うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#181 【新戦力たち】

2009-08-29 | #08 高校 新体制編
5月。

「足を動かせ!そんなんじゃ、海南にも陵南にも勝てないぞ!!」

「こらー!!桜木花道!!ディフェンスをサボるな!!」

「シオ!流川に簡単に抜かれるな!!」


GWに入り、湘北バスケ部は、練習にもいつも以上に力が入っていた。



理由その1。

IHの県予選の対戦相手が決定したこと。



昨年、第2位で全国出場を果たした湘北は、今年はスーパーシードとなり、ベスト8からのスタートとなる。


Aブロック 海南大附属高校

Bブロック 陵南高校

Cブロック 湘北高校

Dブロック 翔陽高校


対戦相手は不確定だが、全国大会への切符は、この4強で争われると思われる。



理由その2。

GW最終日に行われる紅白戦において、ベンチ入り(Aチーム)が決定されること。



上級生はもちろん、1年生にもチャンスがあったため、
チームは最高のコンディションで練習が行われていた。

また、問題視されていた上級生と1年生との確執も概ね解消されていた。


柳は、初日以来、宮城との距離を確実に縮めている。

(あの人、ホントに速い。スピードキングも伊達じゃない・・・。)

(柳のやつ、だいぶPGらしい動きになってきやがった。ヤスもうかうかしてられねぇな。
だが、やっぱり、あいつは・・・。)



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<<回想>>

4月下旬。


「安西先生。」

「ん。なんだね、宮城君?」

「柳はやっぱりSGをやらせたほうがよろしいんじゃないかと。」

「どうしてだね?」

「三井さんの抜けた穴は大きい。柳の実力なら、予選までには、十分スタメンで使えると思います。」

「つまり、宮城君は柳君の実力を認めた上で、自分のポジションが取られるかもしれないから、
SGにしろということですか?」

「なっ!!そういうわけでは・・・。」

「なら、彼はPGです。ドリブルのスキルは、相当高い。
あとは、味方とのコンビネーションができ、パスが出せるようになれば、いいPGになれます。」


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(ちくしょう!安西先生は、何を考えているんだ!!)




一方。

桜木と白田はというと。



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<<回想>>

4月中旬。


「桜木君、白田君、角田君、こっちへ。」

「ぬっ!なんだ、オヤジ?」

「はい。」

「ゴール下は、君たち3人で死守するのです。
特に桜木君は、赤木君の意思を受け継ぎ、しっかり守ってください。」

「もちろんだ!オヤジ!!ハッハッハ!」

と笑いながら、桜木は練習に戻った。


「角田君、君はジャンプシュートを強化して下さい。
練習終了後、毎日200本、打つこと。いいですね?」

「はい。」

「PFの研究も忘れないように。」

「あっ、はい・・・。」

(PF転向か・・・。)

安西の一言により、角田はPFへとコンバートされた。

全国を勝ち抜く上で、185cmの角田では、センターを務めることは困難であると判断したためである。

妥当な判断であった。


「白田君、君の実力、体格は、すでに高校生レベルといっていい。」

「ありがとうございます。」

「君は、器用なタイプのようですし、PFでも十分通用するでしょう。」

「えっ!?角田先輩みたいに、俺もPF転向ですか?」

「いや。白田君には両方やってもらいます。
桜木君は常に不安定な状態です。いつ、コートから去るかわかりません。
そのとき、ゴール下を任せられるのは、君しかいません。」

「はっはい!」

「オフェンス面においても、今のスタイルで問題ありません。
ですが、ディフェンス面となると、跳躍力や威圧感、ポジション取り、どれをとっても、
現状は桜木君のほうが上です。」

「つまり、ディフェンスの強化ですね。」

「その通りです。白田君は、PF、Cもこなせるマルチな選手になってもらいます。わかりましたね?」

「はい!!!頑張ります!!」


「それと、もう一つ。」

「もう一つ?」

「桜木君を慕ってください。今は形でかまいません。
そのうち、彼の本当の良さが白田君にもわかると思います。
そのときは、心から桜木君を慕ってください。ほっほっほ。」

「わっわかりました。」




「桜木先輩!これから、ゴール下の指導お願いします。」

「ぬっ。なんだ、貴様!いきなり、態度が変わりおって。」

「安西先生に桜木先輩の凄さを聞きました。俺も感心しました。」

「ほうーー。それは、オヤジもいい仕事したな。
ふむ。スジはいいようだな。よし、これに免じて、今までの無礼は全て流そう。」

「ありがたき幸せ。」

(こっこんなんでいいのか・・・?)


「君、名前は?」

「白田豊です。」

(覚えていないのかよ!!)


「ふむ。ジャイアント白田!長すぎるか?ホワイト!外人みたいだな?」

「桜木さん、何を?」

「君のあだ名だ。いいのをつけてやる。ハッハッハ!」

(白田でいいよ・・・。)


5分後・・・。


「決まったぞ!白田君。」

「・・・。」

「ハクタスだ!」

「ハクタス???」

「しろた・・・。はくた・・・。ハクタス・・・。我ながら、ナイスネーミング。ハッハッハ!」

「ハクタス・・・。」

(まぁ、キツネよりはいいか。)


こうして、白田のあだ名が決まったのであった。


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続く。

#180 【湘北の春】

2009-08-28 | #08 高校 新体制編
バスケ部では、1年生の自己紹介が行われていた。

例年にない実力者揃いであり、上級生は内心ビビッていた。


(やばい!ユニホーム取られる!!)

