彦四郎の中国生活

中国滞在記

大学後期授業始まる、コロナ防疫のため2週間全講義オンライン―中国のコロナ防疫、水一滴も漏らさず

2021-03-06 21:50:27 | 滞在記

 今年の中国の春節は2月12日に始まり、全国的には10日間ほどの休暇をとる人が多かった。二週間後の2月26日は元宵節(げんしょうせつ)。ランタンが家々や広場に飾られ、ランタン龍が町を練り歩き、その周囲では爆竹がバンパンバンバン鳴らされる。これをもって2週間の春節期間が終わった。

 中国の大学の今年の冬休みは、1月20日頃から始まった大学が多い。この1月20日前後に、学生たちは全国各省の故郷に帰省していった。2月28日(日)までが冬休みで、3月1日(月)から後期授業(2学期)開始となった大学が多いようだ。私が勤務する福建省福州市の公立・閩江大学でも3月1日から新学期授業が始まった。

 中国での新型コロナウイルスの新規感染者は、昨年の12月中旬ころから河北省と北京市、東北3省の黒竜江省・吉林省・遼寧省などで、第二次感染拡大が発生した。このため、例年の春節期間は約8億人が故郷や旅行などで移動するが、今年は省をまたぐ移動には特別の許可が必要とする強い制限をかけた。1月下旬ころまでは感染拡大が継続したが、春節直前の2月上旬までに、発生地域や都市の封鎖、全市民のPCR検査実施などにより感染をほぼ抑え込んだ。

 3月1日からの2週間は、全国的に大学での全ての授業はオンラインで実施されることとなっている。だから、学生たちはまだ故郷の家いてオンライン授業を受講している。「いつ、大学に戻りますか?」と学生たちに聞くと、3月13日(土)と答える学生が多い。大学に戻る2日前以内に故郷でPCR検査を受け、陰性証明がなければ大学には戻れない。

 閩江大学の所在地、亜熱帯気候の福建省福州は、3月上旬にはもう春の盛りとなっている。大学構内では桃の花が満開となる。

 そして、蓮華(レンゲ)も開花し始め大学構内の中央広場は広大な蓮華に覆われ始める。中旬には蓮華の桃色に広場は染まる。菫(スミレ)の紫の花も大きくなる3月上旬。

 3月上旬、白や紫の木蓮(もくれん)は満開となる。亜熱帯の樹木である「刺桐(さしきり)」のオレンジ色の花も開花し始める。この刺桐花はデェイゴとも呼ばれ、沖縄でも多い樹木だ。

 アメリカ・デェイゴの花も開花し始める。日本人にとっては、ちょっと驚くが、ツツジの花が2月下旬頃からぽつぽつと開花し始め、3月上旬には満開となるのだ。日本では4月下旬から5月上旬なのだが。また、ハイビスカスの花も開花し始めて来る3月上旬。福州では2月中旬から4月下旬までがほぼ春の季節、5月上旬から10月下旬までの半年間が夏の季節、11月が秋の季節、12月から2月上旬ころまでが冬の季節となる。

 中国全土か大学に来ている学生たちにオンライン授業で、今、気候は?気温は?」と聞いてみると、ミャンマーと国境が近い雲南省の学生は、「昨日は32℃でした。暑いです。」とのこと。中国北西の新疆ウイグル自治区や陝西省の学生、北京周辺の河北省や山西省の学生たちは、「まだまだかなり寒いです」とのこと。

 今学期の担当教科は2教科。3回生の「日本文化名編選読(日本文化論)」と2回生の「総合日本語・日本語会話4」だ。それぞれ、90分単位授業が週に6回の実施となる。私たち外国人教員は、まだしばらくは中国渡航は制限されていて、とうぶん日本からのオンライン授業になるだろう。昨年3月からオンライン授業を自宅から、ソファーに座って1年間もやり続けたためか、最近、腰の問題が起きてきて、ここ1か月ほど針針灸の医院に2週間に1度、通院し治療をしてもらっている。

