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シェイクスピアの「リア王」とカトリック教会の最近の状況

2007年08月01日 | カトリックとは
アヴェ・マリア!

 兄弟姉妹の皆様、
 シェイクスピアの有名な『リア王』(King Lear)を紹介します。

 リア王はイギリスの架空の王である。
 王の宮廷で臣下たちが王を待っている。忠臣ケント(Kent)と腹黒いグロスター(Gloucester)とエドマンド(Edmund)の話が聞こえる。エドマンドはグロスターの私生児である。グロスターは自分の罪を罪とも思わない程、霊的に盲目である。ケントを除いて臣下らは自分の義務を果たしていない。

 ブリテンの老王リアは、八〇歳という高齢のため退位することにした。しかしそのやり方は最悪だった。自分に対する愛情の表現に応じて三人の娘に王国を分け与えようとした。「娘よ、おまえたちの私への愛を語れ!」Speak!

 王の義務は王国に一致を与えること、天主の代理者として管理すること。父親の役目は、子供を愛すること、子供達にとって天主の代理者となること。人間として、私たちの持つものは全て天主から与えられた賜物、当然の権利ではない。八〇という高齢にもなればそのくらい分かっているはず。しかしリア王はそのことに気づいていない。王国は、王である自分の思うようになり、すべて「エエワ、エエワ」で自分の望み通り行けば全ては巧くいくと思っている。父親として、娘たちは自分を全てに超えて愛するべきだと思っている。人間として、全ては自分にとって当然だと思いこんでいる。何という盲目!何という傲慢!何という狂気!

 この悲劇は避けられた。必要でもなかった。しかし王はそれを選んだ。そして自分の利益しか考えていないものどもの言葉を信じ、愛と忠実を捨てた。そして王の失墜と供に皆が苦しむ。

 リアが長女と次女から騙されると同時に、グロスターも自分の庶子エドマンドを信じ、嫡子エドガー(Edgar) を勘当するだろう。

 長女ゴネリル(Goneril)と次女リーガン(Regan)は饒舌な言葉で父王を喜ばせる。リア王は彼女たちが自分を愛していると信じる。

 ゴネリル「どんな言葉よりもあなたを愛します。視覚よりも、空間よりも、自由よりも。」

GONERIL
Sir, I love you more than words can wield the matter;
Dearer than eye-sight, space, and liberty;
Beyond what can be valued, rich or rare;
No less than life, with grace, health, beauty, honour;
As much as child e'er loved, or father found;
A love that makes breath poor, and speech unable;
Beyond all manner of so much I love you.

REGAN
Sir, I am made
Of the self-same metal that my sister is,
And prize me at her worth. In my true heart
I find she names my very deed of love;
Only she comes too short: that I profess
Myself an enemy to all other joys,
Which the most precious square of sense possesses;
And find I am alone felicitate
In your dear highness' love.

 彼女たちの「愛」は本当の愛ではなかった。その「従順」は真実の従順ではなかった。そのことは後に分かるだろう。

 末娘コーディリアは愛の真理を語る。まず語らないことによって。「天主の定めた掟に従って、それ以上でもなくそれ以下でもなく、あなたを愛します。」

CORDELIA
Unhappy that I am, I cannot heave
My heart into my mouth: I love your majesty
According to my bond; nor more nor less.

CORDELIA
Good my lord,
You have begot me, bred me, loved me: I
Return those duties back as are right fit,
Obey you, love you, and most honour you.
Why have my sisters husbands, if they say
They love you all? Haply, when I shall wed,
That lord whose hand must take my plight shall carry
Half my love with him, half my care and duty:
Sure, I shall never marry like my sisters,
To love my father all.

 しかしコーデリアは「不忠実」であり、「不従順」であり、「愛がない」娘だと思われた。しかし見かけ上の「不従順」は本当の従順であり愛だった。

 激怒したリアはコーディリアを勘当し、コーディリアをかばったケント伯も追放される。

KING LEAR
Kent, on thy life, no more.

KING LEAR
Out of my sight!