(僕より、うまそー。)

(観客席で応援なんて、絶対やだ。)


「よし!最後。」

宮城が、一番身長の低い1年生に声をかける。


「柳春風です。よろしくお願いします。」

「他には?」

「他?えーと、身長は170cmです。」

「PGか?」

「C以外なら、どこでもやれます。」


「なっ!」

「その身長で?」

「キャプテンと変わらないぞ!」

驚く2年。


「口だけはデカいようだな。花道と一緒だ。」

「なっ!リョーちん!!そんなチビと・・・。」

「一緒にしないで下さい。桜木さんとは。」

桜木が言おうとした言葉を柳が先にいった。


「なんだとーー!」


「まぁ、落ち着け。花道。それだけいうなら、相当の自信があると?」

「うーん。1on1で、俺に勝てるのは、流川さんくらいかな。」

「なっ!!」


(んっ。)

人差し指でボールを回していた流川も少しだけ反応する。


「流川さん、お久しぶりです。常盤中の柳です。」

「・・・。うすっ。」

「なにーー!!このチビは、キツネの知り合いか!!どうりで、生意気だと思ったぜ!!!」

と桜木。

怒りの矛先は、柳から流川へ移っていた。


「流川、どういう仲なんだ?こいつと?」


宮城の質問に流川は・・・。


「・・・・・・。覚えてないっす。」


「ですよね?俺も話したことないですから。以前、試合会場で観ただけです。」


「なにーー!!お前、俺たちをからかっているのか?」

桜木に続き、宮城も怒りが増す。

今にも手が出そうな状況。


だが。


「こら!リョータ!!」

「アヤちゃん!」

「桜木君、ちょっと待って!」

「ハルコさん!」

「宮城さん、桜木君、ちょっと聞いて。
柳君、常盤中って、あのワンダー中と呼ばれていた?」

と晴子。

「はい。」

「本当?」

「嘘じゃありません。」


「まさか、彼らの一人がうちに来てくれるなんて・・・。」

「晴子ちゃんは、彼を知っているの?」

「はい。常盤中の噂くらいは・・・。」

晴子がみんなに常盤中について、説明した。



ミニバス出身の5人が主体となり、バスケ部創設1年目で、全国に出場したこと。

ワンダー中学と呼ばれていたこと。

3年次には、全国ベスト8になったこと。

C以外のポジションは決まっていなかったということ。

全国的にみても相当な実力者だということ。



「・・・。」

(そんなに凄いのか?柳というやつは?)

(ポジションが決まってない?)

(ワンダー中学?)

(なぜ、湘北に?)

言葉が出ない安田ら。


「ふーん。そこそこ実力があるのは、わかった。」

と宮城。

「だが、所詮、中学レベルだ!」

と桜木。


「宮城さん、俺と1on1の勝負しませんか?
勝ったほうが、スタメンPGっていうのはどうでしょう?」

「!!!」


「いきなり!リョータに勝負を挑んだ!」

「まさかの展開!!」

「昨年の悪夢の再来!!」


だが、宮城は・・・。


「・・・。やめておくよ。」

「!!」

予想外の返答に、柳は戸惑う。


「PGっていうのは、いかに仲間を巧く使うかだ!
指示を出したり、ゲームを組み立てたり、流れを変えたり、
1on1で優劣が決まるポジションじゃない。」

「確かに。」

(リョータも少しは大人になったね。)

納得の安田。


「では、練習の中で、俺のほうが味方を巧く使えたら、スタメンPGを譲ってくれますか?」

「あぁ。湘北バスケ部のためになるならな。」


「リョーちん!!何をいう!!」

「宮城さん!」

「俺たちの最終目標は、全国制覇だ!そこに辿り着くのに、意地や形は関係ない。
実力のあるものが試合に出て、勝利を掴む、それだけだ。
だから、1年!お前らも必死に頑張れ!そうすりゃ、自ずと試合にも出れるはずだ!」

「はい!!」


(見た目よりも、冷静な人のようだな。)

柳は宮城の大人の対応に、少しだけ感心するのであった。



「リョータも少し大人になりましたね。」

「宮城君もキャプテンに相応しい男になりました。ほっほっほ。」



「そういえば、私、肝心なこと忘れているような??」

晴子は忘れていた。


柳が疾風の春風と呼ばれていたことを。








続く。

#179 【湘北の白】

2009-08-27 | #08 高校 新体制編
湘北高校体育館。

バスケ部の入部を希望する新1年生が、初めてバスケ部の練習に訪れた。

安西の進言により、2,3年生の紹介が行われた。

続いて、1年生の自己紹介。

今年の新入生は、全部で15名。

全国大会に出場したチームとしては、異例の少なさであった。


その理由は・・・。


新入生全員が集められ行われた、湘北高校の恒例行事 部活紹介・・・。


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<<回想>>

体育館。


1年生は、舞台に向かって、規則正しく整列し、座っている。


「続いて、男子バスケットボール部です。キャプテン宮城さん、どうぞ。」

進行から促される宮城。


『トコトコ・・・』


やや緊張気味に、舞台上のマイクの前まで立つ。


「僕は!」


『キーーーーーン』


宮城のいきなりのデカい声にマイク鳴りがしてしまった。


「うぉ!!!」

焦る宮城。



「キャ!!」

「あの人小さーい!!」

「ちょっとヤンキーぽくて、可愛い!!」

「うちのバスケ部って強いんだよね?」

「ホントにあの人、全国出たの?」

「クスクスっ」

体育館は、失笑の渦。

イラっとした宮城。


『ガシャン!』


マイクスタンドを倒す。



『シーーーーン・・・。』



体育館は静寂に包まれる。

そして、叫んだ。



「泣く子も黙る男子バスケットボール部の鬼キャプテン、宮城リョータだ!!
俺たちの目標は、全国制覇のみ!!バスケの実力は問わねぇが、中途半端なやつはいらねぇ!!」

隅で宮城の話を聞いている彩子と晴子。

「あちゃー、リョータのやつ、台本と全く違う。完璧にキレたわね。」

「まぁいいんじゃないですか?宮城さんらしくて。」

晴子は苦笑するしかなかった。

「本気で全国を狙うやつだけが来い!以上!!」



『シーーーーン・・・。』



拍手など一切起こらない体育館。



「今年も新入生は期待できないわね・・・。」

「そうですね。」

「さすが、鬼キャプテンですね。ほっほっほ。」


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(まぁ、揃ったほうだよな。)

