tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

改めて今の物価問題を整理する !?

2022年11月02日 21時29分11秒 | 経済
国際的な資源インフレと日米の金利差で起きた円安とが一緒に起きただけで、こんなに物価問題がこじれているというのは、何とも情けない話です。

こういうときほど、物価に直接関係のある政府、日銀、産業界、労働界が、確りとコミュニケーションを取り、日本経済の安定のために最大限の協力をするべきでしょう。

国際価格上昇は日本の力では何ともなりませんが、それ以外の事はこの四者が話し合えばそれなりに片付く性質のものではないでしょうか。

大体インフレ(物価の変動)には基本的に2つの原因しかありません。輸入インフレと国内インフレです。それに、今は変動相場制ですから、為替の変動が加わります。

輸入インフレは、国際的に物価が上がって、多くの国で輸入物価が上がることによるものです。これは世界共通ですから、一国の中で取れる対抗策はありません。
但し物価上昇は世界共通ですから、国際競争力への影響はないというのが理論です。

国内インフレは大抵賃金コストプッシュインフレです。生産の要素費用は賃金と利益ですが、利益が増えてインフレというのは余り聞きません。賃金インフレが一般的です

3番目が為替レートの変化です。これを放置すれば、輸入部門と輸出部門で反対の差益と差損が出ます。同時に、その国のすべての物価とコストがレート変化分だけ上下します。
例えば、円高なら日本は競争力を失い、円安なら競争力が付きます。

そして特筆すべきは、変動相場制の下では、一国の金利の高低が、為替レートに影響する事です。そしてこれは為替介入とは見られません。

いま日本で起きていることはこれらの条件の組み合わせでしかないのです。

今回の一番大きな問題は、アメリカが金利を引き上げたので円安になったという事でしょうか。

アメリカはインフレが酷いので、金利を上げて抑えようとしています。インフレの原因は
国内インフレ(賃金上昇や一時的な便乗値上げ)です。国内インフレが収まれば、金利を下げて、円安も戻るでしょう。

日本は、輸入インフレは勿論避けられませんが、国内インフレ(賃金上昇や便乗値上げ)がないので、輸入インフレ分だけで3%ほど(アメリカは8%)で、金利引き上げの必要もないし効果もないという事で、日銀は金利を上げません。
これが為替問題(円安問題)です。

日本だってインフレが酷くなって来たと言う人もいますが、日本のインフレは殆ど輸入インフレで、国内インフレではありませんから、金利引き上げでは解決しません。

日銀の2%インフレ目標というのは、賃上げがもう少し高くなって国内インフレ(賃金インフレ)が2%以上になれば金利を上げて、それ以上のインフレは抑えるというのですから、日銀としては金利を上げないのは当然だと頑張ります。。

でも、世界に向かって「上げない!」と「宣伝」しなくてもという意見もあります。「考えないでもない」ぐらい言っただけで5~10円の効果はあるという意見もあります(口先介入)。

連合は、本気で「絶対5%取る」と言えばこれも国内インフレの可能性から金利引き上げ圧力になります。ドル建てでは日本の賃金は3割ほど下がっているのですから。

それに対して産業界(経営側)はどう答えるかです。少なくともアメリカの半分ぐらいの賃上げ(純粋ベアで)をしないと国内インフレ2%は達成できないでしょう。
輸入関連は差損で、輸出関連は差益で、円安のせいで、自動的に産業別の損得が発生する事への対応策はあるのかも問われるでしょう(価格転嫁の問題が絡みます)。

政府はただ困って、人気取りでしょうか、補助金に何兆円とか、批判の多い為替介入に何兆円とか使っているだけでいいのでしょうか。

単純なものが絡み合っただけの問題ですが、それぞれのプレーヤーが連携もなく勝手なことをやっていたのでは問題が解決する筈はありません。
先ずは、関係者が一堂に会して議論などしてみて下さい。その中身がマスコミで伝われば、国民がいろいろ良い意見を聞かせてくれるかもしれません。