 3回生の学生たちとは、彼らが2回生の前期に「日本語会話3」の授業を大学教室で担当した。2回生の後期の「日本語会話4」は日本からのオンライン授業だった。まあ、よく知っている学生たちだ。現在、3回生40人ほど(2クラス)の学生のうち、4人は、広島大学や神戸松蔭女学院大学に1年間の交換留学に来ている。

 彼らが2回生の前期がほぼ終了した1年と少し前の2019年12月下旬、私のアパートの部屋に40人ほどが来て、激辛鍋大パーティをしながら乾杯をした。そんな私との付き合いのある3回生たちだ。まあ、このコロナ禍下、中国でもちょっとこのような超超密な宴会はしばらくはできないかと思う。

 現在はほぼ、新型コロナウイルスの新規感染者がなくなっている(抑えられている)中国だが、依然として警戒は強く、おそらく世界一厳しい感染対策を取り続けている。厳しさにおいては日本と比べることもできない。まあ、水一滴も漏らさずという感がある。まあ、「情報・言論統制」と「コロナ」は水一滴も漏らさず政策の中国だ。コロナ新規国内(市中感染)感染者が2〜3人でも出たらその市や省は即座にロックダウンの厳戒態勢となる。

 昨年の2月上旬から、ずっと日本に滞在し続けている私であっても、毎日、体温報告を大学の担当者にしなければならなかった。毎日欠かすことなくもう11か月連続で中国に連絡し続けている。そして、さらに、この3月1日からは、大学は新健康報告システムを始めた。毎日、午前と午後の2回の体温と健康状況を報告。体温検測は1日に2回となった。さらに、本日の所在地、PCR検査の検査予定や結果、ワクチンの接種予定なども連日報告しなくてはならない。

 だから、毎日、午後12時から午後4時までの間に、新たなシステム報告を中国に送信し始めている。これは、教員や職員だけでなく、学生たちも全てだ。報告が遅れると催促の連絡が送られてくる。この新健康報告システムは、大学だけでなく、高校でも中学でも小学校でも幼稚園でも(小・幼は保護者が)実施されているかと思うし、会社などの職場でも実施されているのではないかと思われる。

 昨日3月5日付のさまざまな中国のインターネットサイトの記事を閲覧する。「日本、変異ウイルスが拡散 東京五輪開催に影響か」「韓国 3/4新規感染増424例」「天津市(中国) 3/4 新規感染6例 全越境(全て国外からの入国者)」「香港3/4 新規11例」「徳国(ドイツ)  輸入加工肉類工場で200人感染」などの、新型コロナウイルス関連の記事が。

 中国の武漢などで、WHOによる形式的な調査がこの2月に行われた。中国政府の主張「①コロナの発生源は中国国内からではなく外国から輸入した食品による可能性が大きい。中国も被害者だ。②ましてや、武漢のウイルス研究所からの流失などありえない」にほぼ沿った調査結果報告がWHO調査団の代表により行われた。まったくの、多くの疑念の残る結果報告、何のための調査だったのかと世界各国は受け止めたが‥。

 中国では昨年秋から、コロナの発生源は輸入食品とのキャンペーンを国内外で強めてきている。そしてもう一つは、外国からの入国者に対しての超厳しい水も漏らさぬの入国検査審査・隔離政策のさらなる強化。昨日の日本の夕刊紙「夕刊フジ」には一面に、「習 人権軽視 入国者に肛門PCR」の見出し記事が掲載されていた。記事によると、従来の鼻やのどにPCR検査に加え、今年1月から肛門からの検体採取が一部で行われ始めたとのこと。消毒された綿棒を3~5cm挿入して検体採取する方法のようだ。日本政府によると中国以外でこの方法を実施している国はなく、3月1日に加藤官房長官は日本にある中国大使館に肛門PCR検査の中止を申し入れたことを明らかにした。しかし、4日時点で中国側からは何の回答も寄せられていないとのことだった。

