うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#84 【サプライズ】

2009-03-31 | #04 海南 番外編
全国大会を3週間後に控えたある日、高頭のもとへ1本の電話がかかってきた。


「高頭監督、電話ですよ!」

「誰だぁ?牧、このあとは、3線をやっておいてくれ。」

「わかりました。」



電話をとる高頭。



「お世話になっております高頭監督。」

「その声は・・・じゃないか。どうした、久しぶりだな。うん!?ん?うん。
そういうことか、それは牧たちも喜ぶだろうよ。で、いつだ?
・・・・・・、今だと!?」




そのとき、バスケ部の体育館のほうから、賑やかな声が聞こえた。

高頭の耳には、電話越しに牧の声が聞こえた。



「藤真じゃないか。」


「そういうことですので、高頭監督、すぐに体育館にお戻り下さい。」


『ブチッ』


「ったく、なんて強引なやつだ。」


苦笑いの高頭が、体育館に戻ると、見慣れた男たちが立っていた。




「おい、赤木!海南の体育館ってすげーな。うちの体育館が3つも4つも入っちまうぞ。」

「あぁあ。」

驚きを隠せない赤木。

(こういうところで練習すれば、俺ももっと強くなるのか?)


「あれ!?藤真や花形は、ビックリしないのか?」

「俺たちは、練習試合で何回か来ているからな。」


「落ち着け、三井。」

「お前だって、ビックリして、ゴリラ顔になっているぞ。」

「そっそんなことはない。」

慌てる魚住。


「まさか、こんな夢のようなことが起きるとはな。」

少しだけ涙ぐむ木暮。



「なんなんですか?牧さん、こいつらは?」

「わからん。だが、遊びに行きましょうっていうわけではなさそうだな。」

笑う牧。



「牧、更衣室はどこだ?」

「そこを右にいったところだ。」

「ありがとうよ。借りるぜ。みんなも行こうぜ。」


「池上・・・。」

「なんだ、魚住?」



『バサ!バサッ!』



「俺たちはいらん!!」

藤真、花形、赤木、三井、魚住が口を揃えていった。

そして、着ていた私服を脱ぐと、すでにトレーニングウェアを着ていた。



「凄いやる気だな。」

笑う木暮。

「ついていけないぜ。なぁ、長谷川?」

誰よりも後ろにいた長谷川に、池上が尋ねると・・・、



『バサ!!』



長谷川もすでにトレーニングウェアを着ていた。


「お前もかい!」




高頭が事情を話す。

「さっき、藤真から電話がかかってきてな。お前らの練習相手をやってくれるということなんだ。」

「これで彦一の最後のFAXの意味がわかりましたね?」



(『俺たちが相手になってやる!!』)



「あぁ。三井の自筆のようだ。」

「だけど、練習相手って、藤真に、赤木に、三井・・・、
このメンバーだと、うちだってかなりきついですよね。牧さん?」

「全国制覇を目標としているうちには、願ったり叶ったりだ。なぁ、神。」

「えぇ。メンバーだけみると、全国ベスト8はいけそうな気がしますけど、
チームプレーはうちのほうが上なので、いい勝負じゃないですかね。」

冷静に分析する神。




「牧、練習相手をするとはいったが、本当はただ熱いバスケがやりたいだけなんだ。こいつら、みんなな。」

「あぁ、わかっているよ。だが、言いだしっぺは、お前だろ、藤真。」

「ふん。」

笑う藤真。

「引退試合にしてやるよ。」

「んじゃ、有終の美を飾らせてもらうよ。」




藤真の強引な練習試合の申し込みによる海南対神奈川3年生混成チームの夢のような練習試合が実現する。

混成チームに参加したメンバーは、藤真健司、花形透、長谷川一志、赤木剛憲、三井寿、木暮公延、魚住純、池上亮二の引退した8名。

海南の力になるため、牧を倒すため、No.1シューターを証明するため、更に上を目指すため、
ただみんなとバスケをしたいためなど、それぞれが抱いている思惑は違えど、
バスケへの熱意が枯れぬ神奈川の猛者たちであった。



高頭、牧、藤真の話し合いの結果、試合は、10分流しを5本することとなった。




混成チームの第1戦めのメンバーは・・・、

PG藤真、SG池上、SF長谷川、PF花形、C赤木となった。


「ディフェンスは、もちろんマンツーだ。池上、神には1点も入れさせるなよ。」

「今でも神奈川県一のディフェンダーは俺だと思っているぜ。」


「一志、ドンドン攻めてかまわないぜ。」

「あぁ。」




「なんで、三っちゃんが出ないんだよ!!」

体育館の隅から太い声が聞こえた。

「そっその声は・・・。」

振り向くとそこには、堀田番長率いる三井寿応援団神奈川県本部のメンバーがいた。


「なっなんで、お前らがここにいるんだーー!!」

「三っちゃんのいくところなら、例えアメリカでも、地獄でも、応援に行くぜ!」

「どっから、情報を得たんだ・・・。」

慌てふためく三井を見て、みんなが笑った。




「赤木、俺はお前が神奈川県一のセンターだと思っている。だから、俺はPFをやる。」

「ふっ、ありがとうよ。」


『ピクッ!』


「それは聞き捨てならんな!花形!!赤木勝負だ!!」

魚住が立ち上がる。


「うっ魚住、まっ待てって。今は同じチームなんだ。赤木との勝負はあとでやればいいから!」

必死にとめる木暮。

(メンバーは問題ないけど、チームワークは・・・。)

