うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#367 【仙道追撃】

2010-09-30 | #12 大学 新人戦編
横学 40
白金 48




「土屋め。」


「黒木。土屋さんには、もっと強く当たっていいぞ。先輩だからって遠慮はいらない。」

「はい。」


「三井さん。流れを掴みかけています。勝つためには、ここで掴まないと。」

「あぁ。わかってるぜ。」



「俺にボールを。」



「そういうと思っていたぜ。だが、厳しいときには戻せ。お前のバックには、俺が必ずいる。」


『コク。』




横学大のオフェンス。


『ダム。』


『ダム。』


ゆっくりと静かに弾むボール。


キープしているのは、三井。

神は高い位置で守り、三井にシュートチャンスを与えない。



『ガツ!』



仙道が長い足を利用し、牧の前で面を取る。



(任せたぜ。仙道。)



(やはり、仙道か。)



「・・・。」

仙道から凄まじい気迫が感じられる。



『パス。』


ボールが渡った。




「うわぁーーー!!」

「仙道!!!」

「いけーーー!!!」

「止めろ!牧ーーー!!」




「仙道。まだ越えさせない。」


「越えてみせますよ。今ここで。」



『キュッ!!』


『キュッキュ!』



仙道の大きなピボットで、牧を動かす。



「ふぅ。」



(来る!!)



『ダム!!』



仙道のドリブルが、白金リングに襲い掛かる。



「!!!」


「!!!」



パワーの牧に対し、スピードの仙道。



だが、仙道は力強く、牧に挑んだ。



『ダム!!』


『ダムッ!』



(ぐっ!)



激しい攻防。



『ダッダム!』



仙道の低く速いドリブルがつかれたとき、牧の重心がわずかにぐらついた。


その瞬間を仙道は見逃さない。



『キュ!』



牧の脇をえぐる。




「抜いたーーーー!!」

「牧を抜きやがったーーー!!」




(牧を抜きおったで!)


土屋が牧のカバーに向かうが間に合いそうにない。


そのとき。



『バッ!!!』



仙道の前に、立ちはだかる一人の男。



「粕谷が止める!!」



「こいよ。」にや。



「!!!」



「仙殿!勝負!!!」



「・・・。」にこ。



仙道は笑いながら。



『ダン!!』



跳んだ。



「・・くな!!」

「スト・・!!!」

「・て!!」



牧と土屋、そして神が叫ぶが、粕谷の耳には入らない。



「トゥーース!!」



『ドン!』



粕谷の厚い胸板は、仙道と接触した。



そして。



次の瞬間。



『ガァシャン!!!!』



仙道のワンハンドダンクが炸裂した。



響き渡る笛の音。



『ピィーーーー!!』



「バスケットカウントーー!!」




「うぉぉぉーーー!!!」

「バスカン!!!!」

「粕谷をものともしない!!」

「さすが仙道だーーー!!」

「牧も粕谷も交わしたーーー!!!」

「凄すぎる!!!」




「はぁはぁ。仙トゥース。」

一種の興奮状態の粕谷。


「・・・。」にこ。

見つめる仙道。


「!!!」


粕谷は、仙道の誘いに乗らされたことを今初めて知った。


仙道もまた土屋に触発されたのであった。



「仙道ーー!!!」

「よくやったー!!」


(やりやがった!こいつマジですげー!!)


「どーも。」



「粕谷。ドンマイ。オフェンスで獲り返そう。」

「終わったことは引きずるなよ。」

「トゥース・・・。」



仙道は、きっちりとワンスローも決めた。

白金の要、1on1から牧を抜き去り、
スナイパーの如く、3点、粕谷のファウル、そして流れを奪ったかに見えた。



だが。



三井、仙道の思惑を越える展開が待っていた。




第3Q 2分経過。

横学 43
白金 48







続く。

#366 【土屋触発】

2010-09-29 | #12 大学 新人戦編
横学 38
白金 46




横学大の逆転への狼煙が上がった。


秋田から三井へボールが渡る。




「やはり、三井がPGだーー!!!」

「面白くなってきたぞーー!!」




『ダムダム!』


三井がゆっくりと白金コートに足を踏み入れる。


白金のマークは変わらない。

三井の前には、神。

そして、仙道には牧がついている。




「これは厄介ケロ。」

「えぇ。牧君がPGの仙道君を抑えることが出来ても、Fの仙道君を抑えることができるかはわからない。」

「飽きない試合だぜ。」




『ダムダム!』


トップの三井。



(三井さんは、わずかなスペースでも必ず打ってくる。スペースだけは作らせてはならない。)

三井にシュートを打たせない、ドリブルで抜かれないギリギリのラインで守る神。


(相変わらず、嫌な間合いを取ってくるぜ。)



秋田が開く。


品川がローポ。


ハイポに仙道。



『パシ!』



三井の選択。



仙道へのパス。

牧を背中に背負いながら、仙道はボールを手にした。




「仙道だーー!!」

「牧!抑えられるか!!」




『クル。』


素早い回転。



『ザッ!』


ワンフェイク。



『ダム!』


ワンドリ。



流れるような仙道の動き。

一瞬にして、ゴール下まで詰め寄った。


だが、一連の動作に、牧は完璧に対応していた。



「甘い。」


(さすが。)



『ビィ。』


仙道は、咄嗟にハイポにパスを戻した。

そこには、仙道と入れ違うように、ローポから上がった品川がいた。



『パス。』



(OK!)



