彦四郎の中国生活

中国滞在記

日本の秋すすむ―八年ぶりに日本の秋の移ろいを眺めながら、日々を過ごしている

2020-10-23 05:50:21 | 滞在記

 中国の大学に赴任してもう8年目に入っているので、日本の秋の移ろいを日々感じることは久しくできていなかった。今年1月、中国から広まった新型コロナウイルスの世界的感染拡大が、10カ月間を経た今日まで終息の兆しが見えない中、日本に滞在し毎週時間割通りに中国の大学生たちに向けてのオンライン授業の継続となっている。このため、今年はおよそ8年ぶりに日本の秋の移ろいを眺めて暮らしている。

 雨ばかりで記録的な降水量の7月、35度以上が連日続いた記録的な猛暑の8月、そして9月10日ころから一転して、例年になく涼しい9月。この9月の涼しさや、10月に入ってからの寒さの早期到来のためか、日本各地の山々の紅葉が例年より1週間あまり早くなっているようだ。

 10月になり、20年ほど前までの涼しい10月に戻ったような日本。9月中旬ころからの曼殊沙華(彼岸花)の赤い花の開花から始まった日本の秋の季節。秋特有の「おぼろ雲」も出始めた9月下旬。秋の花「萩(はぎ)」が満開を迎えていた。京都出町柳の鴨川べりにある萩の寺「常林寺」の萩も、ススキとともに白や赤の花が満開となっていた。

 一昨日の10月21日、この寺の境内を見ると、もうすでに春先に開花する木蓮か木瓜(ぼけ)の花の蕾(つぼみ)ができていた。庭で剪定作業をしていた庭師さんに「あの木の蕾は木蓮ですか木瓜(ぼけ)ですか」と聞くと、「白木蓮(はくもくれん)ですわ」とのこと。「春先の3月上旬に開花する木蓮が冬越しに備え始め、そして4カ月も先の開花にそなえて蕾をもうつけているのか」と感じ入った。「来年の3月、日本は、そして世界はどうなっているのだろうか。そして私は‥‥。おそらく、中国に行って大学の教室で授業をしている可能性が大きいかな‥‥。中国の大学構内で白木蓮を眺めているかな‥‥。」と思いながら木蓮の木を眺めた。

 10月中旬になり、朝・夕の冷え込みが大きくなってきた。秋の快晴となる天気予報の日の早朝には、私が暮らす京都の自宅周辺も、町がすっぽりと朝霧に包まれるようになってきた。木津川・桂川・宇治川の三川合流地にあるので時々、町は朝霧に包まれる。放射冷却現象によるこの朝霧の発生も、11月になってからだったが、40年来この町に住んでいるが、今年はかなり早いようにも思える。久しぶりに兵庫県北部の丹波山地にある「雲海に包まれた竹田城を見に行くたいなあ」と思った。

 10月中旬になり、我が家の富有柿の葉や柿の実も色付き始めている。スズメバチが10匹あまり来て、熟した柿をついばみ食べていた。そして、金木犀(きんもくせい)が花を咲かせ高貴な香りを漂わせていた。本格的な秋の到来を感じた。鉢植えの萩の白い花がたくさん咲いた。近くの農家の人からコスモスをもらい玄関に生ける。

 我が家のある住宅街を散歩すると、「菊」や「フジバカマ」、そして、「花梨(かりん)」や「紫式部」の実が色づいていた。住宅街の家々には金木犀の木々が多く、住宅街に香りが漂う。日本の秋だなあと感じる。亜熱帯地方の中国・福建省の閩江大学の構内にも多く生育している亜熱帯・熱帯系の大きな葉っぱのタロイモを見かけ、かの地を思い出す。

 金木犀の樹木は中国の閩江大学の構内にも7〜8本あり、9月下旬ころに開花し香りを漂わせる。ちなみに中国の金木犀や銀木犀の花は日本のものより小さい。小さな花はアルコール度数が50度と高い「白酒(バイジュー)」の中に入れられ「桂花酒」として飲まれている。(※金木犀や銀木犀は中国語では「桂花」と呼ばれる。「桂花酒」はほのかに金木犀の香りがする。)

 我が家の近くにある一軒の家は、10m以上にわたる生垣全体にアケビ蔓(つる)を見事に這わせている。6月ごろからたくさんの小さなアケビの実ができ始め、10月中旬になると大きくなり紫色や白色に熟し始めている。近くの水田や畑の農地にはコスモスが満開に。

 一カ月ほど前の9月27日、娘や孫たちや妻とともに「栗拾い」に行った。行先は滋賀県高島市マキノ町にあるマキノ高原。福井県の実家への行き来によく通る場所で、有名なメタセコイヤ並み木のそばに観光農園地「マキノ果樹園」がある。芋ほり・栗拾い・ブドウ狩り・ブルーベリー狩り・サクランボ狩り・りんご狩りなどできる。

 秋のごちそう・栗ご飯をつくるためにたくさんの大栗を拾った。栗は私の家のお隣さんにもおすそわけ。

 この日は天気が不安定で、黒い雲が断続的に上空を行き来し、突然の小雨に降られたりもした。大きな木の下でビニールシートを広げてのおにぎりお弁当。突然の雨に、大きな木の下で雨宿りをする人たちの姿も。9月下旬の日本での秋の一日だった。

◆亜熱帯や熱帯の地方以上に、温帯気候が国土の多くを占める日本の植物の植生はとても種類が多く豊かだ。それに比べて亜熱帯や熱帯地方は常緑樹がほとんどを占め、季節的にも植生的にも単調だ。亜寒帯のロシアや日本の北海道なども植生的には温帯に比べて単調だが、秋にその多くを占める針葉樹林が紅葉し、単調ゆえの紅葉の美しさがある。