不安でしょうがない木暮であった。




そして、練習試合が始まった。








続く。

#83 【48代表校】

2009-03-30 | #04 海南 番外編
--海南大附属高校 体育館--

練習終了後のミーティングタイム。

残り少ない彦一の資料に目を通している。



「やはり、大阪は大栄か。」

「唯一、IHで名朋の森重を25点以下に押さえたチームだ。
いくらオフェンス主体の豊玉だろうが、そう簡単には勝てないさ。」




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■大阪府代表 【大栄学園】

全国屈指のディフェンス力に長けたチーム。

府予選決勝豊玉戦では、72対59と豊玉をロースコアに押さえ込み優勝した。

そのディフェンス力は、全国の強豪校と比べても群を抜いておる。

また、ハーフディフェンスだけでなく、今大会からオールコートゾーンのレパートリーを1つ増やし、
鉄壁の守りに磨きがかかった。

チームの顔は、もちろん長身オールラウンダーの土屋さんや。
味方を動かし、リバウンドを奪い、自らが攻め込む。

誰からでも点の取れるチームで、バランスオフェンスを重視しておるが、
試合のポイントとなるプレーでは、必ず土屋さんが動く。

まさしく、オールラウンダーの名に相応しい方や。陵南の見本となるチーム。

★★★★★★★★☆☆


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「予選6試合、毎回のように、ゲームヒーローが変わっているな。
しかも、スタメン全員が12P以上の得点アベレージか。」

「まさしく、バランスオフェンスだな。」

「ただ、土屋はやはり別格、他のスタメンより、数字がいい。
土屋を押さえることが、勝利の鍵なのは確かだ。」

「ディフェンスもすげーな。平均失点48.9だってよ。」

「ハーフは、マンツー、2-3、1-3-1、3-2、
オールなら、マンツー、1-2-1-1、2-2-1と巧みにディフェンスを変え、相手にペースを握らせない。」

「こういうチームを倒すのは、かなりしんどいぞ。」

「ええ。そうですね。」


(土屋淳・・・。)

牧は、他のチームメイトとは、異なる思いで土屋のことを考えていた。




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■京都府代表 【洛安】

ラン&ガン、アーリーオフェンスを得意とするオフェンス力のチームや。

PG小関さんから供給されるパスは、まさに神業。
ノールックはもちろん、後ろにも眼があるのではないかと噂されるほどや。

C瀧川さんとの相性は抜群で、予選大会では、小関→瀧川ラインで23本のアリウープを成功させた。

SG林蔵ノ介さんはディフェンスに定評のあるプレイヤー。
山王の一之倉さんのすっぽんディフェンスと並び称されておる。

また、きっちりとポジション分けがされていないのも特徴や。
PG小関さんがローポにおることもあれば、Cの瀧川さんが3Pを打つこともある。

守るのが難しいチームや。

★★★★★★★★☆☆


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「アーリーオフェンスね。」

「豊玉と似ているんじゃないですか?」

「いや、IHを見る限りでは、洛安の方が、数段豊玉より上だな。
豊玉のラン&ガンは、実際には南、岸本、板倉の3枚だけだが、洛安は全員が走る。
時には、瀧川がボールを運ぶことだって、あったからな。」

「マジっすか?高砂さん、大丈夫ですか?」

「・・・。ちょっと厳しい・・・。」

と苦笑い。


「速攻を封じるためにも、早く戻って、しっかりディフェンスだ。いいな?」

「はい。」




「おっ、ようやく九州地区に入りましたね。」

「それにしても、彦一の情報網はすごいですね。こんなに資料をかき集めて、いつまとめているんだろう?」

「こんなことばっかりやっていたら、バスケだってうまくなんねぇよ。」かっかっか。




そのころ、陵南高校体育館では・・・。


「牧さんは★10、高砂さん★7は、神さんは★9と・・・、ふうー、海南選手もチェックせなあかんからな。
清田君は・・・★7、いや★6やな・・・、性格が悪そうや。」

何かを感じた彦一であった。




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■福岡県代表 【博多商大附属】

IHベスト4にして、全国大会出場連続24年という強豪校や。

得点の9割を獲得するビッグ3とゆわれとる3名の選手がチームを勝利へ導く。

SG牧瀬さんは、アウトシューターで、5割に近い3P成功率を誇る。

SFの徳永さんは、鋭いドライブではなく、こじ開けるゆわば、パワードライブを得意とする。

PF新庄さんは、198cmの身長からは想像ができないほどのスピードがあり、ジャンプ力は今大会屈指。

バラエティにとんだこの3名をどうやって押さえるかが勝利の鍵となる。

山王、愛和学院と並ぶ優勝候補の一角や。

★★★★★★★★★☆


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「九州の雄 博多商大附属か・・・。」

「九州大会 3年連続優勝の強豪校にして、未だ全国大会優勝はない。悲運のチーム。」

「キャプテン徳永が入部して以来、九州においては、この3年間一度も負けたことがない。」

「彦一がいうように、今1番脂がノったチームだろうな。要注意だ。」




「おっ、初全国のチームだな。」

「けっ、彦一もおかしなこと書きやがるぜ。」




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■宮崎県代表 【延北商業】

全国大会初出場の新鋭。プレースタイル、勢いなど、湘北と似とる部分がある。

PG三浦さんのスピードは、全国でも屈指。ジャンプシュートの安定性にも定評あり。

湘北の宮城さんと三井さんを足して2で割った感じの選手や。予選得点ave.28

C真鍋さんのリバウンドは、宮崎県第1位を記録。ゴール下のディフェンス力は驚異。

同じく、桜木さんと赤木さんを足して2で割った感じの選手。予選リバウンドave.16 ブロックave.5。

真鍋さんは、人格に問題あり。

安定感のある湘北とゆってええと思いますが、派手さはない。

★★★★★★☆☆☆☆


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「侮ってはいかんぞ、清田。ここを見てみろ!
九州大会では、さっきの博多商大に惜しくも延長戦で負けたチームって書いてある。」

「監督、ここも見てください。」

「ん!?」




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くじ運が悪い!