 コーディリアは勘当された身でフランス王妃となる。ケントは姿を変えてリアに再び仕えるようになる。

 その後リア王は一〇〇名の騎士を連れて娘たちの家を尋ねる。ゴネリルはリア王を招待するが家から追い出してしまう。五〇名の騎士を解雇させて。リアは道化(Fool)から真実と忠実の言葉を聞く。道化だけが、笑わせながら真理を言うことが許される。

 リア王はふさわしい対応を求めて次女リーガンのもとを訪ねる。しかしまたもや裏切られる。リーガンのもとで、リアは誰も供を付けることが許されない。

 リアは、ついに精神の均衡を崩して嵐の荒野をさまよう。しかし、リアはまた王の威厳を取り戻したかのように、自然界に命令する。

KING LEAR
Blow, winds, and crack your cheeks! rage! blow!
You cataracts and hurricanoes, spout
Till you have drench'd our steeples, drown'd the cocks!
You sulphurous and thought-executing fires,
Vaunt-couriers to oak-cleaving thunderbolts,
Singe my white head! And thou, all-shaking thunder,
Smite flat the thick rotundity o' the world!
Crack nature's moulds, an germens spill at once,
That make ingrateful man!


 途中、罪を罪とも思わず霊的に盲目であったグロスターは、リアを保護したかどでリーガン夫妻によって両眼をつぶされ、本当の盲目となる。


 コーデリアは父親を本当に愛していた。勘当され名誉を失い、悪者にされていた。しかしコーデリアは父リアを救うために命を賭す。コーデリアは、フランス軍を率いて上陸して父と再会、狂気から一時的に覚醒したリアは自らの愚かさを詫びる。

 フランス軍は敗退し、二人は捕らえられるも、ゴネリル、リーガン、その夫コーンウオール公は内部争いで滅び、エドマンドもエドガー(Edgar グロスター伯の嫡子)の正義の刃に屈して、死に際に改心する。しかしエドマンドの下した命令を取り消すに一足遅く、コーデリアは絞殺され、リアはその亡骸を抱いて息絶える。

Re-enter KING LEAR, with CORDELIA dead in his arms

KING LEAR
Howl, howl, howl, howl! O, you are men of stones:
Had I your tongues and eyes, I'ld use them so
That heaven's vault should crack. She's gone for ever!
I know when one is dead, and when one lives;
She's dead as earth. Lend me a looking-glass;
If that her breath will mist or stain the stone,
Why, then she lives.

 リア王がコーデリアを腕にして嘆く姿は、聖母マリアがキリストを抱いているピエタの像を思い起こさせる。キリストが罪を犯す人類の罪の償いのために十字架で死んだように、コーデリアは父親のために命を捨てた。


KING LEAR
And my poor fool is hang'd! No, no, no life!
Why should a dog, a horse, a rat, have life,
And thou no breath at all? Thou'lt come no more,
Never, never, never, never, never!
Pray you, undo this button: thank you, sir.
Do you see this? Look on her, look, her lips,
Look there, look there!

Dies

 リア王は、最後まで愛されるに値しないはずの自分を本当に愛してくれた娘の死を腕に、その苦しみに耐えきれずに息を引き取る。


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 リア王と私たちの愛する母なるカトリック教会の最近の状況と似ていないだろうか? 真理を語り、諸国の光となり、地の塩となり、諸国の教師であるべき、カトリック教会、諸国民を私たちの主イエズス・キリストの唯一の花嫁であるカトリック教会の第二バチカン公会議後の状況に。

 老王リアは、王の権威と義務を放棄した。第二バチカン公会議では、排斥することを放棄した。権威を持って正確な言葉づかいを使って真理を語ることによって憎まれるよりも、むしろこの世から愛されることを望んだ。そしてこの世から愛されるために、この世を愛することを表明することを望んだ。そうすることによって全ては自分の思うようになり、全ては巧くいくと思った。この世は自分を全てに超えて愛するべきだと思ってしまったかのようだ。

 この第二バチカン公会議の悲劇は避けられたはずだった。必ずしも必要でもなかった。しかしそれが選ばれた。そしてカトリック教会以外の利益を考えるものどもの言葉を信じた。この世は饒舌な言葉でカトリック教会を喜ばせるかのように見える。高位聖職者たちはこの世が自分を愛していると信じる。

 ルフェーブル大司教は愛の真理を語った。聖伝に忠実であることによって。カトリック教会と教皇様に本当の忠実と愛とを示すために、どのような屈辱も潔く受けた。ルフェーブル大司教の見かけ上の「不従順」は本当の従順であり愛だった。


【参考資料】
■ Shakespeare's Cymbeline, Archbishop Lefebvre and Divine Providence by David Allen White, Ph.D.
(シェイクスピアのシンベリン、ルフェーブル大司教と天主の御摂理)

■ The Complete Works of William Shakespeare

■ シェイクスピアに関するホームページは、The Bard of Avon:ストラトフォードのシェイクスピアをご覧下さい。

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