『キュ。』



トップの位置から三井が動いた。



「!!」



品川からのハンドトスを受け取る。

神は、品川と三井に阻まれ、進路を失った。




「巧い!!」

「ナイスコンビプレーだ!!」




三井の前に荻野。


『サッ!』


ワンフェイクからのステップイン。



『シュパ。』


あっさりとゴールを沈めた。




「いいぞ!!三井ーーー!!!」

「6点差!!!」

「三井いけーーー!!!」

「いけるぞ!!横学!!」




三井の活躍に会場がにわかに活気立つ。




「やるね。三井君。」

「3Pだけの男ではないというわけだ。」

「仙道が巧く牧を引き付けたおかげだな。」

と深体大。




「いいぞ。三井。」

「あぁ。いけるぞ。」



その光景を冷静に見ていた土屋。

(三井寿。予想以上のええ選手やないか。)




横学 40
白金 46




白金の反撃。

牧には三井が変わらずについている。


「もう1本、いただくぜ。」

「1本止めただけで、勝った気になるなよ。」

「2本だ!」



『ビィ。』


「!!!」


牧からハイポにボールが放たれる。

白金の仕返しは、同じハイポから。



『パン。』


受け取った土屋。



「黒木!」

「はい。」



『シュッシュ!』



土屋は、フェイントで黒木を左右に振った。



『ダム!!』



抜き去る。


インサイドの秋田が詰める。



『ビュン。』



土屋は、素早くバックビハインドパス。



『パシ。』



「決めろや!」



ゴール下で粕谷が受け取った。

粕谷にとって、この日最初のシュートチャンス。

だが、目の前には横学の巨壁品川。



『シュ!!』



粕谷は、品川に体を寄せる力強いシュート。

単純な力、高さ勝負。



「!!!」


「うぉーー!!」



『バチ。』



品川がボールに触れた。


「うっ。」




「ブローーーーックーーー!!」

「品川に挑むのは無謀だーー!!」




「・・・。」


折角のシュートチャンスを生かせなかった粕谷。

ボールは、ルーズとなって、舞い上がった。



『バチン!!』



「!!!」


「!!!!」



そのルーズボールを軽やかに奪ったのは、土屋であった。


ここまで目立つことはなかったが、勝負どころで得点を奪い、アシストを決め、
最高級のバランサーとして、チームを巧く機能させていた。



「ナイスリバン!!」

「土屋!!」



土屋はわずかに、牧と神を見た。


結果、三井と仙道にパスアウトを意識させ、彼らは牧と神のマークが外せなくなった。


土屋の隠れたファインプレー。



そして。



『ダム!』



ワンドリで勢いをつけると。



『ドガァ!!』



目の前の品川を相手にしない力強さで、ワンハンドダンクを決めた。




「土屋のダンクだーーー!!」

「うわーー!!!」

「決めてきたーーーー!!」

「高い!!」

「品川をものともしなかった!!」




この日、土屋は初めて、力技で決めてきた。



「・・・。」

無言の品川。


「・・・。」

無言の粕谷。


「やるな。」

と微笑む牧。


「さすが。」

と神。



「粕谷。ゴール下のシュートっちゅうもんは、こうやってするもんや。」


「トットゥース!」


(三井、仙道に触発されてもうたわ。)にこ。



白金を陰で支える最高のバランサーが表舞台に上がった。




横学 40
白金 48







続く。

#365 【三井始動】

2010-09-27 | #12 大学 新人戦編
横学 35
白金 46




第3Q開始。

横学大ボールで開始された。



『ダムダム!』


ドリブルの音が聞こえる。


と同時に大きな歓声。




「うぉぉぉーーーー!!!」

「わぁぁぁーーー!!!」

「えぇーーーー!!」




「奇策に出たか。」

「PGの道は、1日にしてならずケロ。」




「赤木、あれは確か。」

「あぁ。海南との練習試合のときに見せたな。」




『ダムダム。』



トップでボールをついているのは、三井であった。


(ボールが持てねぇなら、初めから持っていればいいこと。)にや。


(PG三井か。面白い。)

牧の不敵な笑み。


白金のマークマンの変更はない。

三井に神、仙道に牧、黒木に土屋、秋田に粕谷、そして品川に荻野。

ハーフマンツーで、横学大を止める。



『キュ!』


『ダム。』


黒木と秋田が動く。

品川が面をとる。

そして、仙道が動いた。




「三井がPGってどういうことだ!!」

「仙道が点を獲るのか!?」

「それなら、峯浦いれておけばいいだろう!!」


半信半疑でコートに視線を注ぐ観客たち。




『キュ!』


仙道のVカット。


『クル。』


方向転換。



『ダムッ!』


三井のドリブル。



「スクリーンだ!」


「!!」


『バッ。』


仙道の最初の選択は、自分で得点を決めるのではなく、三井への体を張ったプレーであった。


第2Qタイムアウト後も、自分ではなく三井を使った。


仙道は、理解していた。


このチームで誰が得点を獲れば、流れを引き寄せられるかを。


誰がノれば、白金に勝てるかを。


仙道のスクリーンによって、ほんのわずかな隙間が三井と神の間に生じた。



『シュ!』



躊躇なく放たれる三井の3P。



力強く、豪快に。



『ザシュ!!!』



ネットを揺らした。



それは、まるで反撃の狼煙のように見えた。




「うわぁぁーーーー!!」

「三井がいきなり決めてきたーーー!!」

「すげーーー!!」




「ナイッシュです。」

「いいスクリーンだったぜ。」



「あのわずかなスペースで打ってくるか。」

「なんの躊躇もなかったです。相変わらずの強気ですね。」

(綺麗なシュートやな。)