15名の1年生を見渡す宮城。

(1人デカいのがいるな。ざっと身長は花道くらいか・・・。
そして、あいつ。俺と同じくらい。経験者なのか。)

「ここに来たということは、あの部活紹介を納得したと受け取っていいんだな?」

「はい!」

1年生の声が揃う。

「よし!それじゃ、簡単に自己紹介をしてもらう。まずはお前から。」


順序良く、自己紹介が行われる。

全国制覇を目標に集まったものたちだけに、中途半端な志のものはいない。
また、中学の実績も例年とは比べものにならないくらい高いレベルであった。



「次!」


「武石中出身 白田豊。193cm、ポジションはセンターです。
三井先輩にあこがれて、湘北バスケ部を希望しました。」


「おー。193cm大きいなー。」

「三井さんの出身校の武石中だって。」

石井や佐々岡らが声をあげる。


興味なさそうだった桜木が、少し眼をやった。


『ズンズンズン・・・。』


「なっ!桜木花道!!」

彩子が叫ぶ。


白田の前に立ち、睨む桜木。

白田はうろたえもしない。


「センターらしいな?」

と桜木。

「はい。」

「湘北にセンターはいらねぇ。」


「なっ!」

驚く上級生たち。

「センターはこの天才桜木だ!ゴリからゴール下を任されたのは俺だ!
だから、君は他のポジションをしたまえ。」

「・・・。三井先輩が慕っていた安西先生に任せます。」

「よかろう。どうだ、オヤジ?」


(先生に向かって、オヤジって呼んだ?)

(彩子さんといい、桜木先輩といい、監督より偉いのか?)

疑問を持つ1年生たち。


「考えておきます。ほっほっほ。」


「桜木君!少し身長伸びたかも?」

「ん!?なんですと、ハルコさん?」

「ほら。だって、193cmの白田君と同じくらいだよ。」


『クイクイ!』


手で、自分と白田の身長を比べる桜木。


「ホントだ!桜木君、大きくなってるよ!」

と桑田。

「いつのまにデカくなったんだ?花道!」

と宮城も驚く。

「リハビリ中・・・かな。」

「凄いよ!桜木君!」

「進化する天才ですから!ハッハッハ!」


(噂どおり、メチャクチャな人だな。だけど、そうじゃなきゃ、あの山王になんて勝てない。)

白田は、その闘志を心にしまうのであった。



自己紹介は続く。









続く。

#178 【湘北始動】

2009-08-25 | #08 高校 新体制編
湘北高校にも、まもなく新入生を迎える季節がやってくる。

赤木、三井は、2月下旬まで、宮城らとともに湘北高校の体育館で汗を流していたが、
大学での練習が始まり、各々新しいスタートをきっていた。


宮城は、相変わらず赤木以上の鬼キャプテンぶりを見せている。

「おめーら!3線連続50本だ!外したら、一からやり直しだ!!わかったな?」

「ひぃーー!!!」

「鬼キャプテン!!」



「リョータのやつ、三井先輩がいなくなって、更に厳しくなったわ。ふふっ。」

「いい気合ですね。ほっほっほ。」



『パシ!』

宮城と同等の気合を入れているもう一人の男にボールが渡る。



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<<回想>>

湘北高校体育館。

12月下旬のある日。


「湘北高校の体育館に来るのは、ほんま久しぶりやな。
初めて桜木さんとでおうたときを思い出すな・・・。会いたいな・・・。
あかんあかん、今日は流川君に用があるんやった。流川君はおるやろか?」

流川を訪ねてきたのは彦一。


『スタスタ・・・。』


「おっ!早速発見や!なんちゅう奇跡!!」

体育館に向かう流川を見つける。

(ちゃんと話すのは、初めてや。同じ1年生なのに、なんか緊張するなぁ。)

「流川君!」

「ん!?」

「陵南の彦一です。覚えてはりますか?」

「・・・。なんとなく。」

「よかったー。今日は、沢北さんからの伝言をお伝えに来ました。」


「沢北。」


「よろしいですか?俺は、年が明ければまたアメリカだ。だが、選抜には必ず戻ってくる。
そしたら、また勝負してやる。神や仙道を倒して、勝ちあがって来い!だそうです。」


「・・・。っす。」ボソッ。

(アメリカ・・・。)

(ふー。緊張したで・・・、さすが流川君や、普段からのオーラが違うで。
とはいえ、勝つのは陵南や!仙道さんを超えられる選手はおらへん。
例え、流川君でも、沢北さんでもや!!)きらーん。


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(沢北。)


