揃っての練習参加となっていた。


両校が、お互いを意識し、刺激し、「昨日よりも今日、今日よりも明日」というように、貪欲にバスケットに打ち込み、
両校の選手は、着実に成長をしていた。


安西の発案により、実現した合同練習は、狙い通り大成功といえた。

そして、田岡もまた納得のいくものであった。



湘北で行われた日曜日の練習後のミーティング。

「彩子君。あれを。」

「はい。晴子ちゃん、ちょっと手伝って。」


安西の指示に、彩子と晴子が、大きな模造紙を体育館の壁に貼り付けた。


「おおぉーー!!」

湘北、陵南選手、ともに声が上がる。


「見てのとおり、選抜のトーナメント表です。」


『カキカキカキ・・・。』

彦一が早速マル秘ノートに書き写す。

「ふむふむ。そうか、そうか。これは凄いで。要チェックせなあかん!」


「いい組み合わせだな。」

と越野。

「順調にいけば、決勝まではいけそうっすね。」

と山岡。


「山王と名朋は、反対のブロックか。」

と宮城。

「けっ、両方ともぶっ倒してやろうと思ったが、残念だぜ!なぁ、ハクタス。」

「そうですね。ダブルリベンジは、また次回。」

「とりあえず、決勝で勝ち上がってきたほうを倒しましょう。」

「おうよ!」

桜木が柳に答える。


「沢北は、決勝までおあずけだな。早くやりたかったろ?」

「順番は関係ねー。全員ぶっ倒すまでだ。」



「安西先生、今回は組み合わせに恵まれましたね。」

「知名度を優先するならば、そう考えられるかもしれません。
ただ、全国には埋もれた選手がたくさんいます。油断はできません。」

「そっそうですね。」

(しっしまった。指導者という立場であるのに、安西先生を前でなんたる失言を・・・。)


「湘北の諸君!組み合わせに恵まれたからといって、油断はしてはならんぞ!!」


「??」

「あっ!?」


「なにいってやがる。じじい!」

「油断なんかしてねぇよ!」

噛み付く桜木と宮城。


「どんな選手がいるかわかりませんからね。」

と柳。


「どあ・・・。」

流川はすんででとめた。


「なっ!!」

(再び、失言!!)

そっと、安西を見る田岡。


「ほっほっほ。」

にこやかに笑っている。

(私としたことが・・・、不覚。)




第39回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会


12月下旬の1週間ほどで行われる全国大会であり、高校バスケ3冠最後の大会である。

前回の東京大会は、山王工業が決勝で博多商大附属を撃破し、3連覇を果たした。

3位には、愛和学院、そして、4位には、神奈川県勢の海南大附属が名を連ねた。

今回は、九州に場を移す。

全国大会出場連続25年 九州の雄 博多商大附属のホーム福岡県で行われる。



注目の組み合わせ。



神奈川代表は、2回戦から姿を現すことになる。

下馬評どおりなら、3回戦で青森県代表 青森酒田高校と対戦することとなる。

その後、1つの試合を勝利すると、ベスト4となり、逆サイドから、博多商大附属が勝ち上がってくると考えられ、
反対ブロックでは、山王と名朋の勝者が、決勝に進出するとの大方の予想であった。




翌週。

陵南高校の体育館。


合同練習のため、湘北が陵南高校を訪れていた。

練習が始まる1時間前。

安西と田岡の姿はまだない。



「えらいこっちゃ!えらいこっちゃ!!」

彦一は、焦っていた。

「今日は、ちゃんと報告するで!!」


体育館に来るなり、彦一は大声でみんなを集める。

「宮城さん!宮城さん!聞いてもらってええですか?」

「なんだ?彦一!?そんなに大騒ぎしやがって!!」


「騒々しいぞ!」

越野が一喝する。


「調べさせてもらったんですわ!!
とりあえず、3回戦で対戦することになるであろう青森酒田をそうしたら、えらいことがわかったんや!!」

「早く言え!彦一!!」

と桜木。

「はい!!まずは、これを見てください!!」



湘北、陵南選手に配られるA4用紙。

そこには、こう書かれている。



【彦一 極秘資料 湘北勝利への道!! 全国大会編】 



これは、彦一が昨年海南のためにも作成した、選抜大会湘北用の対戦相手の資料であった。








続く。