森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

気が付けば

2007年03月31日 | 自然観察日記
 庭木のほとんどはまだ眠ったままです。しかし、気が付けば春は物凄い勢いで進んでいるようで、出勤途中で道路わきを見ればヒメオドリコソウの群落が次第に色彩を帯びてきました。
 遠目で見ればそれなりに美しく、すっかり日本の風景に馴染んできたようですが、この風景10年・20年前は無かったはずです。かってはここに日本の在来種の野草の群落があったはずで、それがこの種によって駆逐されてしまったということになります。
 温暖化の危機が取り立たされてきました。それと平行して植物界のグローバル化といっていいのか生態系の大異変が静かにしかし急速に進んでいるという気がしてなりませんね。これからの地球がどうなるのか不安を抱かないわけにはいきません。
 ところで、このオドリコソウの群落の辺りはまもなく人の農作業の一環で除草薬の散布を受けることになるでしょう。一時的に死滅したように見えるオドリコソウがすぐに復活するのに、日本の在来種はそれができない。その差がこの風景を作ったもっとも大きな原因だと考えています。結局のところ、人為の結果です。化学薬品の影響が大きいことをもっとももっと考えるべきだと思います。

斑入り

2007年03月30日 | 自然観察日記
 コニファーの一種の斑入りの葉。園芸種には八重とか斑入りがもてはやされます。確かに斑入りは色彩的には目立ち綺麗です。でも、植物にとっては決してありがたいことではないですね。野生の中では生き抜くためには研ぎ澄まされた形質だけが残るわけですから、斑入りの個体が行き続けるのは極めてまれです。
 斑の多くは葉緑体がないというのが理由ですが、遺伝的なものもある一方ウィルスに感染した結果としての斑入りも多いもの。不健康なものを愛でるというのもどことなく気が引けることです。

ゼラニューム

2007年03月29日 | 自然観察日記
 パインゼラニュームというのだそうです。ハーブの一種となっていました。葉をつぶして臭いを嗅ぐことができなかったのでパインの香りがするかどうか確かめませんでした。
 多くのゼラニュームには独特の香りがあって、グループの特徴となっているのですが、私にはそれほどいい香りという感じはしません。しかし、この種はハーブ扱いするのですから良い香りがするのでしょう。
 以前カトリソウというのを頂いて栽培したことがあります。蚊も寄り付かなくなるという説明でした。
 植物が出す気体成分、フィトンチッドといわれる作用の主になるもので多くは自己防衛のための化学物質です。葉や茎が傷つき細菌が繁殖するのを防いだり、葉を食害する昆虫などを撃退するための働きを持っていたりすます。雨に解けて土中に入れば、時には他種の発芽を抑制したりもします。植物が持つあまり知られていない作用が森にはあるのです。

 梅再び

2007年03月28日 | 自然観察日記
 もう梅のシーズンでもない地域も多いのですが、長岡は今が盛りです。この絵は3月上旬の戻り寒波前のものですが、また再び梅の時期の到来という格好です。梅の時期は長いですね。十日町小唄に「・・・雪が消えれば 越路の春は 梅も桜も 皆開く・・・」というくだりがあります。長岡よりもっと山奥は梅と桜のシーズンが重なるのですね。そして、その続きが「わしが心の 花も咲く」となって春を待ち焦がれる越後の人の心情が歌われています。

ミモザの花

2007年03月27日 | 自然観察日記
 ギンヨウアカシヤの方が分かりがいいのですが、ミモザという粋な名前が付いています。学生の頃大学のグランドに続く道沿いに大きな樹があり、春になると黄色の花が樹全体に咲いてなかなか圧巻でした。
 越後では見ない樹ですから西日本に出かけた際にミモザを見るときっと驚くのではないでしょうか。
 マメ科の植物で「銀葉アカシヤ」で葉は白っぽく「銀葉」です。花弁のないはなですから「アカシヤ」らしくはないですね。
 この写真は先日上京したときに見かけたものを撮ったもので、まだつぼみの状態です。