『ドガァ!』


3線でワンハンドダンクを決める流川。




「流川も気合がはいっているわね。」

「流川君・・・。」

晴子の目はハートになっていた。




「おのれ!目立ちがり屋のキツネめ!!」


桜木は、新年からみんなと一緒に練習を始めた。

背中の怪我の影響を感じさせない動きであったが、


「とりゃあーー!!」


『ガコン!』


レイアップを外した。


50本まであと3本というところで。



「だーーーー!!」

「何やってんだ!桜木!!」

「うっ。すっすまぬ。」


「花道!腕立て伏せ50回!!」

「くそっ。」



バスケの感覚を若干失っていた。



「へたくそ・・・。」




翌週、湘北バスケ部に新入生がやってきた。

人数は、15名。


「意外と少ねぇな。」

と宮城。

「リョータのせいでしょ?部活紹介のときに、あんなこというから。」

「だって、中途半端なやつはいらねぇだろ?骨のあるやつだけが必要なんだ!」

「そうだけど・・・。人数はある程度いたほうが、戦略の幅は広がるし、
桜木花道みたいに化けるこもいるじゃない。怪我にだって対応できるし・・・。」

「うっ。ごっごめん。アヤちゃん。」


「ほっほっほ。宮城君のいうことも彩子君のいうことも一理あります。まぁ、もう過ぎたことですから。
どうです?とりあえず、自己紹介などさせてみては?」

「そうですね。よし!みんな集合だ!!」

「はい!!」



2,3年生と1年生が対峙するように向かい合い整列する。

緊張した表情を見せる1年生に対して、上級生は微笑ましく眺めている。



「まずは俺からだ!
湘北高校キャプテンであり、スピードキングであり、高校No.1ガードの宮城リョータだ!
うちの練習は、どの高校よりも厳しいからな。
覚悟しとけ!!やる気のあるやつだけがついてこい!!」


『バシ!』


「何、初日から威嚇しているのよ!!」

「アッアヤちゃん!」


「私は、3年の美人マネージャーの彩子よ。よろしくね。おほほほっ。」

「はっはい。」


(キャプテンをはたいた。)

(すごくムチムチしている。)

(自分で美人っていってる。)


「で、こっちが、3年生のやっちゃんとシオと角ちゃん。」


(えっ!自分で自己紹介させてくれないの?)

(いつものパターン・・・。)

(その他といわれなくよかった。)

と3年生トリオ。


「で、あっちの無愛想なのが、流川。」


「おーーー!!」

1年から、声が上がる。

「あの人がジュニアの流川さんだ。」ひそひそ。

「本物は、迫力が違う。」ひそひそ。

「高校No.1プレイヤーにあと少しと言われている・・・。」ひそひそ。


「ぬっ!」

1年を睨む桜木。


「あっちの赤いのが、桜木花道。」

「流川は俺がぶっ倒す!!ヤマオーも俺がぶっ倒す!」


「おーーー!!」

再び1年から、声が上がる。


「桜木花道の名前くらいは聞いたことあるでしょ?」

「はい!そうとうな問題児だと・・・。」

「なんだとー!」


「ひぃーーー!!!」


『バン!』


「桜木花道!!」

「彩子さん・・・。」


(また、はたかれた!)

(本当のキャプテンは、あの彩子さんかも・・・。)


「で、あれが石井、桑田、佐々岡の2年生トリオ。」


(俺たちも、ひとくくりにされている・・・。)

目を見合わせる2年生トリオ。


「最後、あの可愛いのが、晴子ちゃん。2年生マネージャーよ。」


「おーーーー!!」

本日一番の歓声があがった。


「よろしくね。」

「宜しくお願いします!!!」

「何よ!晴子ちゃんのときが一番声出てるじゃない!!」


「あのー、彩子先輩。あの人は・・・。」

新入生の一人が安西に向かって、指を指した。

「あら!私としたことが・・・。おほほほほ。
あの方が、湘北高校バスケ部の顧問安西先生よ。」


(置物かと思った。)

(用務員じゃないの?)

(やっぱり、カーネルさんでしょ?)


