森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

ミヤマリンドウ ①

2015年02月28日 | 自然観察日記
小さな林道の仲間の花が見えました。フデリンドウではなさそうで、これはちょっとした発見?と感じて、いろいろと検討した結果ミヤマリンドウとしました。経験的にミヤマリンドウは高山帯の湿地や稜線などで出会ったもの。ここ天竺の里は海抜700mほどで1000mに満たない亜高山帯とも言えない場所です。それも、湿気を好む種と考えていますが、水持ちの悪い岩棚のような山道の片隅に生育していました。察するに、巻機山(1967m)の山頂付近に生育している個体の種子が渓谷沿いに運ばれて来たのでしょう。ミヤマリンドウが生育するには十分な水分が必要ですが、この渓谷は霧や雲の発生が頻繁で空中湿度が高いのでしょうね。それにしても比較的低海抜でミヤマリンドウが見られるとは驚きです。

ミヤマリンドウ ②

2015年02月28日 | 自然観察日記
どういういきさつがあったのかは不明ですが、山頂部の高山植物が低所に生育していることは時々あり、それはほとんど沢沿いです。種子や株が流されてくるというのは容易に想像できます。しかし、このミヤマリンドウの生育する場所が、裏巻機渓谷本流から非常に離れていることや近くに浅い急峻な沢があるくらいで比較的大きな山頂部に繋がっていそうな沢がありません。もっとも、リンドウの種子は微小なものですから強い風で容易に運ばれます。水の働きというより風の作用でしょうか。そして、比較的低海抜であっても裏巻機渓谷は冷涼な環境なのだということが分かります。

岩にしがみついているヒメシャガ

2015年02月27日 | 自然観察日記
ヒメシャガの花は期待していたのですが歩いた範囲ではすべて終わり。残念!経験的に南魚沼や下田(現三条市)地域にある山登りを初めてしばらくすると出てくる印象で、県内どこにでもある種ではありません。(分布を確認したところ県北の新保岳の海岸域にも採集記録が多いことが分かりました。それに魚沼域を除くと県内全域にまばらに記録があります)。急峻な場所で見てきたこともあって、アヤメの仲間にはあまり興味が湧かないのですがヒメシャガは別物。もう少し土壌条件のいいところに株になって生育しているのを見てきたものですが、裏巻機では岩の割れ目のわずかな土壌をたよりに生育しています。

ヒメシャガの若い果実

2015年02月27日 | 自然観察日記
枯れた花をつけている若い果実です。ごく最近まで花があったようですね。シャガという種は大陸起源のようで日本の固有種ではありませんが、古くから日本に移入されたのでしょう日本固有種のヒメシャガの名前のもとになっています。シャガは三倍体らしく種子ができません。日本各地に野生化している個体はすべて栄養繁殖によるも尾です。

ミヤマカラマツの花

2015年02月26日 | 自然観察日記
若いころ渓流釣りに夢中になった時期があります。山奥の渓谷を岩づたいに進んでいた時に目の前にミヤマカラマツが咲いていて、水と岩と白い花が実にいい取り合わせになっていた場面を思い出します。私にとってミヤマカラマツは渓流釣りと結びついている思い出の花になっています。当時は結構釣果があったものですが、入渓者の増加と共に少なくなりました。それに伴い私はイワナを追うより渓流の花や景観を追う方向に行ってしまってハンターの足を洗うはめになりました。このカラマツソウも急峻な沢に面した岩場に生育していたものです。もっと低山の雑木林の林床にもあるとされますが、ミヤマカラマツは深山幽谷に似合う花のような気がします。

ミヤマカラマツ

2015年02月26日 | 自然観察日記
あまり大きな株ではなく、最近この場所に根付いた個体のようです。花数は少なくようやく開花株になった・・・?とはいってもここまで来るのに数年はかかっていることと思います。珍しい花とか綺麗な花だとつい、掘り起こして自分のそばに置きたくなる人が多いのでしょうが、九分九厘枯死しますから自然のものはそっとしておくべきです。花に会いたければまた来ればいいことなのです。

ミズタビラコ

2015年02月25日 | 自然観察日記
山野の湿った場所にみられるミズタビラコです。それほど珍しいものではありませんが、ここ久しく見ていない種でしたのでちょっと懐かしいおももち。畑の雑草であるキュウリグサの仲間ですが、受ける印象はまるで異なります。いつもはもっと水際で水しぶきかかるような場所で見ることが多かったのですが、ここでは渇き気味の山道の上です。裏巻機渓谷は頻繁に雲がかかり霧なども発生して普段は湿潤なのでしょうか、らしくない場所に生育していました。

ミズタビラコの花

2015年02月25日 | 自然観察日記
花は小さいのですが色といい形といい素敵な花だと思います。近似種にワスレナグサがありもてはやされる気も分からなくはないですね。花が少なくなる季節にでしたから、らしくない場所に生えていたミズタビラコが強い印象として残りました。

ネジキ ①

2015年02月24日 | 自然観察日記
崖の下をのぞき込むと何やら白い花。足場の悪い場所で撮影に一苦労。なんとか撮影したのがネジキの花でした。数m下から伸び上っているのですが、立ち位置からは全体がはっきりしません。歩いた範囲は広くはないのですが、ネジキの木を確認したのはこの一か所だけですからそれほど多い種ではないようです。それほど頻繁に出会える種でもないので、いろいろと写真を撮りたいのですが危険な場所で行えるのは限られます。若い枝が赤いのと純白の花が印象的でした。

ネジキ ②

2015年02月24日 | 自然観察日記
ツツジ科の低木で樹皮の様子から幹がねじれているように見えます。果(さくか)をつけますが、花は下向きなのに実は上向きになります。

イワウチワ

2015年02月23日 | 自然観察日記
花がないので少し寂しいのですが所々にあるブナの林の林床に小さな群落を作っています。越後の深山を歩けば必ず出会える気がするほど、私にとってはなじみの花ですが、花の美しさもあってちょっとしたブームです。イワウチワが見られるといえばそれなりの人が容易に集まるとか。あいにく、里山にはなく少し標高の高い場所でなければ見れないのが残念です。急峻な場所はあまり好まず、傾斜の緩いところに群落を作り、単独で生育することもササなどとも共存していたりします。天竺の里と言われるエリアにはブナの林もあり、あまり傾斜もきつくなさそうですからきっと多く自生しているのではないでしょうか。近いうちに花好きな人を案内してもよさそうです。

トチノキの実生

2015年02月22日 | 自然観察日記
崖を削って造られた山道、上から小石などが落ちて堆積し少し小山になっている場所にスーッと伸びている芽。トチノキの実生です。種子が大きく蓄積した栄養が多いせいで伸びあがる速度や高さが群を抜いています。種子の大きい種の戦略が分かりますね。とにかく早く上に伸び上って光を得ようとする姿です。トチノキは渓谷沿いの湿潤な場所に生育する樹で巨木になり独特な景観を作ります。

トチノキの幼木

2015年02月22日 | 自然観察日記
実生があった並びに昨年あたりに発芽したのでしょうか、幼木がひしめいていました。この崖の上に親木があるのでしょ。結実した後の種子が斜面を転がって同じ場所に落ちてきたようです。山道ということもあり、光条件が良いのでしょう。ことごとく発芽して仲間同士の厳しい競争が起こっているようです。大量に作られる種子も発芽すれば厳しい競争にさらされ、生き残り次の世代に命を引き継げるのは本当にごくわずか・・・。生物の宿命・・「命」というのはそういうものなのですね。少々感傷的になります。