眺める土屋。




横学 38
白金 46




「さすが三井だな。赤木も嬉しいだろう?」

「フン。あの程度、決めて当然だ。」

「素直じゃないな。」

苦笑う藤真。


「あぁ、俺も決めていたぜ。」ずーん。

と諸星。




続く、白金のオフェンス。


「そう来るか。」

「三井で抑えられるか。」

「意外にいいかもね。」

「湘北のやつらは、みんなそんなやつばっかりだったケロ。」

と深体大。




「牧に三井だーーーー!!!!」

「仙道は神についたーーーー!!」

「なんか横学が凄い作戦だぞーーー!!!」




「いつぶりだ?」

「2年前以来だな。」

「がっかりさせるなよ!!」

「さぁ来い!!打倒牧は俺が果たす!!」


牧に三井がついていた。

仙道のリバウンド参戦を考えた結果であった。



『ダムダム!』


牧のドリブルに必死についていく三井。


『ダム!』




「キラークロスオーバー!!」

「抜かれたーー!!」




『キュ!』


「!!」


「まだだ!!」

「面白い。」にや。



牧の初動を止めた三井。

だが、牧はすぐさまノールックパスを放った。



『シュ!』



『チィン!!』



「なに!!」


「2度目だぜ!!」



三井の直感が牧に勝った瞬間であった。


牧から粕谷へのノールックパスを三井がわずかに触れた。



『パシ!』



ホップしたボールを秋田が奪った。



牧の単純なミスなのか。

ノった三井のファインプレーなのか。

どちらにしても、白金のオフェンスが失敗に終わったことに変わりはない。



三井を中心にじりじりと横学大が、白金の背後を捉えようとしていた。



(三井・・・。昔のように、センスだけじゃ片付けられる存在ではなくなったか。)



(追いついてやるぜ!!白金ーーー!!)




横学 38
白金 46







続く。

#364 【離れる点差】

2010-09-22 | #12 大学 新人戦編
横学 29
白金 39




横学大の速攻。



牧に挑む仙道。



空中高く舞い上がった仙道の体は、まるで宙に浮いているようであった。



ファウル覚悟か。



鬼気迫る牧の表情。



その瞳には仙道のみが映る。



仙道も同様であった。



お互いにパスの選択肢はなかった。



ボールは・・・。



仙道が右手で掴んでいる。



振り下ろすコースを狙っている。



「!!!」



(ここだ!!)



牧が両手を高く真っ直ぐに掲げていた。



『グルンッ!!』



仙道は、右手で掴んでいたボールを高い位置から一気に下げた。



『パン。』



そして、ボールを左手に持ち帰る。



『シュ!』



限界まで左腕を伸ばし、牧の脇から優しく放り上げた。



鮮やかなダブルクラッチ。



ボールは、牧の視界から消えた。



『クル。』



リングを半周。



『スト。』



吸い込まれるように、リングを通過した。



『ダッ。』

『ドン。』


同時に着地する両者。



「ふぅーーー。」

息を吐く。




「入ったーーーー!!!」

「仙道が牧を超えたーーー!!!」

「なんていう滞空時間の長いシュートなんだーー!!」

「すっ凄すぎる!!」

「鮮やかーー!!」




「・・・。」

無言の牧。


「・・・。」にこ。

微笑む仙道。


「勝負はまだまだあるからな。」

「しんどいですね。」にこ。




横学 31
白金 39




「おい!神!少しは、俺の見せ場を作れ!!」

「横学で一番ノらせてはならないのは、三井さんですから。」

「おっ。わかってるじゃねぇか。」

少し嬉しそうな三井。




「半端ない滞空時間だな。すげーな。」

と苦笑う徳永。

「河田君。顔が笑っているよ。」

「うは。あいつと勝負がしたい。」

「これで、流れは変わりますかね。」

と加藤。

「まだ変わらないケロ。」




深津の読みは的中した。


仙道が牧を交わし決めた1本で、流れは横学大に向くかと思われたが、
次の白金のオフェンスで、土屋があっさりと追加点を決めた。

確実に、手堅く、そして冷静に点を重ねる白金。

そのプレーには、まだ余裕さが感じられた。



精一杯の力で点を獲る横学大。

そして、なおも神に抑えられている三井。

点差は、縮まるどころか離されていく。




第2Q終了。

横学 35
白金 46




「くそう。神のやろう!!」

活躍の場のない三井。

フラストレーションは溜まる一方であった。


「・・・。」

仙道も大粒の汗を流している。




「よし!このまま、いくぞ!!!」

白金ベンチ。

気合十分であった。


一人を除いては・・・。

(獲れてない・・・。)



粕谷、出場4分。

0得点。



「粕谷。大丈夫。チャンスはすぐにくるよ。」

「粕谷にパスをくれ。粕谷にパスを・・・。」

「あはっ。」

神は笑うしかなかった。




「そういえば、品川、あの言葉誰から聞いたんだ?」

「ん!?」

「リバウンドを制するものは、試合を制すってやつだ。」

「桜木だ。意外にも胸打つ言葉をいったんで、覚えてるんだよ。」

「あぁ?ありゃ、桜木の言葉じゃねぇぞ。」

「な!?」


「高校時代のチームメイトの赤木ってやつの言葉だぜ。」


「なんと!俺は騙されたか?どうりで桜木にしてはいい言葉だと思ったんだ。」

「あぁ。たぶん、赤木ならこの会場のどこかにいるぞ。ゴリラそのものだから、すぐにわかる。」



『キョロキョロ。』



「ゴリラ・・・。」


会場を見渡す三井。




そのころ、観客席の一番後ろで試合を観戦していたゴリラ顔と呼ばれた赤木は。



「ぶっはっくしょん!!」

「風邪か?」

「いや。問題ない。」

(ちぃ、よからぬ噂か。)

過敏に反応していた。


「あの仙道とかいうやつ、牧相手にいい勝負してるじゃねぇか。」

と諸星。

「俺は、1年では最強の選手とみている。」

「最強ねぇ。実際に勝負してねぇから、なんともいえねぇが、俺は負けねぇ!」


「牧の存在感も相変わらずだな。」

と野辺。

「いや、ますます強くなったな。」

「勝てるか?」

「ふっ。」

藤真は、言葉を発せず笑うだけであった。


「神に比べ、三井はどうしたんだろうな?シュートさえ打ててない。」

と野辺。

「フン。だらしない男だ。」

(なにをやっておる。貴様の力は、そんなもんじゃないだろ。)


そこには、慶徳大学のバスケ部の面々の姿があった。




再び横学大ベンチ。


(こうなったら、一か八かだぜ。)

「仙道。ちょっと耳を貸せ。」

「・・・・・・・・・・・。」


「任せますよ。」




『ビィーーーー!』


まもなくして、第3Q開始を告げるブザーが響き渡った。




横学 35
白金 46







続く。

#363 【リバウンドを制するものは】

2010-09-21 | #12 大学 新人戦編
横学 29
白金 39




タイムアウト後、仙道、三井のラインできっちりと点を決めた横学大。



「よし!いけるぞ!!村松が抜けた分、中が空く!!」

「おう!!」

三井の声に、選手たちが答える。



(こっから、流れを引き寄せることができれば・・・、まだ追いつける!!)