彩子によるドタバタの紹介が終了し、続いて、1年生の自己紹介が行われた。








続く。

#177 【高校最強の実力】

2009-08-24 | #08 高校 新体制編
元旦。

宮城と桜木、彩子と晴子は、天皇杯1回戦を観戦するため、東京体育館を訪れていた。



現在行われている試合は、山王工業(東北代表)×縦川システム(社会人2位)。



「ほーーーぅ。」

感心したような素振りを見せる桜木。


「11点差・・・。」

「やっぱり・・・。」

晴子と彩子は、驚きと納得の表情。


「けっ、可愛げのないやつらだ。」

宮城は、嬉しくも思った。




第2Q 残り3分。

山王 48
縦川 37


山王は、11点差の大差をつけ、リードしていた。



「おっ!沢北も出場しているようだな。」

「選抜は、少ししか出場していないと聞いていたわ。」

「#14・・・、誰だ?あれは?」

「リョーちん、知らないのか?ったく、何も知らねぇんだから。」

「うるせー!!」

「桜木花道は、立場が逆になると、途端に強気になるよね?」

「くすっ。桜木君は、ホントに面白いね。」

「はい!私は、晴子さんのスマイルエンジェルですから!ハッハッハ!!」


「で、桜木花道。あのこは何者?」

「ぐっ。」

「なーんだ。花道も知らねぇんじゃねぇかよ。」

「あのこは、桜木君と同じ1年生。」

「晴子ちゃん、知ってるの?」

問いかける彩子に迅速に答える。


「うん。お兄ちゃんから聞いたの。沢北さんの後継者は、#14の柳葉さんだって。
180cmにも満たない身長でダンクするんだって。」

「なっ!」

驚く宮城とは反対に桜木は。

「少しはやるようだな。チビ猿君は。」

「今度はチビ猿か・・・。」

彩子は少し呆れていた。


「丸男も試合に出ているな。あとはピョン吉と丸ゴリか。」

「弟を入れてきたのは、相手の高さに対抗するためね。
やはり、体格は社会人のほうが上だもの。」

「というと、山王は速さで勝負するしかねぇな。」

「そういうことね。」




「わーーーー!!!!」

場内一気に歓声があがる。




『ドガァ!!!』




「なんだとーー!!」

「目立ちがり屋の小坊主め!」




沢北は、自身よりも高いマークマンを抜き、更に相手センターを抜いて、ダンクを決めた。




「・・・。さすが、山王。スピードだけではないということね。」




『バチィン!』




「ナイスブロックだ!河田!」




「次は、河田のブロックか。これは、スピードと高さの両方で山王のほうが勝っているな。」

「チーム身長は、縦川のほうが高いんだけど、制空権は完全に山王ね。」




『ビィーー!!』


第2Qが終了した。



山王 55
縦川 41



「このままいけば、後半はもっと開きそうだな。」

「さすが、山王だわ。」

「負けてれば、応援してやろうと思ったが、やーめた。」


「すーーーーー。」

空気を思いっきり吸い込む桜木。



「ヤマオーーーー!!!」



観客席中段から、いきなり大声で叫んだ。



「!!!」

「!!」

驚きで言葉も出ない宮城ら。


「ん!?」

「なんだピョン?」

「あっ、あれは!!」

「桜木!!!!」

「うはっ。応援にきてくれたのか?」




「なんだ?なんだ?」

「あいつだ!!あいつが叫んだんだ!!」

「誰だ?あの赤い頭は!!」

会場が一斉にざわつく。

遠くのほうから、警備員がかけてくる。




「ヤマオーーー!!社会人ごときに負けるなよーーー!!!!」




「なっ!!」

「なんだと!!!」

縦川ベンチが一斉に立ち上がる。

縦川応援団も声をあげる。




「ちょっちょっと、桜木君!!」

「やめないさい!桜木花道!!みっともない!!」

「ダメだ。こいつ・・・。」




「大人しく見てろ!!」

と笑う沢北。

「ちゃんと応援しろよ!!うはっ。」

「相変わらず騒がしいやつだピョン。」

懐かしい顔に嬉しそうな表情を見せる山王ベンチ。




「ふん!軽い挨拶だ!!」

大きな仕事をやりきったような桜木だったが、
駆けつけた警備員に散々注意を受けたことはいうまでもない。

「バカ道のせいで、俺たちまで怒られたじゃねぇか!!」

「バカ!!」

「もう!桜木君は!!」

「ハッハルコさん・・・、すいません・・・。」



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第1回戦 第4試合

山王工業 98  ×  縦川システム 83

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第3Q、山王は控え選手と投入すると、縦川システムは、社会人の意地を見せ、4点差まで詰め寄った。

だが、第4Qに再びベストメンバーを投入すると、勝負どころで、沢北が爆発。

見事社会人2位の縦川システムを振り切ったのであった。



翌日、IHの覇者名朋工業が登場。

ベストメンバーで挑んだ2回戦だったが、JBLのチームに惨敗する。

博多商大附属もJBLに惨敗、山王工業は名稜大学に惜敗し、高校生チームは全て姿を消した。

黄金世代といわれた彼らだったが、大学生、社会人、プロの壁は厚かった。








続く。

#176 【驚愕】

2009-08-21 | #08 高校 新体制編
元旦。

宮城と桜木、彩子と晴子は、天皇杯1回戦を観戦するため、東京体育館を訪れていた。


「ちっ、もう少し早く来ればよかったな。」

「リョーちんのう○こが長いから!」

「してねぇよ!!」


『ドガァ!!』


「冗談がわからないところは、ゴリと一緒だな。」

「バカたれ!」



桜木らが体育館を訪れたときには、すでにこの日最後の試合が行われていた。



「今からだと、山王と縦川システムとの試合しか観れないわね。」

「ヤマオーか。」

「縦川は、社会人2位の実力チームだろ。さすがの山王も負けだろうな。」

「ちょっと厳しいわね。」

「ご臨終。」

「でも、深津さんだって、河田さんだって、沢北さんだっていますよ。
高校生のチャンピオンなんだから、応援してあげくなくっちゃ!!」

「まぁ、晴子ちゃんのいうとおりだな。知らねぇ仲じゃないし、少しぐらいはな。」



アリーナに向かう途中、貼り出してあった試合結果表に目をやった。



「うわっ!まじかよ!!」


「予想外ね。」

苦笑いの彩子。


「すっすごい・・・。」


「ぬっ。何がですか?ハルコさん。」


「ここ見て。」

そういって、試合結果表を指差す晴子。



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第1回戦 第1試合

博多商大附属高校 86  ×  京都商科大学 84

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「博多が勝っちまってる・・・。」

驚きを隠せない宮城。

「京都商科大学といったら、関西一部のチームじゃない・・・。ホントなの・・・。」

「すっすごい・・・。」

「そんなに凄いのか?」

「高校生が大学生に勝つなんて、皆無に等しいのよ。」

「ふむ。」


「すなわち、桜木花道が流川に1on1で勝つようなものなのよ!」

「いや。当たり前ですから。ハッハッハ!!」


「アヤちゃん、それじゃ、花道にはわからねぇよ。」

「例えが悪かったわね。」


「おい、花道!つまり、おめぇが流川に負けるってことだ。」

「なっ!それは断じてありえん!!」

「そうだ!そのくらい、高校生が大学生に勝つということは難しいことなんだ。」

「トンコツの分際で、生意気な!!」

「確かに博多も強いが、ここまで強かったとは・・・。」

「もしかしたら、愛和も・・・?」



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第1回戦 第3試合

法光大学 129  ×  愛和学院 67

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「愛知の星は、負けている。」

「花道。相手は、関東一部の強豪大学。これが普通の結果だ。」

「ふむ。」

「さぁ、山王を応援に行くわよ!リョータ!!」

「おう!!」


宮城と彩子の姿を後ろから見ている桜木と晴子。

「リョーちんは絶対尻に敷かれそうだ。」

「そうだね。」くすっ。


「花道!何かいったか?」

「ふん!ふん!」

桜木は首を横に振っていた。



コートを見渡せる場所まで来た4人。

またしても、驚愕の光景を目の当たりにする。








続く。

#175 【天皇杯】

2009-08-20 | #08 高校 新体制編
バスケットボール界、新年最初の公式戦は、
元旦から1回戦が行われる天皇杯全日本総合バスケットボール選手権大会である。