 ハクモクレンのコート

2007年03月26日 | 自然観察日記
 厚い毛に覆われているハクモクレンのつぼみ。もうそろそろ脱ぎ捨てる時期になりました。寒暖の差が大きいですが、再び春の訪れです。それにしても、分厚いこの毛はどうして外側にあるのでしょうか。内側にあればもっと温かだと思うのですが・・・。
 長岡はまだまだ寒さが感じられます。スイセンはようやく5cmくらいの芽になったばかり。しかし、百花繚乱の季節がまもなく来ると思うと樹は和みます。

ソヨゴの赤い実

2007年03月25日 | 自然観察日記
 長岡当たりの里山には見かけませんが新津辺りには普通にあります。少し暖かいところを好むようですから、北に位置している新津辺りは長岡より暖かいということになります。
 花は地味で目立ちませんが実は可愛らしい赤い実がつきます。沢山つくわけでもないですから華やかさはありません。ですが、ソヨゴのある里山は何処となく明るくて好きですね。このところ雑務に追われてアウトドアが出来ていないのが悔やまれます。そろそろ現地の取材をしないと・・・。
 モチノキ科、雌雄異株。

怪しげな塊・・・虫こぶ

2007年03月24日 | 自然観察日記
コナラの枝の一角になにやら怪しげな塊がありました。「病気」と片付けるのは簡単ですが、よくよく見ると丸いぶつぶつがいくつか重なっています。その一つのぶつぶつは1mmくらいの大きさで、めれば小さな穴が開いています。
 いわゆる虫こぶ(虫えい)でこの丸いカプセルに住み着いていた虫が抜け出した痕です。具体的な昆虫はわかりませんが、ハチとかハエの仲間なのでしょうか。虫こぶは実にさまざまなものがあり調べると面白い気がします。
 植物と昆虫はさまざまなところで関わりあっています。寄生的であったり共生的であったり利害を考えると両者の変化がとても興味深く感じられます。
 少なくとも虫こぶに関しては、植物側の利益は考えにくいものがあります。しかし、昆虫にとっても虫こぶを作るのは植物の細胞が瑞々しい春先しかありませんし、一度入ったら自由に栄養を取ることはできないみたいですから、桃源郷のような住処にはならない気がします。ぎりぎりのところで生きているという感じでしょうか。どの世界でも生きることは大変です。





ニワトコの新芽

2007年03月23日 | 自然観察日記
 スイカズラ科のニワトコの新芽です。というより若いつぼみです。実は赤くたくさん付きますからとても綺麗なのですが、花は花弁もないのでとても地味なもの。
 そろそろ山菜のシーズンですが、かって覚えたての頃ある人に山菜として紹介されていましたから良く持ち帰って食べたものです。しかし、その後山菜には不適であると指摘している書に出会い少々驚きました。食べ過ぎるとお腹を壊すとのこと。毒草というほどでもないので警戒しすぎることはないのでしょうが、伝承された知識には時には疑ってかかることも必要だなぁと思ったものでした。

クリスマスローズ

2007年03月22日 | 自然観察日記
 早春に咲くのに「クリスマス」というのはやはり腑に落ちません。南部ヨーロッパ辺りが原産だそうで、日本に入ったのはそれほど古くはないのですが普及は早い感じがします。
 2月には咲き出していましたが戻り寒波で休眠? とにかく再び注目される状態になりました。ほとんどが下向きに咲いているのが残念ですが、早春の寒さに対抗するにはそれも仕方ない形なのでしょう。

クスノキの花托

2007年03月21日 | 自然観察日記
 越後にクスノキは野生にないので公園などでしか見かけません。それも決して多いとは思いませんから珍しい樹の印象です。太平洋側の社などに雄大な樹がそびえてちょっとした森を作っている姿はとても羨ましい限りです。
 新津の公園に植えたばかりのクスノキがあって、近づいてみると花托がついていました。昨年の果実が落ちた後の残りです。多くの種では落果の後それほど経たないうちに花宅も落ちる気がするのですがクスノキは違うのですね。新しい発見です。葉は常緑樹といっても春5月頃に新葉と入れ替わりに落葉します。花宅もその頃まで残るのでしょうか。