三井は決して諦めない。




白金のオフェンス。


『ダムダム。』

トップの牧。


対峙する仙道は、微妙に右サイドに寄っている。


(仙道め。誘っているのか。
だが、そんな中途半端なディフェンスで俺を止められると思っているのか!)



『ダム!!』


『キュ!!』



発動。


牧が仙道を抜きにかかる。



『バッ!!』


仙道、立ち塞ぐ。



『キュッ!』


(バックロール!)



『キュ!』



「!!」


と見せかけ、牧はそのまま突っ込んだ。


並走する仙道。



(ここを止めれば、流れが来る!!)



仙道の想いは、他の選手も理解していた。



三井が神に張り付くようなディフェンス。


(パスアウトはさせねぇ。)



黒木がファウルぎりぎりのディフェンスを見せる。


(ずいぶん、荒いディフェンスするようになったやんか。)



『ダン!!』


牧は得意のオーバーハンドレイアップシュートの体勢。




「行ったーーー!!」

「一人!!」

「強引だーーー!!!!」




『ダン!』


仙道も跳んだ。



長い腕が牧のシュートコースを塞ぐ。



『シュ!』



牧の強引なシュートが放たれた。



『キュッ!』


『キュ!』



土屋が、粕谷が、荻野が、一斉にゴール下になだれ込む。



『チィ!』



仙道がわずかにボールに触れた。



「リバウンド!!」

牧が叫ぶ。



「おう!!」


「!!!」



仙道が振り返る視線の先には。


秋田と品川。


荻野、土屋、粕谷。


横学大のゴール下は、白金が優勢であった。




「仙道が牧についたせいで、仙道はリバウンド戦線から外された。」

「そして、粕谷が加わった白金は、ゴール下への幅を利かせている。」

「牧の強引なシュートは、全て計算済みだったか・・・。」




品川には、完璧なまでの荻野のスクリーン。


(悪いが、森重と比べたらまだまだ力は劣っている。)


土屋、粕谷、秋田が跳んだ。



『パン!』



ボールは、誰のともいえない指先に当たり、再び舞い上がった。



そして。



『バチィン!!』



「!!!」

「なに!!」

「!!!」

「!!」



「品川!!!」



絶対的な不利な状況の中、ボールを掴んでいたのは、品川だった。

2度目のリバウンド争いで、荻野のスクリーンアウトがわずかに外れた瞬間、
リバウンドを奪ったのであった。



(俺が、ゴール下を守らないで誰が守る!!)



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<<回想>>

横浜学芸大学体育館。


「シイナ、いいことを教えてやろう。」

「ん、なんだ?突然。」


2年前、桜木が横学大に特訓に訪れていたときの話である。



「センターは、自分のゴール下を死守することが最大の使命である!!」

「何を今更。当たり前のことだろ。」

「そして・・・。ここが重要だ。それだけでは、試合に勝てない。いや、目立つことはできない。」

「なっなんだ、それ。」

「試合に勝つためには、そして目立つためには、リバウンドが重要だ!こんな言葉がある・・・。
リバウンドを制するものは、試合を制す!!」


「リバウンドを制するものは、試合を制す・・・。」


「この天才の名言だ。しっかりと覚えておくように!!ハッハッハ!!」


赤木の名言を自分のものとしていた桜木。

そんなことは知らない品川。


「リバウンドを制するものは、試合を制す・・・か。桜木にしては、いい言葉だな。
Cにやる気を起こさせる言葉だな。」

「だろ!ハッハッハ!!」



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「リバウンドを制するものは、試合を制す!!!」

叫ぶ品川。



「ん!」


三井が違和感を感じた。



「仙道ーー!!」


品川が再び叫ぶ。



「戻れーーー!!!」

牧の指示。



『キュ!!』


『キュッキュ!!』



コートが慌しく動き出す。



『パシ!』


ボールは、仙道に渡った。



仙道、三井、黒木の3線が繰り出された。


牧、神の海南コンビが迎え撃つ。



(この1本で流れを変えたいはず!ならば!)


牧は神に合図を送る。



『コク。』


神は、三井に張り付いた。


(ちっ。俺にはボールを持たせねぇってか!!)



流れを掴む一手。


まずは三井の3Pを封じる。


これで、横学の3線も事実上2on1となった。


いや、むしろ牧は1on1と考えていた。



(必ず来る!!!)