IH県予選では、2回戦で、IHに出場した青鳳と対戦。惨敗。

選抜県予選では、1回戦から昨年の県覇者 東原工業と対戦。辛勝。

九州大会では、1回戦から博多商大附属と対戦。惜敗。


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「初戦で山王と当たって、敗退ってこともあるんじゃないですかね。」

と笑う清田。

「うちだって、優勝候補といわれている。うちと当たる可能性だって、十分に考えられる。」

「どっちにしても、勝ち上がることは難しいチームですよ。かっかっか」




「沖縄は、那覇水産ね。」

「長かったな。」

「よし、48校これで全部だ。」


「くたびれましたね。牧さん。」

「あぁ。練習よりも体力使ったな。肩が凝ってしまったよ。」



「あれ!?まだ1枚あるぞ!!」



宮益の言葉で、最後の1枚に目をやると・・・、



A4用紙に、でかでかと、筆でこう書かれてあった。




『俺たちが相手になってやる!!』




「どういう意味だ?」

「彦一の冗談か?」



何のことだかわからず、海南選手はスルーしたが、数日後、その真意がわかる。








続く。

#82 【土屋淳】

2009-03-28 | #04 海南 番外編
残り試合時間 7分

大栄 58
豊玉 53




「どうや、土屋!わいらのラン&ガンディフェンスは?」

「ラン&ガンディフェンス?」

「そうや、豊玉のラン&ガンディフェンスや!走って走って走りまくるディフェンスや!」

「・・・。」

「もう止まらへんで、堪忍しいや!」

「・・・。」



再び、土屋から桜井にボールが回る。



板倉が、桜井のドリブルカットに手を出すと、
桜井-小池間を矢嶋が、桜井-青島間を岸本が、桜井-赤井間を岩田が、
それぞれスティールを狙いに走りこんだ。

南は、桜井のドリブルカットに向かう。

桜井は、板倉を抜き、南を抜きにかかると、
今度は、桜井-土屋間を矢嶋が、桜井-小池間を岸本が、桜井-青島間を岩田が走りこんだ。

板倉は、後方から桜井のドリブルカットに向かう。



一部始終を見ている土屋がつぶやく。

「なるほどな。一見でたらめに見えて、しっかり組織立っているっちゅうわけか・・・。」



『バシ!』



「しもうた!」

主審が、板倉のファウルを告げた。



そして、大栄学園が、たまらずタイムアウトを取った。




「なんや、あのディフェンスは!5人が一斉にわいに迫ってくる感じや。
監督、何かいい手はないですか?」

「うむ。」


「あるで!」

土屋が口を開いた。


「豊玉のディフェンスは、前へ前へ押し寄せるディフェンスや。
1人がボールマンのドリブルスティールを狙い、他の選手がパスコースを塞ぐ。
スティールに失敗すると、一列前へ押し寄せ、ボールマンに2人、
他の3名が相手ゴールに近い3名のパスコースを塞ぐようにディフェンスする。
つまり、ボールマンに対して、波のように押し寄せ、プレッシャーを与え、
ニアのパスを奪うっちゅうパスカット主体のディフェンスや。」

「そしたら、ロングパス1本で、ゴールが奪えるやないかい。」

「ロングパスっちゅうのは、少なからず、パスモーションが大きうなる。
そこを後ろからのスティールを狙っているんや。」

「しっかりオフェンスを止めるっちゅうより、
ドリブルスティールやパスカットを狙う、まさしく攻撃的なデイフェンス。
それが、ラン&ガンディフェンスや。」

「どないして、このディフェンスを破るんや?」

「パスせず、一人で抜く、これが一番やろな。」

「あの走る豊玉相手に、一人で抜けるんか?」


「わいがやったる。」

土屋が自信ありげにいった。


「わいがボールを持ったら、みなは走ってくれ。そうすれば、わいと南との1on1や。それと・・・。」




大栄ボールからスタート。

ボールは、土屋に渡った。

と同時に、大栄の選手が、豊玉ゴールに向かって走った。



「そういうことか。」

「そうや。」

大阪の得点王対大栄のオールラウンダーの1on1。


『キュ!』


190cmの男とは思えないほどの身のこなしで、一気に南を抜きにかかる。



「させへんで!」



『キュ!』


『ダム!』


南がスティールしようとするが、レッグスルーで方向転換。

だが、前には板倉が間合いをつめてきた。


『キュッキュ!』


(速っ!)