プロや、社会人、大学、高校、各地区を勝ち抜いてきた32チームが、
日本一の称号を目指し、激突する。



「体育館?リョーちん、バスケでもするのか?」

「いや、するんじゃねぇ。観るんだ。」

「観る?」

「あぁ。今日はな。天皇杯の1回戦が行われるんだ。」


「天皇杯?」


「ったく。ホントになんにも知らねぇんだな。」

「ふん!うるさい!!」

「アヤちゃん、説明してあげてくれ。」


彩子が、桜木と晴子に、天皇杯の大会概要など、詳細に教える。


『ポン!』


「つまり、日本一のチームを決めるというわけだな。」

「その通り!」

「では、なぜ?湘北は出ない?」

「なっ!」

「当たり前でしょ?何にも実績ないんだから!!予選だって、出てないし。」

「全国大会には出たぞ!ヤマオーにも勝ったぞ!」

「優勝しなきゃ出れねぇんだよ。」

「そうなんですか?」


『コクッ。』

うなずく晴子。


「さすが、ハルコさん、わかりやすい。
彩子さんもハルコさんくらい、わかりやすく教えてくれればいいのに。」

「なっ!」

「アヤちゃんは、サルでもわかるように丁寧に教えていたぞ!
それがわからないなら、おめぇはサル以下だ!」

「ぬっ。サル以下・・・。」

「大丈夫。頭はサル以下でも、桜木君はバスケは巧いから。」

(晴子ちゃん、それフォローになっていないから・・・。)

宮城と彩子は、苦笑いをしていた。



「ところで、彩子さん。高校は何校出場するんですか?」

「さすが、晴子ちゃん。いいところに気が付くわね。それはね・・・。」


「彩子さん!もったいぶらずに早く教えてくれ!」

桜木がせかす。


『ドガ。』

後ろから蹴る宮城。



「うるさい!花道は、黙って聞いてろ!」


「まずは、IHを優勝した名朋工業。高校選手権枠ね。」


「ぬっ。デカ坊主のところか。1年のくせに生意気な!」

「おめーも1年だろ!」



「九州地区を勝ち抜いてきたのは、選抜準優勝の博多商大附属。」

「あの激戦区を勝ち抜いてくるとはな。さすが、冬の準優勝校。」

苦笑いの宮城。



「続いて、東海地区からは、愛和学院よ。」

「ほー。愛知の星ね。彼もやるもんだな。
天才桜木がいないおかげで、うちに勝てたようだし、運だけは強いようだ!ハッハッハ!」

「運だけじゃねぇ、実力もあるぜ。ったく。」


「すごい!!高校生が3チームも出場するなんて!!」

「晴子ちゃん、まだよ。」

「えっ!」



「最後は、東北地区代表山王工業。」

「やっやっぱり・・・。」

「ヤマオーは、この桜木が倒したではないか?」

「バカ!それは、夏の話だろ!山王は、選抜で優勝してんだよ!
しかも、お前が倒したわけじゃない!!」

「そうなのか・・・。ということは、じぃたちは負けたんだな。」

「花道、情報が遅いぞ!!」


「高校生が4チーム・・・。凄すぎる!!
ホントに今の世代の高校生はレベルが高いんだよね。桜木君!」

「まぁ。この天才の足元には及びませんが!!ハッハッハ!!」

「桜木の話はおいといて・・・。
だから、私たちもこうして、わざわざ元旦から試合を観に来たのよ。
安西先生に、チケットもらってね。」

「さぁ、立ち話もなんだ。早くいこうぜ。」

「おう!ヤマオーもデカ坊主も、愛知の星も、トンコツも全てこの天才が倒す!!」

「試合じゃねぇよ。バカ。」

「トンコツって何よ。ホント、桜木のネーミングは特徴あるわね。」

「天才によるインスピリッツですから。ハッハッハ!」

「桜木君、それをいうなら、インスピレーションよ。」

「むっ。」

顔を赤らめる桜木であった。

この後、体育館にて、驚愕の光景を目の当たりにする。








続く。

#174 【湘北の桜】

2009-08-19 | #08 高校 新体制編
時はさかのぼる。



選抜優勝大会が終わり、年が明け、一番最初の日。

つまり、今日は元旦。



「桜木くん!」

「ハッハルコさん!!あっあけましておめでとうございます!!」

深々と頭を下げる桜木。

「おめでとう。今年もよろしくね!」

笑顔の晴子は、着物姿であった。


『ぽっ。』

(可愛い・・・。新年になって、いきなりハルコさんとデートとは!!しかも、ハルコさんの着物姿を拝めるとは・・・!!
天才桜木、今年はいい年になりそうだ!!)


「どうしたの?桜木君、涙なんか流しちゃって?」

「いっいや。何でもありません。ハッハッハ!
ハルコさん!着物姿もおっお似合いです!!」

「ありがと!」

(可愛い過ぎる!!!)

「で、これから、どっどうしましょうか?」

「やっぱり、初詣でしょ?」

「はっはい!!」

(幸せです!!!)




「うわー。やっぱ、明治神宮は人が多いね・・・。」

「この桜木が、道を作りましょう!!ガルルルッ!」

といって、周りの人を睨みつめる桜木。

「さっ桜木くんっ!!いっいいよっ。」

慌てる晴子。

「そっそうですか。」

「初詣って、こうやって長い時間並んで、お願いしたりするから、ご利益があると思うんだー。」

「そっそうですよね。」

5分と待てない男桜木だが・・・。

(ということは・・・、ハルコさんと長時間デート!!嬉しすぎる!!)