『ダムダム!!』



仙道のドリブルが、体育館に響き渡る。



「仙道さん!!」



フリーに近い黒木が仙道を呼んだ。


だが、パスは出さない。




「ギリギリまで牧を引き寄せてパスを出すか?」

「自分でいくケロか?」




3Pライン。



仙道のスピードは落ちない。



「来い!!!!」



牧がこの日、一番の声をあげる。



「言われなくても!!!」



仙道が答える。



真っ向勝負。



仙道は1on1を選ぶ。



そして。



跳んだ。




横学 29
白金 39







続く。

#362 【ワンプレー】

2010-09-18 | #12 大学 新人戦編
横学 27
白金 39




第2Q中盤、横学大のタイムアウトがあけた。


先にコートに足を入れたのは、横学大。

三井を先頭に、気合のこもった表情をしている。




「横学大が選手交代だーー!!」

「PGを下げて、#39を入れてきたぞ!!」

「あいつは、大栄の黒木だろ!!」

「ってことは、PGは仙道か!!」



-----------------------------------------------

PG…#18 峯浦 幸 180cm/2年/神保大附属

SF…#39 黒木 歩 188cm/1年/大栄学園

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「おー。歩か。懐かしいやっちゃな。」

「ん?知り合いか?」

「大栄のときの後輩や。ディフェンスのいいうちの中でも、頭一つ抜けておったで。」

「ということは、お前を止めるために投入してきたか。」

「まぁ。そういうことになるかな。せやけど、本当の目的は・・・。」



「仙道が牧さんをマークするためでしょうね。」

と神が微笑みながら、会話に参加した。



「ふっ。面白い。だが・・・、まだ甘い。」



牧が微笑む先には。


胸板の厚い#43の男。


「いくぞ。」

「トゥース!」


コートに踏み入る白金の5人。




「うぉぉーーー!!!」

「白金も選手交代だーーー!!!」

「梅沢の粕谷だーーー!!」

「粕谷を入れてきたーー!!」



-----------------------------------------------

 C…#26 村松 忠文 195cm/2年/浜ノ森

PF…#43 粕谷 力 192cm/1年/梅沢

-----------------------------------------------



「なに!!」

と驚く三井。


「いい体つきだな。」

と苦笑う仙道。


「・・・。三井さん。マークマンはどないしましょうか?」


「得体の知れないやつだな。ちっ。作戦変更だ。秋田はあいつを頼む。
ここで投入されたということは、できる男かもしれない。油断するな!」

「あぁ。」


「黒木は土屋から眼を離すな。先輩に成長の証を見せてやれ。」

「はい。」


「仙道、どう思う。」

「なかなかパワーのありそうな感じですね。」

「インサイドのディフェンス強化か?」

「いや、オフェンスの強化でしょうね。」

(常に先手を取ってきますね。牧さん・・・。)



白金のオフェンスを止めるべく手を打った横学大。

PG峯浦を下げ、SFの黒木を投入。


表の目的は、チームのサイズアップと土屋への徹底ディフェンス。


真の目的は、牧に仙道を当たらせるものだった。


だが、白金は、更にオフェンスに磨きをかける。


横学大の作戦の裏をかき、オフェンス参加の少ないC村松を下げ、PFに埼玉県梅沢高校出身の粕谷を投入した。

粕谷は、自信に溢れた表情をしている。




横学大のオフェンスからスタート。


仙道は、PGの位置につく。

当たり前のように、目の前には牧。


神は三井を、土屋は黒木を、粕谷は秋田を、荻野は品川を抑える。




「わぁぁーーー!!」

「牧対仙道!!」

「神奈川を知っているやつなら、この対決は永久保存版だぜ!!」

「今日、観戦に来れてよかった!!」




「盛り上がってきたな。」

と河田。

「この対決は、深津も興味があるんじゃないか?」

「PGの道は、1日にしてならずケロ。」

「なるほど。その考えよくわかるよ。」

博多商大時代にPG経験のある牧瀬がうなずく。




『ダムダム。』


リズムよくドリブルをしているのは、仙道。

鋭い視線が、パスの供給場所を狙っている。



(1発で仕留められるほど、うちは甘くないぞ。)



インサイドでは、品川が荻野と激しいポジション争い。



『キュ!』


その攻防を利用し、秋田がアウトサイドへ。

粕谷が連れられて外に出る。



その一瞬を見逃さない鋭い眼光。



「!!!」



『ビィ!!』



仙道は、ぽっかりと空いたスペースに、バウンドを投げつけた。



「なに!!」



凄まじい速さで、牧の足元すれすれを通り抜けるボール。



『パシ!!』



振り返る牧の視線の先では、三井がボールを受け取っていた。



三井の瞬発力が、神を振り切る。



(くらえ!!)



『シュパ。』



華麗なレイアップシュートが決まった。




「わぁぁーーー!!!」

「仙道が一本で決めてきたーー!!」

「すげーーパス!!」

「三井もいい動きだ!!」




「仙道!!」

「ナイスラン。」


「さぁ、逆転だ!!」

『コク。』



三井の3Pを警戒しすぎたあまり、カットインを許してしまった神。



「牧さん。すいません。」

「いや。あのパスをさせてしまった俺のミスだ。だが、次はないぞ。」

「えぇ。俺もです。」



仙道、三井のたった一つのプレーが、横学大を、観客を、そして白金を燃えさせた。




横学 29
白金 39







続く。

#361 【相性の悪い相手】

2010-09-16 | #12 大学 新人戦編
試合は、第2Qの中盤に差し掛かっていた。


横学 27
白金 36




じわじわと点差が開きつつあるが、1部の、しかも優勝候補に名を連ねる白金相手に、
横学大は善戦しているといえる。


2部のリーディングシューター三井を有し、2mを超える品川をゴール下に配し、
そして世代トップクラスの仙道が加入しても、なおも白金学院には敵わない。


それほどまでに、白金は実力のあるチームであった。



(ちっ。さすが白金だ。だが、差はそんなにねぇはずなんだ。
あとは流れだ。流れさえ持ってこれれば、追いつくチャンスはある!)


だが。


横学大にとって、白金は実力以上に相性の悪いチームであった。



現在、横学大のオフェンスの基点は、C品川。

ここまで深体大の予想通りに試合は展開していた。


高身長を利用し、インサイドボールで受け、ディフェンスを引き付け、外にパスアウト。

または、切れ込んでくるF仙道に合わせる。

試合序盤こそ、横学大の作戦は功を奏していたが、試合が経過するにつれ、
その機能は果たさなくなっていった。



『パシ!』


C品川にボールが入る。



『キュ!』


『キュッキュ!』


C村松、PF荻野がダブルチームで、品川を封じる。



外を狙う三井には、神が。


チャンスを伺う仙道には、土屋が。


完璧に抑えるディフェンス。



シューターが苦手な間合いは、シューターが一番理解している。

三井にとっては、神は相性の悪い相手。



そして、オールラウンダー土屋。

仙道と並ぶ高身長を持ち、仙道と似たプレースタイルを持つ。

仙道もまた、土屋は相性の悪い相手であった。



ボールの捌く先がない品川に、トップから牧がつぶしにかかる。




「トリプルチーム!!!」

「品川が捕まる!!!」




四方、そして下から狙われる品川。



(まるでゾーンプレスのようだ!)