フェイクから、あっさり板倉を抜いた土屋が、青島を一瞥し、パスをさばこうとしている。



「甘いで!ここやろ!!」

岸本が、土屋-青島間に走りこんできた。



だが、



『シュ!』


パスは、青島と反対側の小池へと供給された。



「わかってたで!」

矢嶋がパスカットに向かう。



だが、



ボールをキャッチしたのは、



矢嶋の前に飛び出してきた桜井。

「土屋さん、ナイスパスや!」



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<<回想>>

タイムアウト中


「それと・・・。豊玉より先に、ボールに向かって走る!これや。」

「真っ向勝負か!」

「豊玉に走り負けるようなら、全国でも勝ち上がることは難しいからな。」

「わかった。OKや。わいらもボールに向かって走ったるよ!」

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(ナイスランや、桜井。)




「大栄3対1、アウトナンバーや!」




南、板倉、矢嶋が桜井の後方から襲い掛かるが、


『ヒョイ』


桜井は岩田の頭上を越えるループパスを赤井の動きに合わせて放った。


『シュパ!』


赤井がタップシュート決める。



大栄 60
豊玉 53




「気にするな!もともと博打みたいなディフェンスだ。
もっと、プレッシューを与えて、前からボールを奪っていけ!」

金平から檄が飛ぶ。




だが、




「土屋が抜いた!」

「すげー、ノールックパスや!」


『シュパ!』



「今度は、ビハインドパス!」

「おー!岸本まで抜いたでーー!!」


『ザシュ!』



大栄学園は、土屋の巧みなドリブル、パスワークを起点に、豊玉のラン&ガンディフェンスの攻略に成功した。

脚力はあっても、ディフェンスの根本的な部分が欠けている豊玉選手では、
ドリブルで抜ける、パスでさばける、ボールを奪える、オールラウンダーの土屋の動きをとめることができず、
土屋が2人を抜き去ることによって、アウトナンバーを作り出し、確実に点を重ねていった。

対する、豊玉も得意のラン&ガンオフェンスで、大阪の得点王南を中心に攻め立てはしたものの、
他の4人が押さえられ、冷静さを取り戻した大栄学園が、きっちりと守り、
圧倒的なディフェンス力で大阪府の頂点に立った。



大栄 72
豊玉 59






【大栄学園】

土屋 淳  23P 9A 7R 5S 3B


【豊玉】

南 烈  21P 3A 4R

岸本 実理  15P 2A 8R




北野式ラン&ガンオフェンスで全国制覇を目指してきた南、岸本は、選抜府予選決勝で、
その3年間の高校バスケに幕を下ろした。

その後、南は、東海地区の大学に入学し、
あの怪物と呼ばれた男と神奈川の猛者たちともにもう一度全国制覇を目指すこととなる。

岸本は、関西の大学に進学、後に関西の頂点に立つのだが、それは、まだ先の話。








続く。

#81 【ラン&ガンディフェンス】

2009-03-27 | #04 海南 番外編
残り試合時間 8分

大栄 58
豊玉 48




『バシ!!』


小池から土屋に渡るボールを南がスティール。

南がワンマン速攻を繰り出す。


「ナイスカットや!南!」


後ろからは岸本が駆け上がり、土屋も追走するが、南のスピードには誰もついていけない。


レイアップが決まった。



そして、南が叫ぶ。

「オールや!!当たるでー!」



南の指示により、オールコートゾーンプレスをしかけた。



「南、板倉!どんどん、スティール狙っていけ!豊玉の攻撃的なディフェンスを見せてやれ!!」

豊玉監督の金平から指示が飛ぶ。

(ディフェンスには見向きもしなかったあいつらが気付いたディフェンスの楽しさ・・・。
これも北野さんのおかげだ。)




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<<回想>>

IH湘北戦 敗北後・・・


「北野さん・・・。」

「北野さんに教えてもろうたラン&ガンで、全国制したるおもうてましたが、
こないなところで負けてもうて、ほんま申し訳ありません。」

「ええって。気にせんでええって。だがな、南、岸本、もっと楽しそうにバスケットせなあかんぞ。
ディフェンスかて、ほんまは楽しいんや。今のお前らなら、きっとわかるはずや。
あとは、とにかく金平監督のゆうことをよう聞くことや。金平監督は、若いのにようできた監督やで。」


「北野さん・・・。」

金平も真剣に北野の話を聞いていた。



(楽しいディフェンス、そないなもんあるんやろか・・・。)



ディフェンスに対する意識が少しずつ変わり始めた南と岸本であった。




<<回想>>

豊玉高校 体育館


「おい、金平!」

「北野さんがゆうてたディフェンスが楽しいってなんやねん!」

「ようやく、お前らもディフェンスに興味も持ち始めたか。北野さんの言葉だけは、信じているんだな。」

「うっさい!はよ教えんかい!!」

「いいか、ディフェンスには、大栄のように鉄壁に守るディフェンスもあれば、
攻撃的なディフェンスもある。わかるか?」

「攻撃的なディフェンス?」

「あぁ。走って走って走りまくるディフェンスだ。お前らの得意なラン&ガンディフェンスだ。」

「そないディフェンスがあるんか?」

「ボールに向かって走る。それだけだ。」

「はぁ?そないことしたら、パスされて、あっちゅうまに決められてしまうでないかい!」

「5人が組織だって、予測しながら、ボールに向かって走れば、そういうこともないんだ。」


金平は、作戦ボードを取り出し、人に見立てた磁石を動かしてみせた。


「こういうことだ。」


「なんか博打みたいやな。」

「せやけど、うちらにはあっておるんやないか、これ。」

「そやな。」




「南!もっと走れ!」

「板倉は、そっちじゃない、こっちだ。」

「そうだ!そこだ!よし!!いいぞ、岸本!!」

「ナイスカットだ!矢嶋!」




「ディフェンス嫌いのお前らが、よくここまでできるようになったな。」

「うっさいわ!」

「だが、ちーと、あんたには感謝してる。」

「南・・・。」

少しだけ目頭が熱くなる金平。


「だが、このディフェンスは、もって5分だ。ただでさえ、お前らはラン&ガンで体力をすり減らしているんだ。
それ以上やったら、体力が持たない。南、勝負どころの5分だけだぞ!忘れるなよ。」