バスケの話や、学校の話、他愛のない話をしながら、時は過ぎた。

(幸せすぎる・・・。元旦にして、すでに今年一番の幸せ者かもしれない・・・。)


「ん!?また泣いているよ。」

「ごっごみが入ってしまいまして。ハッハッハ。」

「大丈夫?」

桜木の目を覗き込む晴子。

(う!!!このシチュエーションは・・・。ちっちゅう・・・?)


そのとき・・・。


『ドガァ!』


桜木の背中に何かが当たった。


(なーにー!誰だーー!ハルコさんとの初ちゅうをーーー!!!)


「誰だーー!!あぁ!!」


勘違いしながら、振り向く桜木の目は、殺気立っていた。



だが、そこには・・・。



「花道!!!」


「リョーちん!!」


「晴子ちゃん!!」


「彩子さん!!」


なんと、桜木らと同様に、2人で初詣に来ていた宮城と彩子がいた。


「どっどうしてこんなところに!!」

「なっなんでお前らがいるんだ!!」



一瞬の静寂が訪れる。



『ガシ!!』


肩を組み、彩子と晴子に背中を向ける宮城と桜木。


「おい。花道!お前も隅におけないな。元旦早々、ハルコちゃんとデートとは?」

「リョーちんこそ!彩子さんとデートとは?似合っているぞ!」

「ふっ、お前もな。」にやっ。

「ついに、今年はわれらの年になりそうだ。ハッハッハ。」

参拝に来ていた全ての人が振り向くくらい大声で笑っていた。


(俺たちは、史上最高の幸せ者だ!!)

2人の顔は、とろけていた。



一方、彩子と晴子。

「ホントは、流川がよかったんじゃないの?」

「えっ!?そっそんなことないですよ。流川君は・・・、きっと、練習していると思うし・・・。」

下を向く晴子。


『バン!!』


「ったく。今年は、胸張っていきなさい!強豪バスケ部のマネージャーでしょ!!」

「はっはい!」



「桜木花道!このあと、どこか行く予定あるの?」

「ハルコさんと2人きりのデートを楽しむ・・・。」

「どうせ、行くとこないんだろ?俺たちについて来いよ!」

「ヤダ!」

「はい!ついていきます。」

「ハッハルコさん!!」

「いいじゃん。ダブルデートみたいで!!」


「ダブルデート・・・。」

(いい響きだーー。)

「行きましょう!ハルコさん。リョーちん、彩子さんも早く!!」

晴子を抱え、走る桜木。


「ったく。どこ行くのか、わかってるのかなー?桜木は?」

「わかるわけない。っつうか、せっかくのアヤちゃんとのデートが・・・。」

「キャプテンが部員の面倒をみるのは、当たり前でしょ!」

「はい・・・。」

頭の後ろに腕を組む宮城。

彩子は、かばんの中の4枚のチケットを確認していた。








続く。

#173 【田岡の構想】

2009-08-18 | #08 高校 新体制編
陵南の練習。

ハーフの5on5が行われている。

レギュラーチームは、仙道、山岡、福田、1年生上杉と黒川であった。


第2ラウンド開始早々の黒川のアシストとシュートブロック。

(いいぞ、大蔵!でも、俺だって負けないよ!!)


(次は、上杉ですか。)

田岡に目をやる仙道。


『コク。』

田岡がうなずいた。


悟った福田は、大きく外に開いた。


上杉のマークは越野。

(キャプテンが1年にスタメン取られるわけにはいかねぇんだよ!)

激しいディフェンス。

だが、上杉はその激しさを利用する。

Vカット、すかさずクルッと回転し、再びゴール下へ走りこむ。


「やべっ!!」


その一瞬を見逃さない仙道。

ゴール下に高いパスを放つ。



「高い!!」

「仙道さん!そりゃパスミスやで!!」



(取れるよな?)

にやっと笑う仙道。



『バン。』


『バス!』


上杉はリングの真横に飛んできたボールを片手で触れ、そのままティップで押し込んだ。



「うぉーーー!!凄いで、空斗!!」

「普段の練習では、あんなプレー一切見せていなかったが・・・。
仙道によって、引き出されたということか。」



(ほぉー。少し高いかなって思ったけど、触れられたか。いい跳躍だ。)

と仙道。


(さすが、仙道さん。スピード、高さ、タイミング、どれも完璧なパスだ。
でも・・・、実はもう少し高くても取れるんですよ。)

上杉は、仙道に笑いかけた。


「ん!?あっ、そういうこと。」

何かを悟った仙道も笑い返した。



その後、上杉をマークする越野も上級生の意地を見せた。

菅平も得意のジャンプシュートを確実に沈めた。



「よし!いいぞ!いい感じだ!」

(上杉と黒川の加入は、チームの底上げだけじゃない。
スタメンを守ろうと、上級生も以前より、練習に対する集中力や吸収力が増した。
全国制覇!いよいよ、現実味がおびてきたぞ!!)

「仙道、ラストプレーだ。」

「はい。」



(ちょっと、試してみるかな。)

仙道のドライブ、上杉めがけて、柔らかいパスを放つ。



「さっきより高い!!」

「それはあきまへんて!!」



ボールは、リングの上を超えている。



「ナイスパスです!!」

ボールに飛び掛る上杉。



「うっそ!!」

「まっまさか!!」

「危ないでーーー!!!」



『ガン!!!』



「!!」

「なっ!!」

「バカ!!」



「まいったなー。」にこっ。



『ギシギシギシ・・・。』



リングには、黒川と福田がぶら下がっていた。

上杉は、ゴール下で尻餅をついている。



「福田さん!大蔵!今のは俺へのパスですって!!」

「俺だろ!ゴール下へのパスは、全部俺のです!!」

「いや、獲ったやつのもんだ!だから、俺のだ!!」



仙道が放ったパス。

3方向から、福田、黒川、上杉が飛びついた。

まず、最初に黒川と接触した上杉が吹っ飛ばされる。

黒川がキャッチしたボールを、福田が力づくで自分に引き寄せ、リングに叩きつけた。



「ったく!バカものたちが。」

(フリーオフェンスの上杉は、好き勝手動きすぎ。
黒川はゴール下のパスは全て自分のものだと勘違いしている。
ボールへの臭覚が強い福田は、気が付くとボールに飛びついている。
まずは、役割を与えることから始めなければならんか・・・。)