「品川!!」


秋田が呼ぶが、パスコースはない。



『シュ!』


パスコースを塞がれた品川は、苦し紛れのシュートを放つ。



『ガン!』


案の定、外れた。



ボールは、荻野がむしりとる。

高校時代、愛知県で名朋森重を相手に死闘を繰り広げてきた荻野。

インサイドのパワー勝負、ディフェンスのカバー、そしてリバウンドを奪うことに関しては、
世代でもトップレベルであった。

そんな荻野は、品川にとって、最高に相性の悪い相手であった。



横学大のオフェンスがことごとく潰される。


そして、白金のオフェンスは、牧と土屋の2枚看板。


トップの牧とFの土屋が、点を奪い、アシストを供給する。


そして、今年はもうワンオプション。




『スパ!!』




「神だーー!!!」

「2本連続の3Pーー!!!」




土屋、荻野の2枚スクリーンにより、フリーとなった神に、牧のペネトレイトからのパスアウト。

海南大附属をIH2位、選抜4位まで押し上げたコンビプレーが、大学という舞台においても、確実に相手のネットを揺らす。



「OK!!」


『コク。』



「神のやろう。」

三井は苛立ちを隠せない。


「・・・。」

無言の仙道。




「これだ。仮に牧と土屋を抑えても、神がいる。」

と河田。

「あぁ。これはかなり強力だ。」

と徳永。




横学 27
白金 39




12点差がついた。



『ピィーーーーー!!』


横学大がタイムアウトを取った。

重苦しい雰囲気の横学大ベンチ。


「三井さん。」


仙道の透き通る声が、ベンチに広がる。

「強いですね。白金は。」

微笑む仙道。


「ん。」


タイムアウトでは、気合を入れ、己を、チームを奮い立たせるのが常套であった三井にとって、
仙道の微笑みは、ある人物を思い出させる。



(ちっ。こいつの笑いは、どことなく安西先生に似てんだよな。
安心感を与えるっていうかよ。)

三井の気持ちが少しだけ落ち着いた。



「何か良い策でも思いついたか?」

「黒木を投入しましょう。そして、マークマンは変更です。
神には三井さん、荻野さんには品川さん、村松さんには秋田さん、土屋さんには黒木、牧さんには俺がつきます。」


「おいおい。黒木に土屋は無理だろう。」

「えぇ、わかっています。そこで、秋田さん。村松さんのオフェンス参加は少ないようですし、
インサイドに入ってきた土屋さんのカバーをお願いします。」


「外は黒木が、中は秋田が守るってことか。」

「ええ、その通りです。神は三井さん一人でお願いします。」

「へっ。当たり前だ。よし!仙道の作戦でいくぞ!」

「はい!!」

「おう!」


「黒木!お前のディフェンスを見せてやれ。偉大な先輩にぶつかって来い!」

「はい。任せて下さい!!」



『ピィーーー!!』



タイムアウトがあける。


PG峯浦に変え、SFに黒木が入った。



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PG…#18 峯浦 幸 180cm/2年/神保大附属

SF…#39 黒木 歩 188cm/1年/大栄学園

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続く。

#360 【主力選手の実力】

2010-09-15 | #12 大学 新人戦編
横学 2
白金 0




ハーフマンツーで迎え撃つ横学大。


牧には峯浦、神に三井、土屋に仙道、荻野に秋田、村松に品川がつく。



『バス!』


『バシ!』


『シュパ!』



(まずは、挨拶や。)


横学大のマンツーを物ともしない、白金の完成されたパスワーク。

スクリーンから、フリーとなった土屋がハイポからのジャンプシュートを手堅く決めた。




「最初は、土屋か。」

「仙道への仕返しケロ。」

と深体大。




横学 2
白金 2




横学大の反撃。


『バス!!』


仙道からのパスを品川が力強くゴール下で押し込んだ。




「やはり、横学は品川か?」

「さあ、白金は、次はどこから攻めるかな。」




先程よりも土屋にタイトにあたる仙道。


(対応は速いな。)


土屋が45°から、ハイポに位置取ると同時に、牧がドライブを発動する。


土屋目掛けて、トップから一直線にリングを狙う。




「出たーーーー!!!」

「最強のペネトレイトーー!!!」




牧と土屋が交差。


土屋が峯浦のコースを塞ぐ。


だが。



『キュッ!!』



仙道が、土屋の影から牧の前に現れた。



「!!!」


「!!!」


「スイッチ!」



今度は、仙道が牧に立ちはだかる。



『サッ。』



「!!!」



牧は、仙道の動きを読んでいたかのように、ドリブルからそのまま後ろへトス。


そこには、またしても土屋。



『ザシュ!』



2本連続の土屋のシュートがネットを揺らす。




「牧と土屋のコンビプレー!!」

「息が抜群だーーー!!」




「土屋め。小賢しい。」

と三井。


「・・・。」

無言の仙道。


(牧さんと土屋さん・・・か。さて、どうしたものか。)




横学 4
白金 4




身長で有利なC品川にボールを集める横学。

C村松、PF荻野が体を寄せる。


(品川を使うことは、想定内だ。)

と牧。


たまらずパスアウトをする品川。


狙ったのは、三井。



『パシ!』



「!!」


神が見事に体をいれ、スティールした。




「さすが、神!!」

「巧い!!!」




「やろう!俺のボールを!!」

と叫びながら戻る三井。



「牧さん!!」

「いいぞ!神!!」


ボールは、牧へ。


白金のバックコート陣が駆け上がる。




「白金の速攻!!」




左右に土屋と神。

中央に牧。



「簡単にいかせるか!」



ディフェンスは、三井と仙道。



牧の中央突破。


三井が回り込む。



(何度も見てきたぜ!このパターン!!)



三井の体が動く。



(土屋!)