「あぁ。わーてる。」


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エンドラインの土屋から、桜井にボールが入る。


「とったるでー!」

板倉が、桜井のドリブルをカットにいく。


『ダム!』


バックロールで簡単に交わす。



だが、



『キュ!』



「あぶなー。」



南も同じように、桜井のドリブルをカットすべく、手を伸ばしていた。



「土屋さん!」

板倉、南に囲まれる前に、桜井は土屋にパスを出した。



だが、



「もろうたで!!」



『バシ!』



岸本がそのボールをカットし、シュート体勢。



「いくで、土屋!・・・なんつって。」



『シュ!』


『バス!』


逆サイドの南にパス、レイアップを決めた。



「オールコートプレスか。みんな、落ち着いていこうや。」

一呼吸おいて、再び土屋から桜井に。


「ほらほら、またとったるで!」

板倉が、桜井のドリブルカットに突っ込む。


(また、突っ込んできおった。)


(!!)


同じように、南もスティールを狙う。


(どないなってん。こいつら、抜かれてもええ、ディフェンスしておるわ。)


板倉、南を抜いた桜井が、豊玉陣内に駆け上がる。


「とりゃ!」

矢嶋がヘルプディフェンスに、桜井に寄った。

岸本は小池に、岩田は青島に寄る。



(ゴール下ががら空きや!)



『パン!』



(!!!)


(南!)


桜井がゴール下にいる赤井にロングパスを出す瞬間を狙って、南が後ろからボールを叩いた。



「ナイスや、南!」

ルーズボールを奪ったのは、岸本。


「板倉!」

すかさず、最前線の板倉へパス。


そして、


『シュパ!』


「3Pだ!ボン!!」

鮮やかに3Pを決めた。



豊玉がラン&ガンディフェンスを繰り出し、一気に点差を縮めた。



残り試合時間 7分

大栄 58
豊玉 53







続く。

#80 【大阪府予選】

2009-03-26 | #04 海南 番外編
--海南大附属高校 体育館--

練習終了後のミーティングタイム。

海南選手たちは、愛知県代表愛和学院と名朋工業との決勝戦の資料を釘いるように見ていた。




「名朋相手に、45点って愛知の星もすげーな。半分獲っちまっているぜ。」

と冷や汗を流す清田。

「ふっ、3Pの威力が増したようだな。だが、うちにはピュアシューターがいる。
神にはかなうまい。」

牧の言葉に微笑む神。

「ドライブは、流川並か。」

と真田。

「ということは、俺以下ってことですね。」にかっ。


「はい、次のページ。」

高頭も清田を無視した。


「俺の存在って・・・。」

誰からも相手にされなくなった清田であった。




「次は、大阪か・・・。」




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<<回想>> 

大阪府 選抜府予選 決勝戦

大栄学園×豊玉

第4Q



『ヒョイ!』


『シュパ!』



「勝負せんか!土屋!!」



大栄の速攻、2on1。土屋は、岸本との勝負を避け、SG小池にパスを供給、ジャンプシュートを決めた。



「岸本、入れられたら、入れ返す。それだけや。」

「せやけど、南。こんなん豊玉のバスケちゃうやんか!!」

「我慢も必要や。」



だが、



『ピィーー!』


「バイオレーション!」




「うわーー。また、24秒や!!」




シュートさえ、打たせない大栄のディフェンスは、まさに鉄壁。


大栄のPG桜井が、ゆっくりとボールを運ぶ。


「もう抜かれまへんで。チビ助君。」

板倉が桜井を挑発。


だが、挑発にはのらず、土屋にパスを出し、板倉には冷静に対応する。


「わいらの見ている先は、全国や。お前らじゃあらへん。」

「ピクッ!!」

(チビが!!)

板倉の目つきが変わった。



シュートクロックぎりぎりまで、パスを回す大栄アウトサイド陣。

そして、機械のように、残り5秒になると、ゴールを狙う。


桜井からのパスを土屋がふわりとゴール下に弾いた。

ボールは、アーチを描きながら、C赤井がキャッチ、軽やかにゴールを決めた。



大栄学園は、パスを多用し、時間を使いながら、スローオフェンスを展開。

豊玉は、ラン&ガンオフェンスに、更に磨きがかかり、
準決勝までの5試合に奪った平均得点は、114.8と全ての試合で100点ゲームを記録していた。

だが、大栄のオールコートディフェンスの前には、まったく歯が立たたず、
第3Q終了時には、54対44と10点差のリードを奪われていた。

大栄のオールコートディフェンスは、土屋の指示により、マンツー、1-2-1-1、2-2-1と変化させ、
相手に対応を許さないのが特徴であった。



拳を高く突き上げる土屋。

「1-2-1-1や。」



大栄のオールコートディフェンスが、マンツーから1-2-1-1に変わる。



矢嶋から板倉へボールが渡る。


「ちょこまかと目障りなんや!!」

土屋と桜井が、囲みにかかるが、板倉は強引に桜井を吹っ飛ばした。


主審がファウルを告げる。


「チビ助が!引っ込んでおれ!!」


「ちょっと、待てや!!」

大栄PF青島が板倉に食って掛かった。


「なんや!?」

「青島、ええって。ファウルもろうたしな。」

桜井が青島を止め、板倉にいった。

「板倉、バスケで勝負せいや。わかってるやろ?お前が、豊玉の足をひっぱてんねん。」

「なっなんやて!!!」

「冷静さを欠いたPG、くだらん挑発ばかりを繰り返すPG、自己中なPG。」

「もう一回ゆうてみん!!」


主審が笛を吹こうとしたとき、南が2人の会話に割って入った。


「待てや、板倉!!桜井、土屋、板倉が申し訳なかった。」

南が頭を下げた。


「南さん!!」

板倉が叫ぶ。


「ええって、南さん。」

微笑みかける桜井。


「・・・。」

無言で見つめる土屋。

(湘北の一見以来、あいつの性格はまるうなった。
だが、それがまた、バスケへの熱意や不気味さを増幅させておる。残り時間少ないけど、要注意やな。)