(もし、福田と黒川の邪魔が入らなければ、上杉のやつ、決めていただろう・・・。)

と越野。



(見えたで。見えてしもうた。陵南が全国の頂点に立つ日が・・・。)

「彦一、お前、何泣いてるんだ??」

「泣かずにはいられまへんって・・・。」



「あの3人一緒に出すのは、ちょっと難しそうだな。」

(はまれば、この上なく強そうだけど・・・。)

仙道は、一人笑っていた。








続く。

#172 【陵南の黒】

2009-08-17 | #08 高校 新体制編
「おはようございます。」

「仙道!!のこのこ今頃、きおって!!」

「すいません。寝坊です。」


『ポリポリ。』


このパターンもいつもと同じある。


怒鳴る田岡。

寝坊と答える仙道。

途中から練習に入る彦一。


最大の犠牲者は彦一であり、仙道の遅刻は彦一の実力が上がらない最大の要因でもあった。

でも、本人は全く気付いていない。


(わいの脚力は、確実にアップしてるで!!ドリブルは一向にうまくならへんけどな・・・。)



「お疲れ様です!!」

一際大きな声で仙道に挨拶するのは、今年の新1年生、黒川大蔵。

坊主で浅黒く、がっちりした体格をしていた。


魚住が去った陵南では、センターを補強することが、この春、最大の課題であった。




陵南のチーム力アップの理由その2。


その課題を解消すべく、自称 神奈川のジュニアハンターこと田岡茂一が白羽の矢を立てたのが、
黒川大蔵であった。

彼もまた、神奈川県立常盤中学校 バスケ部出身の生粋のセンターであった。



幼馴染5名と平均的な5名と素人2名、計12名で構成されていた常盤中バスケ部。

ミニバス出身、監督不在、3on3を経験ということもあり、Cを除いて明確なポジションは、確定されておらず、
また器用な選手が多かったため、個々の能力に頼るフリーオフェンスを展開していた。


福原 快

上杉 海斗

上杉 空斗

柳 春風


GからFまでこなせる器用な選手たち。


黒川 大蔵は、センターしかできない不器用な選手であったが、
陵南にとって、問題はなかった。


なぜなら、1番から4番まで出来る器用すぎる仙道がいたから。



田岡の頭の中では、大きな構想が出来上がっていた。

「仙道-福田-魚住を超えるホットラインになるはずだ。」

(つまり・・・。今年は陵南が県、いや全国を制覇する!!ひっひっひっ!!)

田岡の眼はイっていた。

(やばい!監督がまた妄想にはいってる・・・。)

越野は声をかけられず、指示を仰げずにいるのであった。



この時期、神奈川のどのチームよりも完成されていた陵南は、実践的な練習が多かった。



ハーフの5on5。

PG仙道から、ゴール下に鋭いパスが供給される。


『バス!』


PF福田は、空中でキャッチし、そのままバックシュートを決めた。



『ザシュ!』


SF山岡、速いドライブから急ストップ、鮮やかにジャンプシュートを決める。



『シュパ!』


仙道がディフェンスを切り裂き、ダブルクラッチを決めた。



仙道、山岡、福田の三角パス。



『ドガァ!』


福田のダンクシュート。



「うわーー!!今日もフクさんはのってるでーー!!」

「うむ。この縦のラインはだいぶ板についてきたな。
だが、まだ私の目指すものではない。」


(ホットラインに翼をつける。それが、私の理想形。)



「黒川。菅平と変わってみろ!」


「なっ!」

驚く選手たち。


仙道は驚かない。

(そろそろ、いい頃かな。)


田岡は続ける。

「越野。上杉と変われ!」

「えっ!!」

黒川のときと同様、選手らは驚いたが、誰よりも越野自身が驚いていた。


(まじかよ。俺、キャプテンだぜ・・・。)

だが、納得している部分もあった。

(サイズ、跳躍力ではやつの方が上。正直、山岡と上杉のコンビも面白いかもな。でも、監督、俺は辛いっすよ・・・。)


「越野。すまぬが、試させてもらう。」



(まずは大蔵から。)

仙道から黒川へパス。


素早いワンドリで一気にゴール下へ。

菅平とPF嶋が囲む。


(そう簡単にスタメンを取られてたまるか!)

菅平の必死のディフェンス。


たまらず、ピボットで背中を向ける黒川。


(そこか!)

菅平が目線をそらせた瞬間、アンダーのノールックパスがゴール下に供給される。


『スパ!』


仙道のシュートが決まった。



「わっ!すごいパスやで!!」

「ナイスパス。」

「仙道さん!」


(やはり、視野は相当広いな。味方を生かすことのできるセンターは、波が少ない。計算できるな。)

納得の表情を見せる田岡。


(パスの前に、福田に目線を送ることによって、菅平を誘ったか。
顔に似合わず、小技もきいているな。)

仙道も黒川を評価していた。



続いて。



『バチィン!!』


菅平のゴール下のシュートを、黒川が激しく叩く。


「よっしゃ!!」

「ぐっ!!」


(黒川は、すでに高校クラスの実力か。あとはスタミナをつけてやれば・・・。
魚住にしてやった地獄のフットワークを思い出すわい。)

田岡はにやついている。


(ふーー。先輩への遠慮はなしね。意外と強気。)

仙道は苦笑いをしていた。








続く。