『キュ!』


三井の右足が土屋へのパスカットに向けられる。



『パッ!』


それを確認し、ボールを掴んだ牧。



『シュ!』


ボールを横に流した。



『パシ!!!』



「!!!」



「と見せかけて、神だろ!!」



「三井!!」



牧から神に放たれたパスは、三井の右手に当たった。


牧のキラーパス。


ではなく、三井の直感が勝利した。



(やるな。三井。)




「牧を止めたーーー!!!」

「すげーーぞ!!三井!」




ボールを拾い上げる仙道。


(頼りになりますね。)



「来るで!!」


仙道に詰める土屋。



『ビィ!』



仙道の素早いオーバースローが、白金リングに向かって放たれた。



「荻野!!」


牧が叫ぶ。



だが、荻野は逆をつかれた。


最高の高さ、最高のタイミングで、ボールは品川の手の中に吸い寄せられた。


そのまま、リングに叩き込む。



『ガッシャァン!!』



仙道が魅せた品川への最高のパス。




「うわぁぁーーー!!!」

「仙道のパスすげーー!!!」

「やるぜーーー!!!」

「絶妙!!!」




「ナイスパス。」

品川が仙道に向かって優しく一言。


「ナイスキャッチです。」

仙道は笑顔で答えた。



「ハッハッハ!牧!神!どうだ!俺のスティールは!!」


「・・・・・・。」

「三井・・・。桜木に似てきたぞ。」

「ぬっ。なにーー!!!」

「確かに・・・。」

神、秋田、品川、そして仙道の言葉が揃うのであった。


主力選手が徐々にその実力を見せ始めていた。




横学 6
白金 4







続く。

#359 【先制点】

2010-09-13 | #12 大学 新人戦編
多くの選手、観客が、注目している第3試合の横浜学芸大学(2部)×白金学院大学(1部)の試合が、今開始された。



『バチン!』


ボールを叩き落したのは、205cm、今大会2番目の身長を誇る横学大C品川。


ボールは、仙道に渡った。




「仙道だーー!!」

「ルーキーに渡ったぞーー!!!」

「ツンくーーん!!」

「アキラ!アキラ!アキラ!アキラ!」




相田弥生発案、JAPAN WeeKSと週刊バスケットボールとのコラボ企画。

『大学バスケプレーヤー イントロデゥース』の第50回目の節目に抜擢された仙道は、
2部リーグ所属、1年生としては異例の人気を誇っていた。


ちなみに、ツン君とは、仙道のツンツンヘアーからきている。

主ににわかファンが呼ぶ。




(こいや。)


土屋の細い眼が、仙道の動きを捉える。



(おっ。)


その眼光の鋭さに、一瞬構える仙道。



だが。



『バッ!!』


低い姿勢から、一気に土屋を抜きにかかった。



『ザッ!!』


土屋は抜かせない。



「仙道!!」


ボールを呼ぶ横学大PGの峯浦。


仙道の瞳が動く。


その瞬間。



『クル!!』



バックロール。



「しもうた!!」



仙道の視線のみのパスフェイク。


土屋の逆足を捉え、交わす。


高次元の攻防。



『ダムダム!!』


駆け上がる仙道。


追う土屋。



(こりゃ、しんどい相手やで。)


前方には、三井と神。


そして、牧。




「うわぁーーーー!!!」

「いきなり、牧対仙道ーー!!!」

「神奈川のスーパープレーヤー対決だーー!!」




「来い!仙道!!」


「牧さん。」



(打倒牧さん。)


仙道の頭に、言葉が浮かび上がる。


(勝負!)



『キュ!』


仙道のスピードが上がった。



(なんやと!)


後ろから、スティールを狙っていた土屋を振り切る。



「神!三井は任せた!」

「はい。」



仙道、3Pライン。


牧、フリースローライン。


対峙する2人。


想い出される2年前のIH予選。


そして、天皇杯。


仙道の選択。



『ダム!!』




「いったーー!!!」

「強引に切り込んだーー!!」




真っ向勝負を選んだ仙道。


受けて立つ牧。



『キュ。』



三井が静かに動く。


神がジリリと詰め寄る。



(神のやろう。いやな間合いをとりやがる。)



『キュキュ!』


仙道が、左右に揺れる小刻みな動きで、重心をずらす。



(来る!)



牧の意識がドライブに備えた。



「!!!」



『キュ!!!』



と同時に止まる仙道。


わずかに後ろに跳びながら、ジャンプシュートを放った。


仙道の1本目。


この試合最初のシュート。



『ザシュ!!』



決めた。




「先制点は、横学だーー!!!」

「仙道が決めたーー!!」

「簡単に決めてきたーー!!」




(簡単やないで・・・。あの一瞬、あの一瞬しかあらへんちゅうところで、打ったんや。)


(牧さんのわずかな重心の移動を察知し、咄嗟にジャンプシュートに切り替えてきた。
さすが、仙道だね。)

と冷静に分析する神。



(牧、仙道の力は、そんなもんじゃないぜ。)にや。

と三井。



(やるな、仙道。)


「・・・。」にこ。




「あのタイミングをものにできるか。これは、想像以上の選手だな。やるねぇ。」

と観客席の徳永。

「牧の動き、癖を理解しているツンツンだからこそ、打てるシュートってところか。」

と河田。

「最初から試合に集中しているケロ。それだけで、沢北より上ケロ。」

「確かに・・・。」

苦笑する加藤であった。

「お互い手の内を知り尽くした牧君と仙道君の対決、やりづらいだろうね。」

と牧瀬。


「だが、白金には土屋がいる。土屋がそこに絡むとなると、仙道の劣勢は変わらない。」

「となると、横学が勝つためには、三井のシュートか。」

「いや、神が相手なら、それも難しい。
シューターの嫌いな間合いは、シューターが一番良く理解している。」

「その通り。」にこ。


「ここは、インサイドケロ。」

「あぁ。横学は、品川がキープレーヤーとなるはずだ。」




牧を目の前に、鮮やかにシュートを決めた仙道。


多くの観客が神奈川出身のスーパープレーヤーたちの活躍に期待している中、
準々決勝第3試合は、深体大の想像通りの試合展開へと進んでいった。



横学 2
白金 0







続く。

#358 【横学×白金】

2010-09-11 | #12 大学 新人戦編
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<<回想>>