南の、豊玉の逆襲が始まる。



残り試合時間 8分

大栄 58
豊玉 48






続く。

#79 【大器】

2009-03-24 | #04 海南 番外編
愛和学院 72
名朋工業 76




第4Qもまもなく3分を過ぎようとしている。


『シュパ!』


『シュパ!』


森重が、続けて2本のフリースローを沈めた。




「森重選手、第4Qだけで6本のフリースローを決めております。」

「ここにきての集中力が凄いですね。苦手なフリースローを克服しつつあるのでしょうか。
進化する愛知の大器です。」




「もはや、ファウルでは止められないか・・・。」

険しい表情の愛和監督の徳光。




「この試合だけで、パスワークに、スピンムーブに、フリースローか。愛和様様だな。」

笑う名朋監督の冨名腰。




「入れられたら、入れかえせばいい。それだけだ。」

諸星がチームメイトに声をかけた。




『ザシュ!』


強気な諸星が、ドライブからジャンプシュートを決める。




「諸星選手も森重選手に劣らない集中力です。今のでこの試合36点目となります。」




『ピィーー!』



『ドガァ!!』




「バスケットカウントです!森重選手、寺田選手のファウルをものともせず、リングに叩き込みました。
そして、ファウルアウトした杉本選手に代わり、途中出場していた寺田選手も、ここでファウルアウトとなります。
愛和学院は、2名のセンターを森重選手によって、失ったことになります。」

「杉本選手も寺田選手も全国ベスト4のチームのセンターです。決して格下の選手ではありませんよ。」

「それほど、森重選手の動きが素晴らしいということでしょうか。
恐ろしい1年生です。」




「諸星、2-3だ!森重を押さえろ!」

徳光から指示が飛ぶ。




その後、試合は一進一退の均衡を保つ。


愛和は、織田がバランスよく、パスを供給し、諸星が外から中からゴールを奪い、
今村はスティール、スクリーンと影でチームを支え、荻野は森重からリバウンドをむしり取った。


対する名朋は、愛和の2-3に森重が封じられ、攻め倦んだが、
進藤、大石が、高確率でミドルシュートを決め、リードを保っていた。



愛和学院 81
名朋工業 83




だが、試合時間残り2分。

この試合、最大の転機が訪れる。



『バシ!!』




「森重選手、本日10本目のシュートブロックです。今村選手、転がるボールを呆然と眺めております。ん!?んーー!!!
コート場では、森重選手が倒れております!荻野選手も右足の甲を押さえております!!」

「どうやら、森重選手がブロックの着地の際に、荻野選手の足の上に乗って、足首をひねってしまったようです。
ここで、負傷退場となると、愛和学院が俄然有利になってきますね。
乗られた荻野選手の足も気になります。」

「おっ、荻野選手は立ち上がりました!!
続いて、森重選手も立ち上がりましたが、どうやら、どうやら交代です!
森重選手、交代となります!!
名朋にとっては、予期せぬトラブル、愛和にとっては、願ってもない森重選手の退場となります!!」




「おっちゃん、俺はまだいけるぞ。」

「あぁ。だが、無理はしちゃいけね。お前にはまだまだこの先がある。
あとは、あいつらを信じろ。」

「んん。」




「荻野、大丈夫か!?やれるか?」

「しゃちほこを落とされたかと思ったよ。」

「無理するなよ。」

「あぁ。だが、チャンスだぜ。逆転するぞ。」




そして、




『ピィーーー!!』


試合終了を告げるブザーがなった。




「愛知の星か・・・、この愛知ではずば抜けたバスケセンスだが、王朝には勝てまい・・・。ヒロシ、いくぞ。」

「うっ、ん??」

若干、うとうとしていた森重。


(肝のデカさじゃ、こいつが一番だな。)

笑う冨名腰であった。




森重を見つめていた諸星が、声をかけた。

「森重!」

「ん?」

「しっかり、冷やしておけよ。」

「ううん・・・・・・・。」

「ん!?なんだ??」

「梅干??」

「諸星だ!!」



愛和学院 90
名朋工業 85




IHの覇者、名朋工業は、愛知県予選決勝で敗れた。

全国大会出場を果たしたのは、IHベスト4の愛知の星こと諸星大率いる愛和学院に決まった。


「よし!牧、待ってろよ。IHの借りは、選抜で返す!!」




【愛和学院】

諸星 大  45P(3P5本) 4A 5R



【名朋工業】

森重 寛  37P 7A 17R 10B








続く。

#78 【星とポン吉と丸顔】

2009-03-23 | #04 海南 番外編
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<<回想中>> 

2年前のIH全国大会。



続いて、愛和学院は、準々決勝で山王工業と対戦する。

そして、またしても、諸星にとって、屈辱的な出会いをすることとなる。




諸星は、第2Q途中から、負傷した先輩に代わり、SGを任されていた。

山王の勝利がほぼ決定した第4Q、1年生ながら、ベンチ入りしていた#14深津と#15河田が出場する。




「#14、俺がいきます!」

「愛知の星が相手かポン。」

「ポン?」

「何だ、お前?」

「お前は、3Pシュートがヘタだポン。」

「なっなんだ!?ポンって何だ!!」

「試合中だポン。」

「なっ!?」

「はりきりすぎるなポン。」

「なにを!まっ待て!!名を名乗れ!!」


『スタスタスタ・・・』


(こうなったら、バスケでぎゃふんといわせてやる!!ってこのくだり、牧と同じ?)