シランの種子

2007年03月20日 | 自然観察日記
 シランの種子がいっぱい詰まった実が残っていました。隣についていた実にはもうほとんど飛散し残っていませんでしたが、一つだけ水をたっぷり吸った状態で地に伏していました。本来ならばカラカラに乾いて小さな種子ですから風に乗って飛んでいけたことでしょう。ちょっとした自然のいたずらで本来の目的を果たせない果実のようです。
 ところで、ランの種子はどうしてこんなに小さいと思いますか?種子にはほとんど栄養というのが蓄積されていません。発芽しても大きくなる栄養がないのです。不思議な話です。
 理由はこうです。ランは自らの生活の場を地上でなく樹上に求めました。競争の激しい地上でなく樹上で生活ができれば競合する相手がいないので伸び伸びと生活ができるというわけです。いわゆる着生生活です。それにはいくつかの変身を遂げなければなりません。一つは種子を小型にして風で飛ばされやすいようにすること。地面に落ちるのでなく樹の肌などの隙間に落ちなければ意味がないのです。もう一つは、菌類と契約を結ぶこと。ラン菌というグループがいます。落ちた種子はラン菌との遭遇で栄養をもらい発芽するという仕組みを身につけたのです。ラン菌の助けを借りることで種子を究極の小ささで作ることができたのでしょう。
 もちろん地上性のランはその後に進化して来たものだと思いますから、シランはいまさら樹上生活をすることはできないのです。

エリカの思い出

2007年03月19日 | 自然観察日記
 エリカといっても多種多様。公園の植え込みに咲いていたエリカは何処の産でしょうか。正確な根拠はないけれど、少なくともこのエリカは高地や北地に生きている気がしています。2月の中旬にはもう咲き出していました。もっともその頃はとても暖かでしたから北地産といわなくとも咲き出しても無理が無いかもしれませんね。
 エリカが北地産と思う理由がもう一つあります。柄でもないのですが、高校時代受験勉強そっちのけで文学を読みふけった時期がありました。(後にも先にもこの時期だけでしたが)。その中に「嵐が丘」があります。この作品の舞台がイギリスの「ヒースの丘」(エリカの仲間)で、エリカが生育するところは荒涼とした冷たい風が吹きすさぶ少し暗い印象をとても強く植え込まれたからですね。
 その後エリカの花が愛らしく美しいものだと知ってから、高山のお花畑を連想するようになりました。「嵐が丘」で感じた人の情念を少しは明るく暖かなイメージで受け止められるようになっています。

ウサギの被害

2007年03月18日 | 自然観察日記
 長岡の東山に林木育種園があります。近辺の公園などに供給する樹木の栽培の基礎研究などしています。その一角を借りて、東山の自然観察林に隣接する公園などの空地や崩壊地に移植を目的に幼木を栽培している友人がいます。先日、その幼木が写真のようにウサギにやられたとメールがありました。
 少し判りにくいですが、斜めにスパッと切られて上部の枝が全て食われてしまいました。シラカシやサクラなど軒並みなのだそうです。これでは移植用の樹木を得られないとウサギの害に頭を抱えています。堰堤工事などで地肌がむき出しになって美観を損ねることに心を痛めていた人で、何かをしなければと頑張っていました。新たな問題を抱えてどういう手を打つか・・・。どんなことをしても課題というのは次から次に発生するものだと痛感しています。


ミツマタ

2007年03月17日 | 自然観察日記
 開花が足踏みをしています。ジンチョウゲの仲間で和紙の原料としても有名ですね。ミツマタは「三俣」です。枝が120度の開度出るのが特徴です。見慣れているとはいえ面白い習性です。
 2年前、一枝いただき挿し木を試みました。数本指して2本活着しました。そのいぜれもが今年花を持ち、まもなく咲きそうなのですが・・・。今日も白いものが舞いました。