 私もいつ中国に渡航しなくてはならなくなるか、今のところは不明だが、もし渡航するとなると、①週に数便限定の日本—中国の飛行機(通常の10倍以上の値段)をなんとか予約確保し、②飛行機出発48時間以内のPCR検査を受け結果を受け取り、翌日に日本の空港にて検査の陰性結果を渡して飛行機に搭乗。③中国の空港で再びPCR検査を受け、陽性の場合は病院隔離、陰性の場合は空港近くのホテルで2週間隔離、④再びPCR検査を受け、陰性の場合は福建省福州のアパートに行くことが許可され、⑤飛行機などを予約し福州へ。

 ⑥福州の場合は今年の1月から1週間でなく、自宅アパートでの2週間の隔離生活(アパートドアから絶対出られない監視システムをとられる。食料の買い出しには行けない。また知人もアパートには入れない。だから部屋に保存しているはずの40個あまり缶詰食品を食つなぐ。)、⑦2週間後にPCR検査を受け陰性ならば外出許可の証明書を発行してもらうという約1カ月間のやりたくもない体験となる。

 中国では、日本とは比較できないくらい外国からの入国者に対してかなり厳しい居住地区の人々の眼が注がれることとなる。中国での現在の政策は、もし仮に、居住地区から一人でも感染者が出たら、その地区の人々は全て2週間の隔離となるし、もちろん全員が隔離前後2回のPCR検査となる。私が暮らすアパート団地には約2万人以上が生活している(団地の出入り口は以前から二ヵ所の門があり、監視員が24時間常駐している。団地の居住区は、中国共産党の末端組織である地区委員会[自治会」が管轄している。)ので、一人でも感染者が出れば、即刻2万人は2週間自宅隔離される。だから、今、外国人が中国に戻るということはかなり精神的にも大変なことになるかと思う。夏休み・冬休みの中期休業になっても、日本に一時帰国できるかどうかは分からなくなる。まあ、とてつもなくリスクの大きいことではある。

 この3月5日から、中国・北京で全国人民代表者大会(全人代)が開催されている。中国のインターネット記事を閲覧していると、今日6日には、現在の学校の年限(小学校6年・中学校3年・高校3年)、いわゆる「六・三・三」制を、変更するという提案この大会で行われたようだ。「五・三・二」制にするという提案だ。その提案理由として、大学4年と大学院修士課程3年(日本では2年)を修了すると、年齢が24歳くらいとなる。とくにIT関係の分野などでの優秀な人材は20歳前後から社会で活躍してほしいが、現状では24歳以降となっているためだ。だから、小学と高校を1年ずつ少なくする」としている。2025年には、ITやAI関係ではアメリカを完全に追い越して世界第一の地位を確立するという中国政府の国策に沿った学制改革の提案かと思われる。

 ここ10年あまりの中国の教育を一言で表せば、「全ての道は大学受験に通じる」だ。日本の教育では、「知・徳・体」の三本柱が伝統だが、中国では「徳・体」はほとんどなく、「知」。その「知」も大学受験に向けた競争を教師も親もひたすら追求する。

 昨年4月ころ、日本の教育評論家の尾木直樹氏らが、コロナ禍下でのITオンライン授業などの日本の教育界の対応の手間取りを評して「日本の教育は世界の最低辺にある」と中国などのITの異常な発達国を念頭において批判していたことがあった。尾木氏らの批判は、あまりにも中国の教育事情に無知で勉強不足で、教育評論家として恥ずかしい論評だと昨年のブログで私は書いたことがあった。「六・三・三」制は学校教育に関しての子供たちの発達における根拠があるものだが、国家戦略のためにいとも簡単にこれを変更するのもまた今の中国だ。「知・徳・体」の人間の全面的人格形成の視点を今の中国の教育界に探すのは難しい。