愛和のオフェンス。


諸星が、3Pライン手前で、ボールを持っている。

深津は、間合いをあけて、ディフェンスをしている。


「そこからは、打たないポン。打っても入らないポン。」

「うるせー、ポン吉!」



『シュ!』


『ガン!!』


「あっ!」

「ほら、入らないポン。」


「ぶしぃ!!」

リバウンドは、河田が掴み取る。


「データどおりだ、黒星の3Pは入られね。深津打たしてかまわないぞ。」

「OKだポン。」


(くそ!諸星だっていうの!)



再び、諸星にボールが渡る。

「打ってくるかポン。」

「ポンポン、うるっせえーっつうんだよ!!」



『キュ!』


(!!)


(速いポン!!)



一瞬で深津を抜き去った諸星が叫ぶ。


「ビッグスターシュート!!」



だが、



『バチィン!!!』



諸星の放ったレイアップシュートを、渾身の力を込めた河田が叩き落した。



「うは!!」


(くそっ!丸顔め!)



倒れた諸星に、手を貸す河田。



「ビックスターシュートってダサいな。」

「うるさい!」

「俺は、河田雅史。あっちのポンポンいっているのが、深津だ。よろしくな、黒星。」

「俺は、諸星だ!」

「うは!そうか、諸星か。」

笑う河田。

「深津ー、諸星だってよ。」

「諸星は、3Pシュートがヘタだポン。」

「どっどうして、そう思うんだ!?」

「試合を見ていれば、わかるポン。海南戦でも打てるところで打っていなかった。」


(けっ、こいつもいい眼してやがるな。)

「3Pが苦手なのは認める。だが、今度は、こうはいかねぇぜ。」

「あぁ。3P練習してこいよ。ビッグスターシュートもな。」

「楽しみにしているポン。」

これが、諸星と宿敵深津、河田との出会いであった。


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(確かに、1年時の3Pは酷かったな。さすがに、こいつらには見せられねぇ。)