4月。

横浜学芸大学体育館。



「あれが、仙道か・・・。」

「IHのMVP・・・。」

「全国優勝・・・。」

「高校生No.1になった男か・・・。」

ざわつく上級生たち。



「陵南高校出身の仙道彰です。よろしくです。」


「うちは、4年生がいなくてな。俺はキャプテンの畑、3年だ。
監督から話は聞いている。みんな、とても期待している。頼むぞ!」にこ。


『ガシ。』


握手を交わす畑と仙道。



「三井。仙道とは、知り合いなんだろ。」

「えぇ。同じ神奈川県でしたから。」


「ご無沙汰です。」

「まさかな、お前がうちにくるとは、思ってもいなかったぜ。
1部のほうじゃ、お前の選択は、大学バスケ界を揺るがす大騒動といわれているんだぜ。」

「まいったなー。」



「なんてたって、IHのMVP!!」



「ん!?」

と三井。


声の方向に眼をやる。



「世代一番の実力者らしいからな。」

「これで俺たちもまた3部に落ちることもねぇかな。」

「そうだそうだ。」

「本当、ラッキーだぜ。」

「IHのMVPは、今年もリーグMVPか!」

「当分は、2部所属も安泰だな。」

上級生たちが笑っている。


「・・・。」

無言の仙道。



(ちっ。何いってやがる。目指すは、1部昇格だろうが!
くだらねぇこと抜かすな!それに・・・!)

少し腹を立て、上級生を睨む三井。



「お前ら!口を慎め!!」



怒鳴る畑。



「!!!!」


「!!!!」


「キャキャプテン・・・。」

驚いた表情で三井がいった。



「俺たちの目標は、1部昇格を果たし、学生チャンピオンになることだ!そのために、仙道がうちを選んでくれた!
3部に落ちないだの、2部安泰だのくだらないことをいうな!!」



「・・・。」

沈黙する上級生たち。



「それに、こいつはMVPじゃない。仙道という名前もある。2度とMVPを口にするな!
悪いが、仙道。高校時代の栄光は、ここでは通用しない。
特別扱いするつもりもない。そのつもりでいてくれ。」


「もちろんです。気を遣わずに。」


(キャプテン・・・。)

三井は、4年前の自分を仙道にフラッシュバックさせ、畑の言葉に涙が出そうなほど嬉しくなっていた。



「仙道。これから、よろしく頼ぜ。」

「えぇ。全国制覇でしたっけ?湘北の合言葉は?」

「あぁ。だが、今は違う。神奈川県出身者の合言葉は、打倒牧だ。牧越えだ。」

「打倒牧さんか・・・。まだまだ先ですね。」

「あぁ。まずは、1部昇格が目標だ。2年、いや今年中にいくぞ!」

「目標は、早く達成したほうがいいですからね。」


「シックスマンのくせに偉そうだな。三井!あはは!」

「キャキャプテン。それはいわないで下さいよ。」


「ははははっ。」

「あははは!」

笑う部員たち。



「悪かったな、仙道。」

「これからよろしく頼むぜ。」

「俺は山田、よろしくな。」


「こちらこそお願いします。」

上級生たちと仙道とにあった溝は、畑の言葉によって一瞬で消し去られた。



「ところで、なんでお前がうちなんだ。やはり検討もつかないぜ。
先輩たちじゃないけど、うちにとってお前が来てくれたことは、ラッキーとだけじゃ済まされない。」


「理由はないですよ。」


「理由はねぇか・・・。お前らしいな。」


「強いていえば・・・。」


「ん!?」


「あそこかな。」


「あそこ?」


仙道は、開放された体育館の扉の向こうを見つめていた。



そこには。



広がる水平線。


押し寄せる波。


聞こえる海鳥の声。


佇む灯台。


想い出の場所があった。


仙道が、高校時代によく訪れていた場所。


時に彦一を待ち、時に眠り、時に釣りをし、心を落ち着かせていた場所であった。



仙道の想い出の場所を知らない三井は・・・。



「ようは、横学大が海から近いからってことか?」

「まぁ、そういうことですね。」

仙道は、三井に調子を合わせて笑った。



天才と呼ばれた2人の男が、打倒牧という同じ目標に向かって歩み始めた日であった。



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代々木第二体育館。

コート上。


センターサークルには、横学のC品川、白金のC村松が、ジャンプボールに備えている。


牧はPG峯浦、神は三井、そして土屋が仙道をマークした。



「どれほどの実力が見させてもらうで。」


「どーも。お手柔らかに。」にこ。


(土屋。仙道を侮るなよ。)

と牧。


(赤木!悪いが、牧を先に倒すのは俺たちだ!!!)

と三井。


「三井さん。よそ見していると痛い目見ますよ。」にこり。

と神。


「あぁ。そうだったな。てめーを倒すのは、この俺の使命でもあったな。」

「えぇ。張り合いがあります。」



『バッ!』


審判の腕が上がった。



『ダン!』


『ダン!!』



2つの巨体が宙に舞い上がった。




【横浜学芸大学】 関東12位

PG…#18 峯浦 幸 180cm/2年/神保大附属
SG…#14 三井 寿 184cm/2年/湘北
SF…#23 仙道 彰 191cm/1年/陵南
PF…#22 秋田 智成 195cm/2年/武里
 C…#20 品川 祥司 205cm/2年/秋月




【白金学院大学】 関東5位

PG…#13 牧 紳一 184cm/2年/海南大附属
SG…#36 神 宗一郎 189cm/1年/海南大附属
SF…#19 土屋 淳 191cm/2年/大栄学園
PF…#24 荻野 武士 193cm/2年/愛和学院
 C…#26 村松 忠文 195cm/2年/浜ノ森








続く。