苦笑いをしながら、昔を思い浮かべていた諸星であった。



愛和学院 65
名朋工業 67






続く。

#00 【海南 選抜編 目次】

2009-03-22 | #00 ご挨拶&目次
▲ 海南 番外編 目次

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#90 【トーナメント表】

#91 【再会、そして・・・】

#92 【全国開幕】

#93 【順調なシード校】

#94 【初陣】

#95 【ベスト8】

#96 【彦一チェック】

#97 【海南対秋月】

#98 【信頼関係】

#99 【努力と信長】

#100 【怒涛の展開】

#101 【流れ】

#102 【ディフェンスの重要性】

#103 【背負う想い】

#104 【PG土屋】

#105 【大栄攻略作戦】

#106 【星対朝日】

#107 【日本の至宝】

#108 【王者対新鋭】

#109 【雅史登場】

#110 【兄の背中】

#111 【ハーフタイムショー】

#112 【無口な男】

#113 【第2試合終了】

#114 【桜木登場】

#115 【同窓会】

#116 【第3試合終了】

#117 【最後の椅子】

#118 【一進一退】

#119 【キープレイヤー】

#120 【秘密兵器】

#121 【消耗戦】

#122 【縮まらない点差】

#123 【ミラクルヒーロー】

#124 【両校の思惑】

#125 【最終局面】

#126 【あれが神だ】

#127 【エースたる集中力と精神力】

#128 【最終決戦】

#129 【第4試合終了】

#130 【準決勝前日】

#131 【コンビ結成】

#132 【準決勝開始】

#133 【幕開け】

#134 【牧始動】

#135 【必勝パターン】

#136 【作戦通り】

#137 【河田タイム】

#138 【挑戦者】

#139 【至宝登場】

#140 【序章】

#141 【認められる】

#142 【牧、再び】

#143 【河田、再び】

#144 【2年生対決】

#145 【試合を制するPG】

#146 【残り1分】

#147 【希望】

#148 【決着】

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▼ 愛和 選抜編 目次

#77 【星と盟友】

2009-03-21 | #04 海南 番外編
愛和学院 62
名朋工業 67




『シュパ!』


開始早々のワンパスから、諸星が3Pが決める。



「大さん、今日は3Pの調子がいいですね。」

と真面目な性格の織田。

「今日はじゃねぇだろ!!」

「そうだ。先輩に向かって失礼だぞ!虎!!今年はだろ!今年!」

とお調子者の今村。

「バカ!俺の3Pは、2年から入る!アホ虎に、バカサ(ツバサ)!」


どうやら諸星は、2年生虎翼コンビのいじられ役らしい。




そのころ放送席では、


「本当に、今日は諸星選手の3Pがいいですね。」

「えぇ。全く3Pが入らなかった一昨年に比べるとまるで別人のようです。」

「一昨年のIH以降、3Pの練習にも力を入れてきたと本人はいっていました。
その成果が現れています。毎年、確実に成功確率がUPしていますね。」




諸星の過去が明るみに・・・。




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<<回想>> 

全国中学生バスケットボール大会 愛知県大会 準優勝校のキャプテンとして、
チームを勝利に導いた諸星は、翌年、愛知県でも名高い愛和学院高等学校に推薦入学を果たす。

そして、2年前、愛和学院の控えSGとして、IH全国大会に初出場。

ベスト8を争う試合、後の盟友となるあの男と出会う。



「監督!あいつも1年なんでしょ?俺が止めてやりますよ!」

「お前には、まだ早い。」

「やってみなければ、わからないでしょう!」

「うむ・・・。第4Q12点差か・・・。経験を積むのもよいか。
この時間、この得点差なら、追いつかれることもなかろうし、よし、やってみろ。」

「任せておいてくださいな。」




「愛知の星、諸星登場だーー!!」

「出ました!愛知の星!!」




「愛知の星?」

「俺は諸星だ。よろしくな。」

「ん!?あぁ。」

「予選から、愛知の星なんて呼ばれている。
俺は、シューティングスターってのがいいなぁと思っているんだけどな。」

「それは、流れ星だ。お前も落ちるぞ。」

「なっ!?」

「はりきりすぎるなよ。」

「なにを!まっ待て!!名を名乗れ!!」



『スタスタスタ・・・』



(こうなったら、バスケでぎゃふんといわせてやる!!)




『バシ!』



(!!!)



(どうだ!!)



男のドリブルを諸星がカット。ワンマン速攻で、相手ゴールを目指す。



『シュ!』



諸星は、レイアップシュートを放った。




だが、




『バチィン!!』




(なにっ!)




シュートは、力強いブロックにより、背後から叩き落された。

振り返ると、そこにはあの男。




「クロ!!」



「クロじゃない。俺は、牧だ。そうやすやすと点はやらんぞ、白星!」

「俺は、諸星だ!」




2年前 IH全国大会 ベスト8の椅子を争った愛和学院と海南大附属。



愛和 84
海南 78




試合終了後・・・。


「黒星。」

「諸星だ!わざとだろ!?」

「お前、外角のシュートが苦手か?」


『ギクッ!』


「なっ何でだよ!?」

「打てるタイミングでも打たなかった。」

「あれは、フェイクだ。あえて、打たなかったんだ!」

「お前の性格なら、打って当然。」

「うるさい!勝ったのは俺たちだ。」

「あぁ。だが、もっと上を目指すなら、ドライブだけじゃ勝てないぞ。
強豪愛和のスタメンだって取れないぜ。」

「・・・。」



(ものの数分しかプレーしてないのに、苦手の3Pや性格までお見通しか。
なかなかの洞察力だな。)



「けっ、全部お見通しってか。牧っていったな、またここでやろうな。」

「あぁ。次は、海南が勝つ。」

握手を交わす牧と諸星。



「海南の牧か、忘れられねぇ相手になっちまったな。」

諸星と反対に牧は・・・。

「愛知の星の白星?ん!?黒星!?まぁ、どっちでもいいか。」




これが、諸星にとって屈辱的な牧との出会いであった。







続く。

#76 【愛知の星】

2009-03-19 | #04 海南 番外編
愛和学院×名朋工業

第3Q 残り39秒

愛和学院 60
名朋工業 64




『シュポ!』


名朋SF大石が3Pを決める。




「このQ、最後の攻防となりそうです。」




時間ギリギリまで、パスを回す愛和。



残り4秒。

愛知の星が動き出す。



『ダム!』


『シュン!』




「諸星選手、スタードライブで、名朋工業、進藤選手を抜き去りますが、
目の前には、森重選手が待ち構えています。」




「今度はIHのときのようにはいかないぜ!」

「ん?」

(IH?)




かまわずステップを踏む諸星。

森重もブロックに跳んだ。




「ビッグスターシュートスリー!!」

諸星が叫ぶ。


「ん???」

森重のブロックは、空を切った。




ボールは高くループし、リングに向かって落ちてくる。




「おっ、ここでしかけてきたか。対河田用のスクープシュート。」

(っといっても、沢北のスクープシュートの真似だけどな。)

と苦笑いの愛和監督徳光。




そして、




『ドン!』


森重の腹が、諸星の体に軽くぶつかった。




『ピィーー!』


ファウルを告げる笛がなる。


(ファウル?)



(にやっ)

笑う諸星が、ボールの行方を確認する。




『ガン!』




外れた。




「ありゃ。」

(まだ正確さが足りねぇか。)




「諸星選手のスクープシュートは惜しくも外れましたが、
貴重な貴重な森重選手の4つめのファウルを奪いました!」

「これは、試合を左右する非常に大きなプレーです。
そして、名朋工業、とてつもなく痛い痛い、森重選手のファウルとなりました!!」




「ビッグスターシュートスリーって・・・。」

と織田虎丸。

「ネーミングださいっすよ。」

と今村翼

「うるせ!諸星の星と大の大でビッグスターだぞ!!」

「しかも、スリーってワンとツーはどこにいっちゃったんですか?」

「っていうか、シュートだって、沢北の真似じゃないですか?」

「うるさい!うるさい!」

「フリースローは、しっかり入れてくださいね。」

「先輩に向かって、何だその口の利き方は!!」

「はいはい。」

織田と今村に突っ込まれ、軽くあしらわれる諸星。

だが、2本のフリースローをしっかり沈め、第3Qが終了した。



愛和学院 62
名朋工業 67




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『ビィーーー!』


「おっ、第4Q開始のブザーが今なりました。残り10分で、いよいよ愛知県代表が決定します。」

「これは意外、4ファウルの森重選手がそのままコートに現れました。」

「点差からいえば、一旦ベンチに下げてもいいと思いますが、冨名腰監督は、勝負出ましたね。」

「冨名腰監督の作戦が、吉と出るか凶と出るか、残り10分見守っていきましょう!」



愛和学院 62
名朋工業 67







続く。